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悪夢の呼び鈴
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後日、カケルはミライの背中の幾何学模様を解析する為に、ミライに協力を依頼した。
ミライは、いでうつ伏せになりカケルはそれを写真に収めると、パソコンのモニターにスキャンした。
カケルは、その暗号を解読しようとする。ミライの首から腕、背中から足首までびっしりと全身にうっすら赤く複雑な幾何学模様が羅列してあり、複雑で分からなかった。しかし、この模様は何処か昔に見たような気がするのだ。子供の頃、自分はレイジの仕事の手伝いをしていた時の事だった。思い出そうにも中々それが出来ない。
カケルは、その幾何学模様を見て強い不安感と頭痛に襲われ、それは開けてはならないパンドラの箱であり、知ると、己の身を滅ぼしかねないと思ったのだ。破滅と混沌を意味するような気がしてならなかった。
しかし、この模様は自分の実の両親の事や亡くなった仲間やレイジを殺した者を倒す手がかりになるのではないかと思ったのだ。
カケルはモニターをミライに見せ、確認した。
「お前……その意味詳しく分かるか?」
「知りません。暗号が複雑化されていて、しかも、作成者は自動人形なので……」
「それは、どんな奴だった?」
「それは、確か……全身白くて背中にタンクのような物を背負っていたような気がします……」
「白い?タンク?」
あの、博士に確認を依頼した例の自動人形だろうかー?
「はい。随分昔ですが……スターウォーズにでてくるアンドロイドそっくりの風貌をしていました。」
「それは、確かなのか?」
カケルは偏頭痛をもよおした。
「…大鳥さん?」
ミライは、不安気にカケルの顔を覗きこむ。
「いや、大丈夫だ。それより、俺達がアストロンの研究室に連れてこられた時、何で模様は光ったんだ?」
「私にも、分かりません。ただ言える事は、
次元を超えるゲートを通り抜けてあまり時間が経ってないと言う事と、強い相手には効かないと言う事です。」
「強い……そう言えば、月宮やリゲルはそこに居たんだよな?」
「はい。彼らは大体の意味は分かっていたような感じでした。」
「そうか…あの時は悪かったな。俺は無力だった。」
「いえ…いいんです。だって、大鳥さん、私達がアストロンに連れて来られる前に何か仕掛けをしてましたよね?私達がこうして無事に戻って来れたのは、大鳥さんのお陰ですから。」
ミライは、恥ずかしそうに話した。
「前持って、流れを読んでたんだよ。」
カケルは、面倒くさそうに顔を逸らした。
カケルは、気絶する前に空間にバグを開けワイヤーで月宮の動きを封じ、彼のボディの素材は大体予測がついていた。彼の身体は鋼鉄で出来ており、熱で電線させるようにしたのだ。
数時間して、新世紀から、着信が来た。数日前にカケルが予約していたミライの新居についての案内が来たのだった。
カケルはミライを連れて、新世紀の支部へ出向いた。ミライの住まいを探す為である。後ろにはキョウコがミライのスーツケースを引いて付いてくる。
「俺は、新世紀 が管轄するマンションに 住んでるんだ。」
カケルは車を停めると、ミライを建物へ案内した。
「新世紀ですか……?」
「ああ。ジェネシスの保護団体だ。そこは、当事者に住む場所や働き場所を提供してくれるんだ。その会社で、当事者同士のコミュニティがある訳。俺達は、そこから仕事の依頼を受け不良品となった自動人形の回収作業をしてるんだよ。」
「素敵な所ですね…。」
その時ー、工事現場の5階屋上の高さから鉄パイプが落下してきた。
ーと、そのタイミングで100メートル後方から車が近づいてきた。
ドライバーは、鉄パイプに気づくと速度を緩めた。
するとミライは、力を発動した。手からは風の幕が円盤状に渦を巻き、車を止めた。
そして、左手を挙げると鉄パイプは糸に引っ張られたかのようにふわりと停止し、ゆっくり落下した。車は、反動で30メートル程飛ばされた。
「日比谷……外では普通にしてくれないか?」
「普通って、何ですか?」
「外では、必要な時以外は力を発動するな。と、言う事だ。」
「でも、危ないですよ。」
ミライは不安げにドライバーを見ている。
「車はそんなに遠くに瞬間移動できない。こんなに距離があるんだから、鉄パイプが全部落下したタイミングで真下には移動できないよ。あの車は充分に停止距離が間に合ってる。」
カケルは、苦い顔をした。
「皆、瞬間移動出来るものだと……」
「ドライバーは、人間だ。何の力を持たない。」
「人間?そうか……。そうですよね……私はつい……。」
「それに、これから不用意に右脚使うな。義足を修理する身にもなってくれ。」
カケル目を細め疲れきった様な顔をした。
ミライは、20年以上組織の中で暮らしてきて感覚に大きなズレが生じていた。この前も、右脚で猛スピードで走る車を停めていたり、瞬間移動して道路に飛び出た所を目撃した。料理している時も、まな板を真っ二つに切り火を暴発し火事を起こしそうになった。
組織のドーベルマンは、いざ放たれ自由の身になった今は子供の様である。
カケルはミライを連れ、新世紀の1階の事務所まで辿り着いた。
事務員に手続きをしてもらい、そこで鍵を受け取った。
「ここは、許可されてない自動人形は電磁波で入れない仕組みになってるんだ。でも一応、何か、あったら俺に連絡するように。あと、しばらくしたらお前の部屋に自動人形が届く筈だから。あと、これは施設の案内になる。ジムもあるんだ。」
エレベーターで30階まで辿り着くと、 ミライはカケルから鍵と通信機、案内書を受け取り、彼の隣の部屋に住むことになった。
ミライはキョウコからスーツケースを渡され、それを部屋の中に入れると部屋の中を見渡した。部屋は3ldkであり、幻想的で明るく開放的な間取りとなっていた。狭い組織の塀の中に居た頃とは、天と地のさであった。
しばらく横になると、ミライは施設の中を散策しようと考えた。エレベーターを降り、階段を降りると1階のプールまで辿り着いた。
そこで、衣類とタオルと水着を購入すると水着に着替え、プールの中に沈んだ。
夜と言う事もあり、周りに誰も居なく開放的な空間が広がっている。
ミライは、水面に浮かび上がるとプールの上で仰向けになった。
ー水が冷たく優しく自分を包み込んでくれるー。
自分が、過去に犯してしまった罪を精算したい。ミライは、そのまま沈んで水と一体化してしまいたい位である。
すると、プールの底からブクブク水が泡立ち、膨れ上がり中から自動人形が姿を現した。
「日比谷ミライ様ですね……?」
「あなたは……?!」
ミライは唖然とした。自動は、水に弱く中では動く事ができない。
「私は、アストロンのラグナロクから来ましたオルゴンと言う者です。」
オルゴンは、丁寧に一礼をした。
「オルゴン……?」
過去に聞いた事のある名前である。しかし、思いだす事ができない。
「私は、貴女を探していました。さあ、私と共に…」
彼は、カケルがパソコンで検索していた例のマシンである。また、リゲルも彼を殺すように言ってきた。
彼は全身白く、スターウォーズに出てくるアンドロイドのような風貌をしている。
ふと、オルゴンは、ミライの骨盤の方に視線を移した。
「あなたのような者がどうして…?5番に留まってるのですか?あなたは本来、3番レベルの強さの筈なのでは……?」
「何故、それを……?」
ミライの骨盤のマークは、水着で隠されている。彼は、透視能力でもあるのだろうか……?
「私には見えるのですよ。4次元も5次元もね。」
「それ、どういう事ですか……?」
初めて現れる、想定外の存在にミライは声が出ずにいた。ミライは、彼の能力を直感で悟った。すると、オルゴンはプールサイドに目を移すと、手を拡げ首を傾げた。
「おや……何の真似ですか?」
ミライが右に目を移すと、バズーカを構えたカケルがそこに立っていた。
「大鳥さん……!下がって!彼の能力は…」
「お前は……あの時の」
「あなたは、あの時の少年ですね?お久しぶりです。探してましたよ。」
「お前、何で入って来れた?バリケードを破って……」
「おや。あれは、バリケードだったんですか?これは、失敬。失敬。」
オルゴンは、水の上でぷかぷか浮いていた。
「貴様、何しに来た……?」
「大鳥さん!離れて!」
「!?」
すると、カケルはクラクラ目眩を覚えた。世界が回って見える。空間が前後に動き、上下左右が反転して見える。
カケルは、ミライと自分にワイヤーを巻き付けると、空間に2つの穴をあけその穴にワイヤーを括りつけた。
ーコイツは幻覚を見せられるのか?いや、何かが違う…。何がどうなってるんだ?ー
カケルは、反射的にバリケードを張った。そして、全神経を集中させそのバリケードをオルゴン目掛けて押しやった。しかし、空間がぐらつき物が全方向から物が入り乱れ動いて見えるのだ。
ーコイツは、次元そのものをら操れるのかー?
空間は、捻れ物はゆがんで見える。
しかも、彼は水の中でも動ける。自動人形は、水だとダメージを受け故障してしまう。
しかし、奴自身は水の影響を受けずに、普通に
動いていられる。
すると、オルゴンは突然身体が分裂したかと思うと、分身は全方向から2人目掛けて襲ってくるー。
カケルはバズーカの引き金をひくと、力を発動した。
すると、空間に無数の六角形の穴が空きそこから弾が発射された。カケルの力は、空間にバグを空け空間と空間を繋げる事である。
「おやおや、この程度で私を倒せるとでも
思っておいでですか?私はここにお遊びしに来たのではありませんよ。」
オルゴンとその分身達は蚊を払うかのように、カケルの放った弾丸を軽く払った。
「……貴様は、組織と繋がりがあるのか?」
カケルは、ガンガン痛む頭を押さえつけオルゴンを睨みつけた。
「組織と…ですか?」
オルゴンは、キョトンとして首を傾げた。
「知ってるんだよ。交わってた事をな。」
カケルが子供の頃に見た幾何学模様の件がどうしても脳にこびりついて離れないー。
灰色に塗り潰された、禍々しい悪夢のような惨劇ー。その中に白い自動人形が、姿を現した。あの、彼が手を差し出してきた意味を知りたいー。
「私は、日比谷ミライに来てもらいたい。」
オルゴンは、手を招き入れるとカケルのワイヤーが自然と離れミライはオルゴンの近くに引き付けられた。
「彼女の身体には、機密情報が刻まれてるんですよ。情報を回収したい。」
「日比谷は、組織に戻らないよ。」
カケルは、再びワイヤーをミライの右手に巻き付けた。
「そうですか……仕方ありませんね。」
すると、空間がグラついた。カケルは足が寄ろけ尻もちをつくと、近くの柱にしがみつきた。カケルはズキズキする頭の痛みに堪えながら、バズーカの引き金を引くと手が痺れるくらい名いっぱい連射した。
弾丸は彗星の如く電磁波を纏いながらオルゴンの身体に直撃した。ミライもつかさず力を発動し、自身の拳にドリルのような風の渦を作ると円盤状に拡げて、オルゴン目掛パンチを放った。しかし、オルゴンは、水で分厚い盾を造ると2人目掛けて打ち放つった。
分厚い柱は分厚い斧の様に高く延び、カケルとミライ目掛けてザクザクに打ち放った。ーと、同時に再びぐらつき、2人はよろけ転びそうになった。
ーコイツは、自分の身体の表面に何らかの強い力を使い水を弾くようにしたんだー。
「お前が組織と繋がりがあるのは分かってるんだ。あの、組織を裏で動かしてるのも、過去の惨劇もお前が関係してるんだろ?」
「ええ。私は組織と関わりがありますし、日比谷ミライの身体に幾何学模様をつけたのも私ですよ。」
「その模様の意味は何なんだ?」
「さあ…これは機密事項ですので教えられませんね。では、私共はこれで失礼しますよ。日比谷ミライは、その他にも重要な鍵が隠されているのですから。」
オルゴンがそう言うと、ワイヤーは解けミライの身体は自然と彼に引き寄せられていく。
「大鳥さん……私、大丈夫ですから。」
ミライは、微笑んだ。
「日比谷、何言ってるんだ?」
カケルは、再びワイヤーをミライに絡ませた。
「あ、居たぞ!」
「お前、いつの間に……!?」
プールサイドの奥から、仲間のジェネシス達が駆けつけてきた。
「おやおや。時間がなくなってきたみたいですし、今日はその辺にしときましょうか。では、日比谷ミライさん。」
オルゴンは、チラチラ足元を確認するとミライを連れてパチンと手を叩いた。
すると、彼の体は水中に沈み姿を消したのだった。
それは、黒と白と灰色に染められた鬱蒼とした世界が広がっていたー。少年、少女らはら理由なく惨殺されカケルただ1人が生き残ったー。
カケルは、ゆらゆらと揺れながら歩く、突如暴徒化した自動人形から逃げ惑い、建物の影に隠れた。全身3メートル程ある自動人形は、目から紅い光線を放出しカケルを探しながらゆらゆら歩き回る。カケルは、兎のように丸くなり路地裏で丸くなっていたー。カケルは、怖くてカタカタ震えていた。カケルは、ひたすら祈るしかなかった。
ー早く、地獄から目を覚ましますようにー
ミライは、いでうつ伏せになりカケルはそれを写真に収めると、パソコンのモニターにスキャンした。
カケルは、その暗号を解読しようとする。ミライの首から腕、背中から足首までびっしりと全身にうっすら赤く複雑な幾何学模様が羅列してあり、複雑で分からなかった。しかし、この模様は何処か昔に見たような気がするのだ。子供の頃、自分はレイジの仕事の手伝いをしていた時の事だった。思い出そうにも中々それが出来ない。
カケルは、その幾何学模様を見て強い不安感と頭痛に襲われ、それは開けてはならないパンドラの箱であり、知ると、己の身を滅ぼしかねないと思ったのだ。破滅と混沌を意味するような気がしてならなかった。
しかし、この模様は自分の実の両親の事や亡くなった仲間やレイジを殺した者を倒す手がかりになるのではないかと思ったのだ。
カケルはモニターをミライに見せ、確認した。
「お前……その意味詳しく分かるか?」
「知りません。暗号が複雑化されていて、しかも、作成者は自動人形なので……」
「それは、どんな奴だった?」
「それは、確か……全身白くて背中にタンクのような物を背負っていたような気がします……」
「白い?タンク?」
あの、博士に確認を依頼した例の自動人形だろうかー?
「はい。随分昔ですが……スターウォーズにでてくるアンドロイドそっくりの風貌をしていました。」
「それは、確かなのか?」
カケルは偏頭痛をもよおした。
「…大鳥さん?」
ミライは、不安気にカケルの顔を覗きこむ。
「いや、大丈夫だ。それより、俺達がアストロンの研究室に連れてこられた時、何で模様は光ったんだ?」
「私にも、分かりません。ただ言える事は、
次元を超えるゲートを通り抜けてあまり時間が経ってないと言う事と、強い相手には効かないと言う事です。」
「強い……そう言えば、月宮やリゲルはそこに居たんだよな?」
「はい。彼らは大体の意味は分かっていたような感じでした。」
「そうか…あの時は悪かったな。俺は無力だった。」
「いえ…いいんです。だって、大鳥さん、私達がアストロンに連れて来られる前に何か仕掛けをしてましたよね?私達がこうして無事に戻って来れたのは、大鳥さんのお陰ですから。」
ミライは、恥ずかしそうに話した。
「前持って、流れを読んでたんだよ。」
カケルは、面倒くさそうに顔を逸らした。
カケルは、気絶する前に空間にバグを開けワイヤーで月宮の動きを封じ、彼のボディの素材は大体予測がついていた。彼の身体は鋼鉄で出来ており、熱で電線させるようにしたのだ。
数時間して、新世紀から、着信が来た。数日前にカケルが予約していたミライの新居についての案内が来たのだった。
カケルはミライを連れて、新世紀の支部へ出向いた。ミライの住まいを探す為である。後ろにはキョウコがミライのスーツケースを引いて付いてくる。
「俺は、新世紀 が管轄するマンションに 住んでるんだ。」
カケルは車を停めると、ミライを建物へ案内した。
「新世紀ですか……?」
「ああ。ジェネシスの保護団体だ。そこは、当事者に住む場所や働き場所を提供してくれるんだ。その会社で、当事者同士のコミュニティがある訳。俺達は、そこから仕事の依頼を受け不良品となった自動人形の回収作業をしてるんだよ。」
「素敵な所ですね…。」
その時ー、工事現場の5階屋上の高さから鉄パイプが落下してきた。
ーと、そのタイミングで100メートル後方から車が近づいてきた。
ドライバーは、鉄パイプに気づくと速度を緩めた。
するとミライは、力を発動した。手からは風の幕が円盤状に渦を巻き、車を止めた。
そして、左手を挙げると鉄パイプは糸に引っ張られたかのようにふわりと停止し、ゆっくり落下した。車は、反動で30メートル程飛ばされた。
「日比谷……外では普通にしてくれないか?」
「普通って、何ですか?」
「外では、必要な時以外は力を発動するな。と、言う事だ。」
「でも、危ないですよ。」
ミライは不安げにドライバーを見ている。
「車はそんなに遠くに瞬間移動できない。こんなに距離があるんだから、鉄パイプが全部落下したタイミングで真下には移動できないよ。あの車は充分に停止距離が間に合ってる。」
カケルは、苦い顔をした。
「皆、瞬間移動出来るものだと……」
「ドライバーは、人間だ。何の力を持たない。」
「人間?そうか……。そうですよね……私はつい……。」
「それに、これから不用意に右脚使うな。義足を修理する身にもなってくれ。」
カケル目を細め疲れきった様な顔をした。
ミライは、20年以上組織の中で暮らしてきて感覚に大きなズレが生じていた。この前も、右脚で猛スピードで走る車を停めていたり、瞬間移動して道路に飛び出た所を目撃した。料理している時も、まな板を真っ二つに切り火を暴発し火事を起こしそうになった。
組織のドーベルマンは、いざ放たれ自由の身になった今は子供の様である。
カケルはミライを連れ、新世紀の1階の事務所まで辿り着いた。
事務員に手続きをしてもらい、そこで鍵を受け取った。
「ここは、許可されてない自動人形は電磁波で入れない仕組みになってるんだ。でも一応、何か、あったら俺に連絡するように。あと、しばらくしたらお前の部屋に自動人形が届く筈だから。あと、これは施設の案内になる。ジムもあるんだ。」
エレベーターで30階まで辿り着くと、 ミライはカケルから鍵と通信機、案内書を受け取り、彼の隣の部屋に住むことになった。
ミライはキョウコからスーツケースを渡され、それを部屋の中に入れると部屋の中を見渡した。部屋は3ldkであり、幻想的で明るく開放的な間取りとなっていた。狭い組織の塀の中に居た頃とは、天と地のさであった。
しばらく横になると、ミライは施設の中を散策しようと考えた。エレベーターを降り、階段を降りると1階のプールまで辿り着いた。
そこで、衣類とタオルと水着を購入すると水着に着替え、プールの中に沈んだ。
夜と言う事もあり、周りに誰も居なく開放的な空間が広がっている。
ミライは、水面に浮かび上がるとプールの上で仰向けになった。
ー水が冷たく優しく自分を包み込んでくれるー。
自分が、過去に犯してしまった罪を精算したい。ミライは、そのまま沈んで水と一体化してしまいたい位である。
すると、プールの底からブクブク水が泡立ち、膨れ上がり中から自動人形が姿を現した。
「日比谷ミライ様ですね……?」
「あなたは……?!」
ミライは唖然とした。自動は、水に弱く中では動く事ができない。
「私は、アストロンのラグナロクから来ましたオルゴンと言う者です。」
オルゴンは、丁寧に一礼をした。
「オルゴン……?」
過去に聞いた事のある名前である。しかし、思いだす事ができない。
「私は、貴女を探していました。さあ、私と共に…」
彼は、カケルがパソコンで検索していた例のマシンである。また、リゲルも彼を殺すように言ってきた。
彼は全身白く、スターウォーズに出てくるアンドロイドのような風貌をしている。
ふと、オルゴンは、ミライの骨盤の方に視線を移した。
「あなたのような者がどうして…?5番に留まってるのですか?あなたは本来、3番レベルの強さの筈なのでは……?」
「何故、それを……?」
ミライの骨盤のマークは、水着で隠されている。彼は、透視能力でもあるのだろうか……?
「私には見えるのですよ。4次元も5次元もね。」
「それ、どういう事ですか……?」
初めて現れる、想定外の存在にミライは声が出ずにいた。ミライは、彼の能力を直感で悟った。すると、オルゴンはプールサイドに目を移すと、手を拡げ首を傾げた。
「おや……何の真似ですか?」
ミライが右に目を移すと、バズーカを構えたカケルがそこに立っていた。
「大鳥さん……!下がって!彼の能力は…」
「お前は……あの時の」
「あなたは、あの時の少年ですね?お久しぶりです。探してましたよ。」
「お前、何で入って来れた?バリケードを破って……」
「おや。あれは、バリケードだったんですか?これは、失敬。失敬。」
オルゴンは、水の上でぷかぷか浮いていた。
「貴様、何しに来た……?」
「大鳥さん!離れて!」
「!?」
すると、カケルはクラクラ目眩を覚えた。世界が回って見える。空間が前後に動き、上下左右が反転して見える。
カケルは、ミライと自分にワイヤーを巻き付けると、空間に2つの穴をあけその穴にワイヤーを括りつけた。
ーコイツは幻覚を見せられるのか?いや、何かが違う…。何がどうなってるんだ?ー
カケルは、反射的にバリケードを張った。そして、全神経を集中させそのバリケードをオルゴン目掛けて押しやった。しかし、空間がぐらつき物が全方向から物が入り乱れ動いて見えるのだ。
ーコイツは、次元そのものをら操れるのかー?
空間は、捻れ物はゆがんで見える。
しかも、彼は水の中でも動ける。自動人形は、水だとダメージを受け故障してしまう。
しかし、奴自身は水の影響を受けずに、普通に
動いていられる。
すると、オルゴンは突然身体が分裂したかと思うと、分身は全方向から2人目掛けて襲ってくるー。
カケルはバズーカの引き金をひくと、力を発動した。
すると、空間に無数の六角形の穴が空きそこから弾が発射された。カケルの力は、空間にバグを空け空間と空間を繋げる事である。
「おやおや、この程度で私を倒せるとでも
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オルゴンとその分身達は蚊を払うかのように、カケルの放った弾丸を軽く払った。
「……貴様は、組織と繋がりがあるのか?」
カケルは、ガンガン痛む頭を押さえつけオルゴンを睨みつけた。
「組織と…ですか?」
オルゴンは、キョトンとして首を傾げた。
「知ってるんだよ。交わってた事をな。」
カケルが子供の頃に見た幾何学模様の件がどうしても脳にこびりついて離れないー。
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オルゴンは、手を招き入れるとカケルのワイヤーが自然と離れミライはオルゴンの近くに引き付けられた。
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「そうですか……仕方ありませんね。」
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ーコイツは、自分の身体の表面に何らかの強い力を使い水を弾くようにしたんだー。
「お前が組織と繋がりがあるのは分かってるんだ。あの、組織を裏で動かしてるのも、過去の惨劇もお前が関係してるんだろ?」
「ええ。私は組織と関わりがありますし、日比谷ミライの身体に幾何学模様をつけたのも私ですよ。」
「その模様の意味は何なんだ?」
「さあ…これは機密事項ですので教えられませんね。では、私共はこれで失礼しますよ。日比谷ミライは、その他にも重要な鍵が隠されているのですから。」
オルゴンがそう言うと、ワイヤーは解けミライの身体は自然と彼に引き寄せられていく。
「大鳥さん……私、大丈夫ですから。」
ミライは、微笑んだ。
「日比谷、何言ってるんだ?」
カケルは、再びワイヤーをミライに絡ませた。
「あ、居たぞ!」
「お前、いつの間に……!?」
プールサイドの奥から、仲間のジェネシス達が駆けつけてきた。
「おやおや。時間がなくなってきたみたいですし、今日はその辺にしときましょうか。では、日比谷ミライさん。」
オルゴンは、チラチラ足元を確認するとミライを連れてパチンと手を叩いた。
すると、彼の体は水中に沈み姿を消したのだった。
それは、黒と白と灰色に染められた鬱蒼とした世界が広がっていたー。少年、少女らはら理由なく惨殺されカケルただ1人が生き残ったー。
カケルは、ゆらゆらと揺れながら歩く、突如暴徒化した自動人形から逃げ惑い、建物の影に隠れた。全身3メートル程ある自動人形は、目から紅い光線を放出しカケルを探しながらゆらゆら歩き回る。カケルは、兎のように丸くなり路地裏で丸くなっていたー。カケルは、怖くてカタカタ震えていた。カケルは、ひたすら祈るしかなかった。
ー早く、地獄から目を覚ましますようにー
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