上 下
5 / 24

四葉先生との会話

しおりを挟む
「あはは、そっか。それは災難だったね~」

「災難ってほどじゃないですよ、四葉先生」

 生徒指導室に到着したオレは遅刻した事情を話すと、四葉からそんなことを言われた。
 オレの前のソファーに腰掛けている優しそうなな雰囲気の女性は、この学校で教師をしている四葉南よつばみなみである。
 不思議な雰囲気の教師で、一言で表すとゆるふわ、という感じだ。
 明るめの茶髪で毛先がくるっとウェーブがかかっている。
 この希望ヶ丘学園に入学するために色々と便宜を図ってくれた人でもある。

「それにしても久しぶりだね九条くん。半年ぶりぐらい?」

「もうそれぐらいになりますか。時が経つのは早いものですね」

 四葉と最後に会ったのは希望ヶ丘学園に入学する為に面接に来た時。それ以来一度も会っていないことになる。

「元気そうでなによりだよ~。この半年間ちゃんと勉強してた?」

「勉強は嫌いなのでしてません。面倒なことは大嫌いです」

「あはっ、そうみたいだね。その気だるそうな眼、澱んだ瞳を見てればなんとなく分かるよ。なにもかも面倒くさい、って目をしてる」

 四葉から見たオレはそんな目をしているらしい。

「でもね、そんな澱んだ瞳をしてる九条くんだけど、その瞳の中には一本の芯というか、闇みたいなものも見えるんだよ。なんて言えばいいか分からないけど、そんな気がするの」

 四葉の言っていることをいまいち理解できないオレ。
 たまに四葉は鋭いというかなんというか、感覚的なことを口にする。

「そうでしょうか。オレにはよく分かりませんが」

「別に構わないよ~。私が勝手にそう思ってるだけだからね~」

 すると四葉はソファーから身を乗り出してオレの顔をジッと見つめる。

「実は私はきみに興味があるんだよ」

「困ります。教師と生徒ですよ」

「そういう意味じゃないよ。私が言ったのはきみが知ってた部外秘の情報のことだよ」

「何のことでしょうか」

「とぼけなくてもいいよ~。きみが自分で言ったことでしょ?面接の時にきみは学校側の人間しか知らない部外秘の情報を知ってた。だから私はきみを合格にしたんだから」

 使えそうな人間だから合格にしてあげる、と言われたことを覚えている。

「何で知ってるのかは教えてくれないんだよね?」

「そうですね、企業秘密です。もしくは偶然知ってただけです」

「なんか偶然じゃないような気がするんだよね~?」

「きっと偶然と必然は紙一重なんですよ」

「もし必然だったら不正をした可能性があるってことだけど?」

 さっきの優しそうな雰囲気から一変、険しい目つきになる四葉。

「偶然です」

「……まあいっか。この際それは深く追及しない」

 四葉の目元がいつものものに戻る。

「けど、面接の時に私が言ったこと、覚えてる~?」

「もしその力が本物なら力を貸して欲しい、でしたか」

 オレもずっと気になっていたことだったのですぐに思い出す。

「偽物なので力は貸せませんが、力を貸すって具体的には何をするんですか?」

「その時がくれば説明するよ。とりあえず、新入生の集合場所の体育館に行っておいで」

「オレを呼び出した用件は済んだんですか?」

「少し面接の時のことで話がしたかっただけだからね~」

 用はもう済んでいたようだ。
 オレはソファーから立ち上がり部屋を出ようとする。

「それと言い忘れてたけど、白銀さんとは同じクラスだから仲良くするようにね~」

「…………マジですか」

 偶然とは恐ろしいものだ。
 四葉に背中を押されてオレは体育館へと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る

卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。 〔お知らせ〕 ※この作品は、毎日更新です。 ※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新 ※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。 ただいま作成中

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

討伐師〜ハンター〜

夏目 涼
ファンタジー
親の勧めで高校進学を黒主学園に決めた増田 戒斗。 しかし、学園に秘密があった。 この学園は実は討伐師になる為の育成学校という裏の顔があったのだ。何も知らずに入学した戒斗が一人前の討伐師になる為に奮闘するストーリー。 「小説家になろう」にも掲載作品です。 

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

処理中です...