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ウォーリー ③
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「…USBメモリーを渡してもらおうか…?」
VXはそう言うと、鎌を振り降ろす。
「そう言うお前の方が、結構盗みを働いてきたんじゃないのか?さあ、羅針盤とパンドラVを返してもらおうか?」
カケルはVXを睨みつけると、電磁砲#バズーカ#を構えた。
「…ほほう。何やらの方法で、私まで辿り着いたみたいだが、」
「おまえは、整備不良の回収されてないマシンだろ。」
カケルはわざとVXを扇いだ。
「失敬な。我々マシンは、人間達が汚してきた過去の負の痕跡をただクリアにしようとしているだけなんだが…」
そう言うと、VXは、鎌を振りかざした。
カケルは彼を凝視していたが、そこでピンときた。彼の関節の配線や歯車、微量なモーターの回転する音が、モニターに映っていたマシンのものと酷似している事に気がついた。
「お前も、200年以上も前からいた自動人形かー?そして、白鳥博士に造られた…」
「ああ。あの頃は、思い出すだけで反吐が出るわ。随分と昔の事だが、私は確かに白鳥とやらの下僕としてひたすらこき使われていたな。私は自分の不遇な状況が受け入れなれなかったー。だから、自分のプログラムを、アルゴリズムをこうして書き換えたのさ。また、自分の身体もこの通り改造したのだよ。」
VXは得意げに腰に手を当て、仰け反った。
「アルゴリズムを書き換えると、パワーが増大するのか?」
「カケル君ー。そもそもマシンに書かれてあるアルゴリズムは非常に複雑で、造り主にしかコードを変える事は不可能な筈だぞ。」
「アルゴリズムは、マシンでも変えられるのか?コードを書き間違えると、マシン自らが爆死する可能性だってあるんだぞ?」
「いやー実はだなー。造り主の技量によって、アルゴリズムはマシン自らが自由に変える事が出来るのだよ。このVXからみてー、白鳥博士はずば抜けた技量の持ち主なのかも知れん。」
「当時に、こんなにずば抜けた技量の科学者が居たとはな…」
「フンー。白鳥は確かに優秀だったよ。しかし、彼は自身のアルゴリズムは書き換える事が出来ないみたいだった…彼は末期のガンに侵されていたのだよ。しかも、皮肉な事に自身の発明した科学の力で己の身体を蝕み、身を滅ぼすとはなー。愚かな事よ。人間は、結局、他人も自分自身も誰も救えないのだよ。」
VXはそう言うと、仰け反り高笑いをした。そして自身の鎌を振り回すと二人めがけて花火の様な円盤状の強い発行体を放つ。発光体は、ブーメランの様な高速回転をし、二人にめがけて飛んでくる。
「…白鳥の身体を蝕んだ物とは、この硫黄の事か?」
二人は電磁砲《バズーカ》を連射し、発光体の威力を弱めた。しかし、発光体は威力は弱まるどころか徐々に強くなっていく。カケルは深く息をすると、力《スキル》を発動した。彼の前報に透明な青い膜が広がり、発光体を弾いている。発光体の赤い光と青い光がチカタカ花火の様に交錯しそれは徐々に強くなり、そして爆音を出してVXと二人は仰け反った。
「ああ、その通り。硫黄の事さー。そして、その硫黄が何らかの科学反応を起こして、酸化してしまったー。それで彼は肺を侵され、滅びたのだ。人間は、自身の身体のコードを書き変える事が出来ないなんて、哀れな事よ…」
VXは膝を立てて体勢を立て直すと、再び鎌を構えた。
「お前ー。自分のモジュールも組み替えたな…?」
カケルも再び体勢を立て直し、右手の義手からワイヤーを引き抜いた。
「ああ。歯車もモーターも、ほとんど全て組み替えたな…変えて何の不都合があると言うのだね?」
「…いや…お前、白鳥を批判している割には基本的なコードは書き換えてはないから、どういう事か、検討がつかないだけさー。」
カケルのワイヤーを縛る手が次第にキツくなっていく。
基本的なコードは、造り主が設計したマシンの性格やスペックの基礎となるものであるー、また、書き換えるとこれまでの蓄積された記憶も全て消えてしまう事がある。
「確かに、本当に嫌悪しているのなら、全て書き換えても、おかしくはないな…」
青木博士はそういうと岩のように重い腰をゆっくり上げた。
「…全く、面白いな。アンドレアス…」
カケルはぜえぜえ荒い呼吸をすると、彼の本名を呼んだ。
「…この呼び名はやめろ!!!私は将軍だ!!!」
VXは激高すると、ブンブン鎌を振り回した。すると、辺りは突風が竜巻のように吹き荒れ、バチバチという音が響き渡り、硫黄の匂いも強くなった。
「…残念。俺らがここでぼんやり突っ立って居たとでも言うのかい?」
カケルは風に煽られながら、涼しげな表情で彼を睨みつける。
「…なっ。しまっ。」
VXの全身にはワイヤーがぐるぐる巻き付いており、全ての動きが封じられた。
「ついでに、お前は自身の独自の電磁波を放出していたみたいだが、それが仇となったみたいだな。」
カケルは、キツくワイヤーを引っ張る。VXは、両手両足を縛り上げられ操り人形の様な格好になった。そして、鎌を振りかざすとワイヤーを断ち切ろうとした。
しかし、ワイヤーはうねうねし断ち切ろうとすればするほど締め付けてくる。ワイヤーは強烈な電流を流し、VXの動きを麻痺させる。
そして、カケルは更にワイヤーをキツく縛るとバネの様に跳ね、VXに蹴りをお見舞いした。VXはビリビリ火花を放出し、大きくガクガク揺れると、動きが徐々に緩やかになった。
「何を、これきしー。」
VXは首に巻き付けてあるワイヤーを掴むとガタガタ震え、手から赤く光らせ熱を発した。ワイヤーは柔らかくなり、粘土の様に溶けた。
そして、鎌を振り回すと再び赤い発光体を放出した。二人は咄嗟に避けた。発光体は壁にぶつかりやがて硫黄の匂いのする煙を放出した。すると二人は空間がグラグラと揺れる様な感覚に襲われ、地面にへばりついた。
「ははは…お前がそう言う仕掛けをするとはあらかじめ予測はついてたわ。これで、全ての計画の準備は整った。」
VXはそう言うと、USBメモリーを手に取りその場を去った。
カケルと博士は、しばらく動けなかった。大量のアルコールを一気飲み干したのような、遊園地のコーヒーカップに乗ってるかのような麻痺した感覚に襲われていた。天井がクルクル回って見え、空間全体がグニャグニャ歪んで見えた。彼には、相手の感覚を鈍らせる能力があるらしい。二人は、ふらつきながらもゆっくり起き上がった。
ウォーリーというマシンとあのVXは、実は対の構造になっていて、どちらかが壊れるともう片方も壊れる仕組みになっていた。200年以上も昔の当時は、1つのマシンに多くのスペックを搭載する迄は技術が進んでおらず、白鳥は対になる2体のマシンを製造して、お互いにスペックの共有を行ない、苦手な部分を補い合うという結論に至ったのだ。つまり『静』と『動』であり、相互依存の関係にあるらしい。その為、二人はウォーリーが彼に壊される事はないと考えていた。
また、カケルはVXを巻き付けた時にマイクロチップを貼り付けた。その為、奴の足取りを簡単に把握する事が出来るのだ。
「うまくいくと良いのだが…何せ、出力が1000アンペアでワイヤー繋げたから…」
「博士、今は、コレを信じよう。」
二人は急いで倉庫に向かい、ビニールの風呂敷を外した。そこには、現代で言う、『空飛ぶタ車』ー、エアモーターカーが姿を現したのだ。
博士はメーターを確認すると、電源のスイッチを点滅させた。
「…この車は試作品だからな…100000ボルト迄上昇するまで少し時間がかかるぞ…」
博士は、各パーツをカチカチ鳴らしながら確認をした。
「ああ。でも、早く、ヤツの足取りを探らないと…」
カケルは通信機でVXの足取りを確認すると、軽く足踏みした。
「…時間は限られてるぞ。いけるな?」
「…そうだな。」
博士は、メーターを確認した。メーターのケージが徐々に赤く上昇していき、最上部へ到達した。
「よし!今だ!」
カケルの掛け声と共にケーブルが発火すると、
二人の乗ったエアモーターかーは火花を撒き散らしながら、高スピードで空を飛んだ。
VXは空気電動カーを走らせ、USBメモリーを手に取り、上機嫌で自分のアジトへと戻っていった。
「お、お帰りなさいませ。将軍。」
将軍がドアを開くと、通りすがりの自動人形が、慌てて深々とお辞儀をした。
「ウォーリー、実に良い土産を持っきたぞ。」
将軍はそう言うと、満足気に黒ジャンの胸ポケットからUSBメモリーを取り出した。
「…あ、コレは…な、何で…?」
ウォーリーは、愕然とし赤い目をチカチカ点滅させた。
「こ、コレは私のです!白鳥博士から貰った大事な物です!、か、返してください!」
ウォーリーが将軍に詰め寄るが将軍の取り巻きが彼をキツく取り押さえつけた。
「よし、ウォーリーを檻にぶち込んどけ!これが、楽園創設の鍵となるのだな…。」
取り巻きの自動人形《オートマドール》らは、ウォーリーを抑え込むと、奥の硝子張りの部屋へ打ち込んだ。
将軍は、満足せいにUSBメモリーを映写機に接続した。
スクリーンには、白鳥博士が自室の書斎で心妙な面持ちで何やら語っている姿が映し出された。
「何なんだ…?これは、寄りによって下らぬものが…コードが書き記されているのでは無いのかー?」
続いて、画面には、白鳥博士とウォーリー、と隣にもう一台のウォーリーそっくりのタマゴ型の自動人形《オートマドール》が映っていた。
『ウォーリー、アンドレアス…君達は私の自慢の優秀な宝物だよ。君達は、これからの新しい時代の科学を担うー』
すると、将軍は、つかさず不機嫌そうにモニターのスイッチを切った。
「ふん。何かと思えば、実にくだらぬ。200年以上も昔の負の遺産だな。私は20年余り、白鳥の間近で人間共を観察してきたが、結局は何も変わらぬのだよ。」
将軍は、溜息をつくとコードを断ち切った。
「ここから、出して下さい!コレは、私達な思い出の詰まったー」
ウォーリーはしきりにバタバタもがき、硝子をバンバン叩いている。しかし、将軍は彼を無視して天を仰いだ。
「よし。これから楽園を創設する。できる限りの羅針盤をかき集め、人間共の息の根を断ち切るのだ。これで、全ての調律と均衡が保たれるのだ。」
将軍は高らかに声を張り上げると、手をパンパンと叩き、天を仰いだ。
VXはそう言うと、鎌を振り降ろす。
「そう言うお前の方が、結構盗みを働いてきたんじゃないのか?さあ、羅針盤とパンドラVを返してもらおうか?」
カケルはVXを睨みつけると、電磁砲#バズーカ#を構えた。
「…ほほう。何やらの方法で、私まで辿り着いたみたいだが、」
「おまえは、整備不良の回収されてないマシンだろ。」
カケルはわざとVXを扇いだ。
「失敬な。我々マシンは、人間達が汚してきた過去の負の痕跡をただクリアにしようとしているだけなんだが…」
そう言うと、VXは、鎌を振りかざした。
カケルは彼を凝視していたが、そこでピンときた。彼の関節の配線や歯車、微量なモーターの回転する音が、モニターに映っていたマシンのものと酷似している事に気がついた。
「お前も、200年以上も前からいた自動人形かー?そして、白鳥博士に造られた…」
「ああ。あの頃は、思い出すだけで反吐が出るわ。随分と昔の事だが、私は確かに白鳥とやらの下僕としてひたすらこき使われていたな。私は自分の不遇な状況が受け入れなれなかったー。だから、自分のプログラムを、アルゴリズムをこうして書き換えたのさ。また、自分の身体もこの通り改造したのだよ。」
VXは得意げに腰に手を当て、仰け反った。
「アルゴリズムを書き換えると、パワーが増大するのか?」
「カケル君ー。そもそもマシンに書かれてあるアルゴリズムは非常に複雑で、造り主にしかコードを変える事は不可能な筈だぞ。」
「アルゴリズムは、マシンでも変えられるのか?コードを書き間違えると、マシン自らが爆死する可能性だってあるんだぞ?」
「いやー実はだなー。造り主の技量によって、アルゴリズムはマシン自らが自由に変える事が出来るのだよ。このVXからみてー、白鳥博士はずば抜けた技量の持ち主なのかも知れん。」
「当時に、こんなにずば抜けた技量の科学者が居たとはな…」
「フンー。白鳥は確かに優秀だったよ。しかし、彼は自身のアルゴリズムは書き換える事が出来ないみたいだった…彼は末期のガンに侵されていたのだよ。しかも、皮肉な事に自身の発明した科学の力で己の身体を蝕み、身を滅ぼすとはなー。愚かな事よ。人間は、結局、他人も自分自身も誰も救えないのだよ。」
VXはそう言うと、仰け反り高笑いをした。そして自身の鎌を振り回すと二人めがけて花火の様な円盤状の強い発行体を放つ。発光体は、ブーメランの様な高速回転をし、二人にめがけて飛んでくる。
「…白鳥の身体を蝕んだ物とは、この硫黄の事か?」
二人は電磁砲《バズーカ》を連射し、発光体の威力を弱めた。しかし、発光体は威力は弱まるどころか徐々に強くなっていく。カケルは深く息をすると、力《スキル》を発動した。彼の前報に透明な青い膜が広がり、発光体を弾いている。発光体の赤い光と青い光がチカタカ花火の様に交錯しそれは徐々に強くなり、そして爆音を出してVXと二人は仰け反った。
「ああ、その通り。硫黄の事さー。そして、その硫黄が何らかの科学反応を起こして、酸化してしまったー。それで彼は肺を侵され、滅びたのだ。人間は、自身の身体のコードを書き変える事が出来ないなんて、哀れな事よ…」
VXは膝を立てて体勢を立て直すと、再び鎌を構えた。
「お前ー。自分のモジュールも組み替えたな…?」
カケルも再び体勢を立て直し、右手の義手からワイヤーを引き抜いた。
「ああ。歯車もモーターも、ほとんど全て組み替えたな…変えて何の不都合があると言うのだね?」
「…いや…お前、白鳥を批判している割には基本的なコードは書き換えてはないから、どういう事か、検討がつかないだけさー。」
カケルのワイヤーを縛る手が次第にキツくなっていく。
基本的なコードは、造り主が設計したマシンの性格やスペックの基礎となるものであるー、また、書き換えるとこれまでの蓄積された記憶も全て消えてしまう事がある。
「確かに、本当に嫌悪しているのなら、全て書き換えても、おかしくはないな…」
青木博士はそういうと岩のように重い腰をゆっくり上げた。
「…全く、面白いな。アンドレアス…」
カケルはぜえぜえ荒い呼吸をすると、彼の本名を呼んだ。
「…この呼び名はやめろ!!!私は将軍だ!!!」
VXは激高すると、ブンブン鎌を振り回した。すると、辺りは突風が竜巻のように吹き荒れ、バチバチという音が響き渡り、硫黄の匂いも強くなった。
「…残念。俺らがここでぼんやり突っ立って居たとでも言うのかい?」
カケルは風に煽られながら、涼しげな表情で彼を睨みつける。
「…なっ。しまっ。」
VXの全身にはワイヤーがぐるぐる巻き付いており、全ての動きが封じられた。
「ついでに、お前は自身の独自の電磁波を放出していたみたいだが、それが仇となったみたいだな。」
カケルは、キツくワイヤーを引っ張る。VXは、両手両足を縛り上げられ操り人形の様な格好になった。そして、鎌を振りかざすとワイヤーを断ち切ろうとした。
しかし、ワイヤーはうねうねし断ち切ろうとすればするほど締め付けてくる。ワイヤーは強烈な電流を流し、VXの動きを麻痺させる。
そして、カケルは更にワイヤーをキツく縛るとバネの様に跳ね、VXに蹴りをお見舞いした。VXはビリビリ火花を放出し、大きくガクガク揺れると、動きが徐々に緩やかになった。
「何を、これきしー。」
VXは首に巻き付けてあるワイヤーを掴むとガタガタ震え、手から赤く光らせ熱を発した。ワイヤーは柔らかくなり、粘土の様に溶けた。
そして、鎌を振り回すと再び赤い発光体を放出した。二人は咄嗟に避けた。発光体は壁にぶつかりやがて硫黄の匂いのする煙を放出した。すると二人は空間がグラグラと揺れる様な感覚に襲われ、地面にへばりついた。
「ははは…お前がそう言う仕掛けをするとはあらかじめ予測はついてたわ。これで、全ての計画の準備は整った。」
VXはそう言うと、USBメモリーを手に取りその場を去った。
カケルと博士は、しばらく動けなかった。大量のアルコールを一気飲み干したのような、遊園地のコーヒーカップに乗ってるかのような麻痺した感覚に襲われていた。天井がクルクル回って見え、空間全体がグニャグニャ歪んで見えた。彼には、相手の感覚を鈍らせる能力があるらしい。二人は、ふらつきながらもゆっくり起き上がった。
ウォーリーというマシンとあのVXは、実は対の構造になっていて、どちらかが壊れるともう片方も壊れる仕組みになっていた。200年以上も昔の当時は、1つのマシンに多くのスペックを搭載する迄は技術が進んでおらず、白鳥は対になる2体のマシンを製造して、お互いにスペックの共有を行ない、苦手な部分を補い合うという結論に至ったのだ。つまり『静』と『動』であり、相互依存の関係にあるらしい。その為、二人はウォーリーが彼に壊される事はないと考えていた。
また、カケルはVXを巻き付けた時にマイクロチップを貼り付けた。その為、奴の足取りを簡単に把握する事が出来るのだ。
「うまくいくと良いのだが…何せ、出力が1000アンペアでワイヤー繋げたから…」
「博士、今は、コレを信じよう。」
二人は急いで倉庫に向かい、ビニールの風呂敷を外した。そこには、現代で言う、『空飛ぶタ車』ー、エアモーターカーが姿を現したのだ。
博士はメーターを確認すると、電源のスイッチを点滅させた。
「…この車は試作品だからな…100000ボルト迄上昇するまで少し時間がかかるぞ…」
博士は、各パーツをカチカチ鳴らしながら確認をした。
「ああ。でも、早く、ヤツの足取りを探らないと…」
カケルは通信機でVXの足取りを確認すると、軽く足踏みした。
「…時間は限られてるぞ。いけるな?」
「…そうだな。」
博士は、メーターを確認した。メーターのケージが徐々に赤く上昇していき、最上部へ到達した。
「よし!今だ!」
カケルの掛け声と共にケーブルが発火すると、
二人の乗ったエアモーターかーは火花を撒き散らしながら、高スピードで空を飛んだ。
VXは空気電動カーを走らせ、USBメモリーを手に取り、上機嫌で自分のアジトへと戻っていった。
「お、お帰りなさいませ。将軍。」
将軍がドアを開くと、通りすがりの自動人形が、慌てて深々とお辞儀をした。
「ウォーリー、実に良い土産を持っきたぞ。」
将軍はそう言うと、満足気に黒ジャンの胸ポケットからUSBメモリーを取り出した。
「…あ、コレは…な、何で…?」
ウォーリーは、愕然とし赤い目をチカチカ点滅させた。
「こ、コレは私のです!白鳥博士から貰った大事な物です!、か、返してください!」
ウォーリーが将軍に詰め寄るが将軍の取り巻きが彼をキツく取り押さえつけた。
「よし、ウォーリーを檻にぶち込んどけ!これが、楽園創設の鍵となるのだな…。」
取り巻きの自動人形《オートマドール》らは、ウォーリーを抑え込むと、奥の硝子張りの部屋へ打ち込んだ。
将軍は、満足せいにUSBメモリーを映写機に接続した。
スクリーンには、白鳥博士が自室の書斎で心妙な面持ちで何やら語っている姿が映し出された。
「何なんだ…?これは、寄りによって下らぬものが…コードが書き記されているのでは無いのかー?」
続いて、画面には、白鳥博士とウォーリー、と隣にもう一台のウォーリーそっくりのタマゴ型の自動人形《オートマドール》が映っていた。
『ウォーリー、アンドレアス…君達は私の自慢の優秀な宝物だよ。君達は、これからの新しい時代の科学を担うー』
すると、将軍は、つかさず不機嫌そうにモニターのスイッチを切った。
「ふん。何かと思えば、実にくだらぬ。200年以上も昔の負の遺産だな。私は20年余り、白鳥の間近で人間共を観察してきたが、結局は何も変わらぬのだよ。」
将軍は、溜息をつくとコードを断ち切った。
「ここから、出して下さい!コレは、私達な思い出の詰まったー」
ウォーリーはしきりにバタバタもがき、硝子をバンバン叩いている。しかし、将軍は彼を無視して天を仰いだ。
「よし。これから楽園を創設する。できる限りの羅針盤をかき集め、人間共の息の根を断ち切るのだ。これで、全ての調律と均衡が保たれるのだ。」
将軍は高らかに声を張り上げると、手をパンパンと叩き、天を仰いだ。
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