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第五話 風の谷のドラゴン ①
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その日の朝は、待ちに待った飛行術だ。セイラが、一番楽しみにしていた時間である。
何故、自分がそこまで飛ぶことにこだわりがあるのかが、分からない。だが、箒を握ると自然と精力みなぎり身体の芯に熱を帯びた感覚を覚えた。
遠い記憶に、母が箒に跨り空を自在に飛び回った光景を想い出す。母は、風の精のようであり風を自在に操っているかのようだった。
母は、洗練されており誰より速く飛ぶのが上手かった。
寮生は、箒を持って練習所へと向かった。向かう途中で生徒らは、胸を高鳴らせ雑談をしていた。
皆、飛ぶのは楽しみなようだった。
庭先に着くと、生徒らの賑やかな談笑が繰り広げられていた。
「ねぇ、ねぇ、私、飛行得意なんだよ。お母さんと練習したから。」
「ホント?ねぇ、だったら今度練習に付き合ってよ。行ってみたい所があるんだから。」
「どうせ、ブティックとかコスメや魔具店にでも行くんでしょ?」
「あはは、バレた?でも、これ先生には内緒ね。」
皆、入学したてだというのに、皆互いに顔を知っているかのように、黄色い声ではしゃいでいた。魔女の一族は名家同士の付き合いがあり、新入生同士でも知り合うパターンは少なくはないようだ。
彼女達は、上流階級の貴婦人かエルフのような上品で優雅さがある。
こうしてみると、全体的な雰囲気や瞳の色、佇まいや言動まで自分は明らかに場違いであり、セイラは顔を赤らめた。叔父の勧めで受けて入ったものの、何故自分がここに居るのか、入ることを決めたのか、セイラは分からなくなってきた。
否、それは、大っ嫌いな勉強からおさらば出来るというとてもシンプルな理由から来るものだった。
「皆さん、おしゃべりの時間はこれまでです!」
遠くの方から、ショートヘアでガタイの良い女教師が笛を響かせ、声を張り上げた。
「皆さん、揃いましたね。これから飛行術の担当をする、マーガレット・グリーンです。では、今から列になってもらいます。」
マーガレットは、威勢のよいハスキーボイスで生徒を庭の中央へと誘導した。
生徒は、言われるがまま一列になり箒を右脇に置いた。
「では、私が見本を見せます。
見本に倣って、箒に跨がる。そして、全身の力を抜く。」
マーガレットは、こう言い箒を浮かせるとそれに跨り宙に浮いた。生徒は、黄色い声で拍手した。
「ねぇ、これでホントにブティックとかコスメ屋に行けちゃうんじゃないの?練習頑張ろう!」
「そうね‥これで、私は殿方のいる元へと、行くわ。」
「えー誰々、好きな人入るの?」
生徒は、再び仔犬のようにキャッキャと、はしゃいでいた。
「これから、私の合図と共に乗ってもらいます。1、2、3で跨ります。では、構えて、1,2、3..」
マーガレットの合図共に、生徒は箒に跨がった。
生徒の中で、得意な子と苦手な子に大きく別れた。得意な子は、優雅に円を描き中を華麗に浮く。苦手な子は、四方八方に箒を鉄砲玉のように勢い良くくねらせていた。
セイラとブリギットは比較的出来るようであり、先生の言われたように宙に浮いた。
「見て・・私、ちゃんとまともに箒に乗れた!」
セイラは、はしゃいでブリギットに視線を移した。
「何、言ってるの?しょっぱなから飛びまくっていたでしょう?」
「あの時は、基礎がなってなかったのよ。」
セイラは、こう言いつつも嬉しくて仕方がなかった。
「では、箒をこうして垂直に向けます。力は、抜く。」
マーガレットは箒を垂直にし、急上昇させた。辺りにジェット気流のような突風が巻き起こり、生徒達は歓声を上げた。
生徒は、先生に習い箒を垂直に向けた。
すると、箒が急上昇し軽く悲鳴を上げる者までいた。
「良いですか?落ち着いて、力を抜いて精神を上に向けるのです。深呼吸もしてね。」
セイラと、ブリギットは言われるままに精神統一し、深く息を吸った。二人の箒は、みるみると上へ上へと上がっていった。
上から学校の城を見下ろし、生徒らは声を弾ませていた。
風がとても心地よく、生徒を優しく包み込む。
「あ、セイラ、ちょっと待って……」
ブリギットは、向こう側を見て急に目を皿のように丸く開けた。
セイラは、ブリギットに近づき視線を合わせた。そこで、小さな謎の生き物が真っ逆さまに落ちているのが見えた。
「何あれ…?」
「さあ。私も初めて見るわ。」
ブリギットは、そう言うと謎の生き物の方へと箒を進めた。
「あ、待ってよ・・・」
セイラは、困惑しながらもその謎の生き物に近付く。
すると、急に強風が巻き起こり二人は、一瞬目を閉じた。
「待って、あと、もう少し・・」
ブリギットは、箒をドラゴンに向けそして、着ていたローブでキャッチした。
奇妙な生き物は、仔猫のようなサイズをしており、小さなドラゴンのように見えた。
「ドラゴンの子供かな‥?」
「そうだね、お父さんとお母さんを探さないと‥」
二人は、辺りを見回りながら箒を進めた。丘を抜け、しばらく真っ直ぐ飛んでいた。
すると、急に竜巻のような強風が吹き荒れ二人はクルクル旋回し、谷底へと落下していった。
目を覚ますと、そこには奇妙な鳴き声が響き渡っていた。猛獣のような狼のような、そんな低く渋みのある声だ。
二人は、谷底ふと落下したようだ。不思議と身体の痛みはなく、傷すらなかった。セイラとブリギットは、顔を合わせ首を傾げた。 崖と崖の間からは、強風がビュービュー渦を成して辺りを包み込んでいた。
風の向こう側を目を凝らして見ると、黒い綺羅びやかな鱗のドラゴンが、群れを成して暮らしていたのが見えた。
彼らは、ドーム型の巣穴を作り子育てをしていた。
ドラゴンは、互いに通じ合い各々謎の鳴き声を上げてコミニケーションをとっていた。
挨拶したり笑ったり、心配したり子を叱りつけたりし、そこには独自のコミュニティーが出来上がっていたのだ。
それは、今までに見たことのない魔訶不思議な光景で、二人は息を飲んだ。
何故、自分がそこまで飛ぶことにこだわりがあるのかが、分からない。だが、箒を握ると自然と精力みなぎり身体の芯に熱を帯びた感覚を覚えた。
遠い記憶に、母が箒に跨り空を自在に飛び回った光景を想い出す。母は、風の精のようであり風を自在に操っているかのようだった。
母は、洗練されており誰より速く飛ぶのが上手かった。
寮生は、箒を持って練習所へと向かった。向かう途中で生徒らは、胸を高鳴らせ雑談をしていた。
皆、飛ぶのは楽しみなようだった。
庭先に着くと、生徒らの賑やかな談笑が繰り広げられていた。
「ねぇ、ねぇ、私、飛行得意なんだよ。お母さんと練習したから。」
「ホント?ねぇ、だったら今度練習に付き合ってよ。行ってみたい所があるんだから。」
「どうせ、ブティックとかコスメや魔具店にでも行くんでしょ?」
「あはは、バレた?でも、これ先生には内緒ね。」
皆、入学したてだというのに、皆互いに顔を知っているかのように、黄色い声ではしゃいでいた。魔女の一族は名家同士の付き合いがあり、新入生同士でも知り合うパターンは少なくはないようだ。
彼女達は、上流階級の貴婦人かエルフのような上品で優雅さがある。
こうしてみると、全体的な雰囲気や瞳の色、佇まいや言動まで自分は明らかに場違いであり、セイラは顔を赤らめた。叔父の勧めで受けて入ったものの、何故自分がここに居るのか、入ることを決めたのか、セイラは分からなくなってきた。
否、それは、大っ嫌いな勉強からおさらば出来るというとてもシンプルな理由から来るものだった。
「皆さん、おしゃべりの時間はこれまでです!」
遠くの方から、ショートヘアでガタイの良い女教師が笛を響かせ、声を張り上げた。
「皆さん、揃いましたね。これから飛行術の担当をする、マーガレット・グリーンです。では、今から列になってもらいます。」
マーガレットは、威勢のよいハスキーボイスで生徒を庭の中央へと誘導した。
生徒は、言われるがまま一列になり箒を右脇に置いた。
「では、私が見本を見せます。
見本に倣って、箒に跨がる。そして、全身の力を抜く。」
マーガレットは、こう言い箒を浮かせるとそれに跨り宙に浮いた。生徒は、黄色い声で拍手した。
「ねぇ、これでホントにブティックとかコスメ屋に行けちゃうんじゃないの?練習頑張ろう!」
「そうね‥これで、私は殿方のいる元へと、行くわ。」
「えー誰々、好きな人入るの?」
生徒は、再び仔犬のようにキャッキャと、はしゃいでいた。
「これから、私の合図と共に乗ってもらいます。1、2、3で跨ります。では、構えて、1,2、3..」
マーガレットの合図共に、生徒は箒に跨がった。
生徒の中で、得意な子と苦手な子に大きく別れた。得意な子は、優雅に円を描き中を華麗に浮く。苦手な子は、四方八方に箒を鉄砲玉のように勢い良くくねらせていた。
セイラとブリギットは比較的出来るようであり、先生の言われたように宙に浮いた。
「見て・・私、ちゃんとまともに箒に乗れた!」
セイラは、はしゃいでブリギットに視線を移した。
「何、言ってるの?しょっぱなから飛びまくっていたでしょう?」
「あの時は、基礎がなってなかったのよ。」
セイラは、こう言いつつも嬉しくて仕方がなかった。
「では、箒をこうして垂直に向けます。力は、抜く。」
マーガレットは箒を垂直にし、急上昇させた。辺りにジェット気流のような突風が巻き起こり、生徒達は歓声を上げた。
生徒は、先生に習い箒を垂直に向けた。
すると、箒が急上昇し軽く悲鳴を上げる者までいた。
「良いですか?落ち着いて、力を抜いて精神を上に向けるのです。深呼吸もしてね。」
セイラと、ブリギットは言われるままに精神統一し、深く息を吸った。二人の箒は、みるみると上へ上へと上がっていった。
上から学校の城を見下ろし、生徒らは声を弾ませていた。
風がとても心地よく、生徒を優しく包み込む。
「あ、セイラ、ちょっと待って……」
ブリギットは、向こう側を見て急に目を皿のように丸く開けた。
セイラは、ブリギットに近づき視線を合わせた。そこで、小さな謎の生き物が真っ逆さまに落ちているのが見えた。
「何あれ…?」
「さあ。私も初めて見るわ。」
ブリギットは、そう言うと謎の生き物の方へと箒を進めた。
「あ、待ってよ・・・」
セイラは、困惑しながらもその謎の生き物に近付く。
すると、急に強風が巻き起こり二人は、一瞬目を閉じた。
「待って、あと、もう少し・・」
ブリギットは、箒をドラゴンに向けそして、着ていたローブでキャッチした。
奇妙な生き物は、仔猫のようなサイズをしており、小さなドラゴンのように見えた。
「ドラゴンの子供かな‥?」
「そうだね、お父さんとお母さんを探さないと‥」
二人は、辺りを見回りながら箒を進めた。丘を抜け、しばらく真っ直ぐ飛んでいた。
すると、急に竜巻のような強風が吹き荒れ二人はクルクル旋回し、谷底へと落下していった。
目を覚ますと、そこには奇妙な鳴き声が響き渡っていた。猛獣のような狼のような、そんな低く渋みのある声だ。
二人は、谷底ふと落下したようだ。不思議と身体の痛みはなく、傷すらなかった。セイラとブリギットは、顔を合わせ首を傾げた。 崖と崖の間からは、強風がビュービュー渦を成して辺りを包み込んでいた。
風の向こう側を目を凝らして見ると、黒い綺羅びやかな鱗のドラゴンが、群れを成して暮らしていたのが見えた。
彼らは、ドーム型の巣穴を作り子育てをしていた。
ドラゴンは、互いに通じ合い各々謎の鳴き声を上げてコミニケーションをとっていた。
挨拶したり笑ったり、心配したり子を叱りつけたりし、そこには独自のコミュニティーが出来上がっていたのだ。
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