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魔性の堕天使 ④
しおりを挟む魔人狩りのヴァルキリー
第二十話 魔性の堕天使 ④
再び場面は変わり、サトコは友人達と学校の掲示板の前に立っていた。
「サトコすごーい!また、学年2位だね!」
掲示板には、期末テストの試験結果が張り出されていた。そこには、1位から50位までの生徒の名前がズラリと書き並べられており、各点数も名前の横に書き出されていた。
「サトコ、490点だって。」
「へー、凄いじゃん。」
友人二人は、サトコの身体をつつく。
「え、でも、サエコには敵わないよ…」
サトコは、照れくさそうにはにかむ。
「サエコ、いつも1位だよねー。」
「サエコ、やるよねー。496点だって。」
サトコは、何よりサエコと名前が並んだ事が凄く嬉しいー。
「サトコ、東都大目指すの?」
「えー、まさか…?私は…」
サトコは、首を振る。
サトコは、家に帰ると親に試験結果を見せた。
「サトコ、やると思ってたわよ。」
「ああ。ホントにお前は凄いよ。」
「あんたは、自慢の娘だよ。」
親は喜び、サトコを祝福してくれる。
皆サトコに歓心を寄せてくるー。サトコ自身も、優秀で何でも出来るー。
サトコの心は、至福で満たされていた。
場面は、体育祭に切り替わった。
これから、ドッジボールの競技が行われる。
「やった!サトコとサエコと一緒だ!」
「ホントだ。一緒に頑張ろうね!」
和気あいあいとした雰囲気の中、サトコは明るく楽しく競技に取り組む。紅組と白組に分かれ、サトコとサエコは大活躍する。そして、サトコのチームは高得点を取った。
サトコは、勢いよくボールを投げる。投げたボールは、敵陣に当たり熾烈なラリーを繰り返すー。
ーサトコ、サトコ、起きろ!
「やめて!」
また、キーンと脳内に音が響き渡るー。
すると、サエコの笑顔が、軽く歪んだように見えた。
「誰…?」
「ううん、何でもない。ごめんね。」
ーいい加減、覚ませ!このウスノロ!
そして、何処からとも無く飛んでくる声の主は、相当切羽詰まったかのようにサトコを急かした。
ふと、サトコは、この声に既視感を感じるようになった。
この声の主と、サトコはよく会っているような気がするのだ。
サトコは、本当に大事なものを何処か遠くに置き去りにしてきたような、そんな引っ掛ける感覚に陷った。
「サトコ、どうしたの?」
サエコが、心配し顔を覗きこんだ。
「…ごめん、何でもないのー。」
そこで、奇妙に見えた。
サエコは、主体性がなく、何処かしらサトコに依存している面もある。また、サエコも含め、みんな掴みどころがなく人間味が感じられないのだ。
いや、自分は何か重要な事を見失っている。
彼等は、本当の仲間なのだろうかー?自分の、都合の良い存在ではないだろうかー?それに、自分は、こんなに器用に何でも出来ただろうかー?
ーサトコ!
再び、聞き慣れた声が響き渡るー。
ーこの、違和感は何なのだろうかー?
サトコは、大切な人達を忘れているようなそんな感じがした。 そして、徐々に本当に自分を心配してくれるリアルな仲間や、ぶっきらぼうだけど優しい人が近くにいるような気がしてきたのだ。
それに、自分は、不器用だ。そんな自分を優しく見守る仲間や時に厳しく叱ってくれる人がいる。
「これは、何なの…?」
サトコは、混乱して声を震わせた。
「サトコ…」
サエコは、不安げにサトコの顔を覗き込む。
サエコは、人形みたいに整って完璧であり…
ー人形…?いや、こんなの違う…本当のサエコじゃない…サエコは、もっと芯が強く中身がある人だ…
これは、私が望んでいる想像上のサエコだ。
周りもそうだ。
皆、人間味がない。欠けてる部分がない。完璧過ぎる。
自分は、人の欠けてる部分を沢山見てきたから、汚さを垣間見てきたから人の本質を知っている。
今見て経験しているのは、自分が昔から憧れていた光景だ。
自分が、今まで経験したことのないー。
それに、もう、大分、動き回れるが全く汗はかかず、疲れもない。
ーこれは、紛れもなく幻覚だー。
ー自分は、誰かに幻覚を見せられているー。
「サトコー、あとは頼んだよ!」
遠くの方から声援が飛び交う。
「うん。」
サトコは、とりあえず場の空気に合わせる。
白組は、サエコとサトコだけになった。向こうも二人だけ残り、2対2の状況になる。
そこで、どうやったら覚醒するかサトコは走りながら考えた。
頭を握りこぶしで、ガンガン強く頭を叩いた。
ーそうだ!ワザとボールに当たって、脳震盪《のうしんとう》を起こせば覚めるかもしれない…
人数は、少ないー。サトコは、一か八かに掛ける事にした。
そして、敵陣からボールが飛んでくるー。
「きゃー、サトコ!!!」
ボールはサトコの顔面に直撃し、サトコは仰向けに倒れた。
すると、空間に亀裂が生じ、ガラスが砕けだかのように粉々になった。
サトコがハッとすると、目の前には樹木が生い茂っており、サトコは人のような形の不気味な木々に囲まれていたのだ。
「おはよう。」
自分の直ぐ側には黒須が立っており、サトコの肩に手を当てた。彼女は、牧師と対峙しており傷だらけで息が荒い。
「全く…お前は、隙だらけなんだよ。」
黒須は、ぶっきらぼうに言い放つ。そして、釜を振り上げ、襲い掛かってくる奇妙な樹木の枝を次々と切り刻んだ。
「…黒須。」
「でも、まあ、前よりかは、成長したけどな。」
黒須は、そう言うと再び牧師の方を向いた。
「あ、あかねちゃんは…?」
サトコは、辺りをキョロキョロする。 ここは、確か、教会の中であり、自分はあかねちゃんを連れ戻しに来たのだ。
「ああ。あの子か。心配ない。今、私の術で何とか持ちこたえている。お前ら、危なかったぞ。」
すると、遠くの方から樹木が二人に襲い掛かった。黒須は、釜を振り回し再び切り刻んだ。
「おしゃべりは、そこまでで…あなたの願いをここで、叶えて差し上げましょう。」
牧師は、鈴を鳴らし始めた。
波動は、ユラユラと波を描きながら、黒須を取り囲む。そして、牧師の肌は徐々に浅黒くなって口は裂け歯はギザギザになった。
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