上 下
5 / 28

覚醒した、光属性の魔力ー!? ①

しおりを挟む
突如出現した、巨大なクラーケンの脚に、村全体が阿鼻叫喚のパニックの渦に飲み込まれた。

長さ50メートルは優に超えるかと思われるソレは、黒紫色の煙を撒き散らしながら脚をうねうね大きく揺らしている。

奴は、最凶最悪の闇の魔王バルバロネの使い魔である。

この脚に飲み込まれると、魔人と化し、人間だった頃の記憶も理性も失ってしまうのだ。
 
適正がないと見なされた者は、そのままクラーケンの養分と成り果てる。

攻撃すると、その倍以上の攻撃を跳ね返されてしまうー。

どっちにしても、地獄が待っているのだ。


「ヤバいぞ…これは…」
「…そ、そんな…魔力を前駆使してバリケードを張り巡らせた筈なのに…」
「これじゃあ、村全体が崩壊しちまうー。」
「あ、私には、最後の切り札がある。」
「待てよ。シド。アタシに良い考えがある。」
赤ずきんは、眉間に大きく皺を寄せる。彼女の全身には汗が滝のように流れた。
赤ずきんは、10年以上、幾千練磨の修羅場を駆け抜けてきたが、これは初めての脅威であった。

「まさか…」
シドは、ハッとし戦慄する。
「仕方無いがー、それしかないー。私の中には、最終兵器がある。」
「駄目だ。よすんだ。お前の身が持たないー。」


ヒカリは、瞠目しながら阿鼻叫喚の地獄絵図を紡績と眺めていることしか、出来なかっった。

「おい、何してるんだ!?お前は、足でまといなんだから、早く、すっこんでな!」
「…はい、すみません…!」
ヒカリは、赤ずきんの呼び掛けにハッとし店の中へと引き下がった。

ー自分に、出来ることは無いのだろうかー?この世界でも、自分は非力なままなのだろうかー?私だって、誰かの力になりたいー。

ヒカリが悶々としていると、子供の泣き叫ぶ声が響き渡るー。

ハッとし外を見ると、小さい男の子が宙高く宙ずり状態になっていた。

子供の首に、脚が巻き付く。

ーこのままだと、子供は死んでしまうー。

ヒカリは、弓矢を構えると、
クラーケンの脚目掛けて弓矢を放つ。

弓矢は、眩い虹色の光線を帯びながらクラーケンの脚に直撃する。


だがーソレはびくりともしないー

紫色の煙が濃く強くなり、益々拡がっていく。


ーと、何処からともかくヒカリの脚に、不気味な脚が絡みつくー。


「この、ウスノロが!」
赤ずきんは、大きく舌打ちすると、照準を合わせると、、ヒカリに巻きついた脚目掛けて強く打つ。

だが、ビクリともしない。
黒紫色の煙が、大きく激しい渦を成し三人目掛けて飲み込もうとしている。

「駄目だ…この村は、もうおしまいだ…暖簾に腕押しだ…打つ手はないのか…!?」

シドは、ゼェゼェ大きく荒い息を吐き出す。
彼は、ずっとバリケードを張っていたようで相当エネルギーを消費していた。

クラーケンの脚は、照準を三人に合わせた。

赤ずきんは、銃を連射するも、ソレは徒労に終わるー。

シドのバリケードは、破れたー。

「いやあーーーーーーーーー!!!!」

ヒカリの悲鳴と共に、辺りに、花火のような虹のようなカラフルな、閃光が眩く照らす。

ヒカリの全身に強い熱を帯びた。

辺り全体が、強烈な光の渦に飲み込まれる。

赤ずきんとシドは、紡績とその光景を見つめているー。


光のシャワーに包まれたクラーケンの脚は、黒紫色の渦を無数に吐き出しながらウニョウニョ大きく揺れた。

辺りに大きな地響きが巻き起こり、人々は再び悲鳴を上げた。

そして、ソレは動きが次第に緩やかになり、黒紫色の煙も弱まっていった。

ーえ…?!

辺りに、奇妙な沈黙が、続いた。

「わー」
「すげー」
「一体、どうなって…」
人々は、瞠目しこの奇妙な光景に唖然としていた。

男の子は、無事だった。彼は、両膝ついてへなへな震えていた。

ヒカリは、状況が飲み込めないまま、呆然と立ち尽くしていた。

「…えっ!?え…!?」

ヒカリは、瞳孔を大きく揺らしながらぽかんと口を大きく開けていた。

『 チート』という言葉は、よく目や耳にしきたが、まさか、この自分にその能力が備わっているとでもいうのだろうかー?

ヒカリは、己の奇妙な魔力に眼を疑い、しばらく動けずにいたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【お天気】スキルを馬鹿にされ追放された公爵令嬢。砂漠に雨を降らし美少女メイドと甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い

月城 友麻
ファンタジー
公爵令嬢に転生したオディールが得たのは【お天気】スキル。それは天候を操れるチートスキルだったが、王族にはふさわしくないと馬鹿にされ、王子から婚約破棄されて追放される。 元々サラリーマンだったオディールは、窮屈な貴族社会にウンザリしていたので、これ幸いと美少女メイドと共に旅に出た。 倒したドラゴンを従えて、広大な砂漠を越えていくオディールだったが、ここに自分たちの街を作ろうとひらめく。 砂漠に【お天気】スキルで雨を降らし、メイドの土魔法で建物を建て、畑を耕し、砂漠は素敵な村へと変わっていく。 うわさを聞き付けた移民者が次々とやってきて、村はやがて花咲き乱れる砂漠の街へと育っていった。 その頃追放した王国では日照りが続き、オディールに頼るべきだとの声が上がる。だが、追放した小娘になど頼れない王子は悪どい手段でオディールに魔の手を伸ばしていく……。 女神に愛された転生令嬢とメイドのスローライフ? お楽しみください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

処理中です...