魔人狩りのヴァルキリー

RYU

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新たな道標 ①

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    2人は、眩しい狭い道をしばらく歩いた。サトコは、不安が強くあった。だが、異様な爽快感も覚えた。この奇妙な感覚は、自分でもハッキリとは分からないでいた。

「ねえ、どうしてここの道が開かれたの?」
「うちの監査官が、調査しに来たんだよ。」
黒須は、面倒くさそうに目を細めてため息をついた。
「黒須、侵入の時、何かした?」
「ああ。ちょっな…最近、ゴタゴタがあって……、それで向こうは揉めてるんだ。」
黒須は、頭をボリボリかきながら
その顔は、何処かかしら深鬱のような考え込んだような顔になった。



しばらく歩くと、二人は、強い閃光に包まれ気づいた時には旅館の廊下に出た。

「…ここは、旅館…?」

「ああ。私達は無事に戻ったんだ。あとは、奴を始末しなくてはは…
黒須は、パチンと手を叩いた。すると、手のひらから鎖が出現した。鎖は青磁色に光る。そして、その鎖で絵画をぐるぐる巻きにした。



「なんか、気味悪い…」

「奴が…居る。サトコ、サジタリウスを構えるんだ。全ての発端、原因がそこにいる。霊を集めていたのも、霊道を作ったのも奴だ。」
黒須は、早口で切羽詰まったように小声で捲し立てた。彼女の顔つきが、異様に険しくなっている。
2人は奇妙な気配を感じる庭を振り向くと、そこにか黒ずんだ不気味な地蔵が佇んでいた。
「小娘…よく来たな…」
地蔵の中から嗄れたカラカラ乾いた初老の男の声がもれだした。全身から黒い炎が不気味にゆらゆら出現しており、彼の周りの草木は茶色に枯れ果てていた。
サトコは、身震いしながらもサジタリウスを両手で構えると、引き金を引こうとした。
「サトコ、駄目だ。コイツには逆効果なんだ。」
「どういう事?」
「今に解るさ。」
「いやあ、君たちの動きを終始観察していたよ。それにしても、君たちは、実に美味しそうな魂をしているね…どうか、儂のコレクションにでもなってはくれないのかね?へへ」
地蔵姿の魔物は、終始不気味にニンマリ笑った。
そして、彼の口から黒い炎がマグマのように噴出した。
「サトコ、この炎に触れたら不味い。魂を吸収されてしまう…」
地蔵は右手に石を持っていた。石は、虹色にキラキラ輝いていた。まさか、これでこちらを観察をしていたのだろうか?彼の漆黒のオーラが吹き出した。
サトコは、直感で目の前に居る魔物が霊体ではないと悟った。アリアといた時の、禍々しい妖気や膨大な圧力…サトコは、ゾクゾクとする嫌な気分に襲われた。
「黒須…この人…」
「ああ。コイツは、魔物だ。多くの魂を吸ってやがる。」
「全てが、全てが憎らしいのう。人は皆醜い。醜い者が、儂は大好きでね…虐めがいがあって、実に良き…」
地蔵は、眼を糸のように細くさせ両口端を満面に上に上げた。
サトコは、再び背筋がゾクリとしてし冷や汗を流した。
その時だった。辺り全体が強くぐらついた。サトコは、びっくりし近くの柱にしがみついた。
「貴様の理解不能な御託はもういい。沢山魂平らげてまだ足りないなんてな。呆れて、ことばが出ない。私は、十分に人の醜い心 を見てきたし地獄の業火も十分に味わってる。」
黒須は、背負っていた案山子を山体取り出す。
地蔵は、口から黒い炎を吐き出す。炎は、花火のように噴出し辺りを黒く覆い尽くした。辺りは茶色ににごり枯れ果て錆びていくー。サトコは、近くの柱に身を隠した。黒須は、透明の幕を貼り弾き返した。炎の威力は、益々強くなっていくー。

すると、地蔵から、黒い炎の塊が抜け出し案山子の中に吸い込まれていった。地蔵は、砕け粉々になった。


「貴様、因果応報って、知らないだろ…」
黒須は、案山子に札を貼り付けると五寸釘を強く突き刺した。
「ふははは、小娘風情が、この儂に盾つこうなそ、言語道断!」
案山子に憑依した魔物は、ゲラゲラ不気味に笑った。黒い邪悪なオーラが、案山子の口から漏れだした。
「もう、修羅も煉獄も地獄も沢山経験済みだ。後は、貴様を煉獄へと落とすだけだ。」
黒須は、両手をパンと叩いた。すると、掌から青磁色の鎖が出現した。そして、その鎖で案山子を二十三十にぐるぐる巻にした。鎖の隙間から黒炎が漏れだした。案山子が、激しくぐらつい。
「黒須!」
「分かってるよ!」
黒須の縛り付けるチカラはつよくなっていった。サトコは、魔物の口の中に銃口を当てサジタリウスの引き金を引いた。

その時ー、おびただしい地響きがなるような気味の悪い悲鳴が辺りに反響した。
「貴様、自爆したな。まさか、自分の炎でやられるとは、思っても見なかっただろ…。」
黒須は、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。彼女の全身から汗が滴り落ちる。
サトコは、黒須に気を掛けながら再びサジタリウスを懐から取り出すと引き金を引いた。
ーもう、守ってもらううじうじした弱い自分なんかじゃないー。
弾は案山子の口の中に命中した。
「よし、良いぞ。もっと、連射してくれ!」
黒須の合図と共に、サトコは次々と弾を連射した。弾が当たる度に案山子は不気味なまでに顔が歪んでいった。

炎の威力は段々弱くなっていった。そして、鎖から漏れる黒炎は徐々に弱くなっていき、そして、消えた。

「終わったんだよね…?」
サトコは、恐る恐る案山子を凝視した。
黒須は、額の汗を拭う。青い鎖は消え、案山子は灰色に焼き焦げていた。
「仕事は、終了した。あとは、連絡するだけだ。」
これは、黒須にとって、危険な賭けだったに違いない。彼女は一瞬の迷いもなく、魔物を始末した。魔物は、悪霊の魂を沢山吸収して出来た存在である。その霊力は膨大なものであり、並の死神三人で束になってま歯が立たない存在するである。
「ねえ、これって、もしかして、?魔物の中に起爆剤か爆弾が入っていたということ…?」
「ああ。奴は、自爆したんだ。奴の身体は邪気で満たされていた。奴の魂は他の魂を吸収し過ぎておかしくなっていたからな。それに、直前攻撃すると邪気は私らに跳ね返る。だから、外側から囲い込み圧縮した訳さ。」
「そういう事。邪気って、その魔物が吸収してきた悪霊の事だよね…?」
「ああ。コイツは、暴飲暴食が過ぎたんだ。」
「奴の目的は、仲間の恨みを晴らす為だとかかな?」
「まあ、そういう事だろう。昔、奴は普通の霊だった。だが、霊同士のいざこざにより負けて恨みを増幅したんだ。霊はの同調能力は、他の郡を抜いてずば抜けてたかいからな。しかしな、途中で気が抜けちまってた。彼なりに誰かにトドメを刺して欲しかった。もう、終わりにしたかったってのがあったんだろうね…」
「そうなんだね…」
黒須は、案山子を背負い込むと砕けた石を片付けた。この石は、もう霊魂は入ってはないが、調査の為に一応、持って行く事にした。



二人は部屋に戻り、荷造りをした。

玄関や廊下では、女将や従業員が20人位うつ伏せになって倒れているのが見えた。
「…監査官め。仕事が早いな。」
黒須は、しかめっ面をするとそそくさと玄関へと向かった。


「私、どうしちゃってたの…?」
二人が振り向くと、女将が呆然とした顔で辺りをしきりにキョロキョロした。
女将は、訳が分からなく首を傾げていた。
「何も、知らないんですか…?」
サトコは、不思議そうに女将を伺った。しかし、女将はきょとんとした顔つきで氷固まっていた。

「サトコ、こっちはもう終わってある。あとは、片付けるだけだ。」
黒須は、リュックから釘と札を取り出すと札を起きその上に釘を打ち付けた。そして、呪文を唱えた。
「ハンサンバラカン…ハンサンバラカン…」
黒須は、意味不明な呪文と共に釘は黒紫色に変色し地面に沈んでいった。


「この旅館は、長い間霊障にあってきた。霊道が近いからな。売れ行き、伸び悩んだのもそれが原因なんだろうな…」
黒須は、釘刺しの案山子を背負い込むと石の入った袋をリュックにしまった。
「この石は、もう何も入ってないよね…?」
「ああ。もう、何もな。しかし、女将さんはまさか、霊の力を使って魔除に使っていたとはな…このままだと、従業員共々霊障にあい続け、ヤバい事になってたぞ。」
「魔除け…?」
「ああ。たまに居るんだよ。霊の力を使って霊を払いよける人がな…」
黒須は、面倒くさそうに眼を細め頭を抱えた?
「でも、もう、この旅館は安全だよね?」
「ああ。これから先の再建は、全て店側にかかってるがな…私らの仕事は、ここまでだ。」
黒須は、リュックを背負うと旅館を後にした。



「私は、何か間違いをしてしまいました。これからは、まがい物をしんじず、何か、新しい道を模索し活気ある旅館にしていこうと思いました。」
帰り際、女将は2人の乗る車を見送った。
「あっ、これは謝礼です。」
女将は、懐から謎めいた人形のキーホルダーと5万の入った封筒を差し出した。
「いや…私らは、アウトローでして…」
黒須は、困ったような顔をする。
「いいんです。ご迷惑をおかけしました。」
女将は、丁寧にお辞儀をした。

黒須は、渋々受け取るとギアを引くとアクセルを踏んだ。

車は、前進した。勢いよく森を目掛けて走る。
ふと、サトコは後ろを振り返った。すると、旅館は廃墟のように茶色にただれていった。

「嘘…?」

サトコは、唖然とした。

「私も、途中からおかしいと思ったんだよ。女将も全員亡くなってる。」

「え…?だって、女将さん、お茶と料理出してくれたし、温泉と布団だって…」

「女の人に取り憑いたんだよ。」

「…取り付いた…?」

「ああ。1番自分と親近感ある女の身体を己の器としたんだ。多分、魂の質が近かったんだろう。そして、彼女達は廃墟とかした旅館に長年未練があったんだろうな。そして、地縛霊になった。」

「あの旅館の従業員は、どうなっちゃったの?」

「調べによる大地震で、建物が倒壊したらしい。」

「嘘…?」

「霊力が、そう見せてたんだよ。亡くなった従業員の霊力がかかったんだよ。」

「そんな…」

サトコは、唖然とし開いた口が塞がらなかった。
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