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呪われた目覚め
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今でも昨日のことのように鮮明に覚えている。
「ねぇ。零翔は本当にこのままでいいと思ってるの?」
薄暗い雰囲気の部屋の中。
机に向かい一人で勉強してる僕に、隣の席の少女が声をかけてくる。
「何か用?白雪」
「用がなくちゃ声をかけたらいけない?」
声をかけてきたのは、最近よく話しかけてくる白雪という少女。日本人離れした銀髪の少女だ。
「零翔はこのまま薄暗い部屋の中で、勉強するだけの人生でいいと思うの?」
今この部屋の中には僕たち以外誰もいない。
「興味がないよ」
「私は外の世界を見てみたい。こんなところで終わりにしたくないよ」
「俗世間のことなら授業で習ったよ」
外の世界がいかに愚かでくだらない場所なのかは、すでに習って把握している。
「写真じゃなくて自分の目で見てみたいよ。零翔は見たいと思わないの?」
「そんなことに意味なんてあるの?」
写真で見るだけで問題ないはずだ。
写真で見ようと実物を見ようと、どちらも眼球で見ていることに変わりはない。
「僕たちはエデンの商品だよ。人間は道具でしかない。僕はエデンの命令に従うだけだよ」
「それこそが間違いなんだよ。人間は道具じゃない。お金になんて変えられない」
白雪の瞳には外の世界への渇望が表れていた。
「零翔はここから出たいと思わないの?」
「興味がないよ」
「嫌だよ。零翔と一緒に外の世界でいっぱいお話したいよ」
僕の袖を掴む白雪。
文字を書いていた方の袖を掴まれたため、文字がずれる。
「勉強の邪魔だよ。離して」
「ご、ごめん…………」
白雪が僕の袖から手を離す。
「白雪の気持ちは分かったよ。でも、なんでそんな話を僕にするの?」
「零翔ともっといっぱい一緒に居たいからだよ」
僕は何も答えずプリントの問題に集中する。
少し問題が難しくなってきた。
ここからは無駄な会話をしている余裕はなさそうだ。
「………零翔?零翔?」
白雪の声が思考の外へと消えていく。
どうして白雪が僕に話しかけてくるのか分からない。
会話することに何の意味もないのに。
僕は命じられたことをするだけだ。
それが例えどんな命令であろうとも。
僕にはそれしか無いのだから。
夢から目を覚ますとすっかり見慣れた天井が見える。
「またこの夢か………………」
この夢を見ると憂鬱な気持ちになり嫌になる。
希望ヶ丘学園に入学して約一カ月。
数は少ないが友達と呼べる存在も少しずつできて、学生らしい生活になってきた。
だが、オレの心は相変わらず暗く沈んでいる。
それは、オレが過去に囚われているからだろう。
オレは世界に絶望し、そして自分自身にも絶望している。
それは、あの場所のせいだと思っていた。
環境が変われば何かが変わるはずだと。
しかし、早一カ月が経過し何も変化が感じられない。
結局、状況や環境が変わってもオレの心はあの頃のまま、何一つ変わっていないのかもしれない。
ベットから起き上がり、洗面台へ向かい顔を洗い鏡を見る。
鏡は嫌いだ。
鏡には自分自身が映る。
オレは自分が嫌いだ。
嫌いな自分が映る鏡が嫌いだ。
鏡の中の自分が笑っていると寒気がする。
オレのような人間に笑みなど似合わない。
本心から笑ったことがない。
作り笑顔、愛想笑い。
それらを顔の表面に貼り付け、今日もオレは人間社会に溶け込んでいく。
「ねぇ。零翔は本当にこのままでいいと思ってるの?」
薄暗い雰囲気の部屋の中。
机に向かい一人で勉強してる僕に、隣の席の少女が声をかけてくる。
「何か用?白雪」
「用がなくちゃ声をかけたらいけない?」
声をかけてきたのは、最近よく話しかけてくる白雪という少女。日本人離れした銀髪の少女だ。
「零翔はこのまま薄暗い部屋の中で、勉強するだけの人生でいいと思うの?」
今この部屋の中には僕たち以外誰もいない。
「興味がないよ」
「私は外の世界を見てみたい。こんなところで終わりにしたくないよ」
「俗世間のことなら授業で習ったよ」
外の世界がいかに愚かでくだらない場所なのかは、すでに習って把握している。
「写真じゃなくて自分の目で見てみたいよ。零翔は見たいと思わないの?」
「そんなことに意味なんてあるの?」
写真で見るだけで問題ないはずだ。
写真で見ようと実物を見ようと、どちらも眼球で見ていることに変わりはない。
「僕たちはエデンの商品だよ。人間は道具でしかない。僕はエデンの命令に従うだけだよ」
「それこそが間違いなんだよ。人間は道具じゃない。お金になんて変えられない」
白雪の瞳には外の世界への渇望が表れていた。
「零翔はここから出たいと思わないの?」
「興味がないよ」
「嫌だよ。零翔と一緒に外の世界でいっぱいお話したいよ」
僕の袖を掴む白雪。
文字を書いていた方の袖を掴まれたため、文字がずれる。
「勉強の邪魔だよ。離して」
「ご、ごめん…………」
白雪が僕の袖から手を離す。
「白雪の気持ちは分かったよ。でも、なんでそんな話を僕にするの?」
「零翔ともっといっぱい一緒に居たいからだよ」
僕は何も答えずプリントの問題に集中する。
少し問題が難しくなってきた。
ここからは無駄な会話をしている余裕はなさそうだ。
「………零翔?零翔?」
白雪の声が思考の外へと消えていく。
どうして白雪が僕に話しかけてくるのか分からない。
会話することに何の意味もないのに。
僕は命じられたことをするだけだ。
それが例えどんな命令であろうとも。
僕にはそれしか無いのだから。
夢から目を覚ますとすっかり見慣れた天井が見える。
「またこの夢か………………」
この夢を見ると憂鬱な気持ちになり嫌になる。
希望ヶ丘学園に入学して約一カ月。
数は少ないが友達と呼べる存在も少しずつできて、学生らしい生活になってきた。
だが、オレの心は相変わらず暗く沈んでいる。
それは、オレが過去に囚われているからだろう。
オレは世界に絶望し、そして自分自身にも絶望している。
それは、あの場所のせいだと思っていた。
環境が変われば何かが変わるはずだと。
しかし、早一カ月が経過し何も変化が感じられない。
結局、状況や環境が変わってもオレの心はあの頃のまま、何一つ変わっていないのかもしれない。
ベットから起き上がり、洗面台へ向かい顔を洗い鏡を見る。
鏡は嫌いだ。
鏡には自分自身が映る。
オレは自分が嫌いだ。
嫌いな自分が映る鏡が嫌いだ。
鏡の中の自分が笑っていると寒気がする。
オレのような人間に笑みなど似合わない。
本心から笑ったことがない。
作り笑顔、愛想笑い。
それらを顔の表面に貼り付け、今日もオレは人間社会に溶け込んでいく。
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