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第2話 少女が冒険者になった日
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「番号カード38番マフタン・シェリーさんでお間違えないですね」
「はい」
「でわ、血液を採取させて頂きますので、腕を此方へ出してください」
私は医師に言われた通り、腕を前に出した。
「採血が終わりましたので、検査結果が出るまで、十分程お時間が掛かりますので、其方の席へ掛けてお待ち下さい」
「分かりました。有難うございます」
私は医師に礼を言って、椅子に腰をかけた。
少し経つと、先程血液検査をした男の人の隣にいた女性が、話しかけて来た。
「良ければ検査結果が出るまで、軽く雑談でもしない?」
私は特に断る理由も無いので「はい」と答えた。
「私はエマよ。宜しくね」
「エマさん。私は、マフタン・シェリーです。よろしくお願いします」
彼女は私の名前を聞いた後にこう尋ねてきた。
「貴方は、どうしてこの検査を受けようと思ったの?良ければ聞いてもいい?」
私は特に隠す必要が無いと思ったのと、何故かこの人と話していると、不思議な安心感がある様な気がして、自分が冒険者になりたいと思った理由を、女の人に話す事にした。
「私がこの検査を受けた理由は、冒険者に憧れていたからです」
「私の父が冒険者で、偶にしか家に帰って来ないんですけど、帰って来る度に、毎回凄い土産話を自慢げに、嬉しそうに、聞かせてくれて、なんて言うか……自分がそこまで一生懸命になれて、命を賭けてでもやりたい! と思える事がある父が、望ましくて、羨ましくて、私も冒険者になれば、父の様に人生を少しでも楽しく、自由に生きる事が、出来ると思ったんです」
「勿論冒険者になっただけで、自分の人生が簡単に変わるとは、思っていないんですけどね。それでも、少しでも、今の何もない自分を変えたい。そう思ってこの検査を受けました」
つい話し過ぎてしまった。本当に何なんだろうこの人。心の中でそう思いながら、私が女性の顔を見ると、彼女は少し微笑んで、「そう。検査通るといいわね」と優しい声で言ってくれた。
「エマさん。検査結果が出ました。早く来て下さい!」
「どうしたの?そんなに大きい声出して。じゃあ、私はちょっと様子を見てくるから、少しここで待っててね」
彼女はそう言い残すと、男の人が呼ぶ方へ、足早に向かって行った。
「あの子、本当にまだブレイン・コンソールの手術を受けていないんですか?これ、殆どの数値がcapacity1《キャパシティーワン》のステータスじゃ有り得ない値ですよ。ほら、見て下さい」
「どれどれ?ふ~ん、やっぱりあの娘、彼の娘さんだったのね。目元が父親にそっくりだと思ったわ」
・筋力310
・体力350
・器用300
・知力500
・精神力170
・敏捷580
「これ普通の人のcapacity3程度のステータスがありますよね」
「そうね。それだけ彼女に、伸び代があるんだと思うわ」
「じゃあ、私は彼女にステータス検査に通った事を伝えてくるわね」
「分かりました」
「お待たせ。検査の結果が書かれている紙よ」
彼女はそう言って、私に一枚の紙を手渡してくれた。
一番上に検査結果、可と書かれていた文字を確認して、ふーっと息を吐くと、今までの緊張感が一気に安堵へと変わった。
「えーと…… 筋力が310で、体力が350で、器用が300で、知力が500で、精神力が170で、敏捷が580か。参考までに、これってどれ位の物なんですか?」
私は気になったので彼女に尋ねた。
「そうね。貴方のステータスは、普通の人のステータスと比べると、かなり高いわね。特に知力と敏捷は特筆して高いと思うわ」
彼女の話を聞いて私は少し嬉しくなった。
「ステータス検査合格おめでとう。聞くまでも無いと思うけど、ブレイン・コンソールの手術うける?」
「はい! 受けます」
「OK。じゃあ奥の部屋に案内するから付いてきて」
「はい!」
私は、ステータス検査に、通った嬉しさを噛み締めながら、エマさんの後に付いて行った。
奥の部屋の扉が開くと、白衣を着た人が5人いて、私とエマさんの方を見ている。
「手術の準備完了しています。いつでも始められます」
「そう。分かったわ」
「じゃあ、シェリーそこのベッドに寝転んでね。麻酔をかけるから、1時間位経ったら、目が醒めると思うわ」
「分かりました」
「心の準備は大丈夫ですか?」
「はい」
そう言った後、麻酔を打たれた私の意識は、だんだん遠くなっていった。
「マフタンさん。マフタン・シェリーさん。手術が終わりましたよ」
「男の声が聞こえてくる。私はゆっくり目を開けると、手術は滞りなく終了致しました。お疲れ様でした。あちらでエマさんがお待ちです」手術をしてくれた1人の医師が私にそう言った。
「有難うございました」
私は手術をしてくれた5人の医師に、挨拶をしてから、エマさんがいる方へと向かった。
「手術お疲れ様。何処か違和感がある所があれば、遠慮なく言ってね」
私は自分の身体に異常が無い事を確かめて、「大丈夫です」と答えた。
「じゃあ早速冒険者ライセンスの登録に行きましょうか。付いてきて」
「はい」
私は心の中で、ミラとモリトは検査を無事通る事が出来たのかな、と少しだけ不安に思いながら、エマさんの後ろについて行った。
「ここがライセンス登録所よ」
「あ!シェリーだ。やっほ~。私の方が少しだけ早かったね」
ミラが満面の笑みで、此方に手を振りながら、向かってくるのを見て、私は一先ず安心した。
「ミラ。良かった。検査通ったんだね」
「当たり前でしょ。私を誰だと思っているのよ」
ミラはそう言いながら、自分の胸に左手をおいて、凄く誇らしげな、良い表情をしている。
「モリト君はまだ来てないね。私と同時に呼ばれたから、多分もうそろそろ来ると思うんだけど」
私がそう言うと、ミラは顔を押さえながら、私の背後を指差して、我慢できなくなったのか、声を上げて笑い出した。
「アハハハハハハハハハハ。シェリー、無意識にモリトって呼んじゃってるよ。しかもモリト背後にいるし。アハハハハハ」
「お前ちょっと笑い過ぎだろ!シェリーも酷いよ。さっきまで勇人って呼んでくれてたのに」
少し涙目になりながらそう言う勇人を見て「本当ごめん。ちょっと間違えちゃっただけだから。次からちゃんと勇人って呼ぶから、そんな泣きそうな顔しないで」と少し慌てて言った。
涙目の勇人の姿が、少し可愛く見えてしまった事は、私の心の中だけで留めておこう。
「貴方達はお友達?」エマさんが私達にそう尋ねてきた。
するとミラが、「そうだよ~。今日会った所だけど、この2人とは友達だよ」と言って、ミラが私に抱きついて来て「エヘヘ」と笑った。
私もそんなミラを見て、「そうですね。今日出会ったばかりだけど友達だと思います」そう言った。
勇人も何だかんだ文句を言いながらも「僕もそう思ってるよ」と少し照れ臭そうに言っている。
「じゃあ三人ともライセンス登録しに行きましょうか。ついてきて。これが終われば貴方達も、今日から冒険者の一員よ」
私はそれを聞いて遂に冒険者になれるんだ! と言い表わせれない位、嬉しい気持ちになりながら、エマさんの後ろに付いて行った。
「これがライセンス登録の機械よ。検査の時に貰った紙は皆んな持ってるわね?」
「これでしょ~持ってるよ」
「はい」
「僕もあります」
「よし、じゃあ先ずはその紙を、そこのケースに入れて頂戴」
私は言われた通りに、先程渡されたステータスが記載された紙を、ケースの中へと入れた。
「紙を入れたら画面に自分の名前が出ると思うから、合っていたら、はいを押して先に進んでね」
私は、自分の名前が間違っていない事を素早く確認し、はいのボタンを押した。すると、少しお待ちくださいと文字が出てきて、20秒程待つと、自分の名前とステータス、capacity1と上部に記載されたカードが出てきた。
「皆んなカードは出てきた?」
「はい」
「僕もいけました」
少し遅れてミラも「私もオッケーです」と返事をした。
「三人ともおめでとう。貴方達も、今日から立派な冒険者よ。今作ったカードは、セカンド・アースへ行って、経験を積む事で、ステータスが更新されて行くから、こっちに戻った後に、今使った機械で、カードを更新してね。更新しなくてもステータスは常にブレイン・コンソールによって、新しく更新されていくから良いんだけど、ギルドに入ったり、パーティーを組むには、自分のcapacityレベルとステータスを相手に知って貰う必要があるから、その時に重要になるわ。覚えておいてね」
私はそれを聞いて、自分が冒険者になれた事を、改めて実感し「セカンド・アース、一体どんな所なんだろう?」と自分の鼓動が高くなるのを意識した。
「ねぇ。シェリー、モリト。折角ライセンスカードも作って貰ったんだし、お互いのカード見せ合いっこしない?」
「そんな事やる必要あるのか?」モリトがそう聞くと、ミラがため息混じりに応えた。
「はぁぁ~、分かって無いなぁ~モリト君は、これだから」
ミラは、わざとらしく首を横に振り、やれやれといった表情で、「セカンド・アースにも、私達3人は一緒に行くんだから、お互いの得意、不得意な事を知る為にも、見ておいて損は無いでしょ?」
「言われてみれば、確かにそうだけど、ミラもまともな事言えたんだ」
モリトが本当に驚いた表情でミラに言うので、私は笑いを必死に堪えた。
「失礼な!これでも私のお母さんは、凄腕の冒険者なんだからね!これくらいは知ってて当然よ」
そんな事を言いながら、モリトの頬っぺにツンツンするムキになったミラを見て、私はホッコリするのだった。
「じゃあ、シェリーこれ私のカードね。シェリーはモリトに渡して」
私はミラに頷いてから、モリトに自分のカードを渡した。
capacity1
nameファルバーノ・ミラ
・筋力510
・体力250
・器用140
・知力170
・精神力400
・敏捷200
ミラは筋力が凄く高い。何だかんだ言っても、凄く頼り甲斐がありそうだと私は思いながら、ミラをちらっと見る。確かに背が私よりも高くて、身が引き締まっていて女の子にしてはいいガタイをしている。
私も身長は女の子にしては高い方で170㎝ちょっとある。そう考えるとミラはかなり大きい方だろうと思う。
「ミラ、カード有難う。筋力が凄く高くて驚いたよ」
「それ程でもないよ。エヘヘ。でも力仕事は私に任せてね」
「うん。頼りにしてるよ」
「よし、じゃあ次は勇人君のだね」
「はい。シェリー」
「有難う」
capacity1
name森田勇人
・筋力150
・体力270
・器用470
・知力380
・精神力400
・敏捷140
勇人君は器用が凄く高い。今の私には、このステータスがどう影響するのか想像がつかない。
「勇人君カード有難う。器用が凄く高いね。何かやってたの?」
私は単純に気になった事を、勇人に問いかけた。
「僕は、小さい時から家が、銃道の道場だったから、小さい頃からずっと銃を撃つ訓練を受けていたから、それで銃を扱ってる内に器用が上がったんだと思うよ。多分だけどね」
「小さい時から銃道ってなんか凄いね。凄くかっこいいと思う」
「あ、有難う。銃の扱いは誰よりも自信があるから、分からない事があれば、何でも僕に聞いてね」
「分かった。ありがと」
「それにしても、シェリーも何かしてたの?ステータスが、全体的に、凄く高い気がするんだけど」
「私もメチャクチャ気になる!」
勇人がやや悔しそうに言って、ミラは私に抱きつきながら興味深々といった感じで目を輝かせている。
私は、ミラから自分のカードを受け取り、自分のステータスを、もう一度確認する。
capacity1
nameマフタン・シェリー
・筋力310
・体力350
・器用300
・知力500
・精神力170
・敏捷580
「私は、お母さんの店によく武器を買いに来てくれる、常連の冒険者の人とか、お母さんに、剣の稽古を付けて貰ってたよ」
「シェリーめっちゃいい身体してるもんねぇ~」
そう言って私のお腹をミラが撫で回して来たので思わず投げ飛ばしてしまった。
「暴力反対~。でもシェリーのそんな顔が見れたのはラッキー」
私は、自分の顔が熱くなってくるのを、深呼吸して抑えて「皆んなのステータス確認したけど、これからどうするの?」と至って平静を装ってミラに聞いた。
すると、ミラが喋る前にずっと静かに私達を見ていたエマさんが口を開いた。「ねぇ、それならセカンド・アースに試しに行ってみる?」
私は思はず「ふぇ?」と変な声を出してしまった。ミラと勇人を見ても私と同じ反応をしている。
「だから、今からセカンド・アースに行ってみる?って言ったのよ。勿論ちゃんと私も付いていくから、安全は保証するわ」
3人で顔を見合わせて、頷くと「行きます!」見事に3人声を合わせて言った。
そんな私達を見て、エマさんは「フフッ」と可笑しそうに笑ってから、「付いて来て」と言って歩いて行く。
私達は、大きな期待を抱きながら、前を歩くエマさんの背を追いかけるのだった。
「はい」
「でわ、血液を採取させて頂きますので、腕を此方へ出してください」
私は医師に言われた通り、腕を前に出した。
「採血が終わりましたので、検査結果が出るまで、十分程お時間が掛かりますので、其方の席へ掛けてお待ち下さい」
「分かりました。有難うございます」
私は医師に礼を言って、椅子に腰をかけた。
少し経つと、先程血液検査をした男の人の隣にいた女性が、話しかけて来た。
「良ければ検査結果が出るまで、軽く雑談でもしない?」
私は特に断る理由も無いので「はい」と答えた。
「私はエマよ。宜しくね」
「エマさん。私は、マフタン・シェリーです。よろしくお願いします」
彼女は私の名前を聞いた後にこう尋ねてきた。
「貴方は、どうしてこの検査を受けようと思ったの?良ければ聞いてもいい?」
私は特に隠す必要が無いと思ったのと、何故かこの人と話していると、不思議な安心感がある様な気がして、自分が冒険者になりたいと思った理由を、女の人に話す事にした。
「私がこの検査を受けた理由は、冒険者に憧れていたからです」
「私の父が冒険者で、偶にしか家に帰って来ないんですけど、帰って来る度に、毎回凄い土産話を自慢げに、嬉しそうに、聞かせてくれて、なんて言うか……自分がそこまで一生懸命になれて、命を賭けてでもやりたい! と思える事がある父が、望ましくて、羨ましくて、私も冒険者になれば、父の様に人生を少しでも楽しく、自由に生きる事が、出来ると思ったんです」
「勿論冒険者になっただけで、自分の人生が簡単に変わるとは、思っていないんですけどね。それでも、少しでも、今の何もない自分を変えたい。そう思ってこの検査を受けました」
つい話し過ぎてしまった。本当に何なんだろうこの人。心の中でそう思いながら、私が女性の顔を見ると、彼女は少し微笑んで、「そう。検査通るといいわね」と優しい声で言ってくれた。
「エマさん。検査結果が出ました。早く来て下さい!」
「どうしたの?そんなに大きい声出して。じゃあ、私はちょっと様子を見てくるから、少しここで待っててね」
彼女はそう言い残すと、男の人が呼ぶ方へ、足早に向かって行った。
「あの子、本当にまだブレイン・コンソールの手術を受けていないんですか?これ、殆どの数値がcapacity1《キャパシティーワン》のステータスじゃ有り得ない値ですよ。ほら、見て下さい」
「どれどれ?ふ~ん、やっぱりあの娘、彼の娘さんだったのね。目元が父親にそっくりだと思ったわ」
・筋力310
・体力350
・器用300
・知力500
・精神力170
・敏捷580
「これ普通の人のcapacity3程度のステータスがありますよね」
「そうね。それだけ彼女に、伸び代があるんだと思うわ」
「じゃあ、私は彼女にステータス検査に通った事を伝えてくるわね」
「分かりました」
「お待たせ。検査の結果が書かれている紙よ」
彼女はそう言って、私に一枚の紙を手渡してくれた。
一番上に検査結果、可と書かれていた文字を確認して、ふーっと息を吐くと、今までの緊張感が一気に安堵へと変わった。
「えーと…… 筋力が310で、体力が350で、器用が300で、知力が500で、精神力が170で、敏捷が580か。参考までに、これってどれ位の物なんですか?」
私は気になったので彼女に尋ねた。
「そうね。貴方のステータスは、普通の人のステータスと比べると、かなり高いわね。特に知力と敏捷は特筆して高いと思うわ」
彼女の話を聞いて私は少し嬉しくなった。
「ステータス検査合格おめでとう。聞くまでも無いと思うけど、ブレイン・コンソールの手術うける?」
「はい! 受けます」
「OK。じゃあ奥の部屋に案内するから付いてきて」
「はい!」
私は、ステータス検査に、通った嬉しさを噛み締めながら、エマさんの後に付いて行った。
奥の部屋の扉が開くと、白衣を着た人が5人いて、私とエマさんの方を見ている。
「手術の準備完了しています。いつでも始められます」
「そう。分かったわ」
「じゃあ、シェリーそこのベッドに寝転んでね。麻酔をかけるから、1時間位経ったら、目が醒めると思うわ」
「分かりました」
「心の準備は大丈夫ですか?」
「はい」
そう言った後、麻酔を打たれた私の意識は、だんだん遠くなっていった。
「マフタンさん。マフタン・シェリーさん。手術が終わりましたよ」
「男の声が聞こえてくる。私はゆっくり目を開けると、手術は滞りなく終了致しました。お疲れ様でした。あちらでエマさんがお待ちです」手術をしてくれた1人の医師が私にそう言った。
「有難うございました」
私は手術をしてくれた5人の医師に、挨拶をしてから、エマさんがいる方へと向かった。
「手術お疲れ様。何処か違和感がある所があれば、遠慮なく言ってね」
私は自分の身体に異常が無い事を確かめて、「大丈夫です」と答えた。
「じゃあ早速冒険者ライセンスの登録に行きましょうか。付いてきて」
「はい」
私は心の中で、ミラとモリトは検査を無事通る事が出来たのかな、と少しだけ不安に思いながら、エマさんの後ろについて行った。
「ここがライセンス登録所よ」
「あ!シェリーだ。やっほ~。私の方が少しだけ早かったね」
ミラが満面の笑みで、此方に手を振りながら、向かってくるのを見て、私は一先ず安心した。
「ミラ。良かった。検査通ったんだね」
「当たり前でしょ。私を誰だと思っているのよ」
ミラはそう言いながら、自分の胸に左手をおいて、凄く誇らしげな、良い表情をしている。
「モリト君はまだ来てないね。私と同時に呼ばれたから、多分もうそろそろ来ると思うんだけど」
私がそう言うと、ミラは顔を押さえながら、私の背後を指差して、我慢できなくなったのか、声を上げて笑い出した。
「アハハハハハハハハハハ。シェリー、無意識にモリトって呼んじゃってるよ。しかもモリト背後にいるし。アハハハハハ」
「お前ちょっと笑い過ぎだろ!シェリーも酷いよ。さっきまで勇人って呼んでくれてたのに」
少し涙目になりながらそう言う勇人を見て「本当ごめん。ちょっと間違えちゃっただけだから。次からちゃんと勇人って呼ぶから、そんな泣きそうな顔しないで」と少し慌てて言った。
涙目の勇人の姿が、少し可愛く見えてしまった事は、私の心の中だけで留めておこう。
「貴方達はお友達?」エマさんが私達にそう尋ねてきた。
するとミラが、「そうだよ~。今日会った所だけど、この2人とは友達だよ」と言って、ミラが私に抱きついて来て「エヘヘ」と笑った。
私もそんなミラを見て、「そうですね。今日出会ったばかりだけど友達だと思います」そう言った。
勇人も何だかんだ文句を言いながらも「僕もそう思ってるよ」と少し照れ臭そうに言っている。
「じゃあ三人ともライセンス登録しに行きましょうか。ついてきて。これが終われば貴方達も、今日から冒険者の一員よ」
私はそれを聞いて遂に冒険者になれるんだ! と言い表わせれない位、嬉しい気持ちになりながら、エマさんの後ろに付いて行った。
「これがライセンス登録の機械よ。検査の時に貰った紙は皆んな持ってるわね?」
「これでしょ~持ってるよ」
「はい」
「僕もあります」
「よし、じゃあ先ずはその紙を、そこのケースに入れて頂戴」
私は言われた通りに、先程渡されたステータスが記載された紙を、ケースの中へと入れた。
「紙を入れたら画面に自分の名前が出ると思うから、合っていたら、はいを押して先に進んでね」
私は、自分の名前が間違っていない事を素早く確認し、はいのボタンを押した。すると、少しお待ちくださいと文字が出てきて、20秒程待つと、自分の名前とステータス、capacity1と上部に記載されたカードが出てきた。
「皆んなカードは出てきた?」
「はい」
「僕もいけました」
少し遅れてミラも「私もオッケーです」と返事をした。
「三人ともおめでとう。貴方達も、今日から立派な冒険者よ。今作ったカードは、セカンド・アースへ行って、経験を積む事で、ステータスが更新されて行くから、こっちに戻った後に、今使った機械で、カードを更新してね。更新しなくてもステータスは常にブレイン・コンソールによって、新しく更新されていくから良いんだけど、ギルドに入ったり、パーティーを組むには、自分のcapacityレベルとステータスを相手に知って貰う必要があるから、その時に重要になるわ。覚えておいてね」
私はそれを聞いて、自分が冒険者になれた事を、改めて実感し「セカンド・アース、一体どんな所なんだろう?」と自分の鼓動が高くなるのを意識した。
「ねぇ。シェリー、モリト。折角ライセンスカードも作って貰ったんだし、お互いのカード見せ合いっこしない?」
「そんな事やる必要あるのか?」モリトがそう聞くと、ミラがため息混じりに応えた。
「はぁぁ~、分かって無いなぁ~モリト君は、これだから」
ミラは、わざとらしく首を横に振り、やれやれといった表情で、「セカンド・アースにも、私達3人は一緒に行くんだから、お互いの得意、不得意な事を知る為にも、見ておいて損は無いでしょ?」
「言われてみれば、確かにそうだけど、ミラもまともな事言えたんだ」
モリトが本当に驚いた表情でミラに言うので、私は笑いを必死に堪えた。
「失礼な!これでも私のお母さんは、凄腕の冒険者なんだからね!これくらいは知ってて当然よ」
そんな事を言いながら、モリトの頬っぺにツンツンするムキになったミラを見て、私はホッコリするのだった。
「じゃあ、シェリーこれ私のカードね。シェリーはモリトに渡して」
私はミラに頷いてから、モリトに自分のカードを渡した。
capacity1
nameファルバーノ・ミラ
・筋力510
・体力250
・器用140
・知力170
・精神力400
・敏捷200
ミラは筋力が凄く高い。何だかんだ言っても、凄く頼り甲斐がありそうだと私は思いながら、ミラをちらっと見る。確かに背が私よりも高くて、身が引き締まっていて女の子にしてはいいガタイをしている。
私も身長は女の子にしては高い方で170㎝ちょっとある。そう考えるとミラはかなり大きい方だろうと思う。
「ミラ、カード有難う。筋力が凄く高くて驚いたよ」
「それ程でもないよ。エヘヘ。でも力仕事は私に任せてね」
「うん。頼りにしてるよ」
「よし、じゃあ次は勇人君のだね」
「はい。シェリー」
「有難う」
capacity1
name森田勇人
・筋力150
・体力270
・器用470
・知力380
・精神力400
・敏捷140
勇人君は器用が凄く高い。今の私には、このステータスがどう影響するのか想像がつかない。
「勇人君カード有難う。器用が凄く高いね。何かやってたの?」
私は単純に気になった事を、勇人に問いかけた。
「僕は、小さい時から家が、銃道の道場だったから、小さい頃からずっと銃を撃つ訓練を受けていたから、それで銃を扱ってる内に器用が上がったんだと思うよ。多分だけどね」
「小さい時から銃道ってなんか凄いね。凄くかっこいいと思う」
「あ、有難う。銃の扱いは誰よりも自信があるから、分からない事があれば、何でも僕に聞いてね」
「分かった。ありがと」
「それにしても、シェリーも何かしてたの?ステータスが、全体的に、凄く高い気がするんだけど」
「私もメチャクチャ気になる!」
勇人がやや悔しそうに言って、ミラは私に抱きつきながら興味深々といった感じで目を輝かせている。
私は、ミラから自分のカードを受け取り、自分のステータスを、もう一度確認する。
capacity1
nameマフタン・シェリー
・筋力310
・体力350
・器用300
・知力500
・精神力170
・敏捷580
「私は、お母さんの店によく武器を買いに来てくれる、常連の冒険者の人とか、お母さんに、剣の稽古を付けて貰ってたよ」
「シェリーめっちゃいい身体してるもんねぇ~」
そう言って私のお腹をミラが撫で回して来たので思わず投げ飛ばしてしまった。
「暴力反対~。でもシェリーのそんな顔が見れたのはラッキー」
私は、自分の顔が熱くなってくるのを、深呼吸して抑えて「皆んなのステータス確認したけど、これからどうするの?」と至って平静を装ってミラに聞いた。
すると、ミラが喋る前にずっと静かに私達を見ていたエマさんが口を開いた。「ねぇ、それならセカンド・アースに試しに行ってみる?」
私は思はず「ふぇ?」と変な声を出してしまった。ミラと勇人を見ても私と同じ反応をしている。
「だから、今からセカンド・アースに行ってみる?って言ったのよ。勿論ちゃんと私も付いていくから、安全は保証するわ」
3人で顔を見合わせて、頷くと「行きます!」見事に3人声を合わせて言った。
そんな私達を見て、エマさんは「フフッ」と可笑しそうに笑ってから、「付いて来て」と言って歩いて行く。
私達は、大きな期待を抱きながら、前を歩くエマさんの背を追いかけるのだった。
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なお、作ってみたいレシピにブックマークしていただけると嬉しいです
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