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ゲームの世界も、楽じゃない… ①

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『 虹ケ丘光』…

それは、大学の頃、合コンの数合わせにたまたまお呼びがかかった時の事だ。

自分の姿を見た、男性陣のあの微妙な空気を…

きっと、名前から美人で明るく華のある女性をイメージしていたのだろう…

自分は、デブスで内気で卑屈で陰気な性格をしている。
ゲーム廃人で、生粋の陰キャだ。

メイクやファッション、ヘアスタイルで繕っても、元が駄目だと益々不格好になる。
滑稽なピエロ、そのものである。

クジ引きで、自分の両隣に座った男子と自分の向かい側に座った男子の苦虫を噛み潰したような顔を、今でも鮮明に覚えている。



そんな自分は、転生し生まれ変わった。 

身長152cm、体重60キロオーバー、体脂肪率35オーバーのバストAカップで短足の光は、目まぐるしい変貌を遂げた。
身長165cm、体重47kg、体脂肪率15パーセント、Cカップ、スリーサイズ、85、55、85、と言う、スレンダーで脚長、細マッチョなナイスバディな体型を手に入れた。

厚ぼったい一重まぶたが、切れ長で大き目、まつ毛の長いアーモンドアイになり、まん丸とした大きなニンニクがふた周り小さくなりシャープで高くなった。エラの張ったふっくらした顔が、シャープな顎の卵形の顔になった。ゲジゲジ眉毛が、綺麗に山形に細く整えられた。分厚いたらこ唇が、薄めな唇に様変わりした。

眼は焦げ茶からエメラルドグリーン、髪はボサボサの黒髪から艶やかなプラチナブロンドへ、肌は白く、細く綺麗な手指へと変貌を遂げた。

耳は大きく尖り、まるで自分はエルフさながらの容貌をしている。

鼻が詰まったような渋い声は、アニメ調の可愛い声に様変わりした。


リマージュとゼルドの伝説さながらの、メルヘンで雄大な電脳世界でヒカリとして人生をやり直す。


 ヒカリは戦闘着を身に付け背中に弓と矢を担いで、街中を悠然と歩く。


すれ違う人が、自分に視線をやる。
特に、男性陣からの反応に驚かされる。

元の私の姿を知ったら、一体、どんな反応をするのやら…

大抵の男は、皆、口を揃えて、『 女は中身だ』『 どんなに顔が良くても、性格ブスだとダメだ』『 顔がブスでも、性格美人が好きだ』『 女は、痩せすぎよりぽっちゃり目がいい』
などと、言っている。

だが、ヒカリは知っている。

彼氏持ちの女は、大抵、平均以上の容姿であり、モテる女、男ウケが良いタレントは、皆、容姿端麗だ。

どんなに小柄だろうが、 自分の様な冴えない小太りのデブスは、どんなに中身が良くても誰からも見向きもされない。


男に人気のゲームキャラの女の子は、容姿端麗な美少女キャラしかいない。

明らかに、男達は綺麗事を抜かし嘘をついているのだ。

これは、明らかに臭い物に蓋状態だ。



生前、よくやっていた、リマージュの世界を彷彿とした、中世ヨーロッパ風の街並みの中を、ヒカリはぶらぶら散策する。

八百屋やパン屋、カフェやパブなどが建ち並ぶ賑やかな繁華街だ。

エルフと思われる長身で色白の種族に、ダークエルフと思われる種族、ドワーフに、猫耳族、ケット・シーを彷彿とするタキシード姿の二足歩行の猫…
人間に魔法使い、ピクシー族など、あらゆる多種多様な種族が共生していた。

ゲームのモニターから見ていた世界を、今リアルに見ているのだ。

ヒカリの胸は高鳴り、しばらく瞠目し立ち止まっていた。




スマホのアプリがびーと、音を立てた。

アプリをクリックし確認してみる。

「何これ?『 ミッション』…?」

そこには、見習い戦士用ミッションと記されていた。

自分は、レベル1、スコア1の見習い戦士らしい。

『 ミッション1、新しい仲間を作れ 報酬 50ダイヤ』

『 ミッション2、仲間を5人作れ 報酬 250ダイヤ』

『 ミッション3、ゴブリンを5体倒せ 報酬500ダイヤ』

『 ミッション4、宝の地図を探せ 報酬500ダイヤ』

『 ミッション5、宝の地図を頼りにドラゴンの丘を見つけ、お宝を奪還せよ。』

何これー?

前世も地獄だったのに、転生後もこうしてミッションがあるのかよ…と、ヒカリは大仰にため息を漏らした。

内気な性格なのに、仲間を作るだなんて…鬼畜すぎる…

だが、自分はゲームの世界の住人だ。





「すみません、ナイト・バロンの店を探していまして…」

「えっ…!?」
ヒカリは、ビクッと仰け反った。
振り返ると、見知らぬヒト族な青年が、コチラに声を掛けてきた。
ヒカリは、知らない人から話しかけられるのは苦手だ。
どうしても、心臓がひっくり返りそうになる。

「あ、ええと、私…まだ、ここに来たてなものでして…」

来たてなのは本当だ…
そそくさと、逃げよう…


「すみません、では…」

ヒカリは、ペコペコお辞儀をするとそそくさと早歩きでその場を去った。

「待ってください…この辺りは、女性一人では危険ですよ。妖魔族がうようよ跋扈してると噂なんです。特に妖樹は、厄介ですよ…」

青年は、ニッコリ微笑む。

「はぁ…」

ヒカリは、眉を潜めていると、
何処からともなく青年の額に弾丸が命中した。

青年の肌は、みるみる茶褐色になっていき身体は樹木のように変貌し伸びていった。

それは、ゲームの世界でよく見る妖樹そのものだ。
例えて言うのなら、クトゥラフに出てくる巨大なタコ型の化け物を彷彿とする。

ヒカリが青ざめあんぐり口を開けて尻もちついていると、向こう側から大型バイクの爆音が鳴り響いてきた。

「伏せな!」

ヒカリは、ドスの効いた高いハスキーボイスに仰け反った。

振り向くと、今の自分と同世代位の少女が、両手にショットガンを構えてバイクから降りてきた。
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