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第50話 一泡
しおりを挟む一方的なダリアの蹂躙を受け入れた昨日。今日も今日とて。またFクラスの生徒は訓練場に来た。その表情は昨日のような悲壮感に沈んだ表情では無かった。
「なんだ?今日は皆やる気あるな。」
「皆で話したんですよ、ダリアさんを一泡吹かせようって」
キョトンとした表情をするダリア。
「…ふふふふ。昨日あれだけやられて。アル、お前は面白い。…だがな、危ない奴からは逃げるべきだぞ?」
アルは応える。
「…それも話したよ。他の場面でダリアさんクラスに遭ったら、即逃げようって。でも今は手加減を受けている。今やるべき事は、ダリアさんから逃げる事じゃない。ダリアさんの攻撃を防げる様に、避けれる様に、そして一泡吹かせるってのも良いのかなって。…そう話したんだ!」
ダリアは表情が緩む。
「・・・・120点だ。アル。強い奴からは逃げるべきだ。命は儚い。それを話し合って80点。手加減を受けているのを実感して100点。そして…それを理解して訓練と割り切って挑む。…120点だ。・・・・掛かってこい。雑魚共。この私に対して、簡単に一泡吹かせられると…思うなよ?」
「皆、行くぞぉ!!」
「「「「「おおおお!!!」」」」
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「ひでぶぅぅぅ!!」
クラスメートが突風の様に飛んでいく。あられもない格好で横たわるクラスメート。失禁している者も昨日より多い。あっという間に、級友たちが倒れていく。彼女らの尊厳は殆ど無くなっていた。
…本当に死んで無いだろうな?
おいおい、昨日の3倍くらい強いぞ。手加減が無くなっていないか?
ふざけたダリアさんが言う。
「おお、勇者たちよ。この程度で倒れるとは情けない。」
「…ダリアさん、昨日より強くない?」
「…気のせいではないか?」
「より恐怖が身体に染み込んで、他であったら高速で逃げる様になりそう・・・・」
「残ったのはアルだけか。…残念だ。」
「…俺も昨日の俺じゃない。」
「…ほう。」
「…これが俺の切り札だ!」
そう言って地面から訓練場を埋め尽くす程のゴーレムを召喚する。昨日の夜に仕込んでいた今の俺が出来る最大戦力。物量でもギロチン数でも人生最大。もの完全にダリアさんを殺す気でいっている。そこに配慮は一切ない。
「…ほほう。素晴らしい。一介の学生でのレベルでは間違いなく…ない。戦場でも隊長クラスだ。」
「余裕もそこまでだ!!喰らえ!!!」
ゴーレムたちが攻撃しに行っては壊され、また行っては壊される。作る時間が5分くらいなら、壊すのは一瞬だ。理不尽な存在に苛立ちながら、アルも攻撃に参加する。
「ゴーレムでダメなら!!こいつはどうだ!!」
ズガガガガガガガガッ!!!
「…土壁か。なんて平凡な。」
そう言って、さも当然の様に避けていく。
「それならぁ!!」
アル自身も地雨を持って攻撃しに行く。
「素晴らしいな、思い切りの良い判断だ。・・・・だが剣筋が甘い。」
剣を蹴られ、ふらついた瞬間を狙い、まわし蹴りが飛んでくる。
「うおおおお!!!ゴーレムぅ!!」
間に防御用ゴーレムが入って、助けてくれる。
「…ゴーレムの使い方が訓練中にも上達していく。お前、楽しいなあ!!」
そう言いつつ、追い詰めていくダリア。
「お前、ゴーレムと土壁・ギロチンは使い方上手い。だがな、肝心のお前が横か上にしか動かず、お前自身のレパートリーが少ない。だから読みやすい。阿保の様だ。バランス悪いな。」
そうアドバイスなのか、罵詈雑言なのか判らない言葉を送ってくる。
そう言われ、ふと思いつく。ゴーレムも少なくなってきたし、最後の一手にどうだろうか。
「・・・・何か考え付いた顔をしたな。お前、判りやすいぞ。」
「へへ。クラスの友達の仇を取らないとな。これでどうだあ!!!」
「・・・なんだ、つまらん。先程と同じではないか。ゴーレムと土壁とギロチン・・・。少し硬いか?」
そこに剣が飛んでくる
「ッツ!!!」
必死で避けるも、そこにアルは居ない。
「ココだよ!」
そう言って後ろから声がする。
そこに盾を右手に構えたアルが、盾ごと殴りつけて来た。
「くぅ!!!」
頭を狙われ、必死で肩でガードするダリア。
「おお!!やった!一発入った!!」
喜んだその瞬間、後ろから強い衝撃が走り、吹き飛ばされるアルピエロ。
「・・・・油断しすぎだ。」
本気になったダリアが後ろに回り込み、蹴りで吹き飛ばしたのだ。アルはまた意識を失った。
「・・・・だが、良い攻撃だ。つい本気になってしまった。地面から出てきた気がする。何だったんだ、あれは?・・・・アイツはあれで身体強化も知らないのか。面白い。」
吹き飛ばされる前のアルはこう考えていた。
ゴーレムや土壁を出し、視界を塞ぐ。そこで新スキルだ。ヒントは横か上にしか行かないというアドバイス。そこで気付いた。【潜土】のスキルは地面に潜れるのではないかと。結果は最高だ。地面に潜って剣を投げつけ、そこでまた潜って接近戦が出来た。
潜っている時は周りの土達が避けてくれる為、移動もスムーズだ。モグラの様に掘る物かと思ってしまったが、違うようだ。
盾で一発殴れた事で、完全に気が抜けた。
蹴られた事でまた強く自分を律しようと思うアルであった。
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