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食堂での迫害
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午前中の授業が終わり、昼休みになった。
クラスメイトたちが昼食をとり始める。
事前に昼食を買っていた者や、食堂に向かう者などさまざまだ。
オレは自分の席に座ったままじっとしていた。
昼食を買っていないので普通なら食堂一択だが、1人で行くのはなんだか空しい。
誰か誘ってくれないだろうか、と淡い期待を抱き、声がかかるのを待ち続ける。
しかし、しばらくしても誰も誘いに来てくれる様子はない。
諦めて1人で食堂に向かおうとする。
「何してるの?」
席に座ったまま動こうとしないオレに白銀が声をかけてくる。
「別に何もしてないけど」
「そう?私には、お昼を誰かと一緒に食べたいけど誘う勇気がないから誘ってくれるのを待ってるように見えるけど?」
「わかってるなら聞くな」
白銀はオレの心中を察してからかっているみたいだ。
「その顔、誰かに誘って欲しいのが見え見えだよ。1人で食べるのがそんなに嫌なの?」
「嫌なわけじゃない。ただ、誰かと食事をすることに興味があるだけだ」
「強がりだね。だったら自分から話しかけないと、友達なんてできないよ?」
「それが出来ないから苦労してるんだろ」
自分から話しかける勇気があれば、最初から誘いに来てくれるのを待つなんて回りくどい真似はしていない。
こいつ、分かってて言ってるな。
「よかったら私が一緒に行ってあげようか?」
「………いいのか?」
「九条くんとお話してみたかったしね。九条くんさえよければ私は全然構わないよ」
「オレも一人は空しかったから助かる」
「それじゃあ食堂に行こっか」
白銀がそう言い、オレと白銀は食堂へと向かった。
食堂に到着。
日替わり定食を注文し、空いている席へと座る。
白銀も日替わり定食にし、オレの向かいの席に座る。
「さっさと食べちゃおっか」
昼食をとり始める。
食材を口へと運ぶ。
オレは驚きのあまり、目を見開いた。
「……味がする」
学校に入学して初めての食事。
食事をして味がすると感じたのは初めてだった。
昔あの場所で食べた時とは、状況がまるで違う。
自由な中での食事。
状況や精神状態の違いで、ここまで感じ方が違うものなのか。
オレはこれまで、食事とはただの栄養補給、喉に流し込み腹が満たされればいいと思っていた。
味なんてどうでもいいと、そう思っていた。
「……食べると味がするんだな」
「ん?変なこと言うね、九条くん。味がするのは当たり前だよ?」
「そうか……これが当たり前、か」
その言葉にどれだけ憧れを抱いただろうか。
オレは今、世間の当たり前を体験している。
「それより、この日替わり定食美味しいね。味付けが私好みだよ。九条くんもそう思わない?」
「…………そうかもしれないな」
美味しいというのが何なのかわからない。
食事をすると味がするのはついさっきわかったが、美味しいか美味しくないかはわからない。
オレが思うに、それは個人の好みの問題。
好きなものも嫌いなものもないオレにはわからないことだった。
「どうしたの?なんか悲しそうな顔してるけど……?」
「……いや、なんでもない」
表情を真顔に戻して、食事を再開する。
やがて、二人とも食事を終えたところで白銀が口を開いた。
「そういえば、九条くんはどうしてこの学校に来たの?」
「この学校は卒業したら、卒業した全員に1人1億円ずつ報酬がもらえるだろ。オレはその報酬目当てだ」
この学校を選ぶ一番のメリットはそこだ。
この学校は国が運営しており、卒業すると1億円貰える。
大半の生徒がこの特典を目当てに入学してくる。
普通の学校には、特別ゲームや首輪、1億円の報酬なんてものは存在しない。
ここはかなり変わった場所だと言えるだろう。
「白銀は?」
その流れでオレも白銀に訊ねる。
「私も九条くんと同じで1億円の賞金目当てだよ」
「そうか。二人ともお金目当てだな」
オレはそう締めくくっておいた。
「それにしてもすごいよね。卒業したら1億円貰えるなんてさ。その後の人生、絶対イージーモードだよ」
白銀がそう口にするのも無理はない。
1億あったら色んなことが出来る。
その後の人生、働かなくていいかもしれない。
「でもさ、卒業するだけで1億貰えるなんて、こんな簡単に手に入れていいのか逆に不安になっちゃうよ」
「そうだな。その点はそうかもしれないな」
卒業するだけで1億もらえる学校。
いくらなんでも簡単すぎる。
もしかしたらオレたちはまだ何か見落としているのかもしれない。
まあ、オレにとってはどうでもいいことだが。
「おい、そこの1年ども」
2人で会話しているところに突然声をかけてきたのは、2人の男子生徒だった。
見たところ上級生だ。
「何でしょうか?」
白銀が答える。
「そこは俺たちの席だ。さっさとどけ」
「…………他にもたくさん席が空いてます。そっちに座ればいいんじゃないでしょうか?」
白銀がやんわりと断る。
しかし、男子生徒は引き下がらない。
「うるせえよ。お前らどうせFクラスだろ」
「そうですけど、それがどうかしたんですか?」
それを聞いた男子生徒2人はお互い顔を見合わせた後、笑いだした。
「やっぱりか。お前ら何も知らないんだな。Fクラスの底辺どもには人権がないっていう暗黙のルールをよ」
そんな理不尽なルールを当たり前のように口にする。
そんなルールを受け入れられるはずもなく。
「なんですかそれ。そんなルール聞いてないですよ」
「暗黙なんだから当然だろ。そんなこともわからないのかよ。いいからさっさと失せろ」
「分かりました。オレたちの席を譲ります」
「く、九条くん⁉︎」
オレが席を譲ると言ったことに驚く白銀。
「オレたちが席を譲れば済む話だ」
オレは席から立ち上がりその場から立ち去ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
白銀も慌ててそれに続く。
オレと白銀は食堂を後にした。
クラスメイトたちが昼食をとり始める。
事前に昼食を買っていた者や、食堂に向かう者などさまざまだ。
オレは自分の席に座ったままじっとしていた。
昼食を買っていないので普通なら食堂一択だが、1人で行くのはなんだか空しい。
誰か誘ってくれないだろうか、と淡い期待を抱き、声がかかるのを待ち続ける。
しかし、しばらくしても誰も誘いに来てくれる様子はない。
諦めて1人で食堂に向かおうとする。
「何してるの?」
席に座ったまま動こうとしないオレに白銀が声をかけてくる。
「別に何もしてないけど」
「そう?私には、お昼を誰かと一緒に食べたいけど誘う勇気がないから誘ってくれるのを待ってるように見えるけど?」
「わかってるなら聞くな」
白銀はオレの心中を察してからかっているみたいだ。
「その顔、誰かに誘って欲しいのが見え見えだよ。1人で食べるのがそんなに嫌なの?」
「嫌なわけじゃない。ただ、誰かと食事をすることに興味があるだけだ」
「強がりだね。だったら自分から話しかけないと、友達なんてできないよ?」
「それが出来ないから苦労してるんだろ」
自分から話しかける勇気があれば、最初から誘いに来てくれるのを待つなんて回りくどい真似はしていない。
こいつ、分かってて言ってるな。
「よかったら私が一緒に行ってあげようか?」
「………いいのか?」
「九条くんとお話してみたかったしね。九条くんさえよければ私は全然構わないよ」
「オレも一人は空しかったから助かる」
「それじゃあ食堂に行こっか」
白銀がそう言い、オレと白銀は食堂へと向かった。
食堂に到着。
日替わり定食を注文し、空いている席へと座る。
白銀も日替わり定食にし、オレの向かいの席に座る。
「さっさと食べちゃおっか」
昼食をとり始める。
食材を口へと運ぶ。
オレは驚きのあまり、目を見開いた。
「……味がする」
学校に入学して初めての食事。
食事をして味がすると感じたのは初めてだった。
昔あの場所で食べた時とは、状況がまるで違う。
自由な中での食事。
状況や精神状態の違いで、ここまで感じ方が違うものなのか。
オレはこれまで、食事とはただの栄養補給、喉に流し込み腹が満たされればいいと思っていた。
味なんてどうでもいいと、そう思っていた。
「……食べると味がするんだな」
「ん?変なこと言うね、九条くん。味がするのは当たり前だよ?」
「そうか……これが当たり前、か」
その言葉にどれだけ憧れを抱いただろうか。
オレは今、世間の当たり前を体験している。
「それより、この日替わり定食美味しいね。味付けが私好みだよ。九条くんもそう思わない?」
「…………そうかもしれないな」
美味しいというのが何なのかわからない。
食事をすると味がするのはついさっきわかったが、美味しいか美味しくないかはわからない。
オレが思うに、それは個人の好みの問題。
好きなものも嫌いなものもないオレにはわからないことだった。
「どうしたの?なんか悲しそうな顔してるけど……?」
「……いや、なんでもない」
表情を真顔に戻して、食事を再開する。
やがて、二人とも食事を終えたところで白銀が口を開いた。
「そういえば、九条くんはどうしてこの学校に来たの?」
「この学校は卒業したら、卒業した全員に1人1億円ずつ報酬がもらえるだろ。オレはその報酬目当てだ」
この学校を選ぶ一番のメリットはそこだ。
この学校は国が運営しており、卒業すると1億円貰える。
大半の生徒がこの特典を目当てに入学してくる。
普通の学校には、特別ゲームや首輪、1億円の報酬なんてものは存在しない。
ここはかなり変わった場所だと言えるだろう。
「白銀は?」
その流れでオレも白銀に訊ねる。
「私も九条くんと同じで1億円の賞金目当てだよ」
「そうか。二人ともお金目当てだな」
オレはそう締めくくっておいた。
「それにしてもすごいよね。卒業したら1億円貰えるなんてさ。その後の人生、絶対イージーモードだよ」
白銀がそう口にするのも無理はない。
1億あったら色んなことが出来る。
その後の人生、働かなくていいかもしれない。
「でもさ、卒業するだけで1億貰えるなんて、こんな簡単に手に入れていいのか逆に不安になっちゃうよ」
「そうだな。その点はそうかもしれないな」
卒業するだけで1億もらえる学校。
いくらなんでも簡単すぎる。
もしかしたらオレたちはまだ何か見落としているのかもしれない。
まあ、オレにとってはどうでもいいことだが。
「おい、そこの1年ども」
2人で会話しているところに突然声をかけてきたのは、2人の男子生徒だった。
見たところ上級生だ。
「何でしょうか?」
白銀が答える。
「そこは俺たちの席だ。さっさとどけ」
「…………他にもたくさん席が空いてます。そっちに座ればいいんじゃないでしょうか?」
白銀がやんわりと断る。
しかし、男子生徒は引き下がらない。
「うるせえよ。お前らどうせFクラスだろ」
「そうですけど、それがどうかしたんですか?」
それを聞いた男子生徒2人はお互い顔を見合わせた後、笑いだした。
「やっぱりか。お前ら何も知らないんだな。Fクラスの底辺どもには人権がないっていう暗黙のルールをよ」
そんな理不尽なルールを当たり前のように口にする。
そんなルールを受け入れられるはずもなく。
「なんですかそれ。そんなルール聞いてないですよ」
「暗黙なんだから当然だろ。そんなこともわからないのかよ。いいからさっさと失せろ」
「分かりました。オレたちの席を譲ります」
「く、九条くん⁉︎」
オレが席を譲ると言ったことに驚く白銀。
「オレたちが席を譲れば済む話だ」
オレは席から立ち上がりその場から立ち去ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
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