堕天使と悪魔の黙示録

ミヤギリク

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悪夢の系譜

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   そこは、自動人形のコロニーが形成されており、自動人形達が独自の都市を形成し、暮らしていた。
  この街は、200年程前から続いており、緩やかかに独自の経済や文化を発展していった。200年ほど前に、初号機が造られ、初号機がそれを模倣し2号機を造り2号機は3号機を造りと、コロニーは発展していったのだった。
自動人形は、昔の人間を研究し、それを取り入れた。彼らは、人間の生体や文化を研究し、どのような社会へと発展したのか冷徹に調べあらゆる技巧をこらし、自分達が最適だと思える街造りへと応用していったのだ。
そんな中、人間の姉妹が2人は暮らしていた。
2人は8つ程歳が離れており、妹の方はまだ物心着く前のあどけない幼子であった。
髪は赤毛であり、妹の方は左頬に星型の痣があった。
自動人形は、昔の人間を研究し、それを取り入れた。彼らは、人間の生体や文化を研究し、どのような社会へと発展したのか冷徹に調べあらゆる技巧をこらし、自分達が最適だと思える街造りへと応用していったのだ。
2人は常に一緒に行動しており、姉の方は常に妹に気にかけていたのだった。

2人は幼稚園や学校には通わなかった。
その代わり、専属の自動人形が複数体交代で世話から勉強を教えるまでを全て担っていた。

その中でも特に世話になった自動人形がいた。その自動人形は、古株で他の自動人形よりガタがつき動きが散漫であった。しかし、力はどの自動人形にも負けず劣らずであった。
彼の名前は『キール』といった。

キールと2人はよく森に出かけ、自動人形は絵本を読んで2人に聞かせていた。妹の方はすっかりなついており、その自動人形の腕の中ですやすや眠っていたのだ。

それは麗らかなひと時だった。

キールは、妹を軽々と肩車すると、森の中を散策した。
コロニーの住人の中には、人間を排除しようと言う動きがあり、姉妹を殺そうとするマシンが多かった。
中には、人間から痛めつけらるられた者も少なからずいたからだった。
しかし、その自動人形は力で他の自動人形を振り飛ばしねじ伏せ、姉妹を全力で守った。
その自動人形の戦闘能力は凄まじく、他の自動人形を2体を同時に投げ飛ばし、また、五体の自動人形に襲われても、関節を捻り潰し電磁波を破壊し動きを封じる等、その威力は膨大であった。

そんなある日の事だったー。一体の自動人形オートマドールが、突然、姉妹ふたりを襲いかかった。姉妹2人の両親に襲いかかった。
姉妹の両親は共にジェネシスであり、敵であるとー。

   キールは盾になり、その自動人形オートマドールから、姉妹を守った。彼は自動人形オートマドールの首を掴み持ち上げると、そのまま彼の頭部を地面に叩きつけた。地面から光のシャワーが溢れ出て、周りの者はその衝撃で動きを停止した。
キールは、姉妹に逃げる様に促した。襲撃者は体内から大量の電磁波を放出し、キールは、突如動きを停止させた。
クリーム色の光が、花火のように放物線を放ちながらビカビカ拡がった。
沈み掛けの太陽の断末魔と言うべき強烈な光が、街全体を包み込んだ。


   そして、キールは暴走し始めた。
キールは、右腕で狙撃者の頭を潰しそしてゆらゆら揺れながら姉妹を追った。
キールは、おかしくなっていた。

姉妹は、ひたすら逃げた。
姉妹の全身の五感は鈍くなり、意識は白く濁っていく。全てが灰色に空虚なものと化していく。姉妹の脳内には、戸惑いと戦慄、恐怖と哀しみという…複雑な感情な入り乱れていた。

それは、破滅と絶望だった。







   カケルは、ファルコンに乗ってオルバスに拐われたミライの行方を探った。下手したらミライはアストロンに連れ去られた可能性がある。
カケルは僅かな電磁波を頼りに、異次元へと繋ぐルートをひたすら探しながら走っていた。
     すると、自動人形オートマドールが、三体後方を追っていた。
彼らは、アストロンからの刺客なのだろうか?
    カケルは、義手からワイヤーを引っ張り出して自動人形オートマドール一体一体の首に引っ掛けていった。そして、彼らの体の素材について念動力を使い精査していった。
自動人形オートマドールは、ファルコンに乗りながらカチカチ歯を鳴らしながら、カケルにまとわりついてくる。
    カケルは、ワイヤーに電磁波を流し込むと三体の関節部分にバグを仕込んでいった。彼らの頭と胴体は分離し、首の導線が剥き出しになった。その導線が剥き出しになるとニュルニュルのび、カケルに巻きつこうとしている。カケルは、速度を緩めながら右手で三体の巻き付いてきた導線をキツく握りしめた。すると、三体の頭はカケルに近ずきカケルの身体を完全に蛇のようにぐるぐる巻き付いた。カケルのファルコンは横転し、駒のようにクルクル回転しながら火花を散らした。カケルは義手に鬼のように力を込め、一体一体の身体の導線を引きちぎりバズーカを叩きつけ発射させた。
    すると、自動人形オートマドールは、ガチガチに固まり粉々に粉砕された。
    すると、その粉砕された欠片は強力な電磁波を纏いながら全長6 メートル程の1つの巨大な人型の塊になった。その欠片は磁石で出来ており欠片同士互いにように引き付けられているようだった。
     カケルは、ワイヤーを更に伸ばすと電磁波を発生させ、磁石の力を弱めようとバグを空けた。すると、カケルの身体はワイヤーごと引き付けられ、宙ぶらりんの状態になった。
カケルはバズーカを引き抜くと、と同時に自分の身体の金属部分にバグを空けた。
バズーカから放たれる彗星の様な眩く凄まじい威力の光は、巨大な磁石人形をバラバラにした。カケルは、磁石人形から流れ出る電磁波の流れを読みながら流れに沿ってバグを空けていった。すると、そのバクの穴から謎の光の塊が針のように無数に突き出てきた。
    カケルは咄嗟に身をかわそうと目を覆った。
ーその時、背後からビリビリと雷の様な強い青紫色の電磁波が辺りを包み込んできた。
    磁石人形は動きが緩慢になると、磁石の力が緩み鉄屑の様にバラバラになった。カケルは鉄屑の山の上に仰向けに落ちると、巻き付いた導線を剥がした。
    すると、背後にバズーカを構えた九曜がファルコンに乗ってそこにいたのだった。
「よお。大鳥。」  
「九曜か?悪い。助かったな…」
カケルは、導線と鉄屑を上着のポケットに入れると、鉄屑の山を滑り降りた。
「最近特例が下りた。俺が必死に頼んだんだよ。例の月宮とリゲルの件もあるだろそっちは、どうだった?」
「どうって、いつも通りだよ。最近、仕事が立て込んでて…」
カケルは、淡々とファルコンを立て直すと引きながら戻ってきた。
    九曜は、カケルの冷たく乾いた独特な空気が気になった。今まで何度か彼と共に戦った事があるが、彼は決して自分の事は殆ど語る事はなかった。分厚いドライアイスの様な心の壁があるようである。
    カケルは、ジェネシスの父と人間の母の間に生まれたと聞いた事がある。彼の父親は偉人でありミレニアムであり離反者でもあったらしい。自分の複雑な生い立ちがそうさせているのだろうか?
    カケルはクールで大人ぶっているが、時折感情を剥き出しにする事がある。彼は、内面は歪であり子供のようなのである。必死に自分の弱みを見せまいとしているようにも見える。ハーフだと、純粋なジェネシスより戦闘能力が劣る。また、彼は父親の件もあり周囲の視線も気になった筈である。
「そういえば、俺、とっておきの情報を得てきたんだよ。」
「とっておきのか……?」
「あの日比谷ミライの背中なんだが…人の機械化に関わってるみたいなんだよ。」
「機械化…?それは、物理的に不可能だぞ。」
「ああ、要はパンドラの箱さ。あれは秘宝の道標なんだよ。」
「道標……?」
「そうさ。ヤツらVXはオリンポスを制圧するつもりだ。だから、自分らのコピーを大量に作りたいのさ。」
九曜は、煙草にライターを灯すと煙を吹かせた。
   すると、ドーム状の風がクルクル激しく回転し始めた。
「な、何なんだ…あれは!?」
    その光の渦に、2人は包まれた。風のドームがチカチカ眩い閃光を放ちながら、爆発した。激しい突風が渦巻き、2人に襲いかかった。
煌びやかなクリーム色の光が悪魔の様に邪悪に微笑む。
    それは、暗黒世界ディストピアのはじまりだった。
     2人は突風に弾き飛ばされ、ひっくり返される。身体全身にチクチク突き刺さる風の刃ー。全ての五感を刺激する、邪悪な光ー。ふつふつ沸き立つ光のシャワーで視界がクリーム色に曇る。
    
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
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ミヤギリク
2021.09.26 ミヤギリク

ありがとうございます!

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