魔人狩りのヴァルキリー

RYU

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赤いワンピースの女の子 ②

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サトコは、仕事場へと向かい、工具を揃え、作業を始める。


いつもの平穏平和な日常が始まる。

最近、妙にダルさを感じるようになってきた。
それは、自分に期限が迫ってきていると言うことなのだろうかー?

本来、自分は死んでいる筈だった。

だが、自分は、黒須の力のお陰だでこうして余命を延ばしてもらい生きている。


有り難い反面、倫理に反してやしないかー?

自分は、そう思わざる負えない。

仕事が終わり、帰路に着く。

今日は、悶々としながら一日を過ごした。


死者が出るこういう重大な霊障事件の場合、黒須はいつもサトコが仕事を休むように手配をしていた。

自分は、黒須の力で余命をもらっている為、仕事を優先にする必要はない。

自分の本来の生かされた目的は、黒須の仕事をサポートする事だ。

だが、最近はこれがない。

黒須は、一人で事を処理した。

彼女は、サトコに変な気を使っていた。



悶々としながら家に帰ると、居間に人だかりが出来ていた。

「サトコ姉ちゃん、ニュース、ニュース!!」

施設の子に誘われテレビを見ると、そこには朝、職場の事務所で流れた内容が再び報道されていた。

「これ、二回目なんだよね…」
「そうそう、以前にもあったからね。焼死体が発見されて…」
「そう言えば、そこの旧校舎、若い女性の歌声が響き渡ると、有名なのよね。」
「怖いよね。この歌聞くと、体調壊したり最悪死んじゃうんでしょ…しかも、人が踊る影のような物まで見えるらしいのよ。」
「ホント、この辺り治安が悪くなって来てるよね。」

子供達は、青ざめながらもテレヒに釘づけだった。

何も知らないことは、羨ましい。
この子達は、まさか、霊の仕業だなんて、知らないことだろう。
サトコは、関心を示す素振りを見せる。

「へぇーそうなんだ…」

サトコは、ニュースを見てどの事件が霊の仕業なのか、段々わかるようになってきた。
だが、最近、黒須と共に現場に行く回数が減ってきた。

自分が、彼女に嫌われる事をした覚えはない。

「サトコちゃん、おかえりなさい。」

寮母の藤巻が、お茶を用意してくれた。


「ありがとうございます。」

サトコは、お茶をすすりながら心の平静を保つ事にした。

どうせ、霊の仕業だろうー。
と、サトコは気付いてはいた。
いつも目の当たりにするような見慣れた光景のため、サトコは何がそんなにすごいのか、感覚がすっかり麻痺してしまっているらしい?

「人の黒焦げの遺体が出たらしいからね。そりゃあ、凄いことだよ。発火装置もないからね。」
藤巻は、感心したようにテレビに釘づけになる。
「へぇー、そうなんですね…」
サトコは、とりあえず関心したようなフリをして見せた。

黒須が、何故自分を誘わないのかが理解出来なく、サトコはずっと悶々としており、それどころではなかった。

「この旧校舎の辺りに住宅街があるでしょう?だから、他の場所で殺して運んで来るのも不可能。人目があるからね。夜殺したとしても、死亡推定時刻と合わないからね。」
「正に、ミステリーですね。」

これは、明らかに霊障である。辺りの物まで黒焦げになっている筈なのに、遺体だけ綺麗に焼かれている。

こんな器用な事が出来る霊がいるとでも、言うのだろうかー?

「それに、遺体までに足跡の痕跡が被害者以外全くないらしいのよね。そこの旧校舎の周りは、校庭か裏庭でしょう。タイヤの跡も無いのよ。正に、ミステリーよ。」
藤巻は、興味津々でテレビに食いついていた。
「それは、凄いですね…」


ーこれは、明らかに霊の仕業だ。


それにしても、おかしいー。

何で、自分の住む界隈にばかり死霊が出現するのだろうかー?

自分が死んで、死神の黒須から余命を延ばしてもらってから、忽ち死霊達と邂逅する頻度が増えるようになった。

しかも、タチの悪い悪霊が多い気がする。


誰か、自分のことを知っている黒幕がこの辺りにうずめいているとしか思えないー。


サトコは、その黒幕を突き止め解決しない限り奇妙な怪現象は収まらないと、思った。


「さぁ、サトコちゃん、手を洗って。」
藤巻は、台所に向かい支度を始めた。
ふと、藤巻から線香のような香りがしたような気がした。

「藤巻さん、お墓参りに行ったんですか?」
「え…?どうして?」
「線香の匂いが、したから。」
「そうね、法事に行ってきたの。親戚の三回忌だったから。」
「そうなんですね…」


黒須は、今頃、この現場に行って除霊をしてるのだろうか?

最近、黒須と自分は距離が出来始めだと思ってきた。


ーそれにしても、どうして黒須は自分を呼ばないのだろうー?いつも共にバディを組んでいたのにー。

「これは、解決か難しいだろうから、大変ね。また、新たな犠牲者が出るかもしれないから。」

藤巻は、野菜を切りながらため息を漏らしていた。

サトコは、自分が、そこに行かねばならない、そんな気がしてきた。



私の名前は、アヤカ。
小学校の担任だ。

私はいつも、お洒落が大好きで流行に敏感だった。

私は、アイドルに憧れてひたすら歌にダンスに明け暮れ、何かに引っ張られる操り人形の如く猛進していった。

時に、悪魔の気持ちでライバルを蹴落としていった。

だが、百件以上ものオーディションを受けても、光明が差すようなことはなかった。
上には上が、沢山居たのだ。
周りの子たちは、才能の秘めた原石のようで私はまるで、そこら辺の砂利のようだった。
周りは、私を見ると汚いものを見るかのような顔で嫌悪してくる。
それは、まるで月とスッポンのような感覚で、凄く悔しく恥ずかしかった。

私は美容整形したかったが、お金がないから諦めていた。

そして、とうとう私はシフトチェンジして、新たな自分の可能性を探すことにしたのよ。

私は、友達の影響で、小学校の担任を目指すことにした。

この仕事は、私にとって転職だったわ。

小学校には、可愛い天使のような純新無垢な子供達が私を出迎えてくれたの。

私は、周りの先生から嫌われていて浮き気味だったけど、この子達が私を暖かく見守ってくれたのよ。

今まで、不細工呼ばわりされてきたから、凄く目が涙が溢れてきたわ。

私の受け持つ教科は、音楽よ。

私はピアノを弾いて、歌を歌っている時が、一番私らしく居られるような気がしたの。

私の歌に合わせて、子供達の天使のような声が教室内に響き渡った。
時折、踊りを見せたけど、大盛況。子供達が私の真似をして、歌い踊り楽園のような素敵な空間になった。

職場では孤立していたけど、こうして歌の授業をしていた時が一番幸せだった。

そんなにある日、この学校の理科室で火災事故があった。

それは、凄い火災でね…
ガスの管が老朽化していたのが原因だったみたい。 

消防隊が駆けつけて、何とか犠牲者は出ずに済んだ。

そんなある日、私はロリータファッションの奇妙な女の子に出逢った。

その子は、名前をアリスと言った。フランス人形のような、愛くるしい顔立ちをしていた。

彼女が私に『 力をあげる』と、言って私の両手を握った。

その日を境に、鏡に映る自分の顔が、急に人気女優の橋田カンナみたいに愛くるしい顔立ちになっていった。

貧乳だった胸も、ふた周り大きくなって谷間まで出来るようになった。

だが、周りも誰一人として、私を見ようとはしないー
挨拶しても、無視をする。教職員も子供ももだ。


そうこうしていくうちに、私は次第に時間感覚が、分からなくなっていった。


こうして私は、一人でふらふら彷徨うようになった。

私のお気に入りの場所は、音楽室。

音楽室でピアノを弾いて歌っている時が一番幸せなひとときだった。

昼間は、他の先生がピアノを使っていたから私は使えなかったし歌えなかった。

周りが、私の声とピアノの音を気味悪がるのだ。
子供達もである。

これは、ホントに、失礼だ。
一番の味方である子供達が味方じゃないのは、悲しかった。
あんなに私の事を慕ってくれていた筈なのに…
私は、がむしゃらになりひたすら歌を歌いメロディーを刻んだ。
そして、子供達がまた、私に振り向いてくれるように、祈った。

だが、それは叶わなかった。

次第に、それがどうでも良くなっていってしまっていた。こうしてピアノを弾いて歌を歌っている時が、一番幸せだったのだ。

だから私は、放課後、誰も居ない時にメロディーを奏で時に、歌った。

そうすると、過去の黒い泥の塊のような苦しいいじめの過去を忘れてくれるような気がした。

私が自信を持ち、アイドルを目指すきっかけになったのは、橋田カンナのお陰である。

爛漫としていて、太陽のように眩しい彼女の笑顔の影響を受けたの。
彼女の歌と踊りが好きよ。

今、違う形になっちゃったけど、私は一人幸せを思い出し、メロディーを叶えてる。

でも、誰も私の音楽を聞いてくれなく踊りを見てはくれないのだ。


だから、私は、時折寂しく感じ、誰かに歌を聞いてもらいたくて、学校内をさまようようになっていった。

それから、暫くして誰もこの学校に居なくなって、私だけが取り残された。

私は凄く寂しかったが、ひたすら音楽を奏で、大好きな橋田カンナの事を思い出し彼女と歌って踊る事を考えながら、時を過ごした。

ピアノと歌と、橋田カンナが私の味方だ。
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