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入学試験
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四葉に連れられ生徒指導室に入る。
「あれ?何で九条くんが…………?」
生徒指導室に入ると天羽がいた。
「先生が呼んだんだよ~」
「僕は四葉先生に話があるんです。九条くんに用はありません」
表情が怒り気味の天羽。
声の調子こそいつも通りだが、言葉の選び方が荒々しい。
「僕は先生に用があるんだ、九条くん。帰ってくれるかい」
「それじゃあオレは退散するとします」
オレはどうやら邪魔者みたいなのでさっさと消えることにしよう。
変なこと、面倒ごとに巻き込まれるのは御免だ。
「待って九条くん。きみには私が用があるんだよ」
生徒会室に戻ろうとしたオレの腕を四葉が掴む。
「天羽くん。きみの話は私と九条くんで聞くよ」
「先生。オレ、何も聞いてないんですけど?」
「いいから黙って私の言うことを聞きなさい。逆らったら退学にするよ~?」
退学をちらつかされたら言うことを聞くしかない。
職権乱用というやつだ。
「四葉先生、意味が分かりません。どうして僕の話を九条くんが聞く必要があるんです?」
「九条くんが天羽くんの話の答えを持っているかもしれないからだよ~」
どういうことかさっぱりわからない。
状況を判断する情報が少なすぎる。
「天羽くんの話を九条くんも聞く。これは決定事項です。気に入らないなら私は天羽くんの話を聞きません。それでもいいなら、そのまま駄々をこねてなさい」
「………わかりました」
天羽は渋々納得したようで、オレも同席することになる。
四葉がソファに座り、その向かいのソファにオレと天羽が座る。
「天羽くんの話は大体察しがついています。どうして僕が落ちこぼれのFクラスに配属なんですか、といったところでしょう?」
「そうです。入学試験で僕は優秀は結果を出していたはずです」
「自己評価が高いんだね~」
「客観的に見て妥当な評価です」
優秀な自分が落ちこぼれのクラスに配属される。
そのことが不満で四葉に直談判しにきたということらしい。
「きみが来ることは分かってたからね~。一応準備しておいたよ」
そう言うと四葉はテーブルに複数枚の紙を広げる。
「これを見てわかる通り、確かに天羽くん、きみの筆記試験の点数は見事だね~。全教科平均87点。合計点も学年6位の点数だよ。高得点と言って差し支えない点数だよ~」
「ありがとうございます。ではなぜFクラスなんですか?」
「逆に聞きたいんだけど、何で学力が高いと優秀だと思ってるの?」
「………………え?」
質問の意味が理解できず唖然と口を開ける天羽。
「学力なんて社会に出たら何の価値もない場合も多々あるよ。それなのに、何で学力が高いと優秀だと思ってるのかな?」
当たり前すぎることを言われ、何と答えていいかわからない天羽。
だが、何とか言葉を絞り出す。
「………そんなの決まってるじゃないですか。学校は勉強するところなんですから、学力で優劣がつくのは当たり前。常識です」
「この希望ヶ丘学園に常識が通用すると本気で思ってるの~?」
「そ、それは………………」
確かにこの学校は色々と普通じゃない点が多い。
学生の評価方法も普通とは違うということだろう。
「入学試験は筆記試験だけじゃなかったでしょ?面接もあったし作文もあった。その人間を構成するあらゆる要素を評価して算定しています。よって天羽くんがFクラスに配属されたのは妥当な評価です」
四葉はそう締めくくり、反論を受け付けなかった。
「僕はFクラスに配属された落ちこぼれで合ってると?」
「そう聞こえなかったかな?」
「………………なぜ九条くんを呼んだんですか?」
今まで黙って聞いていたが、オレも気になる内容が来た。
オレがここにいる理由。
「天羽くんに見てほしいものがあります」
また複数枚の紙を取り出しテーブルに並べる四葉。
その紙にはオレも見覚えがあった。
「これは九条くんの入学試験の時の筆記試験の解答用紙と作文を書いた原稿用紙です」
それはオレが入学試験の時に書いたものだった。
「これは………………」
それを見て天羽が茫然としている。
「見ての通り全教科白紙の0点です。しかも作文も白紙」
四葉と天羽がオレの方を見る。
「九条くん。これはどういうことかな?」
四葉がオレに訊ねる。
「どういうことと聞かれましても、見ての通りですが」
「答えが分からなかったということかな?」
「そういうことです」
天羽が解答用紙とオレの顔を交互に見ている。
「百歩譲って筆記試験はそれでいいよ。でも作文が白紙なのはどういうことかな?」
「作文の題材が少し変わってましたからね。学校側が設定した作文の題材を予想し、その予想した題材に関する作文を書きあげなさい、でしたか」
普通なら作文の題材は、『将来の夢』『この学校で頑張りたいこと』など最初から設定されているものだが、その題材すらも推理させるという仕様だった。
「その学校側が設定した題材とは何だったんですか?」
作文の題材の答えを聞いてみる。
「それは規則で教えられないことになってるよ~」
答えを教えてもらえないんじゃ、答え合わせができない。
「それに九条くんには答えなんて関係ないでしょ?だって白紙だったんだから、どんな答えだったとしても不正解だよ」
「まぁ、そうですね」
「しかも白紙なのは作文を記入する表面だけで、裏面の隅の方には、『意味のないことをするつもりはない』って小さく書いてあったよ?あれは九条くんが書いたんだよね?」
そういえばそんなことを自分で書いたな。
「意味のないことってどういう意味かな?作文を書くことが意味はないと?」
「どう解釈してもらっても構いません」
この場でオレの真意を話すつもりはない。
「天羽くん、おかしいと思わない?私はおかしいとしか思えないんだけど」
「僕もおかしいと思います。入学する意志がないとしか思えません」
筆記試験も作文も白紙。
そう思われても仕方ないが。
「入学する意志はありますよ。そうじゃなきゃ、この学校に申し込み、入学試験を受けていません」
オレの言っていることは明らかに矛盾しているのがオレにもわかっている。
「九条くん。きみは一体何を考えているんだい?」
天羽がオレをまじまじと見つめながら訊ねてくる。
「さぁな。オレが何を想い、どう行動するのか、オレ自身知りたいところではある」
そこにはしっかりと一本芯の通ったオレの考えがある。
オレはオレのこの矛盾した行動の理由を知っているが、天羽と四葉には当然わからない。
二人の目には、オレという存在は意味不明、摩訶不思議な存在に映っていることだろう。
「………………で、結局四葉先生は九条くんを通して、僕に何を言いたかったんですか?」
天羽が四葉に答えを求める。
「今はまだわからないよ。でもね、現段階で一つ言えることは、勉強だけが全てじゃない、ってことぐらいかな~。たぶんね」
なんとも曖昧な答え。
「なんですか、それ……………」
「天羽くん。まだまだ人生は長いんだから、急いで答えを見つけなくても大丈夫だよ。死ぬまでに一歩でも前に進んでいたら、それでいいんだよ」
結局、四葉が何を言いたかったのかオレにもわからなかった。
相変わらず、訳の分からないことをする女だ。
「とりあえず、天羽くんがFクラスに配属されたのはミスではないよ。納得はできないだろうけど、理解はするように」
オレと天羽と四葉は生徒指導室を出た。
天羽はそのまま学生寮に帰り、四葉は職員室へと戻っていった。
オレは白銀と生徒会長のチェスの様子が気になったので、生徒会室へと向かった。
「あれ?何で九条くんが…………?」
生徒指導室に入ると天羽がいた。
「先生が呼んだんだよ~」
「僕は四葉先生に話があるんです。九条くんに用はありません」
表情が怒り気味の天羽。
声の調子こそいつも通りだが、言葉の選び方が荒々しい。
「僕は先生に用があるんだ、九条くん。帰ってくれるかい」
「それじゃあオレは退散するとします」
オレはどうやら邪魔者みたいなのでさっさと消えることにしよう。
変なこと、面倒ごとに巻き込まれるのは御免だ。
「待って九条くん。きみには私が用があるんだよ」
生徒会室に戻ろうとしたオレの腕を四葉が掴む。
「天羽くん。きみの話は私と九条くんで聞くよ」
「先生。オレ、何も聞いてないんですけど?」
「いいから黙って私の言うことを聞きなさい。逆らったら退学にするよ~?」
退学をちらつかされたら言うことを聞くしかない。
職権乱用というやつだ。
「四葉先生、意味が分かりません。どうして僕の話を九条くんが聞く必要があるんです?」
「九条くんが天羽くんの話の答えを持っているかもしれないからだよ~」
どういうことかさっぱりわからない。
状況を判断する情報が少なすぎる。
「天羽くんの話を九条くんも聞く。これは決定事項です。気に入らないなら私は天羽くんの話を聞きません。それでもいいなら、そのまま駄々をこねてなさい」
「………わかりました」
天羽は渋々納得したようで、オレも同席することになる。
四葉がソファに座り、その向かいのソファにオレと天羽が座る。
「天羽くんの話は大体察しがついています。どうして僕が落ちこぼれのFクラスに配属なんですか、といったところでしょう?」
「そうです。入学試験で僕は優秀は結果を出していたはずです」
「自己評価が高いんだね~」
「客観的に見て妥当な評価です」
優秀な自分が落ちこぼれのクラスに配属される。
そのことが不満で四葉に直談判しにきたということらしい。
「きみが来ることは分かってたからね~。一応準備しておいたよ」
そう言うと四葉はテーブルに複数枚の紙を広げる。
「これを見てわかる通り、確かに天羽くん、きみの筆記試験の点数は見事だね~。全教科平均87点。合計点も学年6位の点数だよ。高得点と言って差し支えない点数だよ~」
「ありがとうございます。ではなぜFクラスなんですか?」
「逆に聞きたいんだけど、何で学力が高いと優秀だと思ってるの?」
「………………え?」
質問の意味が理解できず唖然と口を開ける天羽。
「学力なんて社会に出たら何の価値もない場合も多々あるよ。それなのに、何で学力が高いと優秀だと思ってるのかな?」
当たり前すぎることを言われ、何と答えていいかわからない天羽。
だが、何とか言葉を絞り出す。
「………そんなの決まってるじゃないですか。学校は勉強するところなんですから、学力で優劣がつくのは当たり前。常識です」
「この希望ヶ丘学園に常識が通用すると本気で思ってるの~?」
「そ、それは………………」
確かにこの学校は色々と普通じゃない点が多い。
学生の評価方法も普通とは違うということだろう。
「入学試験は筆記試験だけじゃなかったでしょ?面接もあったし作文もあった。その人間を構成するあらゆる要素を評価して算定しています。よって天羽くんがFクラスに配属されたのは妥当な評価です」
四葉はそう締めくくり、反論を受け付けなかった。
「僕はFクラスに配属された落ちこぼれで合ってると?」
「そう聞こえなかったかな?」
「………………なぜ九条くんを呼んだんですか?」
今まで黙って聞いていたが、オレも気になる内容が来た。
オレがここにいる理由。
「天羽くんに見てほしいものがあります」
また複数枚の紙を取り出しテーブルに並べる四葉。
その紙にはオレも見覚えがあった。
「これは九条くんの入学試験の時の筆記試験の解答用紙と作文を書いた原稿用紙です」
それはオレが入学試験の時に書いたものだった。
「これは………………」
それを見て天羽が茫然としている。
「見ての通り全教科白紙の0点です。しかも作文も白紙」
四葉と天羽がオレの方を見る。
「九条くん。これはどういうことかな?」
四葉がオレに訊ねる。
「どういうことと聞かれましても、見ての通りですが」
「答えが分からなかったということかな?」
「そういうことです」
天羽が解答用紙とオレの顔を交互に見ている。
「百歩譲って筆記試験はそれでいいよ。でも作文が白紙なのはどういうことかな?」
「作文の題材が少し変わってましたからね。学校側が設定した作文の題材を予想し、その予想した題材に関する作文を書きあげなさい、でしたか」
普通なら作文の題材は、『将来の夢』『この学校で頑張りたいこと』など最初から設定されているものだが、その題材すらも推理させるという仕様だった。
「その学校側が設定した題材とは何だったんですか?」
作文の題材の答えを聞いてみる。
「それは規則で教えられないことになってるよ~」
答えを教えてもらえないんじゃ、答え合わせができない。
「それに九条くんには答えなんて関係ないでしょ?だって白紙だったんだから、どんな答えだったとしても不正解だよ」
「まぁ、そうですね」
「しかも白紙なのは作文を記入する表面だけで、裏面の隅の方には、『意味のないことをするつもりはない』って小さく書いてあったよ?あれは九条くんが書いたんだよね?」
そういえばそんなことを自分で書いたな。
「意味のないことってどういう意味かな?作文を書くことが意味はないと?」
「どう解釈してもらっても構いません」
この場でオレの真意を話すつもりはない。
「天羽くん、おかしいと思わない?私はおかしいとしか思えないんだけど」
「僕もおかしいと思います。入学する意志がないとしか思えません」
筆記試験も作文も白紙。
そう思われても仕方ないが。
「入学する意志はありますよ。そうじゃなきゃ、この学校に申し込み、入学試験を受けていません」
オレの言っていることは明らかに矛盾しているのがオレにもわかっている。
「九条くん。きみは一体何を考えているんだい?」
天羽がオレをまじまじと見つめながら訊ねてくる。
「さぁな。オレが何を想い、どう行動するのか、オレ自身知りたいところではある」
そこにはしっかりと一本芯の通ったオレの考えがある。
オレはオレのこの矛盾した行動の理由を知っているが、天羽と四葉には当然わからない。
二人の目には、オレという存在は意味不明、摩訶不思議な存在に映っていることだろう。
「………………で、結局四葉先生は九条くんを通して、僕に何を言いたかったんですか?」
天羽が四葉に答えを求める。
「今はまだわからないよ。でもね、現段階で一つ言えることは、勉強だけが全てじゃない、ってことぐらいかな~。たぶんね」
なんとも曖昧な答え。
「なんですか、それ……………」
「天羽くん。まだまだ人生は長いんだから、急いで答えを見つけなくても大丈夫だよ。死ぬまでに一歩でも前に進んでいたら、それでいいんだよ」
結局、四葉が何を言いたかったのかオレにもわからなかった。
相変わらず、訳の分からないことをする女だ。
「とりあえず、天羽くんがFクラスに配属されたのはミスではないよ。納得はできないだろうけど、理解はするように」
オレと天羽と四葉は生徒指導室を出た。
天羽はそのまま学生寮に帰り、四葉は職員室へと戻っていった。
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