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天国と地獄 ①
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サトコは、ずっとら山口先生のことが気掛かりだった。
先生は、何故、自分を呼んだのか?
自分は、彼女に対して知らないことだらけだった。
何故、自分の正体を隠していたのだろうか、隠し事だらけなのだろうかと違和感を覚えた。
彼女が、何で、自分を置いて亡くなったのかが悔しくて仕方なかった。
彼女の魂は、今頃何処で何をしているのだろうー?自分に出来たことはあったはずだと、悶々としていた。
黒須の件もあり、サトコは今日も一日中、憂鬱な気持ちで仕事をしていた。
気分転換に、近くの噴水広場まで足を運ぶことしにした。
黒須と音信不通になってから、三日が経過した。
サトコは、その三日がとてつもなく長く感じてしまっていた。
木々がそよ風になびき、サワサワと優しく音を立てた。
風が心地よいー。
虫の鳴き声が、あたりを木霊する。
せめてもの気晴らしにと、サトコは自然を堪能する事にした。
遠くの公衆トイレから、若者の悲鳴が轟いた。
咄嗟に声のする方を向くと、中学生位の少年が、鉄パイプを握り締めながら立っているのが見えた。
彼の周りには、不良グループの一団が両膝を地面に付けて、ゼエゼエ荒い息を吐いていた。
不良グループの少年は、高校生位だろうかー?
彼らは、唾を吐きながらうつ向けになりながら地面にへばりついていた。
この、中学生位の少年ひとりで、五人の男子高校生を殴り倒したと言うのだろうかー?
「畜生。覚えてろよ。」
高校生らは、少年をキツくにらみつけながら脚を引きづりこの場を去った。
鉄パイプを持った少年は、息ひとつせずに彼等の背中を冷淡な眼差しで見ていた。
少年は、華奢で小柄だ。鍛えているような感じではない。しかも、その少年の表情は、妙に大人びていた。
サトコは、少年に違和感を覚え、恐る恐る近付いて見ることにした。
ーもしかして、彼は霊に取り憑かれているのだろうかー?
少年の顔は青ざめ、口が紫がかっている。瞳孔が、上下左右斜めに不規則に揺れ動く。
これは、明らかに霊に取り憑かれているサインだ。
ふと、少年と目が合った。
サトコは、ごくりと唾を飲み込み、尋ねてみることにした。
「どうして、そんな事をしたの?」
「虐められている人の気持ちなんて、誰も分からないよ。殆ど、地獄を経験したことがないからね。」
少年は、そう言い残しパタリと倒れた。
サトコは、駆け寄って抱き抱えた。
これは、霊が抜けて出ていった合図だ。
サトコは少年の、薄開きの瞼を空けてみた。瞼の裏が白っぽくなり、血の気を失っている。
精気を失っている証拠だ。
憑依された人間は、ダルさや倦怠感、終いには意識を失うことがある。
サトコは、取り敢えず少年を近くのベンチまで運ぶ事にした。
「黒須に電話しなくちゃ…」
サトコは、胸ポケットから通信機を取り出した。
ーと、サトコはここでハッとした。
黒須は、私を避けている。だったら、ここは、私ひとりで何とかするしかないー。
サトコは、リュックサックの中から液体の入った小瓶を取りだし、少年の顔に中にある聖水を掛けた。
少年は、意識を取り戻し上半身を起こして、キョロキョロ辺りを伺っている。
「大丈夫…?気絶してたよ。何があったの…?」
「あ、ありがとうございます。」
少年は、サトコに気づくとハッとしお辞儀をした。
「何で、僕こんな所に…?」
少年は、首を傾げ眉をひそめている。
「え、分からないの?」
矢張、霊が憑依していたのだろう。
少年は、ベンチから立ち上がると辺りの状況を確認した。
「僕、さっきまで例の嫌な奴らから万引きするように強要されたんです。それを拒んだら、リーダー格の一人が僕の襟元を掴んで…そこから先の記憶はありません。」
「…そうなんだね。」
彼は、自分の身に何が起きたのかが理解出来てないようだった。
サトコは、彼が憑依されていた事については、触れないでおこうと思った。
「あの…霊媒師の関係者か、なんかですか?」
少年のその言葉に、サトコは瞠目した。
「え…?どうして…?」
「いや、前にも、前々にもこういう事あって…僕、しょっちゅう気絶するんです。何か、霊媒師のような怪しい感じの人達に話しかけられてしまうし…ずっと同じ人から取り憑かれているかのような、そんな奇妙な感覚があるんですよ。」
少年は、眉を潜めている。
自身が憑依されてる事に、気付いているのだろうかー?
意を決して、彼に話してみる事にした。このままだと、彼の身が危ないー。
「わ、私、霊感が強くて…それで、あなたの身に危険が迫っていて…」
「やっぱり、僕は霊が取り憑かれているのでしょうか…?」
少年は、困り果てたような顔をし項垂れた。
「大丈夫。私が何とかする。私、専門だもの。」
「ありがとうございます…!」
少年は、深くお辞儀をした。
ーと、また、別のところから人の悲鳴が迸った。
「今度は、何…!?」
サトコは、直感で胸がざわつき声のする方に視線を移した。
公園の隅の方で、悲鳴を上げながら逃げ出す、女子高生の一団とその後方で項垂れ睨みつける女子高生にの姿があった。
同じ学校の生徒だろうかー?
睨みつけてる女子高生は、顔が青ざめキツく唇を噛み締めていた。目付きも明らかに、生身の人のものとは程遠い、鬼のようである。
ーもしかして、あの霊は彼女に取り憑いたの…?!
サトコは、不安になった。
その表情は、今までに見た事のない強い憎しみに包まれているようだった。
先生は、何故、自分を呼んだのか?
自分は、彼女に対して知らないことだらけだった。
何故、自分の正体を隠していたのだろうか、隠し事だらけなのだろうかと違和感を覚えた。
彼女が、何で、自分を置いて亡くなったのかが悔しくて仕方なかった。
彼女の魂は、今頃何処で何をしているのだろうー?自分に出来たことはあったはずだと、悶々としていた。
黒須の件もあり、サトコは今日も一日中、憂鬱な気持ちで仕事をしていた。
気分転換に、近くの噴水広場まで足を運ぶことしにした。
黒須と音信不通になってから、三日が経過した。
サトコは、その三日がとてつもなく長く感じてしまっていた。
木々がそよ風になびき、サワサワと優しく音を立てた。
風が心地よいー。
虫の鳴き声が、あたりを木霊する。
せめてもの気晴らしにと、サトコは自然を堪能する事にした。
遠くの公衆トイレから、若者の悲鳴が轟いた。
咄嗟に声のする方を向くと、中学生位の少年が、鉄パイプを握り締めながら立っているのが見えた。
彼の周りには、不良グループの一団が両膝を地面に付けて、ゼエゼエ荒い息を吐いていた。
不良グループの少年は、高校生位だろうかー?
彼らは、唾を吐きながらうつ向けになりながら地面にへばりついていた。
この、中学生位の少年ひとりで、五人の男子高校生を殴り倒したと言うのだろうかー?
「畜生。覚えてろよ。」
高校生らは、少年をキツくにらみつけながら脚を引きづりこの場を去った。
鉄パイプを持った少年は、息ひとつせずに彼等の背中を冷淡な眼差しで見ていた。
少年は、華奢で小柄だ。鍛えているような感じではない。しかも、その少年の表情は、妙に大人びていた。
サトコは、少年に違和感を覚え、恐る恐る近付いて見ることにした。
ーもしかして、彼は霊に取り憑かれているのだろうかー?
少年の顔は青ざめ、口が紫がかっている。瞳孔が、上下左右斜めに不規則に揺れ動く。
これは、明らかに霊に取り憑かれているサインだ。
ふと、少年と目が合った。
サトコは、ごくりと唾を飲み込み、尋ねてみることにした。
「どうして、そんな事をしたの?」
「虐められている人の気持ちなんて、誰も分からないよ。殆ど、地獄を経験したことがないからね。」
少年は、そう言い残しパタリと倒れた。
サトコは、駆け寄って抱き抱えた。
これは、霊が抜けて出ていった合図だ。
サトコは少年の、薄開きの瞼を空けてみた。瞼の裏が白っぽくなり、血の気を失っている。
精気を失っている証拠だ。
憑依された人間は、ダルさや倦怠感、終いには意識を失うことがある。
サトコは、取り敢えず少年を近くのベンチまで運ぶ事にした。
「黒須に電話しなくちゃ…」
サトコは、胸ポケットから通信機を取り出した。
ーと、サトコはここでハッとした。
黒須は、私を避けている。だったら、ここは、私ひとりで何とかするしかないー。
サトコは、リュックサックの中から液体の入った小瓶を取りだし、少年の顔に中にある聖水を掛けた。
少年は、意識を取り戻し上半身を起こして、キョロキョロ辺りを伺っている。
「大丈夫…?気絶してたよ。何があったの…?」
「あ、ありがとうございます。」
少年は、サトコに気づくとハッとしお辞儀をした。
「何で、僕こんな所に…?」
少年は、首を傾げ眉をひそめている。
「え、分からないの?」
矢張、霊が憑依していたのだろう。
少年は、ベンチから立ち上がると辺りの状況を確認した。
「僕、さっきまで例の嫌な奴らから万引きするように強要されたんです。それを拒んだら、リーダー格の一人が僕の襟元を掴んで…そこから先の記憶はありません。」
「…そうなんだね。」
彼は、自分の身に何が起きたのかが理解出来てないようだった。
サトコは、彼が憑依されていた事については、触れないでおこうと思った。
「あの…霊媒師の関係者か、なんかですか?」
少年のその言葉に、サトコは瞠目した。
「え…?どうして…?」
「いや、前にも、前々にもこういう事あって…僕、しょっちゅう気絶するんです。何か、霊媒師のような怪しい感じの人達に話しかけられてしまうし…ずっと同じ人から取り憑かれているかのような、そんな奇妙な感覚があるんですよ。」
少年は、眉を潜めている。
自身が憑依されてる事に、気付いているのだろうかー?
意を決して、彼に話してみる事にした。このままだと、彼の身が危ないー。
「わ、私、霊感が強くて…それで、あなたの身に危険が迫っていて…」
「やっぱり、僕は霊が取り憑かれているのでしょうか…?」
少年は、困り果てたような顔をし項垂れた。
「大丈夫。私が何とかする。私、専門だもの。」
「ありがとうございます…!」
少年は、深くお辞儀をした。
ーと、また、別のところから人の悲鳴が迸った。
「今度は、何…!?」
サトコは、直感で胸がざわつき声のする方に視線を移した。
公園の隅の方で、悲鳴を上げながら逃げ出す、女子高生の一団とその後方で項垂れ睨みつける女子高生にの姿があった。
同じ学校の生徒だろうかー?
睨みつけてる女子高生は、顔が青ざめキツく唇を噛み締めていた。目付きも明らかに、生身の人のものとは程遠い、鬼のようである。
ーもしかして、あの霊は彼女に取り憑いたの…?!
サトコは、不安になった。
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