堕天使と悪魔の黙示録

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私の中のパンドラ ③

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     カケルとミライは、昼食を済ませると服を買いに行くことにした。この平穏な暖かな空気の何処かに組織の引きはなった犬共が潜伏しているとおもうと、2人は気が気ではなかった。カケルは、ミライの言われた通りの経路を走る事にした。カケルは直感で、ミライがマキナがテレビに映っていた場所を探っているのだと分かった。
    しばらく車を走らせると、突き当たりに大きなショッピングセンターがあるのが見えた。
「大鳥さん、ここでお願いします。」
ミライはそう言うと、カケルは車を停めた。
「お前…本当に大丈夫なのか…?ついていくぞ…?」
「いえ、1人で大丈夫です。私はジェネシスですから。」
ミライは、明らかに戦いに向かうのだとカケルは悟った。カケルは、後ろからこっそり彼女の後を追うことにした。

    ミライはゆっくり辺りを確認した。背後には組織の気配はないー。もうしばらく先を歩くと、マキナが映っていた場所に辿り着くー。
      組織の番犬共が自分を付け狙って来たということは、マキナも確実にこの辺りに潜伏している筈であった。



    ミライは辺りを慎重に警戒しながら歩く事にしたー。心臓の鼓動は、太鼓のようにバクバク激しく鳴り響いたー。自分は、いつ殺されるか分からないー。しかし、マキナをここで野放しにする事は出来ないー。
     
   すると、背後で大勢の人の悲鳴が聞こえてきたー。振り返るとー、首スジに血飛沫を上げて今にも倒れそうな人ー。

「しっかりして下さい。」
ミライはそういうと、音の首筋に軽く触れた。すると、患部は一瞬光ると魔法の様にみるみる癒えて傷が薄らいで行ったのだった。男は、眼を丸くすると、自分の首筋の血を確認した。
「あなたは……?」
「ジェネシスです。」
      修道着の中年の男がじっとこちらを見ているのが分かった。いや電磁波やオーラからして、明らかにマキナが化けているとミライは、察したのだ。彼の後方には、部下であろう自動人形オートマドール達が、立ち止まってコチラをみていた。4体の人型のマシンに、2メートル以上はありそうな巨体のマシン、タコのようなうねうねした触手を生やしたマシンー。彼等の姿は多種多様で、マキナの部下であり紛れもなく組織の時によく目撃した天敵達であった。ミライの胸はザワザワし、重苦しくなり過呼吸を起こしそうになった。
「お久しぶりです。日比谷ミライ。よく、私だと分かりましたね。」
 「そりゃあ、分かりますよ。私はS級ですし…」
「しかし、あなたはもう戦えない。」
マキナは悠然と歩くと、手をパチパチ鳴らしている。
「…」
ミライは、少しずつ後付さりした。
「今の貴女は、ただの仔猫でしかありませんね。」
マキナは、得意げにほくそ笑んだ。
「かつての、ドーベルマンだった面影は微塵も感じませんね。今は、そう。仔猫…チワワといった所でしょうか…?」
「私だって、戦おうと思えばいつでも戦えます。」
ミライは、そう言いながらゾクゾクした心を無理に奮い立たせていた。

ー助けて、おねえちゃん。

時折気に掛け、守ってくれる姉ー。

しかし、今は、その姉がいないー。

 自分は、組織の犬として、マシンを駆逐したと共に、反逆する同胞を精神的に追い詰めいたぶりなぶってきた。そんな自分が被害者面するなんて都合の良すぎる話である。自分は、ドーベルマンに過ぎないのである。

ミライは、這いつくばりしばらく動かなくなったー。


 すると、マキナの身体全身が強くバチバチと火花を散らし、動きを止めた。
「酸と熱か…?かはっ、いつの間に…?」
すると、空間に六角形の穴が所々に出現し、
マキナの身体はキャンドルのようにじわじわと溶けていき、そして蒸発していった。
「奴の身体の電磁波の流れを読み込み、そして硫酸と熱を転送させたー。」
マキナのいた場所の後方から、カケルがバズーカを手に持ち、片膝ついてゼエゼエ息をしていたのが見えた。
「大鳥さん…」
「俺の能力は、電磁波の流れを読むことと空間にバグを空け物質を転送させる事だ…しかし、それらを同時にやると強くエネルギーを消耗するがな…」
カケルは苦しそうだった。
「大鳥さん、もう大丈夫です。私が貴方を守ります。」
ーと、その時マシンのタコのようなうねうねした触手がミライの頭上に襲いかかってきた。
 ミライは、マシンの触手を両手で受け止め、そのまま軽々とブーメランの様にぐるぐる振り回すと、そのまま銀の泉の中にぶち込んだ。マシンはガクガク揺れながら膨大な量の火花を放出した。
 そして、ミライはヒョウの様な素早い身の躱しで、次々と襲いかかる自動人形オートマドールの堅い頭部を真っ二つに切断していった。
そして、巨体の額目掛けて高飛びした。
巨体は、両腕を突き刺し、ミライを押し潰そうとする。しかし、ミライは瞬間移動をしながら容易くそれを避け、右脚で強烈なキックをお見舞いした。
金属棒をは強烈な電磁波を帯び、バチバチと火花を放つ。VXはガクガク激しく揺れると、動きを停止させ、カラカラ強く鈍い音を立てながらその場で倒れた。
そしてマシンは分解され、粉々に破壊され、
そして爆発音が、炸裂した。
花火が次々と入り乱れる様な強く眩い光線が入り乱れた。
 今のミライには、ヒョウの様に俊敏でありライオンの様な獰猛さがそこにあった。
「日比谷…」
カケルは、大勢を立て直すと息を飲んでその光景を眺めていた。



 カツカツと、建物の影から人が歩いて来るのが見えた。
「月宮…」
カケルは、バズーカを構えると月宮をきつく睨んだ。
「やあ、君たちの一部始終を見させてもらったよ。実に愉しい光景だった。」
月宮は、パチパチ手を叩いた。
「熱い…熱い…身体が…」
すると、ミライは急に丸くうずくまる。そして、彼女の身体が朱色に燃え拡がるー。
「日比谷…!!!」
そこで、ミライは気を失った。
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