アビス・イン・ワンダーランド~ゲームギルドの深淵へようこそ~

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戦慄と地獄のバトルロワイヤル ③

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会場内に、歓声が轟くー。

『赤ずきんのレッドさん、ルール違反により、50点減点。アリスさんは、80点減点。』

司会者はため息つくも、会場内には、拍手喝采の渦が巻き起こった。

赤ずきんは、大きく手を振りながらその場を後にした。

「あ、レティーさん…」
バックヤードでヒカリは、赤ずきんに駆け寄った。
ーと、どっと疲労が現れ赤ずきんにもたれかかる形となった。

「おう…お前。大丈夫か?」
 赤ずきんは、ヒカリを抱き抱えた。

「大丈夫です。まだ、術が解けきってないようで…それにしても、良かった…無事だったんですね。」
「ああ。こういうのは、慣れてるからな。」
「そうなんですね。そういえば、レティーさんは、炎属性だった筈ですよね?氷属性も扱えるんですか?」
「奴の能力が、現実を反転して見せる事なんだ。炎の逆が、水か氷だろ…?私は、氷の方にかけた。水は正直嫌だったんだが、氷で良かった…」
「けど、ルール違反、大丈夫なんですか…?」
「この大会の主催者が、アウトローなんだよ。ルールなんてものは建前で、自由なんだ。大方、八割方がグルだ」

「へぇー…」
ゲーム世界にも前世のような訳ありな深い闇が隠されているようで、ヒカリは強い衝撃を受けた。


3階観客席の奥の方から、モルガンが駆け寄ってやってきた。
「赤ずきん、お疲れ様。ゴメンなさいね。大会を手伝う側だったから…」
「よお、モルガン。順調だから大丈夫だ、この通り、ピンピンしてら。」
赤ずきんは、得意げに右腕をブンブン振り回して見せた。
「また、やり過ぎて大ケガしないようにね。」
「わーってるよ。」


バックヤードで、アリスが苦虫を噛み潰したような顔をしスマイルウォッチ越しに、キグナスのリーダーと話をしていた。

「私は、彼女を侮ってました。奴はゴリラ並に強いので、物理攻撃はこちらの不利になると思いました。ですので、ルナ・ムーンの力でレッドの体力精神力をそぐ予定でした。」

彼女は酷く焦躁しきっており、声を震わせていた。

『その、ルナ・ムーンの力は、発揮出来たのだろうな?』
通信機側から、低く渋い声が響いてきた。

「すみません。それは、出来ませんでした。」

『何故だ?』

「私は、その力で奴の精神を抉り再起不能にする予定でした。何せ、不死身ですからね。ですが、奴に殆ど効きませんでした。しかも、強運の持ち主で、私の力を応用し氷属性を使いました。水属性なら、コチラの有利だったのですが…」

『誰が、貴様に力を与えたと思ってるんだ?次は、無いと思え。』

「はい…分かりました。必ずや、完膚なきまでにたたきのめし、勝利してみせます。」
アリスは、眉を強く釣り上げ唇をキツく噛み締めた。

『健闘を祈る。』

ーと、スマイルウォッチの通信が切れた。


ーふん、赤いゴキブリめ。大体、アイツは優雅さと品性に欠けますのよ。勘と運だけが良くても…

頭も冴える、アリスは怒りに塗れ。




第二試合が始まる間、ヒカリと赤ずきん、モルガン、パックは、他のグループの対戦を見ていた。

それはファイナルファンタジーのリマージュやゼルドの伝説を彷彿とする、壮大でスケールの高いバトルだった。

選手一人一人に、炎、水、氷、土、風、雷、光、闇 のいづれかの魔力が備わっており、武器や頭脳を駆使しながら対戦する。
更に、攻撃に特化した選手や防御に特化した選手など、特性は様々である。

大会に優勝したら、賞金1000万が貰える。

これは、国の名物となっており、応募者が後を絶えず、抽選することもある。


ヒカリは眼をキラキラ輝かせ、その光景を眺めていた。

「ヒカリちゃん、こういうの初めてでしょう?」
モルガンは、ヒカリに向かって微笑んだ。
「はい、初めてで、興奮してます。」
「よーく、見ときな。お前もいづれ闘うんだから。」
赤ずきんは、当たり前とばかりに覚めた口調を発した。
「はい…?戦うって、どういうことですか?」
ヒカリは、ドキッとし赤ずきんの方を向いた。
「お前も、戦っって稼いでもらわんと困るからな。」



全ギルドの戦いが終わったところで、二回戦の準備が始まった。

『一回戦が終わったところで、次のステージに進んで行きたいと思います!』

司会者は、爛漫とした声で次のステージについての説明を始めた。

『二回戦は、巨大迷路を進んでお宝をゲットして頂きます。先にお宝をゲットしたチームから順に得点をゲットすることができます。尚、これはチーム戦となっております。では、出場するギルドの皆さんは、こちらまで来てください。』

司会者の案内に合わせ、続々とギルドのメンバーがドーム中央のゲート前までやってきた。

『では、一回戦で戦ったギルドの順に入りたいと思います。スコーピオンの皆さんとキグナスの皆さんには、それぞれ二手のコースを進んで貰います。』



巨大スクリーンには、巨大な樹木が生い茂った巨大オオムカデが無数に這い蹲る、薄暗いエリアと、ジャングルの木々が生い茂り巨大なサソリがわらわら出現するエリアが映し出された。

それは、あまりにもリアルであり、会場内の者殆どが瞠目しざわめき出した。

「お、おい、こんなんでうちのギルドが勝てるのかよ…?!」
「そうだよな…勝てるとは、到底思えない…」 
「いつにも増して、ハード過ぎやしないか…?」
「あの、新入りのヒカリって子、大丈夫なんだろうな…?」

観客席にも、他のギルドのメンバーが観戦しており、ヒソヒソ不安を漏らしていた。

『尚、コースの一部やそのほか巨大生物は全てバーチャルですので、ご安心を…では、早速、どのコースにするか、私がを回します。』

二回戦のゲート前にガラガラが運び出され、司会者はガラガラを回した。

『で…スコーピオンが、Aコース、キグナスはBコースとなりました!』


「…ということは、オオムカデの方か…」

赤ずきんは、顎に手を当て何やら作戦を考えているようだった。

『制限時間は、二時間となっております。では、臨場感溢れる壮大な冒険を堪能くださいませ。』

そして、舞台装置のゲートが開かれた。


ゲートの中は、薄暗くジメジメしていた。所々に冷たい風が差し込み、ヒカリは急に不安になった。

ーこれは、本物のゲームの世界の中なのだ…前世でやっていたのとは、訳が違う…体力は削がれるしゲームオーバーは、死を意味するかも知れない… 

ヒカリは、ガクガク震えながら二人の後をついていった。


「危ない!」

赤ずきんがヒカリを押し倒し、サバイバルマシンを発砲した。

「え…!?」
 
ヒカリは、ドキッとし赤ずきんの銃口が向く方向へと視線を移した。

そこには、口からガスを吐き出しながらうねうね揺れ動いている、全長5メートルは超える、巨大オオムカデが出現し三人を襲いかかってきた。

「ち、透明になるスキルもあるのかよ…?」
赤ずきんは、再びサブマシンガンを巨大化させ、発砲した。

『ギョオぉぉおおーーーーーー!!!』

ムカデは大きく咆哮しながらも、朱色の炎に包まれた。

ーと、その直後、メラメラ燃え広がっていた炎は弱まりそして、消失した。

「また、発砲する?それとも、私がスキルを発動して…」
モルガンは、杖を構える。
「モルガン、攻撃はまだ早い。コイツは、もしかしたら攻撃すればするほど力が強くなるかもしれない。魔力を吸収するんだ。」
「そうね…今は、逃げて作戦を立てましょう。」

ーと、二人が何やら話しているのを後目に、ヒカリはパックが居ないのに気付いた。
「あ…」
「どうした?ヒカリ…」
「パックさんが、パックさんが居ないんです!さっきまで居たはずなのに…」

「あの鼠野郎、ちょこまか居なくなりやがって…」 
赤ずきんは、眉をひそめ深いため息をついた。

ーと、その直後だった。

ムカデはみるみる大きくなり、そして二体に分裂した。

『ぎょぉぉおおおおーーーー!!!』

その悪魔の雄叫びのごとき咆吼は、威力を増し辺りを絶望へと覆い尽くした。
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