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小テスト
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1億円を貰えるのは一位のクラスだけ、という真実のルールが告げられた次の日。
昨日は午後の授業をサボったが、何日もサボるわけにはいかない。
今日はいつも通りの時間に登校するオレ。
白銀も今日は元気そうに登校してくる。
Fクラスの教室に続々とクラスメイトたちが集まる。
5人全員揃ったとき、七瀬が口を開いた。
「ちょっといいかしら。昨日は白銀さんがいなかったから話せなかったけど、クラスの考えを統一しておくべきだと思うの」
確かに昨日は話そうとしたときに白銀がいないことに気づき、そのまま流れてしまった。
全員揃った今、意志を統一しておきたいらしい。
「別にそれなりに頑張りゃいいんじゃねえか?一位のクラスになれなくても特別ゲームってやつで金は貰えるみたいだしよ。適当でいいよ適当で」
昨日は動揺して喚いていた星だが、今日は少し落ち着いている。
しかし、無理だと諦めたのか適当でいいと口にする。
「投げやりはよくないわよ星くん。まだチャンスがないと決まったわけじゃない。努力する価値は十分あるわ」
星を頑張らせる方向に話を持っていこうとする七瀬。
「各々頑張りゃいいんじゃねえか?美麗が努力することを止めるつもりはねえけど、俺は本気でやるつもりはねえから」
「その美麗って呼ぶのやめてってずっと言ってるでしょ」
七瀬は下の名前でフレンドリーに呼ばれるのが嫌みたいで、この一カ月ずっとやめろと言っている。
「いいじゃねえか。減るもんじゃねえし」
「すり減るのよ。私の心が」
七瀬にとって下の名前呼びはかなりのストレスみたいだな。
「とにかく、まだ希望はあるんだから努力するべきよ。他の人たちはどう思ってるのかしら?」
七瀬が他のクラスメイトの意志も聞く。
天羽は、
「僕は今までと変わらないよ。努力を続けるつもりだ」
白銀は、
「私も諦めないよ」
オレは、
「努力する必要はあるだろうな」
星以外の4人は努力する方針でいくようだ。
「でもよ、頑張るっつっても何を頑張るんだよ。頑張れることなんてねえだろ?」
賞金が貰える特別ゲームとかいうのが始まってもいない今、頑張れることはないと言う星。
「いいえ、あるわ。四葉先生は、テストの順位に応じてお金が貰えると言っていたわ。つまり、学力を上げればクラスの所持金が増えるのよ」
そう。今、現段階でできること。
それは勉強だ。
「テストの点数を上げれば貰えるお金が増えるのよ」
「さっき言っただろ?本気でやるつもりはないってよ。勉強するなんて死んでも嫌だぜ」
この一カ月星を見ていたが、授業中もオレと同じで真面目に授業を聞いている様子はなかった。
考えるまでもなく、勉強が嫌いなんだろう。
「俺はやらねえから」
星は自分の席へと戻り、机にうつ伏せになって寝てしまった。
クラスの意志を一つにするのは難しそうだ。
「みんな~、席に着いて。ホームルームを始めるよ~」
話がひと段落したところで四葉が元気よく教室に入ってくる。
「昨日に引き続き今日も皆さんに重要事項を伝えるよ」
そう言って四葉は黒板に一枚の大きな紙を貼り出す。
そこにはFクラス五人の名前とテストの科目ごとの点数と順位が書いてあった。
「これは、4月中旬ごろに行った中学校で習ったことの復習小テストの点数と学年での順位です」
オレの点数は各科目平均点ぐらいで、順位も真ん中の少し上ぐらい。
「この社会は勉強が全てではありません。しかし、勉強が大切なのもまた事実。人間の価値を評価するとき、多くの場合は勉強の良し悪しで判断されます。人間は死ぬまで様々なことを学び成長します」
人間は常に学習し進化している。
それは人間の本質であり成長を続けているという証でもある。
「だから、この希望ヶ丘学園では勉学を怠ったものは退学してもらいます。今回の小テストで言うと、学年で順位が最下位の生徒には退学してもらいます」
「はあ⁉︎」
大きな声を上げて驚いたのは星だった。
星の小テストの順位は総合点で104位。
一年生の人数が105人だから、ビリから2番目ということだ。
「今回の小テストで退学したのはEクラスの男子生徒だったよ。この小テストは毎月一回実施します。つまり、毎月一人ずつ退学して消えていきます」
三年間で36か月。つまり勉強ができないことが原因で36人退学する。
この学校は様々な評価方法で生徒たちをふるいにかけ、選別していくらしい。
振るい落された人間には容赦なく退学が突きつけられる。
「順位に応じてのお金も、順位が半分より上はお金を与えられ、半分より下はお金を徴収されます。半分より上は上がれば上がるほどもらえるお金が多くなり、半分より下は下がれば下がるほど徴収されるお金が多くなります」
学力が高い生徒には金を与えとことん上に。
学力が低い生徒からは金を奪いとことん下に。
上の人間と下の人間を分けて差を広げていくシステム。
「もちろん今月の5月でも小テストを行います。退学者候補筆頭の星くん。短い間だったけどありがとう、にならないように頑張ってね~」
「くそっ!」
苛立ちを露わに机を叩く星。
この学園は、金に執着がある人間を集め、金をチラつかせて争わせ、優れた人間を育成する場所のように感じる。
まるで蠱毒。
学園という壺の中に、金の亡者の毒虫のような人間を集め、殺し合わせ最高傑作の人間を作り出す。
生き残れば先があり、死ねばただそこまでの人間だったということ。
オレたちFクラスは毒虫の中でも特に弱い毒虫。
強い毒虫たちを殺すには色々と工夫しないとな。
昨日は午後の授業をサボったが、何日もサボるわけにはいかない。
今日はいつも通りの時間に登校するオレ。
白銀も今日は元気そうに登校してくる。
Fクラスの教室に続々とクラスメイトたちが集まる。
5人全員揃ったとき、七瀬が口を開いた。
「ちょっといいかしら。昨日は白銀さんがいなかったから話せなかったけど、クラスの考えを統一しておくべきだと思うの」
確かに昨日は話そうとしたときに白銀がいないことに気づき、そのまま流れてしまった。
全員揃った今、意志を統一しておきたいらしい。
「別にそれなりに頑張りゃいいんじゃねえか?一位のクラスになれなくても特別ゲームってやつで金は貰えるみたいだしよ。適当でいいよ適当で」
昨日は動揺して喚いていた星だが、今日は少し落ち着いている。
しかし、無理だと諦めたのか適当でいいと口にする。
「投げやりはよくないわよ星くん。まだチャンスがないと決まったわけじゃない。努力する価値は十分あるわ」
星を頑張らせる方向に話を持っていこうとする七瀬。
「各々頑張りゃいいんじゃねえか?美麗が努力することを止めるつもりはねえけど、俺は本気でやるつもりはねえから」
「その美麗って呼ぶのやめてってずっと言ってるでしょ」
七瀬は下の名前でフレンドリーに呼ばれるのが嫌みたいで、この一カ月ずっとやめろと言っている。
「いいじゃねえか。減るもんじゃねえし」
「すり減るのよ。私の心が」
七瀬にとって下の名前呼びはかなりのストレスみたいだな。
「とにかく、まだ希望はあるんだから努力するべきよ。他の人たちはどう思ってるのかしら?」
七瀬が他のクラスメイトの意志も聞く。
天羽は、
「僕は今までと変わらないよ。努力を続けるつもりだ」
白銀は、
「私も諦めないよ」
オレは、
「努力する必要はあるだろうな」
星以外の4人は努力する方針でいくようだ。
「でもよ、頑張るっつっても何を頑張るんだよ。頑張れることなんてねえだろ?」
賞金が貰える特別ゲームとかいうのが始まってもいない今、頑張れることはないと言う星。
「いいえ、あるわ。四葉先生は、テストの順位に応じてお金が貰えると言っていたわ。つまり、学力を上げればクラスの所持金が増えるのよ」
そう。今、現段階でできること。
それは勉強だ。
「テストの点数を上げれば貰えるお金が増えるのよ」
「さっき言っただろ?本気でやるつもりはないってよ。勉強するなんて死んでも嫌だぜ」
この一カ月星を見ていたが、授業中もオレと同じで真面目に授業を聞いている様子はなかった。
考えるまでもなく、勉強が嫌いなんだろう。
「俺はやらねえから」
星は自分の席へと戻り、机にうつ伏せになって寝てしまった。
クラスの意志を一つにするのは難しそうだ。
「みんな~、席に着いて。ホームルームを始めるよ~」
話がひと段落したところで四葉が元気よく教室に入ってくる。
「昨日に引き続き今日も皆さんに重要事項を伝えるよ」
そう言って四葉は黒板に一枚の大きな紙を貼り出す。
そこにはFクラス五人の名前とテストの科目ごとの点数と順位が書いてあった。
「これは、4月中旬ごろに行った中学校で習ったことの復習小テストの点数と学年での順位です」
オレの点数は各科目平均点ぐらいで、順位も真ん中の少し上ぐらい。
「この社会は勉強が全てではありません。しかし、勉強が大切なのもまた事実。人間の価値を評価するとき、多くの場合は勉強の良し悪しで判断されます。人間は死ぬまで様々なことを学び成長します」
人間は常に学習し進化している。
それは人間の本質であり成長を続けているという証でもある。
「だから、この希望ヶ丘学園では勉学を怠ったものは退学してもらいます。今回の小テストで言うと、学年で順位が最下位の生徒には退学してもらいます」
「はあ⁉︎」
大きな声を上げて驚いたのは星だった。
星の小テストの順位は総合点で104位。
一年生の人数が105人だから、ビリから2番目ということだ。
「今回の小テストで退学したのはEクラスの男子生徒だったよ。この小テストは毎月一回実施します。つまり、毎月一人ずつ退学して消えていきます」
三年間で36か月。つまり勉強ができないことが原因で36人退学する。
この学校は様々な評価方法で生徒たちをふるいにかけ、選別していくらしい。
振るい落された人間には容赦なく退学が突きつけられる。
「順位に応じてのお金も、順位が半分より上はお金を与えられ、半分より下はお金を徴収されます。半分より上は上がれば上がるほどもらえるお金が多くなり、半分より下は下がれば下がるほど徴収されるお金が多くなります」
学力が高い生徒には金を与えとことん上に。
学力が低い生徒からは金を奪いとことん下に。
上の人間と下の人間を分けて差を広げていくシステム。
「もちろん今月の5月でも小テストを行います。退学者候補筆頭の星くん。短い間だったけどありがとう、にならないように頑張ってね~」
「くそっ!」
苛立ちを露わに机を叩く星。
この学園は、金に執着がある人間を集め、金をチラつかせて争わせ、優れた人間を育成する場所のように感じる。
まるで蠱毒。
学園という壺の中に、金の亡者の毒虫のような人間を集め、殺し合わせ最高傑作の人間を作り出す。
生き残れば先があり、死ねばただそこまでの人間だったということ。
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