淫秘──俺たちの隠し事

麟里(すずひ改め)

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プロローグ

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 俺はテストが大嫌いだった。
 それは勉強が嫌いだからとか頭が悪いからとかじゃない。
 比べられるのが嫌だったんだ。
 優しかった母が亡くなる前までは嫌いではなかった。
 だが母の他界と同時に、父が俺と兄貴に厳しくなったのだ。
 変化の一環で、テストが返却されると絶対に見せなければいけなくなり成績が良くない俺は嫌だと思うほどに叱られた。
 それに対して兄貴は頭が良くて、いつも褒められていた。
 「お前、兄はこんなにもいい点数なのになんでそんな点数しかとれねぇんだ?」
 「はっ、こんな問題も解けねぇのか。クズが」
 などと散々言われた。
 最初のうちは言葉の暴力だけで済んだことが、時間が経つにつれて悪化していったのだ。


 ***

 「お父さん……これ、今回の……」
 おずおずと、『76点』と書かれた国語のテスト用紙を手渡す。
 何も言わずにそれを受け取った父に、俺は言った。
 「今回の、やつね。いつもより頑張れたんだ……どう?」
 少しでも褒めて欲しくて、唯一得意な国語のテストに力を入れてみた。
 どうかな、と不安になりつつ父の表情を伺う。
 父は一通り見終えると、立ち上がり戸棚のリングファイルを取ってきた。
 「あっ……」
 俺は綻んていた表情を曇らせた。
 それが、点数を書き記しているファイルだと知っていたからだ。
 父は確認し終えると、俺を見つめた。
 「千瑠、凄いな」
 そう聞いて、俺はただただ驚く。
 喜びを隠せずに
 「でしょ?!」
 と身を乗り出してしまう。
 父の手が頭に乗る。
 撫でられると思った。
 だが、その幸せも束の間のものだった。
 「何喜んでんだよ、雑魚がッッ!」
 頭上に置かれた父の掌が俺の髪を引っ張る。
 「ゔっ、だって今褒めて……」 
 鈍い痛みに涙を流す。
 また、始まるのだと思うと鳥肌がたった。
 「は、褒めた?んなわけねぇだろ」
 「じゃあ、なんで"凄い"って……」
 「毎回毎回、そんな点数しか取れねぇで凄いなってことだよ。なんだよあれ、兄のほう・・・・の点数が高いぞ?何が『頑張った』だよ」
 ぱっと、手が離される。

 「分かってるよな」

 そう、ここで安心なんて出来ないんだ。
 だって──
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