悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

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Lesson.6 自分たちで紡ぐ物語

137.フレエシアの覚悟1

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魔法が戻った日から、国内では魔力酔いを起こす国民も現れるなど、エレンシア王国は混乱を極めていた。2大公爵家のみならず、他の貴族たちも右往左往の大騒ぎをしている。
公爵家の娘たちもそれぞれが忙しい日々を過ごす中、フレエシアは突如ヴィオラに呼び出され、足早に書斎へと向かっていた。
ドアの前につくと、少しイラついたようにドアをノックする。

「どうぞ」

「お姉様、私、今すんっっごく忙しいのですが……ってあれ?」

室内からの声を合図にドアを開けると、そこにはヴィオラだけでなくディナルドも立っていた。
あの日以来、3カ月以上も会えていなかったディナルドの姿に、驚くフレエシア。
フレエシアは魔力酔いを緩和させる魔道具の開発に、ディナルドは過去に存在した魔法騎士団の資料集めなどに多忙を極めていたのだった。

「おう」

動きが止まったフレエシアに、ディナルドはいつものようにぶっきらぼうな挨拶をした。

「お、おう」

フレエシアもつられて挨拶を返す。

「フレエシア、そのご挨拶はさすがにはしたないですわよ」

ヴィオラがあきれた顔でフレエシアをたしなめる。

「え、だってお姉様……。ディナルドまで呼んで、どんなご用なんでしょうか……」

まだ状況が読めていないフレエシアは、恐る恐るヴィオラに尋ねる。

「以前、わたくしがアンドレアス様との婚約を解消したいと相談したときに、『あなたに一番迷惑をかける』と言ったのを覚えているかしら?」

「は、はい。確か『覚悟はしている』と答えたかと……」

あの時は本当に研究をあきらめて、領地運営に取り組む覚悟を決めていたのでよく覚えている。

「そうね、そう言っていたわね。それでね、その覚悟を今聞きたいのだけれども……」

「え? でも今は研究を投げ出せる状況では……」

今は国中が非常事態だというのに、魔道具研究をほったらかして領地へ引っ込むわけにはいかない。

「何を言っているの? 研究をやめなさいなどとは言っていなくてよ?」

フレエシアは話が見えず、「え? え?」と小さくつぶやくしかなかった。
ヴィオラがディナルドへ視線を送ると、ディナルドはずいっとフレエシアの前へ歩み出て、目の前で片膝をつく。
それを目の当たりにしたフレエシアの頭の中は、いよいよ混乱を極めていた。
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