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魔女の庭と賢者の石 ③
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窓に、案山子の顔がべったり貼り付いている。
ーと、窓ガラスは次々と割れ、外から案山子の一団が姿を現した。
「うわっ…!」
サトコは戦慄し、尻もちをついた。
「賢者の石を、寄越して…」
「え?!賢者の石…?」
「寄越して…」
「お願い…」
「寄越して…」
子供がおねだりをしているかのような喋り口調に、サトコはそれが逆に不気味に感じた。
「サトコちゃんは、下がってて。」
山口先生は、眉間に皺を深く刻み、赤い糸を大きくドリル状にぐるぐる回転させた。
「はい…」
サトコは、戸惑いながらも先生の指示に従い、後退りした。
「あなたに、石は、渡さないわよ。」
「渡せ…」
「石、渡せ…」
ーと、案山子はトントン音を立てて、居間へと這い上がってきた。
「せ、先生…」
サトコは、青ざめ鞄の中から二丁のサジタリウスを取り出した。
「サトコちゃん、これは、まだよ。今の、あなたにはまだ、早いわ。」
「先生は、何者なんですか?」
いつもの温厚な山口先生の姿は、そこにはない。
「私は、れっきとした魔女よ。ついでに、サトコちゃんのこともよく知ってるのよ。」
「え…?!」
先生は、私の正体を知っているー!?
サトコは瞠目し、動きを止めた。
床下から、ガンガンと、けたたましく音が鳴り響く。
ーと、
床から、いきなりグサッと頭が出現したかと思うと、案山子が出現し、立て続けに案山子が出現した。
「わっ!」
サトコは、悲鳴を上げてサジタリウスの引き金を引いた。
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
何度も打つも、案山子らは首を激しくブンブン回しカタカタ揺れる。
「え…?!何で…」
サトコは、瞠目する。
これでは、暖簾に腕押しだ。
「寄越して…」
「お願い…」
すると、案山子の顔がみるみる大きくなり、目が大きくなり、歯がギザギザに剥き出しになった。
眼は、赤くビカビカ光り輝く。
「な、何アレ…」
「どうやら、聞き分けの無い子達のようね。あなた達は、もう、死んじゃっているの。抗う事はもうやめて、居るべき所に還りなさい。」
「ギャハハハハハハは!!!」
案山子の無邪気なけたたましい笑い声が、響き渡るー。
「先生、一体、どうしたら…?」
サトコは、戦慄する。
無邪気さが不気味さを引き立て、それが深い絶望へと誘う。
「仕方ないわね…」
山口先生は、俯くと懐からエメラルド色に輝く奇妙な鉱石を取り出した。
「な、何ですか?それは…」
「サトコちゃん、コレでお別れね。」
山口先生は、その奇妙な鉱石をてに取り呪文を唱えた。
「大地の神よ、我に力を与え、永遠の魂から今、解き放て。エロイムエルサム…」
すると、山口先生の身体が大きくエメラルド色に光り輝いた。彼女の身体が、割れた陶器のようにボロボロと崩れていく。
「先生…!!」
サトコは瞠目した。
ゲラゲラ笑う案山子の一団は、笑いながらも身体が緑色の光線に包まれたちまち粉々になっていった。
ーと、家中に眩い光で包まれた。そして、ガタガタと大きく揺れながら崩れ、跡形も無く更地となった。
サトコは、意識を失い倒れた。
目が覚めたら、薄暗い奇妙な森の中に自分が居た。
ここは、死後の世界だと直感で分かった。
老若男女、あらゆる人がごった返している。
若くして亡くなった者や、高齢な者まで多様に居る。
肌は白いが、怖さは全くない、彼等は、ごく普通の人間だ。
彼等は、どのような状況でこちら側の世界に来たのか、定かでは無い。
だが、彼等には感情があった。それぞれの強い思いや生い立ちがあった。
しばらく続く、薄暗い不気味な森の中をサトコは歩き続ける。
薄暗いジメジメした所だ。
ここは、修羅の森だ。
寂しさだけが、サトコの心の中に残っている。
遠くの方から、白い着物の女性が姿を現した。
「アオイさん…?」
サトコは、咄嗟に彼女がアオイだと分かった。彼女は、自分に警告を発しているように見える。
「あなたは、何で、ここに居るんですか…?」
サトコは、不思議と口から言葉が出た。
「私は、人を殺してここに居るの。人の命を奪うことは、ここに来ることだと分かっていた事だし、とっくに覚悟は出来ていた。」
アオイは、表情を1ミリも変えず淡々と答えた。
「どうして、殺したんですか?」
「私は、平和を護るためにやったの。」
「平和…?」
「ええ。私は、卑しき者と苦しむ者を浄化してあげることこそが、真の平和のような気がしてきたの。」
「一体、何の為に…?」
「あの時、私はこう思った。強者も弱者も、このままじゃ救われない。強者を浄化した所で、弱者は救われない。強者が強欲で薄汚いまま生き続けるのは、憐れを誘うから。そして、弱者は強者に依存して生きている。彼等は、自由になった所で、生きる術がない。また、強者に弱みを憑かれて、彼等に依存し搾取され生きていくしかない。彼等には不幸が染み付いているから。だから私が浄化して解放してあげたの。」
彼女の凛とした瞳に、迷いは感じられない。サトコは、それが彼女の芯の強さだと感じた。
「…そうなんですね…」
「貴方は、いずれ分かる時が来る。」
「分かりました。」
彼女の価値観は独善的な感じがしたが、サトコは今は、受け止めてあげなきゃいけないと感じた。
「気を付けて。あなたの霊力は、強力だから。この先、強者達が現れ、あなたを搾取したりあなた自身が喰われ危険な目に合うかも知れないから。」
アオイの深い栗色の瞳が、じっとこちらを捉える。
「うん、ありがとう…」
サトコは、自然とタメ口が出てきた。
「直感力を使って、霊力の流れを読むの。ピンと来た部分を読むのよ。あと、アリアに気を付けて、イオリ。」
「イオリ…?」
「あなたは、イオリの生まれ変わりなの。」
「イオリの生まれ変わり…?どういう事なの…?」
「それは、いずれ分かる時が来る。あと、帰る時、後ろを振り向かないで、二度と戻って来れなくなるから。」
ーと、地面は大きく歪み空間に亀裂が生じる。亀裂の奥からら虹色に輝く奇妙な花畑が出現した。
「え…!?ちょっと、待って…!」
アオイは、じっとこちらを見つめている。
サトコは、吸い込まれるように亀裂の奥へと誘われた。
虹色に輝く奇妙な花畑で、サトコは後ろを振り向かず前だけをひたすら見つめて歩いていた。
アオイは、大きな過ちを犯した。人を殺した。
例え、どんな理由があろうと、人から命を奪っていい筈がない。
独り善がりな理由で、人から人生を奪ってはならない。
だが、彼女の深い凛とした瞳から迷い無き強い意志が感じられた。
アオイは、迷わない。
彼女は、ずっとこうして、己の意志を正義を貫いてきたのだ。
サトコは感じ、自然と涙が頬を伝った。
時代が時代だ。
彼女は、荒波に揉まれ泥水をすすりながら生きてきたのだ。
アオイが生きていた時代と、彼女を取り巻く境遇がこうさせたのだ。
初めは、純粋無垢な少女だったに違いない。
誰もが、皆、過ちを犯す。
人は、完璧ではない。
ーと、窓ガラスは次々と割れ、外から案山子の一団が姿を現した。
「うわっ…!」
サトコは戦慄し、尻もちをついた。
「賢者の石を、寄越して…」
「え?!賢者の石…?」
「寄越して…」
「お願い…」
「寄越して…」
子供がおねだりをしているかのような喋り口調に、サトコはそれが逆に不気味に感じた。
「サトコちゃんは、下がってて。」
山口先生は、眉間に皺を深く刻み、赤い糸を大きくドリル状にぐるぐる回転させた。
「はい…」
サトコは、戸惑いながらも先生の指示に従い、後退りした。
「あなたに、石は、渡さないわよ。」
「渡せ…」
「石、渡せ…」
ーと、案山子はトントン音を立てて、居間へと這い上がってきた。
「せ、先生…」
サトコは、青ざめ鞄の中から二丁のサジタリウスを取り出した。
「サトコちゃん、これは、まだよ。今の、あなたにはまだ、早いわ。」
「先生は、何者なんですか?」
いつもの温厚な山口先生の姿は、そこにはない。
「私は、れっきとした魔女よ。ついでに、サトコちゃんのこともよく知ってるのよ。」
「え…?!」
先生は、私の正体を知っているー!?
サトコは瞠目し、動きを止めた。
床下から、ガンガンと、けたたましく音が鳴り響く。
ーと、
床から、いきなりグサッと頭が出現したかと思うと、案山子が出現し、立て続けに案山子が出現した。
「わっ!」
サトコは、悲鳴を上げてサジタリウスの引き金を引いた。
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
何度も打つも、案山子らは首を激しくブンブン回しカタカタ揺れる。
「え…?!何で…」
サトコは、瞠目する。
これでは、暖簾に腕押しだ。
「寄越して…」
「お願い…」
すると、案山子の顔がみるみる大きくなり、目が大きくなり、歯がギザギザに剥き出しになった。
眼は、赤くビカビカ光り輝く。
「な、何アレ…」
「どうやら、聞き分けの無い子達のようね。あなた達は、もう、死んじゃっているの。抗う事はもうやめて、居るべき所に還りなさい。」
「ギャハハハハハハは!!!」
案山子の無邪気なけたたましい笑い声が、響き渡るー。
「先生、一体、どうしたら…?」
サトコは、戦慄する。
無邪気さが不気味さを引き立て、それが深い絶望へと誘う。
「仕方ないわね…」
山口先生は、俯くと懐からエメラルド色に輝く奇妙な鉱石を取り出した。
「な、何ですか?それは…」
「サトコちゃん、コレでお別れね。」
山口先生は、その奇妙な鉱石をてに取り呪文を唱えた。
「大地の神よ、我に力を与え、永遠の魂から今、解き放て。エロイムエルサム…」
すると、山口先生の身体が大きくエメラルド色に光り輝いた。彼女の身体が、割れた陶器のようにボロボロと崩れていく。
「先生…!!」
サトコは瞠目した。
ゲラゲラ笑う案山子の一団は、笑いながらも身体が緑色の光線に包まれたちまち粉々になっていった。
ーと、家中に眩い光で包まれた。そして、ガタガタと大きく揺れながら崩れ、跡形も無く更地となった。
サトコは、意識を失い倒れた。
目が覚めたら、薄暗い奇妙な森の中に自分が居た。
ここは、死後の世界だと直感で分かった。
老若男女、あらゆる人がごった返している。
若くして亡くなった者や、高齢な者まで多様に居る。
肌は白いが、怖さは全くない、彼等は、ごく普通の人間だ。
彼等は、どのような状況でこちら側の世界に来たのか、定かでは無い。
だが、彼等には感情があった。それぞれの強い思いや生い立ちがあった。
しばらく続く、薄暗い不気味な森の中をサトコは歩き続ける。
薄暗いジメジメした所だ。
ここは、修羅の森だ。
寂しさだけが、サトコの心の中に残っている。
遠くの方から、白い着物の女性が姿を現した。
「アオイさん…?」
サトコは、咄嗟に彼女がアオイだと分かった。彼女は、自分に警告を発しているように見える。
「あなたは、何で、ここに居るんですか…?」
サトコは、不思議と口から言葉が出た。
「私は、人を殺してここに居るの。人の命を奪うことは、ここに来ることだと分かっていた事だし、とっくに覚悟は出来ていた。」
アオイは、表情を1ミリも変えず淡々と答えた。
「どうして、殺したんですか?」
「私は、平和を護るためにやったの。」
「平和…?」
「ええ。私は、卑しき者と苦しむ者を浄化してあげることこそが、真の平和のような気がしてきたの。」
「一体、何の為に…?」
「あの時、私はこう思った。強者も弱者も、このままじゃ救われない。強者を浄化した所で、弱者は救われない。強者が強欲で薄汚いまま生き続けるのは、憐れを誘うから。そして、弱者は強者に依存して生きている。彼等は、自由になった所で、生きる術がない。また、強者に弱みを憑かれて、彼等に依存し搾取され生きていくしかない。彼等には不幸が染み付いているから。だから私が浄化して解放してあげたの。」
彼女の凛とした瞳に、迷いは感じられない。サトコは、それが彼女の芯の強さだと感じた。
「…そうなんですね…」
「貴方は、いずれ分かる時が来る。」
「分かりました。」
彼女の価値観は独善的な感じがしたが、サトコは今は、受け止めてあげなきゃいけないと感じた。
「気を付けて。あなたの霊力は、強力だから。この先、強者達が現れ、あなたを搾取したりあなた自身が喰われ危険な目に合うかも知れないから。」
アオイの深い栗色の瞳が、じっとこちらを捉える。
「うん、ありがとう…」
サトコは、自然とタメ口が出てきた。
「直感力を使って、霊力の流れを読むの。ピンと来た部分を読むのよ。あと、アリアに気を付けて、イオリ。」
「イオリ…?」
「あなたは、イオリの生まれ変わりなの。」
「イオリの生まれ変わり…?どういう事なの…?」
「それは、いずれ分かる時が来る。あと、帰る時、後ろを振り向かないで、二度と戻って来れなくなるから。」
ーと、地面は大きく歪み空間に亀裂が生じる。亀裂の奥からら虹色に輝く奇妙な花畑が出現した。
「え…!?ちょっと、待って…!」
アオイは、じっとこちらを見つめている。
サトコは、吸い込まれるように亀裂の奥へと誘われた。
虹色に輝く奇妙な花畑で、サトコは後ろを振り向かず前だけをひたすら見つめて歩いていた。
アオイは、大きな過ちを犯した。人を殺した。
例え、どんな理由があろうと、人から命を奪っていい筈がない。
独り善がりな理由で、人から人生を奪ってはならない。
だが、彼女の深い凛とした瞳から迷い無き強い意志が感じられた。
アオイは、迷わない。
彼女は、ずっとこうして、己の意志を正義を貫いてきたのだ。
サトコは感じ、自然と涙が頬を伝った。
時代が時代だ。
彼女は、荒波に揉まれ泥水をすすりながら生きてきたのだ。
アオイが生きていた時代と、彼女を取り巻く境遇がこうさせたのだ。
初めは、純粋無垢な少女だったに違いない。
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人は、完璧ではない。
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