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第34話 備えあれば憂いなし

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ダリアとの会話をした翌日の朝、アルは錬金の訓練をしていた。

問題が解決すると思っていたが、知識を得て、悩みが深まったのだ。アルは何とも言えない感情で過ごしていた。

「悩んでも仕方ない、鍛えよう」

なかなか上達しない錬金を鍛え、空想かも知れない男がやったという戦い方が出来るまで訓練を続けるつもりだ。


そうやっていると、クリスが近付いてくる。

「性が出るわね、明日一年生が実習から帰ってくるわよ?」

「そうですか!寂しかったですよ。また明日から学園か・・・・。 今日でギルドもしばらく中止かな?」

「ギルド行ってるって最初に聞いた時は驚いたけど・・・・勉強より得意ならいいのかな? 3年いて初めて見たけどね、その制度使って進級目指す人。」

苦笑いしか出来なかった。


訓練後、朝食を食べギルドに向かう

「ネムさん、おはようございます!」

「おはよう、アル君」

「お願いがあります。C級の依頼をこなしたいです。」

「まあ、一昨日なんか最短で1時間程度だったもんね。なんとなく分かってたよ。昨日はその装備を買いに?」

「ああ、いや。コレは一昨日に買ってました。昨日はダリアってシスターに冒険者時代の話を聞いてました。それで・・・やっぱり強くなりたいなって。」



「うんうん。男の子だね。」
「茶化さないで下さいよ・・」

「ごめんごめん。それじゃ、これらを見てから依頼を受けてね。」

そこには依頼の詳細が書かれた紙と、入って良い領域の拡大が書いてあった。

これでまた成長できる。そう思うと力が湧いてくる。

「ありがとう、ネムさん。行ってきます。依頼はこれです」

「またこんなに・・・・。C級なんだからゆっくりやれば?」

受けた依頼は以下の通りだ

・ワイバーンの巣の除去。
・コカトリスの討伐
・ティガレックスの討伐
・トリケラトプスの討伐

すべて単体依頼であった。

「全部、単体だしね。無理なら諦めてくるよ。逃げ足とかは自信があるんだ。」

そう笑うとネムさんが赤くなる。

「そそそ、そうなんだ。ででででも!無理は・・・ダメよ?」

「わかった。行ってきます」

「…いってらっしゃい」


そうやってギルドを出て森へ向かう。防具も買い、命の安全を高めている。前よりも安全は高まったと言える。



コネットの森に着く

「ココにも来る事に慣れたな」

そうやって奥に入っていく。途中、ゴブリンやワイルドドック、そして熊やシカといった見慣れた動物も狩っていく。いつもなら奥に目標が居るならそのままにするが、今は亜空間バッグを持っている。幾ら持っても行動を邪魔しない。

そうやって奥に行くと【この先C級以上のみ】の看板が。ここだ。ようやく来た。

警戒しつつ入っていく。そこには見たの事ない植物や薬草に似た植物があった。興味本位だが、取っておこうと思う。帰ってから聞いてみよう。




そうしながら、奥に入っていくと、魔物の気配を感じた。

木陰に隠れ、息をひそめる。その先には体の頑丈そうな恐竜が居た。


ティガレックス。古代から生きるとされる恐竜。

その牙は剣より鋭く、皮膚は鉄より硬い

馬より早く、そして殆ど考えない


ミノタウルスで身に染みた。

考えないって所は絶対に信用しない。そして口伝での情報だ。鵜吞みにしない。




そうして捕食したであろうシカを食べている後ろに回りこむ。

奇襲で倒す。そう考えた。


まずは時間を掛け、恐竜の周りに細工をする。錬金の時間も入れ、3分ほどかけた。そうして無防備なティガレックスを襲う。


地雨を持って襲うと同時に、下から最大限硬くした土壁ギロチンを出す。

これでやれたら良いのだが、背中と首に切り傷が出来た程度で避けられる。まあ、予想通り。

再度距離を取って、戦いが始まる。

恐竜が突進してくる。それを壁で防ぎつつ、横から鉄のナイフを飛ばしていく。これは事前に手元で鉄のナイフを錬金して作り出し、下から土壁を出せば飛ぶようにセット。そいつを起動させたのだ。皮膚は鉄より硬いそうなので目や口元を狙って起動している。

数本のナイフが目に刺さり、絶叫するティガレックス。そこで待ち構えていたように上空に土壁ギロチンを出し、同時に下からもギロチンを錬金する。

それにより絶命する恐竜。悲しい事に地雨より強い攻撃は錬金という事を知った。愛刀・・・。どこかで強化してやろう。それまではこの戦法を主としていく。



この戦い方がこのレベルでは必要だと感じた。

近接では残念ながら攻撃力が足りない。牽制に使いつつ、大技で仕留める。この流れが必要の様だ。小技を増やし大技を当てる事に慣れて行こう。



そう考えつつ、魔物の遺体を収納していく。その次にも魔物の気配を捉えていた。気配というか・・・・そのものを捕えていた。ティガレックスに逃げられた事を想定し、何通りかの逃げ道に落とし穴を設置していた。


その一つに、トリケラトプスが掛かっていた。非常に怒っている。そりゃそうだ。普通に歩いていたら落ちるんだもの。俺でも怒る。そう思いながらも非常だが止めを刺す。


上下のギロチンで絶命してもらう。絶命を確認後、遺体を回収すると、全く地雨では皮膚が貫けない事に驚愕する。こいつが罠で倒せて良かったと心から思う。倒せる手段がギロチンだけとは。


ティガレックスも硬い皮膚だが、何度も同じ部分を切れば貫ける程度であった。戦闘経験も大事だが、こういった事前情報は仕入れておいた方が良さそうだな。そう思いながら皮膚を触りつつ、準備不足を嘆いていた。


この分じゃコカトリスも危険そうだ。何があるか判らない。ワイバーンなども翼を狙って飛行を防止すれば良いかと考えていたが、結局翼を攻撃できねば意味がない。下からギロチンなどを当てればいいが・・・。その前に命の危険があるのではとも考えてしまう。


その思考が定まる前に、左腕に強い痛みが起きる。何かと振り返ると大きな鶏のような魔物が居た。そしてその尻尾をたどると蛇になっており、自分の左腕に噛みついているではないか。

「おわああああああ!!! やばあああ!!」


飛び退く様に、その場から離れるもコカトリスらしき魔物はこちらに来ない。どうしたモノかと見ていると、何やらおかしい。左腕に力が入らない。噛まれた場所が徐々に石になっていく。


恐怖で混乱するアル。

「腕が!!畜生!!何しやがった!!」


コカトリスは応えず、その場にいる。


アルは考える。きっと石にしてから食べるなりの行動なんだろう。俺は今捕食される前の下準備を受けている。そして逃げない様に見張っているのだ。

どうする?逃げるか?

いや、アイツが追うだろう。それで追撃が当たれば、また石になる。その為にアイツはこちらを窺っている。逃げながらも抵抗し街に行って、状態を回復しよう。それで倒せたら儲けものという形だ。


一瞬、呼吸を整える。コカトリスが何かを察知し、前に出る。

瞬間、アルは森の入口へと向かって逃げる。

追う、コカトリス。逃げる速度は互角に近いが、何かの液をかけてくる。それを避けるが、かかった地面が石へと変わる。やはり追撃に慣れている。そういった狩りのスタイルなのだろう。


それならばとコカトリスの行く手に土壁を出していく。ことごとく引っかかるコカトリス。これは邪魔しやすい。

「…この鳥野郎、石にしやがって!!」



そう言いつつ、次には手元で錬金したナイフなども投げていく。刺さりはしないが、非常に嫌がっている。これなら捕まらずに逃げる事が出来そうだと考えた。


その瞬間、低級の森側で人の声がする。残念な事にこの場所の直ぐ近くであった。
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