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ウォーリー ④
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夕暮れ時の大学の研究所から学生が、カタカタキーボードを叩く音が木霊していた。
部屋の隅には1体のタマゴ型の自動人形と、カマキリ型の自動人形が、ひっそりと佇んでいた。すると、ガラガラと扉が開き、ゼミの仲間が、顔を出しに来た。
「おい、白鳥…お前、まだ残ってんのか?研究熱心だなあ。もう、時間だ…帰るぞ。」
「山本、見ろよ。とうとう出来たぞ!」
白鳥は、子供の様な無邪気さで目を輝かせていた。
「何だ?R2が1体にコイツはカマキリみたいだな…スターウォーズさながらだなー。おい、何か映写機機能も搭載されてるのか?」
山本は、物珍し気に2体の自動人形を眺めていた。
「…ああ。ようやく完成したんだよ。俺の長年の目標がねー。」
山本は椅子をくるりと回すと2体のマシンを見つめていた。
「おお。凄いな…それにしても、お前、2体も造ったのか…?」
山本は、物珍しそうに2体を凝視している。
「ああ。初めは1体だけにしようとするつもりだったんだが、事情が変わって2体になったんだ。」
白鳥は2体のマシンに歩み寄ると、しゃがみ込み細かな確認をしていた。
「へえー、こんな複雑なマシンを造るのに俺は一体でも無理だわー。」
山本は、感嘆した。
「俺はマシンに自我やスペックを搭載したんだ。しかし一体だけだと、配線が複雑になるし、第一バッテリーの消耗が激しい。そこで、マシンの負担を減らす為に、対になる2体を造る事にしたんだ。それにその方がおもしろいだろ?」
「コイツらは、スペックがそれぞれ違うのか?」
「ああ。片方はブレーキの役割をしてもう片方はアクセルの役割をしている。」
白鳥が2体もの蓋を開け、最終確をした。そして、彼のポケットからスマホが落ち、スマホのカバーの中から写真がヒラリと滑り落ちた。
「これ…お前が高校の頃の写真だろ…?友人か…?」
山本は、写真を拾うと白鳥に渡した。
「ああ。この二人は共に夢を目指した同士なんだよ。しかし、志し半ばでね…」
白鳥は写真を手に取り、半ば哀しげな顔でそれを見ていた。
「ん…仲間割れか…?」
「割れたというより裂かれたんだよね。」
白鳥のその表情から哀愁が漂った。山本は白鳥のその表情から、大切な人との永遠の別れの様な寒々とした気配を感じた。
「…あ、ああ…すまない。」
「いや、良いんだ。気にしなくて。」
白鳥は、軽く微笑むと再びマシンの最終確認に入ったのだった。
カケルと博士は空飛ぶ車で将軍の行方を辿った。青木博士のその車には、内部の計測器からマシンの放出する独自の電磁波の流れを探るシステムが搭載されといるのだ。マシンはその流れを辿りながら目的地へと向かった。マシンは時速200キロを上回っていた。
「長い年月を得たとは言え、よくそこまで変貌を遂げたな。少しずつにしても、流石に変わりすぎだぞ?」
「…いや、実はそれはあり得るんだよ。私のいた機関にはかなり腕の立つ技術者がいたし、まだ知られてない機密情報も沢山あった…彼は何らかの方法で組織に入り込み組織の弱みを握り、自身の身体を改造してもらったんだろうな…奴の基本的な核なる部分…つまり脳となるパーツはそのまま残っていたから不可能ではないかと…」
「一体、どんな技術者が彼を改造したんだろう?」
「多分…それなりの技術力を持った人達だっだろう…特別機関のな…そして改造後、彼らは次々に殺害されたのだろうな…」
博士はモニターを観測しながら話した。
「殺害…?彼の意思でかー?大体奴には主人が居ないし、メンテナンスもされてない。そこまでプログラミング…」
そう言いかけて、カケルはハッとし右隣の博士の方を向いた。
「なあ、博士。妙じゃないか?」
「ああ。実に妙だな…他の自動人形達は、自分の性能に不満を抱く者はいなかった。何故なら、彼らには不満を感じその不満に対しての行動力を起こすようにプログラミングされていないからだよ。自動人形が自ら変わる様にプログラムされてないとああはならない。」
「奴の造り主は白鳥だよな…」
「ああ…そうだな…だとしたら、彼は故意に研究所を襲った事になるな。」
「白鳥は、アルカナに復讐を抱いていたのか?」
「多分、そうだろうな…余程強い恨みを持ってないと…」
そう言うと、博士はタブレットの画面で検索し始めた。
「あったぞ!1996年の記事だ。組織のマシンが『オベリスクの扉』という、異次元へ向かえるゲージ使い、渡り歩いた時代とマッチしている。」
青木博士は目を皿のように丸くし、タブレットの画面を拡大した。
「マシンは何の為に向こうへ行ったんだ?」
「多分…新天地を求めたのだろうな…か、若しくは調査しにな…場所は、若葉高校…丁度、白鳥がそこの高校生だったな。」
「博士…よくそこまで調べたな…」
「なあに。私はこう見えて、組織の元最高責任者だ。あらゆる情報は網羅してある。」
青木博士は得意げに話す。
ウォーリーは各地からブルーペンタゴンをかき集めた。何故、自分がそうしているのか全く分からない。ただ…そうせざる負えない状況に追い込められている。まるで自分が操り人形であり、硬い糸で無理やり引っ張られたかのようである。
ウォーリーは身体を透明にし時計台に近づきエレベーターで登ると、そして台座からペンタゴンをもぎ取ると、ペンタゴンを風呂敷に包んだ。そして、エレベーターで元来た道へと戻って行った。そして彼は、毎日決まった時刻にそれを繰り返していたのである。
ウォーリーは風呂敷を担ぎ車にそれを積むと、屋敷へと戻って行った。
彼が戻ると、将軍は満足気に手を叩いた。
「よし。これで準備が整った。」
奥の方から取り巻きが荷車を運んできた。荷車には、ペンタゴンが30個陳列されていた。
将軍は満足気にほくそ笑むと、1つ1つペンタゴンの蓋をこじ開け、ガスを大量に身体全身に浴びた。
「おお…力が全身にみなぎって来るぞ!」
アンドレアンは歓喜した。
「ん…?」
すると、急に彼の身体は急にガタガタ揺れた。
「将軍!」
取り巻きの自動人形は、たじろいだ。
すると、扉が重い音を立ててゆっくり開いた。
「これで、マシンはこんなに完璧に造られている訳じゃないと言う事が分かったろ。
それに、お前の身体は戦闘用に造られたわけじゃないんだ。だから、お前は元々は戦闘に不向きなんだ。お前のやってる事は、流れに逆らう事…魚が陸地で生きる様なものだよ。長い年月をかけて随分様変わりしたが、基盤となるプログラムは書き換える事が出来なかった様だな。基盤は基盤……お前の脳味噌その物なのだからな。そりゃあ、無理があるよな?」
カケルは将軍を睨みつけた。青木博士は扉を閉めると何やら計測する機器を用意していた。
「ふざけるな!我々マシンが長い年月をかけて、築き上げて来た軌跡にケチを付けるというのか?我々が独自の帝国を創って何が悪いと言うのだね?」
将軍は憤慨し鎌をぶんぶん振り回すと、カケル目掛けて投げつけた。
「今までずっと逆らってきたから、お前の身体の内部は既にガタが出来ているんじゃないのか?なるほどな…お前はまんまと白鳥の掌で踊らされていたんだよ。操り人形の様にな。」
カケルはウサギの様な身軽さでかわすと、右手の義手からワイヤーを引き抜いた。
「ああ…そうなんだよ。君達マシンは造り主が全てプログラミングをしてそれでようやく自我を持ち、動ける様になるんだ。君とウォーリーは、全て白鳥の設計の元に出来ているんだよ。君のプログラ厶は私が君達のプログラムを書き換えられるんだが…私は元組織のー」
青木博士は優しくなだめるように話したが、将軍はそれを遮ったー。
「我々は、人間の都合の良い玩具なんかでは無いわ!貴様等人間は、我々を資本主義の道具に使いやがって!我々は、貴様等人間共の奴隷などでは無い!」
将軍はそう言うと、掌から花火の様な発光体を放出した。発光体はバチバチ激しく火花を散らし、かける目掛けて飛んできた。
「お前のその手は読んだよ。実は、お前の身体に仕掛けをしといたんだ。これで、お前は、終わりだぜ。」
カケルは発光体にワイヤーを当てると、そのワイヤーで発光体を吸収した。そして、ワイヤーでぐるぐる将軍を縛り上げた。
「ぐっ…貴様…!」
ワイヤーは熱を帯び、赤く光ると将軍のボディの表面を溶かしていった。将軍の身体は激しくガタガタ揺れた。ガスや煙が吹き出し、ぐらぐらと前後左右に益々激しく揺れた。
「ましてやお前がVXになるなんて、身体によっぽど負担が出来ているんじゃないのか?力を貰ったら益々身体が持たなくなっていった…」
カケルはワイヤーをキツく縛ると将軍の動きを完全に封じ込んだ。
「ふざけるな!」
将軍は、激昂した。
「マシンにはそれぞれ役割があるんだ。戦闘用マシンには戦闘用マシンのー。作業用マシンには作業用マシンのー。だから、白鳥は計算していたんだ。お前がこうなるのも、計算の内さー」
「ああ。白鳥はいかにも狡猾な男だったよ。温厚な顔の裏の闇も冷酷さも時々垣間見る事が出来たなー。だからといって、白鳥はとうの昔に死んだんだよ。亡くなった奴に何が出来ると言うんだね?」
「白鳥は素晴らしい科学者だ。そしてーいや…何でもない。」
「そして、何だ?!早く言え!白鳥が何だ!?」
将軍の身体は亀裂が入り、ガタガタ激しく揺れた。カケルと博士は無言でそれを眺めた。将軍の身体の亀裂から煙や蒸気が吹き出し、辺りに充満していった。そして彼の身体はボコボコ凹み、内部のパーツが大きな音を立てて軋んだ。
そして、彼の身体は大きな爆発音と共に破損したのだった。
「…アンドレアン…」
ウォーリーは、そう言うと散在してある各パーツの方にかけ寄った。
「彼すでには不良品だ。たまたまら彼の方がお前よりスペックが高く造られ、白鳥は彼を長い年月をかけて、無理やり改造させたんだよ。」
カケルはウォーリーに優しくなだめだ。
「私は…彼に何も出来なかった…怖くて何も出来なかった…彼の言いなりのままだった…」
ウォーリーはブルブル激しく首を回転させた。そして、彼の身体からも蒸気が漏れ出してくる。ウォーリーは、そう言うと、蒸気を発し、爆発したのだった。彼の身体もガスには耐えられなかった。そして、次第に取り巻きの自動人形達もガタガタ揺れながら蒸気を発し、次々と爆発していった。
カケルはウォーリーのパーツを拾い集め、青木博士と研究所へと向かった。
「博士…このパーツはまだ使える。将軍は全て破損したから復元は無理だが、コイツは蘇らせる事が出来るぞ。」
「ふむ…確かに内部が全て無事だから、使えるかもしれんな…」
「白鳥…あの男はわざとアンドレアンが長い時間をかけてああなっていく様にプログラムを設計したんだ。彼は、自分で自分のプログラムを書きかえたと勘違いをしていたんだろうな…」
「白鳥は、恐ろしい人だ。未来を見据えて刻々とと計画を立てていたのだろう。取り巻きが壊れるのも計算の内だったのだろうな…それは、造り主である、組織に対する復讐でもあったー。」
青木博士はそう言うと、沸かしたお湯をティーカップに注ぐ。
「彼がアンドレアンを戦闘用マシンではなく作業用マシンにした謎画出てくるな…」
カケルは博士が持ってきたティーカップに口をつけると、タブレットで白鳥に関する情報を検索していた。
「恐らく…それも彼の計画の内だろうな…白鳥はアンドレアンの性能と性格をわざと真逆に設計したんだ。そうして、彼はアンドレアンがそれに不満を感じるようにと、プログラミングしたんだ。そして、わざと彼がパーツを取り替えてもらうように組織に入る様に設計し、組織の内部情報を掴み、職員を次々に殺害する様に仕向けた…」
青木博士はパソコンの前に座ると、カタカタキーボードを叩いた。
「白鳥は、組織に復讐するためにマシンを設計したと言うのか?200年以上も前の人間だそ?」
「多分だが、『オベリスクの扉』を開いてこの時代から何体ものマシンが白鳥の時代へと情報を探るか住処を求めてやってきたー。そこで、白鳥は彼らに大切な人を殺害されたか、何か軋轢が生じてしまったのだろうー。あのアルカナの事だから、オベリスクに関する情報やマシンが過去に渡った情報が一切記されてないんだよ。」
「博士ー、200年以上昔の新聞は残っているかー?」
「…ああ。マシンに関する記事なら保存してあるはずだが…残っているかな…」
博士は、マウスをカチカチならし保存用のファイルを開いた。その中の1996年代と名前が記されているファイルを開けた。
「これかなー?」
博士はモニターの画面を拡大して見せた。
「『若葉高校殺害事件 西暦1996年ー。』若葉区東山七丁目の若葉高校で、何者かにより10名が殺害されたらしい。白鳥は確か、この高校の卒業生だったなー。そして、犯人は未だに不明で未解決事件として扱われていたらしいー。その被害者の中に、白鳥の幼馴染みが二人いたらしい。」
博士はマウスで文章をなぞりながら読み上げた。
「その白鳥は、犯人の正体を知ってたと言う事か?」
カケルは博士の後ろに立つと、記事を凝視した。
「ああ、彼はどのタイミングで犯人を知ったのかは定かではないがー。おっと、こんなのもあったぞー。」
博士はそう言うと、真下のファイルをクリックした。
「『天才少年現るー。白鳥衛。若干12才ー。』」
画面の新聞の一面に、少年時代の彼が発明した作品が並べられていた画像が映し出されたー。そこには、複雑なプログラミングを必要とするアプリや複雑な配線をした電子機器等、大人顔負けの発明スキルー。その完成度の高い作品の数々に二人は目を疑った。
「白鳥は、復讐用のマシンを5年以上もの年月をかけて作成したのかー。自らの寿命と引き換えにー。」
カケルは呆然とし、彼の人間離れしたその頭脳を疑った。まるで、組織の研究員顔負けの技術力を持っていたのだった。
「ああ…彼はマシンが完成した後も、有害物質に身体を侵されながら刻々と復讐の計画を立てていた事になるな。」
「…科学の発展や平和などと言う言葉は建前だったんだな…」
ウォーリーもアンドレアンも白鳥の復讐の駒として動かされており、彼ら自身はそのことに最期まで気づかなかったのだ。彼自身は、アンドレアンが暴走し過ぎないようにブレーキの役割とアンドレアンのバックアップの機能を持っていた。ウォーリーも、結局は白鳥の復讐の駒でしかなかったのだ。
「アンドレアンがペンタゴンを集めたのは白鳥のプログラミングなのだろうか?」
「ああ…しかし、彼には大きな誤算があった。彼は、高校の頃ペンタゴンについて知り、アンドレアンを使い何やら画策した。しかし、彼の身体は持たなかった…何故なら彼は未来を予測出来なかった。200年も先の科学の発展を知る事が出来なかったからなんだよ。彼はいささか傲慢な所があったようだな…」
「白鳥は、自身の創り上げたマシンに、プログラミングに、余程自信があったのだろうな…」
人間は追い詰められると、どう暴走するか分からない。人間の心はマシンより遥かに複雑で脆いゎ。それ故に危うく、いつスイッチが入って悪魔へと変貌するのか分からないー。白鳥自身もまた、心を追い詰められ冷酷な悪魔へと変わり果てていったのだろう。
部屋の隅には1体のタマゴ型の自動人形と、カマキリ型の自動人形が、ひっそりと佇んでいた。すると、ガラガラと扉が開き、ゼミの仲間が、顔を出しに来た。
「おい、白鳥…お前、まだ残ってんのか?研究熱心だなあ。もう、時間だ…帰るぞ。」
「山本、見ろよ。とうとう出来たぞ!」
白鳥は、子供の様な無邪気さで目を輝かせていた。
「何だ?R2が1体にコイツはカマキリみたいだな…スターウォーズさながらだなー。おい、何か映写機機能も搭載されてるのか?」
山本は、物珍し気に2体の自動人形を眺めていた。
「…ああ。ようやく完成したんだよ。俺の長年の目標がねー。」
山本は椅子をくるりと回すと2体のマシンを見つめていた。
「おお。凄いな…それにしても、お前、2体も造ったのか…?」
山本は、物珍しそうに2体を凝視している。
「ああ。初めは1体だけにしようとするつもりだったんだが、事情が変わって2体になったんだ。」
白鳥は2体のマシンに歩み寄ると、しゃがみ込み細かな確認をしていた。
「へえー、こんな複雑なマシンを造るのに俺は一体でも無理だわー。」
山本は、感嘆した。
「俺はマシンに自我やスペックを搭載したんだ。しかし一体だけだと、配線が複雑になるし、第一バッテリーの消耗が激しい。そこで、マシンの負担を減らす為に、対になる2体を造る事にしたんだ。それにその方がおもしろいだろ?」
「コイツらは、スペックがそれぞれ違うのか?」
「ああ。片方はブレーキの役割をしてもう片方はアクセルの役割をしている。」
白鳥が2体もの蓋を開け、最終確をした。そして、彼のポケットからスマホが落ち、スマホのカバーの中から写真がヒラリと滑り落ちた。
「これ…お前が高校の頃の写真だろ…?友人か…?」
山本は、写真を拾うと白鳥に渡した。
「ああ。この二人は共に夢を目指した同士なんだよ。しかし、志し半ばでね…」
白鳥は写真を手に取り、半ば哀しげな顔でそれを見ていた。
「ん…仲間割れか…?」
「割れたというより裂かれたんだよね。」
白鳥のその表情から哀愁が漂った。山本は白鳥のその表情から、大切な人との永遠の別れの様な寒々とした気配を感じた。
「…あ、ああ…すまない。」
「いや、良いんだ。気にしなくて。」
白鳥は、軽く微笑むと再びマシンの最終確認に入ったのだった。
カケルと博士は空飛ぶ車で将軍の行方を辿った。青木博士のその車には、内部の計測器からマシンの放出する独自の電磁波の流れを探るシステムが搭載されといるのだ。マシンはその流れを辿りながら目的地へと向かった。マシンは時速200キロを上回っていた。
「長い年月を得たとは言え、よくそこまで変貌を遂げたな。少しずつにしても、流石に変わりすぎだぞ?」
「…いや、実はそれはあり得るんだよ。私のいた機関にはかなり腕の立つ技術者がいたし、まだ知られてない機密情報も沢山あった…彼は何らかの方法で組織に入り込み組織の弱みを握り、自身の身体を改造してもらったんだろうな…奴の基本的な核なる部分…つまり脳となるパーツはそのまま残っていたから不可能ではないかと…」
「一体、どんな技術者が彼を改造したんだろう?」
「多分…それなりの技術力を持った人達だっだろう…特別機関のな…そして改造後、彼らは次々に殺害されたのだろうな…」
博士はモニターを観測しながら話した。
「殺害…?彼の意思でかー?大体奴には主人が居ないし、メンテナンスもされてない。そこまでプログラミング…」
そう言いかけて、カケルはハッとし右隣の博士の方を向いた。
「なあ、博士。妙じゃないか?」
「ああ。実に妙だな…他の自動人形達は、自分の性能に不満を抱く者はいなかった。何故なら、彼らには不満を感じその不満に対しての行動力を起こすようにプログラミングされていないからだよ。自動人形が自ら変わる様にプログラムされてないとああはならない。」
「奴の造り主は白鳥だよな…」
「ああ…そうだな…だとしたら、彼は故意に研究所を襲った事になるな。」
「白鳥は、アルカナに復讐を抱いていたのか?」
「多分、そうだろうな…余程強い恨みを持ってないと…」
そう言うと、博士はタブレットの画面で検索し始めた。
「あったぞ!1996年の記事だ。組織のマシンが『オベリスクの扉』という、異次元へ向かえるゲージ使い、渡り歩いた時代とマッチしている。」
青木博士は目を皿のように丸くし、タブレットの画面を拡大した。
「マシンは何の為に向こうへ行ったんだ?」
「多分…新天地を求めたのだろうな…か、若しくは調査しにな…場所は、若葉高校…丁度、白鳥がそこの高校生だったな。」
「博士…よくそこまで調べたな…」
「なあに。私はこう見えて、組織の元最高責任者だ。あらゆる情報は網羅してある。」
青木博士は得意げに話す。
ウォーリーは各地からブルーペンタゴンをかき集めた。何故、自分がそうしているのか全く分からない。ただ…そうせざる負えない状況に追い込められている。まるで自分が操り人形であり、硬い糸で無理やり引っ張られたかのようである。
ウォーリーは身体を透明にし時計台に近づきエレベーターで登ると、そして台座からペンタゴンをもぎ取ると、ペンタゴンを風呂敷に包んだ。そして、エレベーターで元来た道へと戻って行った。そして彼は、毎日決まった時刻にそれを繰り返していたのである。
ウォーリーは風呂敷を担ぎ車にそれを積むと、屋敷へと戻って行った。
彼が戻ると、将軍は満足気に手を叩いた。
「よし。これで準備が整った。」
奥の方から取り巻きが荷車を運んできた。荷車には、ペンタゴンが30個陳列されていた。
将軍は満足気にほくそ笑むと、1つ1つペンタゴンの蓋をこじ開け、ガスを大量に身体全身に浴びた。
「おお…力が全身にみなぎって来るぞ!」
アンドレアンは歓喜した。
「ん…?」
すると、急に彼の身体は急にガタガタ揺れた。
「将軍!」
取り巻きの自動人形は、たじろいだ。
すると、扉が重い音を立ててゆっくり開いた。
「これで、マシンはこんなに完璧に造られている訳じゃないと言う事が分かったろ。
それに、お前の身体は戦闘用に造られたわけじゃないんだ。だから、お前は元々は戦闘に不向きなんだ。お前のやってる事は、流れに逆らう事…魚が陸地で生きる様なものだよ。長い年月をかけて随分様変わりしたが、基盤となるプログラムは書き換える事が出来なかった様だな。基盤は基盤……お前の脳味噌その物なのだからな。そりゃあ、無理があるよな?」
カケルは将軍を睨みつけた。青木博士は扉を閉めると何やら計測する機器を用意していた。
「ふざけるな!我々マシンが長い年月をかけて、築き上げて来た軌跡にケチを付けるというのか?我々が独自の帝国を創って何が悪いと言うのだね?」
将軍は憤慨し鎌をぶんぶん振り回すと、カケル目掛けて投げつけた。
「今までずっと逆らってきたから、お前の身体の内部は既にガタが出来ているんじゃないのか?なるほどな…お前はまんまと白鳥の掌で踊らされていたんだよ。操り人形の様にな。」
カケルはウサギの様な身軽さでかわすと、右手の義手からワイヤーを引き抜いた。
「ああ…そうなんだよ。君達マシンは造り主が全てプログラミングをしてそれでようやく自我を持ち、動ける様になるんだ。君とウォーリーは、全て白鳥の設計の元に出来ているんだよ。君のプログラ厶は私が君達のプログラムを書き換えられるんだが…私は元組織のー」
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「ふざけるな!」
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「マシンにはそれぞれ役割があるんだ。戦闘用マシンには戦闘用マシンのー。作業用マシンには作業用マシンのー。だから、白鳥は計算していたんだ。お前がこうなるのも、計算の内さー」
「ああ。白鳥はいかにも狡猾な男だったよ。温厚な顔の裏の闇も冷酷さも時々垣間見る事が出来たなー。だからといって、白鳥はとうの昔に死んだんだよ。亡くなった奴に何が出来ると言うんだね?」
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「…アンドレアン…」
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「博士…このパーツはまだ使える。将軍は全て破損したから復元は無理だが、コイツは蘇らせる事が出来るぞ。」
「ふむ…確かに内部が全て無事だから、使えるかもしれんな…」
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「白鳥は、恐ろしい人だ。未来を見据えて刻々とと計画を立てていたのだろう。取り巻きが壊れるのも計算の内だったのだろうな…それは、造り主である、組織に対する復讐でもあったー。」
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カケルは博士が持ってきたティーカップに口をつけると、タブレットで白鳥に関する情報を検索していた。
「恐らく…それも彼の計画の内だろうな…白鳥はアンドレアンの性能と性格をわざと真逆に設計したんだ。そうして、彼はアンドレアンがそれに不満を感じるようにと、プログラミングしたんだ。そして、わざと彼がパーツを取り替えてもらうように組織に入る様に設計し、組織の内部情報を掴み、職員を次々に殺害する様に仕向けた…」
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「多分だが、『オベリスクの扉』を開いてこの時代から何体ものマシンが白鳥の時代へと情報を探るか住処を求めてやってきたー。そこで、白鳥は彼らに大切な人を殺害されたか、何か軋轢が生じてしまったのだろうー。あのアルカナの事だから、オベリスクに関する情報やマシンが過去に渡った情報が一切記されてないんだよ。」
「博士ー、200年以上昔の新聞は残っているかー?」
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「『若葉高校殺害事件 西暦1996年ー。』若葉区東山七丁目の若葉高校で、何者かにより10名が殺害されたらしい。白鳥は確か、この高校の卒業生だったなー。そして、犯人は未だに不明で未解決事件として扱われていたらしいー。その被害者の中に、白鳥の幼馴染みが二人いたらしい。」
博士はマウスで文章をなぞりながら読み上げた。
「その白鳥は、犯人の正体を知ってたと言う事か?」
カケルは博士の後ろに立つと、記事を凝視した。
「ああ、彼はどのタイミングで犯人を知ったのかは定かではないがー。おっと、こんなのもあったぞー。」
博士はそう言うと、真下のファイルをクリックした。
「『天才少年現るー。白鳥衛。若干12才ー。』」
画面の新聞の一面に、少年時代の彼が発明した作品が並べられていた画像が映し出されたー。そこには、複雑なプログラミングを必要とするアプリや複雑な配線をした電子機器等、大人顔負けの発明スキルー。その完成度の高い作品の数々に二人は目を疑った。
「白鳥は、復讐用のマシンを5年以上もの年月をかけて作成したのかー。自らの寿命と引き換えにー。」
カケルは呆然とし、彼の人間離れしたその頭脳を疑った。まるで、組織の研究員顔負けの技術力を持っていたのだった。
「ああ…彼はマシンが完成した後も、有害物質に身体を侵されながら刻々と復讐の計画を立てていた事になるな。」
「…科学の発展や平和などと言う言葉は建前だったんだな…」
ウォーリーもアンドレアンも白鳥の復讐の駒として動かされており、彼ら自身はそのことに最期まで気づかなかったのだ。彼自身は、アンドレアンが暴走し過ぎないようにブレーキの役割とアンドレアンのバックアップの機能を持っていた。ウォーリーも、結局は白鳥の復讐の駒でしかなかったのだ。
「アンドレアンがペンタゴンを集めたのは白鳥のプログラミングなのだろうか?」
「ああ…しかし、彼には大きな誤算があった。彼は、高校の頃ペンタゴンについて知り、アンドレアンを使い何やら画策した。しかし、彼の身体は持たなかった…何故なら彼は未来を予測出来なかった。200年も先の科学の発展を知る事が出来なかったからなんだよ。彼はいささか傲慢な所があったようだな…」
「白鳥は、自身の創り上げたマシンに、プログラミングに、余程自信があったのだろうな…」
人間は追い詰められると、どう暴走するか分からない。人間の心はマシンより遥かに複雑で脆いゎ。それ故に危うく、いつスイッチが入って悪魔へと変貌するのか分からないー。白鳥自身もまた、心を追い詰められ冷酷な悪魔へと変わり果てていったのだろう。
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