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Lesson.6 自分たちで紡ぐ物語
139.エレンシア貴族学園の新学園長
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ディナルドとフレエシアが大きな覚悟を決めたのと同じころ、ヘンリクスとリーリウムの学園改革も佳境を迎えていた。
リナの力によって今の地位を得た学園長ダーシー侯爵やその取り巻きの教授たちは、研究成果においても金銭面においても不正を働いており、ヘンリクスやマシューがその証拠をまとめたものを国王に提出すると、すぐに彼らは罷免されたのだった。
「次の学園長は誰がいいだろうか?」
国王がめずらしくヘンリクスとリーリウムへ問う。一度人選に失敗している国王は、自分よりも学園の内情に詳しい二人に聞いた方が良いと考えたようだった。
マギア教授や民間学院を発展させた姉のマギア学院長も候補に挙がったが、二人ともそれを固辞した。魔法が復活して混乱している今、自分たちの仕事で手一杯だというのが、その理由だ。また、ユニカの名前も挙がったが、本人が本調子ではないうえに、そもそも人々へその素性をどう説明すればよいのかという問題もあるので、その案は破棄された。
「前学園長のフィールディング先生はどうでしょうか?」
リーリウムが控えめに提案する。
「だが、フィールディング伯爵は高齢のために、隠居生活を送っているのではないか?」
「以前協力をしてくださった時には、独自で研究を続けているとおっしゃっていたそうですし、魔法の知識が必要な現在の状況にも対応してくださるように思います。」
国王はリーリウムの言葉に静かに頷く。
「先日、先生の健康状態を息子のフィールディング小伯爵にたずねてみたのですが、元気すぎるぐらいで『引退は早かったのではないか』と……。少々、うるさすぎるぐらいだと困っている様子でした。
近所の子どもたちに向けた塾なども運営されているようですし、マギア教授を補佐に据えれば、充分、学園長として働いていただけるのではないかと考えています」
ヘンリクスの補足にも満足げに頷いてみせると、国王はいいことを思いついたとばかりに、にやりと笑う。
「なるほど、しかし、マギア伯爵 姉弟の時のようにすんなり断られてしまわないように、こちらも対策を練らねばな」
「そうですね」
ヘンリクスも同じようににやりと微笑んで見せた。
それから数日後、貴族街の外にあるフィールディング教授の家の前に豪奢な馬車が止まった。平民も多いその地域では、何事かとどこから聞きつけたのか多数の野次馬が集まっている。ざわめく野次馬たちの声に気づいたフィールディング教授も何事かと、玄関から出てきた。
騎士たちに厳重に守られたその馬車から降りてきたのは、長いプラチナブロンドを後ろで一つに結び、ロイヤルブルーの服を着こなした男だった。その柔らかな微笑みを称えた顔を見るなり、フィールディング教授は膝を付き、首を垂れる。
「今日はそなたに願いがあって参ったのだ。話を聞いてくれるな?」
「陛下……」
国王にそう言われれば、家の中に入れないわけにはいかない。フィールディング教授の隠居生活は、突如この日で終わりを告げたのだった。
リナの力によって今の地位を得た学園長ダーシー侯爵やその取り巻きの教授たちは、研究成果においても金銭面においても不正を働いており、ヘンリクスやマシューがその証拠をまとめたものを国王に提出すると、すぐに彼らは罷免されたのだった。
「次の学園長は誰がいいだろうか?」
国王がめずらしくヘンリクスとリーリウムへ問う。一度人選に失敗している国王は、自分よりも学園の内情に詳しい二人に聞いた方が良いと考えたようだった。
マギア教授や民間学院を発展させた姉のマギア学院長も候補に挙がったが、二人ともそれを固辞した。魔法が復活して混乱している今、自分たちの仕事で手一杯だというのが、その理由だ。また、ユニカの名前も挙がったが、本人が本調子ではないうえに、そもそも人々へその素性をどう説明すればよいのかという問題もあるので、その案は破棄された。
「前学園長のフィールディング先生はどうでしょうか?」
リーリウムが控えめに提案する。
「だが、フィールディング伯爵は高齢のために、隠居生活を送っているのではないか?」
「以前協力をしてくださった時には、独自で研究を続けているとおっしゃっていたそうですし、魔法の知識が必要な現在の状況にも対応してくださるように思います。」
国王はリーリウムの言葉に静かに頷く。
「先日、先生の健康状態を息子のフィールディング小伯爵にたずねてみたのですが、元気すぎるぐらいで『引退は早かったのではないか』と……。少々、うるさすぎるぐらいだと困っている様子でした。
近所の子どもたちに向けた塾なども運営されているようですし、マギア教授を補佐に据えれば、充分、学園長として働いていただけるのではないかと考えています」
ヘンリクスの補足にも満足げに頷いてみせると、国王はいいことを思いついたとばかりに、にやりと笑う。
「なるほど、しかし、マギア伯爵 姉弟の時のようにすんなり断られてしまわないように、こちらも対策を練らねばな」
「そうですね」
ヘンリクスも同じようににやりと微笑んで見せた。
それから数日後、貴族街の外にあるフィールディング教授の家の前に豪奢な馬車が止まった。平民も多いその地域では、何事かとどこから聞きつけたのか多数の野次馬が集まっている。ざわめく野次馬たちの声に気づいたフィールディング教授も何事かと、玄関から出てきた。
騎士たちに厳重に守られたその馬車から降りてきたのは、長いプラチナブロンドを後ろで一つに結び、ロイヤルブルーの服を着こなした男だった。その柔らかな微笑みを称えた顔を見るなり、フィールディング教授は膝を付き、首を垂れる。
「今日はそなたに願いがあって参ったのだ。話を聞いてくれるな?」
「陛下……」
国王にそう言われれば、家の中に入れないわけにはいかない。フィールディング教授の隠居生活は、突如この日で終わりを告げたのだった。
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