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友達作りは戦争だ
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オレは自分のクラスである1年Fクラスの教室にやってきた。
すでに各々座席が決まっているようで、机には名前が書かれた紙が貼ってある。
しかし、それよりオレには気になることがあった。
それは、この教室の中に机と椅子のセットが5つしかないこと。
5人分の席しか確保されていなかった。
座席は2列あり、前の列に2つ、後ろの列に3つの座席がある。
とりあえずオレは自分の座席に座る。後ろの列の窓側。
教師から一番遠く、外の景色も眺められる席。
これは当たりと言っていいんじゃないだろうか。
鞄を下ろし座席に腰掛ける。
「先生は職員室に行って書類関係をとってくるから、君たちはゆっくり友達作りでもして待っててね~」
オレたちFクラスの担任の先生である四葉は、そう言って教室から出ていった。
教室に取り残される。
ーーーついにこの時が来た。
オレは今、戦場にいる。
世はまさに友達作り戦争の真っただ中。
辺りは敵兵に囲まれ、友軍も無し。孤立無援。
敵陣の真ん中に孤独に独りぼっち。
さて、どの敵兵から攻め込もうか。
まずは情報収集。クラスメイトとなった人たちの顔を覚えていく。
と言ってもオレ以外は4人しかいない。
全員名札を付けているので名前はわかる。
見るからに陽キャで好青年そうな男子、星宗介。
明るく元気そうな女子、白銀織姫。
眼鏡をかけたガリ勉風男子、天羽仁。
クールで難しそうな女子、七瀬美麗。
見た目だけでも様々、千差万別。
実際に話したことはないので見た目からのイメージでしかないが、様々な生徒が入学している。
四葉の言っていた通り白銀と同じクラスだった。
なんとなく4人を観察していたオレと目が合う。
「………ん?どうかしたの?さっきからこっちをジロジロ見て………………ん?」
白銀もこちらに気づいたようで驚きを露わにこちらを二度見する。
「あれっ?もしかして今朝の九条くん?」
「まさか同じクラス、それも隣の席だなんてな。面白い偶然だ」
「ほんとだ。偶然だねっ」
嬉しそうに笑顔を浮かべる白銀。
「今朝のことだけど、改めてちゃんとお礼を言わせて。ありがとう」
「気まぐれで助けただけだ。別に礼はいらない」
「それでもだよ。私は九条くんに感謝してる」
「そうか。じゃあ、ありがたく礼は受け取っておく」
「これからよろしくねっ」
「あぁ」
仲良くなるためにはここから会話を膨らませていけばいいんだろうが、オレにそんな会話術やコミュニケーション能力はない。
会話は終了してしまった。
オレは人間関係、つまり友達はそれなりにいればいいと思っている。
関係の浅い自称友達が多くいても邪魔なだけ。
適切な距離感を保つことが大切だろう。
次はオレの一つ前の席に座っている眼鏡をかけたガリ勉風男子、天羽仁に声をかけてみることにした。
勇気をふり絞り男子生徒の背中をトントンと叩くため手を伸ばす。
しかしオレはふと我に返る。
話しかけるのはいいが、なんて言って話しかければいいんだ?
やはりお互い学生なんだし、まずは勉強関係の話題を言えばいいのか?
それとも占いみたいな若い子が好きそうな話題を振ってみるか?
シャープペンの芯恵んでくんね?とかでもいいんだろうか。
逆に、お前『死』についてどう思う?とか。
話題が見つからない。というかわからない。
当然この男子生徒と面識はない。
今まで自分から人間関係を構築しようとしてこなかったツケが、今になって問題となる。
しかし悔やんでいても仕方がない。
一応前日、不慣れなりにシミュレートはやってみた。
明るく教室に入ってきて、積極的に話しかけてみよう、とか。
メールアドレスを紙に書いてこっそり渡してそこから仲良くなろう、とか。
いろんな状況を想定してみたが、わかったことは一つだけ。
それは、自分から話しかけなければ絶対に友達にはなれないということ。
ええい、悩んでいても仕方がない。こうなったら当たって砕けろだ。
オレは前の席の男子生徒の肩をトントンと叩く。
「よっ。オレは九条零翔。これからよろしくなっ」
明るい陽キャ風を装い接触してみる。
こういうキャラでいけば親しみやすいだろうし、そのまま仲良くなって懐柔しようという作戦だ。
「…………よろしく」
こちらのテンションに気圧されてしまっていた。
眼鏡くんの苦笑いがオレの心臓を凍り付かせる。
……………凄まじい精神的ダメージだ。
陽キャ風のテンション高めでいったのは失敗だったようだ。
前の席の眼鏡くんはこちらを警戒して前を向いてしまった。
難しい。なんて難しいんだ、友達作りは……………。
学生生活を満喫するために必要不可欠な友達作りができるかどうか、今日からの数日に全てがかかっている。これに失敗したら、悲惨な3年間が待っていると言えるだろう。
独りぼっちで机とにらめっこして3年間を過ごすのは避けたいところではある。
こうなったらもっと深い敵地に乗り込むしかない。機が熟すのを待つという選択肢もあるが、気付いた時には敵に囲まれているという可能性だって大いにある。
しかし、さっきのオタク眼鏡くんの苦笑いがオレに二の足を踏ませていた。
懐に飛び込んでもさっきみたいに返り討ちにあう可能性は高い。
そうなれば更なる精神的ダメージを負うことになる。
二度と友達なんて作らなくていい。というぼっち症状の末期に行きつく危険性もある。
友達を作りたいが、傷つきたくもない。
そもそも友達ってなんだ?どこからが友達なんだ?一緒に登下校するようになったらか?それとも昼飯を一緒に食べるようになったらか?
友達の定義ってなんだろう?
……………あぁもう。友達作るのって面倒だな。
もう考えるのも面倒くさい。
とりあえず友達を作るか作らないかの結論だけ出そう。
まずは現状を分析。
友達は欲しいが傷つきたくはない。
自分から積極的に友達作りをすると傷つく恐れがある。
相手から話しかけてくる場合は、用事がある、または仲良くなりたい意思表示の可能性が高い。
自分から話しかける場合、相手はオレと仲良くなりたいかはわからないが、相手から話しかけてくる場合、オレと仲良くなりたい可能性が高い。
結論ーーー相手から話しかけてくれるのを待っていればいい。
我ながらナイスな結論が出た。
これなら傷つくことなく友達が作れる。
……………駄目だこりゃ。
オレは友達作りの負のスパイラルの泥沼に沈み込んでいた。
あかん、諦めよう。
オレは友達作りを諦めた。
すでに各々座席が決まっているようで、机には名前が書かれた紙が貼ってある。
しかし、それよりオレには気になることがあった。
それは、この教室の中に机と椅子のセットが5つしかないこと。
5人分の席しか確保されていなかった。
座席は2列あり、前の列に2つ、後ろの列に3つの座席がある。
とりあえずオレは自分の座席に座る。後ろの列の窓側。
教師から一番遠く、外の景色も眺められる席。
これは当たりと言っていいんじゃないだろうか。
鞄を下ろし座席に腰掛ける。
「先生は職員室に行って書類関係をとってくるから、君たちはゆっくり友達作りでもして待っててね~」
オレたちFクラスの担任の先生である四葉は、そう言って教室から出ていった。
教室に取り残される。
ーーーついにこの時が来た。
オレは今、戦場にいる。
世はまさに友達作り戦争の真っただ中。
辺りは敵兵に囲まれ、友軍も無し。孤立無援。
敵陣の真ん中に孤独に独りぼっち。
さて、どの敵兵から攻め込もうか。
まずは情報収集。クラスメイトとなった人たちの顔を覚えていく。
と言ってもオレ以外は4人しかいない。
全員名札を付けているので名前はわかる。
見るからに陽キャで好青年そうな男子、星宗介。
明るく元気そうな女子、白銀織姫。
眼鏡をかけたガリ勉風男子、天羽仁。
クールで難しそうな女子、七瀬美麗。
見た目だけでも様々、千差万別。
実際に話したことはないので見た目からのイメージでしかないが、様々な生徒が入学している。
四葉の言っていた通り白銀と同じクラスだった。
なんとなく4人を観察していたオレと目が合う。
「………ん?どうかしたの?さっきからこっちをジロジロ見て………………ん?」
白銀もこちらに気づいたようで驚きを露わにこちらを二度見する。
「あれっ?もしかして今朝の九条くん?」
「まさか同じクラス、それも隣の席だなんてな。面白い偶然だ」
「ほんとだ。偶然だねっ」
嬉しそうに笑顔を浮かべる白銀。
「今朝のことだけど、改めてちゃんとお礼を言わせて。ありがとう」
「気まぐれで助けただけだ。別に礼はいらない」
「それでもだよ。私は九条くんに感謝してる」
「そうか。じゃあ、ありがたく礼は受け取っておく」
「これからよろしくねっ」
「あぁ」
仲良くなるためにはここから会話を膨らませていけばいいんだろうが、オレにそんな会話術やコミュニケーション能力はない。
会話は終了してしまった。
オレは人間関係、つまり友達はそれなりにいればいいと思っている。
関係の浅い自称友達が多くいても邪魔なだけ。
適切な距離感を保つことが大切だろう。
次はオレの一つ前の席に座っている眼鏡をかけたガリ勉風男子、天羽仁に声をかけてみることにした。
勇気をふり絞り男子生徒の背中をトントンと叩くため手を伸ばす。
しかしオレはふと我に返る。
話しかけるのはいいが、なんて言って話しかければいいんだ?
やはりお互い学生なんだし、まずは勉強関係の話題を言えばいいのか?
それとも占いみたいな若い子が好きそうな話題を振ってみるか?
シャープペンの芯恵んでくんね?とかでもいいんだろうか。
逆に、お前『死』についてどう思う?とか。
話題が見つからない。というかわからない。
当然この男子生徒と面識はない。
今まで自分から人間関係を構築しようとしてこなかったツケが、今になって問題となる。
しかし悔やんでいても仕方がない。
一応前日、不慣れなりにシミュレートはやってみた。
明るく教室に入ってきて、積極的に話しかけてみよう、とか。
メールアドレスを紙に書いてこっそり渡してそこから仲良くなろう、とか。
いろんな状況を想定してみたが、わかったことは一つだけ。
それは、自分から話しかけなければ絶対に友達にはなれないということ。
ええい、悩んでいても仕方がない。こうなったら当たって砕けろだ。
オレは前の席の男子生徒の肩をトントンと叩く。
「よっ。オレは九条零翔。これからよろしくなっ」
明るい陽キャ風を装い接触してみる。
こういうキャラでいけば親しみやすいだろうし、そのまま仲良くなって懐柔しようという作戦だ。
「…………よろしく」
こちらのテンションに気圧されてしまっていた。
眼鏡くんの苦笑いがオレの心臓を凍り付かせる。
……………凄まじい精神的ダメージだ。
陽キャ風のテンション高めでいったのは失敗だったようだ。
前の席の眼鏡くんはこちらを警戒して前を向いてしまった。
難しい。なんて難しいんだ、友達作りは……………。
学生生活を満喫するために必要不可欠な友達作りができるかどうか、今日からの数日に全てがかかっている。これに失敗したら、悲惨な3年間が待っていると言えるだろう。
独りぼっちで机とにらめっこして3年間を過ごすのは避けたいところではある。
こうなったらもっと深い敵地に乗り込むしかない。機が熟すのを待つという選択肢もあるが、気付いた時には敵に囲まれているという可能性だって大いにある。
しかし、さっきのオタク眼鏡くんの苦笑いがオレに二の足を踏ませていた。
懐に飛び込んでもさっきみたいに返り討ちにあう可能性は高い。
そうなれば更なる精神的ダメージを負うことになる。
二度と友達なんて作らなくていい。というぼっち症状の末期に行きつく危険性もある。
友達を作りたいが、傷つきたくもない。
そもそも友達ってなんだ?どこからが友達なんだ?一緒に登下校するようになったらか?それとも昼飯を一緒に食べるようになったらか?
友達の定義ってなんだろう?
……………あぁもう。友達作るのって面倒だな。
もう考えるのも面倒くさい。
とりあえず友達を作るか作らないかの結論だけ出そう。
まずは現状を分析。
友達は欲しいが傷つきたくはない。
自分から積極的に友達作りをすると傷つく恐れがある。
相手から話しかけてくる場合は、用事がある、または仲良くなりたい意思表示の可能性が高い。
自分から話しかける場合、相手はオレと仲良くなりたいかはわからないが、相手から話しかけてくる場合、オレと仲良くなりたい可能性が高い。
結論ーーー相手から話しかけてくれるのを待っていればいい。
我ながらナイスな結論が出た。
これなら傷つくことなく友達が作れる。
……………駄目だこりゃ。
オレは友達作りの負のスパイラルの泥沼に沈み込んでいた。
あかん、諦めよう。
オレは友達作りを諦めた。
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