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ホントのワタシ
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深い深い霧の中だった。
巨大な花の姿をした化け物は、むしゃむしゃ美味しそうにセイラの母親を食べていた。
母の身体は、花に吸い込まれ
ていくー。
おぞましい花の化け物は、舌から唾液を垂らしながらむしゃむしゃむしゃむしゃボリボリ母を食べていた。
その日の朝は、いつにもなく重苦しい感じがした。
ー何故だろう?この鉛が胸一杯に詰まった不快な感じは・・・
ふと、机に視線を移すと、そこにはいつの間に万年筆があった。
「ねぇ、ブリギット・・?」
セイラは、ブリギットのベットを覗いた。
ブリギットの姿はそこになく、シーツが綺麗に畳まれてあった。
セイラは、部屋の外に出ると中庭のベンチにセイラが座っているのが見えた。
「あら、セイラちゃんおはよう。」
「おはよう。早いね。何処行ってたの?」
「うん、内緒。」
ブリギットは、言葉を濁した。
「セイラは、どうしてこの学校に入ったの?勉強が嫌いだっただけじゃないでしょ?」
「私には叔父がいるの。叔父と母は、幼い頃に両親を亡くしてしまって二人で施設で暮らしていたの。そんな中ー、母は魔女としての才能を見抜かれ、魔女学校に入ったんだ。」
「それって・・・」
「この学校だよ。母がここの学校の卒業生なんだ。」
「そうなんだ。」
その日の1時限目は、美術の時間であった。
教室に入るやいなや、ルーナと目が合った。入学してから、ルーナとその取り巻きからことごとく嫌がらせを受け続けた。どういう訳か、彼女はセイラの全てが気に食わないようであり、セイラに対してだけ刺々しい言動を取ることが多かった。
しかし、セイラは鋼の精神を持っていた。母親に関する秘密を何としてでも入手しなくてはならないー。
「あれ、セイラと、ブリギットじゃん。久しぶりに・・」
ルーナは、底意地の悪い顔をしてステッキを携えると呪文を唱えた。
「アクシル、エル、ブラスト、パック・・」
すると、ルーナ絵の具が宙に舞い上りチューブの蓋が外れた。そして、空中に舞いセイラの髪目掛けてロケット弾のように次々と飛んで行った。
セイラの髪は、絵の具でべちゃついてしまった。
「あれ・・・」
セイラは、振り返る。
ーふん。この学校は純血の正統な魔女学校なのよ。あんたなんかが来るような所じゃないの。ー
「ちょっと、あなた、さっき・・」
ブリギットは、席を立つとルーナを睨みつけた。
「いいの、ブリギット、相手にした所であいつらは何も変わらないから。」
セイラは、ブリギットを制すると画材を拡げ席に着いた。
ルーナは、口をへの字に曲げると脚を組みのけ反るような感じで椅子に座った。
今まで、何度か魔法を使って、水を賭けたり小麦粉や物をぶつけるなどして嫌がらせをしてきたが、一向になびかない。それどころか、毅然とした態度で1日を過ごす。
彼女からは、コチラを見ずに凛とした意志の強さを感じる。
また、時折、感じるセイラの視線からコチラを憐れんでいるようにも見えた。
「セイラの奴、ムカつく…」
ルーナは、顔を強く歪ませセイラを睨みつけた。
この日の2次元目は、占い学だった。
「占いか…」
「セイラ、占い嫌いなの・・?」
「うーん、なんか怖くて・・」
「怖い?授業は、楽しいよ。先生とても評判良いみたいだし。これからのこととか、真剣なアドバイスも貰えるよ。セイラ、ほとんどずっと出てなかったみたいけど、楽しいよ。」
ブリギットは、無邪気にワクワクながら教科書を眺めていた。
「あのね、私、母が亡くなった時の事を思い出すんだ。あの時の恐怖がまた蘇ってしまったら、どうしようって・・」
セイラは、一つだけ不安な要素があった。占いをすることで、あの日の悪夢を再現され、思い出し苦悩するのでは無いかとー。
「大丈夫だよ。先生は、生徒が嫌がるような事は絶対にしない人だから。寧ろその逆だよ。皆、不安が晴れて心が軽くなり幸せな気持ちになるんだって。」
「分かった。私、受けてみるよ。」
セイラは、鋼の精神で心に決めた。
「では、皆さん、席に着きましたね。」
先生は、丸渕眼鏡の小柄な感じの人だった。
「今までは、ざっくりした説明でしたが、これからは皆さんには、占いの基礎的な部分から学んで頂きます。占いには、2種類ありまして、人の心を導き浄化する光の占い、人の心を惑わし悪い方向へと導く闇の占いがあります。で、皆さんに学んで頂くのは、光の占いです。光の占いで、迷える魂を正しい方向へと誘導するのです。ここまでで、何か、質問は?」
「セオドラ先生、占いは必ず当たるのですか?」
生徒の一人が、唐突に手を挙げた。
「占いは、不確かなものなのです。被験者のその時のメンタル面により左右されます。被験者の気分が良いときは、良い結果になり、悪い事を考えていているときは、自ずと悪い結果になるのです。」
先生は、そう言うと水晶に手を当てた。水晶は、宝石のように虹色にキラキラ輝いた。
「では、まず試しに4人位、占ってこれから指し示す方向について、一緒に考えていきましょう。。」
教室内が、ざわめいた。
「では、私が決めましょうか…まず、エリカ、出て」
「あ、はい。」
エリカと呼ばれた生徒は、ガクガク震えながら先生の前へと歩み寄る。
「あら、あなた、素敵なオーラを持ってらっしゃるのね…素晴らしい、力強い青色のオーラです。」
セオドラは、水晶に手を当てると目を瞑り身体を前後にカクカク揺らした。
「ありがとうございます…」
エリカは、顔を赤らげ
「あら、あなた…」
「え、!?な、何ですか?」
「あなたは、あと3年したら転機が訪れます。それは、あなたにとって最大の試練となります。しかし、それを乗り越えれば、あなたは偉大な魔女になれますよ。」
「あ、ありがとうございます…」
エリカは、ボソッとそう言うとそそくさ席に戻った。
「では・・そこのあなた。」
セオドラは、ブリギットに視線を向けた。
「あ、はい・・」
ブリギットは、恐る恐る着席した。
先生は、水晶に手を当てると再び前後にカクカク大きく揺れた。水晶は、アイボリーカラーに輝いた。
「あら、あなた、オーラは綺麗ね。優しい心を持ってますね。」
「ありがとうございます。」
「おや、所で・・・」
セオドラは、首を傾げ神妙な顔で水晶の中を覗き込んだ。
「な、何でしょうか?」
ブリギットは、不安になりセオドラの顔を覗き込んだ。
「あなたは、平和を願い平和を愛してきたのね、良いでしょう。」
そして、セオドラは一泊置くと、深呼吸をし深刻そうに話し始めた。
「ブリギット、あなたには確かに悩み事が沢山ありますね。しかし、それはどう頭を抱えた所で無意味なのです。しかしながら・・」
セオドラが、そう言いかけるやいなやー
ブリギットは、席を立つと席に戻り教材を片しそのまま外へと駆け出した。
「ブリギット!」
セイラは、慌てて教材を片すとブリギットの後を追った。
「ブリギット、待って!どうしちゃったの?」
ブリギットは、廊下を猛ダッシュで走り突き当りの影へと消えた。
「ブリギット、ブリギット!」
セイラは、しきりに名前を呼ぶと廊下を駆け出し中庭に出た。
辺りをキョロキョロ見渡すと、中庭の奥の方のベンチで、ブリギットが萎れた花のように項垂れているのが見えた。
「ブリギット!」
セイラは、ゼェゼェ息をするとブリギットの隣に座った。
「やっぱり、私、魔女に向いてなかったんだ。何で、こんな所に来ちゃったんだろ・・・」
ブリギットは、今にも泣き出しそうな感じであり全身が鉛のように下を向いて重苦しい雰囲気であった。
「でも、受かったでしょ。校長先生だって許可してくれたじゃん。」
「違うよ。私が、カペラ家の人間だから、どの先生も圧力に負けて・・」
ブリギットの目には涙で溢れていた。。
「それで・・そして、成績見たの・・そしたら、魔女の素質は無いって、厳しいって判定が来たんだ。各項目が合格ラインを大きく下回っていた。それで、総合合格ラインが1000点満点中、750点なんだけど…私は、650点だった…それに、先生の占いは絶対に当たると魔法界で評判だから…」
ブリギットは、声を震わせながら早口でそう言うと、泣きじゃくり涙を頬いっぱいに流した。
「どうしよう・・ママとパパに何て言ったら・・」
「そんな・・」
セイラは、戸惑いこれ以上何を言ったらいいのか分からなかった。
皆、魔法の素質がある人ばかりだ。
皆、各々の試験の状況や好きな魔法や得意魔法を自慢気に披露しており、将来に夢を膨らませている。彼女らは、合格率4%の難関をくぐり抜けたエリートばかりだ。エリートなら、総合で900点は余裕に超えることだろうー。
この世界では、この魔法界では魔女こそが花形であり、一番価値があるのだ。あらゆる華やかな魔法を自在に操り、人々に感動を与える。前線に立って闇の勢力と戦い世界を守る。皆、そう教え込まれて刷り込まれてそれが当たり前のように育ってきたのだろう。
とりわけ、ブリギットの家系は魔法のエキスパートだ。落ちこぼれは決して許されないだろう。彼女のプレッシャーは、相当重いものがある。
魔女の才能とは、人間界でいう、知力学力、社会適応能力や収入のようなものなのだろう。努力では抗えない、元ある能力で格差があるのも残酷な事実だとセイラは、感じた。
ーブリギットは、さぞ苦しい事だろうー
彼女に、魔法の才能がないわけではない…
だが、セイラは、ブリギットが魔女よりも何か特別な才能がある気がしてならなかったのだ。人には、適材適所がある。本来の能力を発揮出来る場所があるなの筈だ。ブリギットの家族は、それを知らないのだろう。
セイラは、叔父から、校長は魔法界でも有名な偉大な魔法使いだと聞かされている。
彼は、幾重もの闇の魔法使いを葬ってきた。
その上、彼は人格者であり、教え子の能力を見極め才能を引き出す事に長けていると、評判が高い。また、不正が何より嫌いで、彼は何事も公正を期すと有名である。
ブリギットがこの学校に来たのも、きっと校長が何か考えての事だろう。
そんな叔父は、魔法界と人間界の橋渡しをしている。彼は、校長を長年間近で見ており、誰よりも詳しい。
だから、校長がブリギットの母親に屈してブリギットを受からせたことは、どうしても考え難い。
ブリギットは、魔法の才能がある。
魔法に関する何かの才能が、ある筈なのだ。
彼女は、魔女になりたい気持はある。
だが・・現実と理想のギャップに苦しんでいるようだ。
セイラは、何を言えば良いのか分からず、泣きじゃくる彼女の側に寄り添うことしか出来なかった。
大木の裏から、禍々しい異質な魔の気配が漂う。そこには、黒い羽根で覆われた奇妙な人影がじっと二人を見つめていたのだった。
巨大な花の姿をした化け物は、むしゃむしゃ美味しそうにセイラの母親を食べていた。
母の身体は、花に吸い込まれ
ていくー。
おぞましい花の化け物は、舌から唾液を垂らしながらむしゃむしゃむしゃむしゃボリボリ母を食べていた。
その日の朝は、いつにもなく重苦しい感じがした。
ー何故だろう?この鉛が胸一杯に詰まった不快な感じは・・・
ふと、机に視線を移すと、そこにはいつの間に万年筆があった。
「ねぇ、ブリギット・・?」
セイラは、ブリギットのベットを覗いた。
ブリギットの姿はそこになく、シーツが綺麗に畳まれてあった。
セイラは、部屋の外に出ると中庭のベンチにセイラが座っているのが見えた。
「あら、セイラちゃんおはよう。」
「おはよう。早いね。何処行ってたの?」
「うん、内緒。」
ブリギットは、言葉を濁した。
「セイラは、どうしてこの学校に入ったの?勉強が嫌いだっただけじゃないでしょ?」
「私には叔父がいるの。叔父と母は、幼い頃に両親を亡くしてしまって二人で施設で暮らしていたの。そんな中ー、母は魔女としての才能を見抜かれ、魔女学校に入ったんだ。」
「それって・・・」
「この学校だよ。母がここの学校の卒業生なんだ。」
「そうなんだ。」
その日の1時限目は、美術の時間であった。
教室に入るやいなや、ルーナと目が合った。入学してから、ルーナとその取り巻きからことごとく嫌がらせを受け続けた。どういう訳か、彼女はセイラの全てが気に食わないようであり、セイラに対してだけ刺々しい言動を取ることが多かった。
しかし、セイラは鋼の精神を持っていた。母親に関する秘密を何としてでも入手しなくてはならないー。
「あれ、セイラと、ブリギットじゃん。久しぶりに・・」
ルーナは、底意地の悪い顔をしてステッキを携えると呪文を唱えた。
「アクシル、エル、ブラスト、パック・・」
すると、ルーナ絵の具が宙に舞い上りチューブの蓋が外れた。そして、空中に舞いセイラの髪目掛けてロケット弾のように次々と飛んで行った。
セイラの髪は、絵の具でべちゃついてしまった。
「あれ・・・」
セイラは、振り返る。
ーふん。この学校は純血の正統な魔女学校なのよ。あんたなんかが来るような所じゃないの。ー
「ちょっと、あなた、さっき・・」
ブリギットは、席を立つとルーナを睨みつけた。
「いいの、ブリギット、相手にした所であいつらは何も変わらないから。」
セイラは、ブリギットを制すると画材を拡げ席に着いた。
ルーナは、口をへの字に曲げると脚を組みのけ反るような感じで椅子に座った。
今まで、何度か魔法を使って、水を賭けたり小麦粉や物をぶつけるなどして嫌がらせをしてきたが、一向になびかない。それどころか、毅然とした態度で1日を過ごす。
彼女からは、コチラを見ずに凛とした意志の強さを感じる。
また、時折、感じるセイラの視線からコチラを憐れんでいるようにも見えた。
「セイラの奴、ムカつく…」
ルーナは、顔を強く歪ませセイラを睨みつけた。
この日の2次元目は、占い学だった。
「占いか…」
「セイラ、占い嫌いなの・・?」
「うーん、なんか怖くて・・」
「怖い?授業は、楽しいよ。先生とても評判良いみたいだし。これからのこととか、真剣なアドバイスも貰えるよ。セイラ、ほとんどずっと出てなかったみたいけど、楽しいよ。」
ブリギットは、無邪気にワクワクながら教科書を眺めていた。
「あのね、私、母が亡くなった時の事を思い出すんだ。あの時の恐怖がまた蘇ってしまったら、どうしようって・・」
セイラは、一つだけ不安な要素があった。占いをすることで、あの日の悪夢を再現され、思い出し苦悩するのでは無いかとー。
「大丈夫だよ。先生は、生徒が嫌がるような事は絶対にしない人だから。寧ろその逆だよ。皆、不安が晴れて心が軽くなり幸せな気持ちになるんだって。」
「分かった。私、受けてみるよ。」
セイラは、鋼の精神で心に決めた。
「では、皆さん、席に着きましたね。」
先生は、丸渕眼鏡の小柄な感じの人だった。
「今までは、ざっくりした説明でしたが、これからは皆さんには、占いの基礎的な部分から学んで頂きます。占いには、2種類ありまして、人の心を導き浄化する光の占い、人の心を惑わし悪い方向へと導く闇の占いがあります。で、皆さんに学んで頂くのは、光の占いです。光の占いで、迷える魂を正しい方向へと誘導するのです。ここまでで、何か、質問は?」
「セオドラ先生、占いは必ず当たるのですか?」
生徒の一人が、唐突に手を挙げた。
「占いは、不確かなものなのです。被験者のその時のメンタル面により左右されます。被験者の気分が良いときは、良い結果になり、悪い事を考えていているときは、自ずと悪い結果になるのです。」
先生は、そう言うと水晶に手を当てた。水晶は、宝石のように虹色にキラキラ輝いた。
「では、まず試しに4人位、占ってこれから指し示す方向について、一緒に考えていきましょう。。」
教室内が、ざわめいた。
「では、私が決めましょうか…まず、エリカ、出て」
「あ、はい。」
エリカと呼ばれた生徒は、ガクガク震えながら先生の前へと歩み寄る。
「あら、あなた、素敵なオーラを持ってらっしゃるのね…素晴らしい、力強い青色のオーラです。」
セオドラは、水晶に手を当てると目を瞑り身体を前後にカクカク揺らした。
「ありがとうございます…」
エリカは、顔を赤らげ
「あら、あなた…」
「え、!?な、何ですか?」
「あなたは、あと3年したら転機が訪れます。それは、あなたにとって最大の試練となります。しかし、それを乗り越えれば、あなたは偉大な魔女になれますよ。」
「あ、ありがとうございます…」
エリカは、ボソッとそう言うとそそくさ席に戻った。
「では・・そこのあなた。」
セオドラは、ブリギットに視線を向けた。
「あ、はい・・」
ブリギットは、恐る恐る着席した。
先生は、水晶に手を当てると再び前後にカクカク大きく揺れた。水晶は、アイボリーカラーに輝いた。
「あら、あなた、オーラは綺麗ね。優しい心を持ってますね。」
「ありがとうございます。」
「おや、所で・・・」
セオドラは、首を傾げ神妙な顔で水晶の中を覗き込んだ。
「な、何でしょうか?」
ブリギットは、不安になりセオドラの顔を覗き込んだ。
「あなたは、平和を願い平和を愛してきたのね、良いでしょう。」
そして、セオドラは一泊置くと、深呼吸をし深刻そうに話し始めた。
「ブリギット、あなたには確かに悩み事が沢山ありますね。しかし、それはどう頭を抱えた所で無意味なのです。しかしながら・・」
セオドラが、そう言いかけるやいなやー
ブリギットは、席を立つと席に戻り教材を片しそのまま外へと駆け出した。
「ブリギット!」
セイラは、慌てて教材を片すとブリギットの後を追った。
「ブリギット、待って!どうしちゃったの?」
ブリギットは、廊下を猛ダッシュで走り突き当りの影へと消えた。
「ブリギット、ブリギット!」
セイラは、しきりに名前を呼ぶと廊下を駆け出し中庭に出た。
辺りをキョロキョロ見渡すと、中庭の奥の方のベンチで、ブリギットが萎れた花のように項垂れているのが見えた。
「ブリギット!」
セイラは、ゼェゼェ息をするとブリギットの隣に座った。
「やっぱり、私、魔女に向いてなかったんだ。何で、こんな所に来ちゃったんだろ・・・」
ブリギットは、今にも泣き出しそうな感じであり全身が鉛のように下を向いて重苦しい雰囲気であった。
「でも、受かったでしょ。校長先生だって許可してくれたじゃん。」
「違うよ。私が、カペラ家の人間だから、どの先生も圧力に負けて・・」
ブリギットの目には涙で溢れていた。。
「それで・・そして、成績見たの・・そしたら、魔女の素質は無いって、厳しいって判定が来たんだ。各項目が合格ラインを大きく下回っていた。それで、総合合格ラインが1000点満点中、750点なんだけど…私は、650点だった…それに、先生の占いは絶対に当たると魔法界で評判だから…」
ブリギットは、声を震わせながら早口でそう言うと、泣きじゃくり涙を頬いっぱいに流した。
「どうしよう・・ママとパパに何て言ったら・・」
「そんな・・」
セイラは、戸惑いこれ以上何を言ったらいいのか分からなかった。
皆、魔法の素質がある人ばかりだ。
皆、各々の試験の状況や好きな魔法や得意魔法を自慢気に披露しており、将来に夢を膨らませている。彼女らは、合格率4%の難関をくぐり抜けたエリートばかりだ。エリートなら、総合で900点は余裕に超えることだろうー。
この世界では、この魔法界では魔女こそが花形であり、一番価値があるのだ。あらゆる華やかな魔法を自在に操り、人々に感動を与える。前線に立って闇の勢力と戦い世界を守る。皆、そう教え込まれて刷り込まれてそれが当たり前のように育ってきたのだろう。
とりわけ、ブリギットの家系は魔法のエキスパートだ。落ちこぼれは決して許されないだろう。彼女のプレッシャーは、相当重いものがある。
魔女の才能とは、人間界でいう、知力学力、社会適応能力や収入のようなものなのだろう。努力では抗えない、元ある能力で格差があるのも残酷な事実だとセイラは、感じた。
ーブリギットは、さぞ苦しい事だろうー
彼女に、魔法の才能がないわけではない…
だが、セイラは、ブリギットが魔女よりも何か特別な才能がある気がしてならなかったのだ。人には、適材適所がある。本来の能力を発揮出来る場所があるなの筈だ。ブリギットの家族は、それを知らないのだろう。
セイラは、叔父から、校長は魔法界でも有名な偉大な魔法使いだと聞かされている。
彼は、幾重もの闇の魔法使いを葬ってきた。
その上、彼は人格者であり、教え子の能力を見極め才能を引き出す事に長けていると、評判が高い。また、不正が何より嫌いで、彼は何事も公正を期すと有名である。
ブリギットがこの学校に来たのも、きっと校長が何か考えての事だろう。
そんな叔父は、魔法界と人間界の橋渡しをしている。彼は、校長を長年間近で見ており、誰よりも詳しい。
だから、校長がブリギットの母親に屈してブリギットを受からせたことは、どうしても考え難い。
ブリギットは、魔法の才能がある。
魔法に関する何かの才能が、ある筈なのだ。
彼女は、魔女になりたい気持はある。
だが・・現実と理想のギャップに苦しんでいるようだ。
セイラは、何を言えば良いのか分からず、泣きじゃくる彼女の側に寄り添うことしか出来なかった。
大木の裏から、禍々しい異質な魔の気配が漂う。そこには、黒い羽根で覆われた奇妙な人影がじっと二人を見つめていたのだった。
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