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魔性の堕天使 ⑤
しおりを挟む「私の願いか…?では、貴様に耐えられるかな…? 」
黒須は、じっと正面を睨みつけている。
ーと、その瞬間、黒須は、波に飲まれ動きを停止した。
「黒須…!」
サトコは、牧黒須の方を向くが黒須はビクリトもしない。つかさず、サジタリウスの引き金を引いたが、弾は透明な膜のようなものに跳ね返され、その衝撃でサトコは大きく後方へ押しやられた。
黒須は、俯き黒目に生気が感じられず、蝋人形のようにぐったりしている。
すると、あたり一面に旋風が巻き起こり、重たく黒い樹木が出現した。
樹木は、ドリルのように床を突き破り次々と出現した。
「可哀想に…あなたは、邪悪なものを抱えてますね。」
牧師は、再び鈴を鳴らす。 すると、その樹木はぐにゃりと不規則に曲がり人の姿を象り床の隙間から鉛のような渦が湧き出てきた。
牧師は、両腕を鞭のようにうねらせると黒須の首を締め付けようとする。サトコは、つかさずサジタリウスの引き金を引いた。しかし、弾は再び膜に弾かれサトコは尻もちをついた。
牧師の腕は、ニュルニュル伸び黒須の首を締め付ける。黒須の身体は宙に浮くー。
「黒須、起きて!」
サトコは叫ぶのも虚しく、黒須はマネキンのようにビクリトもしない。
サトコは3発4発と引き金を引き続ける。しかし、弾は虚しく磁石のように弾き返された。
しばらくの間、重い空気が流れた。サトコの身体は徐々に何か高密度なもので押し潰されたかのようになっていく。サトコは地面にへばりついた。重力で、視線が下の方を向くー。サエコの顔が浮かんでくるり自分は、いつも誰も助けられない。悔しさで涙が込み上げてきた。
ふと、二人の方に視線をやるー。
すると、牧師の顔は徐々に歪み、唖然とし訳も分からずに困惑しているようだった。
「そんな、そんな筈では…」
そして、牧師はたちまち黒い渦に飲み込まれて消失した。
「ど、どうなってるの…?」
その直後、辺りの樹木はみるみる黒ずんでいき枯れて塵と化した。
「ああ、久しぶりに気持ち悪いのを見たぜ。」
黒須は、幻覚から目を冷ますとげんなりした顔つきで髪を掻きむしった。
「黒須…何したの…?」
「ああ、何をした訳でもないさ。ちょっとしたトリックと、あんたと仲間のお陰だよ。奴は、人のあらゆる負の部分を養分とし蓄えていたんだろう。まあ、私はスケールが大分違うからな。」
「…どういう事…?」
興味本位で尋ねてみたが、黒須は無言だった。
彼女は、何か重いものを抱えているのだろうか…?
黒須は、自分の事はあまり話さない。これは、何か深い事と関係しているのだろうかー?
凛とした黒目は、憂いも哀しみも一切表に出さずただ、未来をじっと見ていた。
その目は、メラメラ燃え上がるような強い意志が感じられひたすら未来を見据えていたのだった。
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