悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

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Lesson.5 物語の終わり

133.外へ

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「とりあえず、帰らないか?」

ルドヴィクが部屋に響くくらいの大声で提案する。
ユニカとマーヤをじっと見つめていた面々がビクッと体を揺らす。
小屋の狭さに見合わない人数がすし詰め状態で入っていたので、空気が籠ってきていた。

「そうだな。」

ふぅと息を吐きだし、ヘンリクスも笑顔で応える。

「ユニカ様とマーヤさんは、ひとまず我が家に来ていただこうかと思うのですが……。」

ヴィオラがヘンリクスに提案する。

「そうだな。ウェスペル家はユニカ様にとってはご実家にあたるし……。
お願いしてもいいだろうか? 陛下や母上にもユニカ様について相談し、今後のことが決まるまでは……。ユニカ様も、それで宜しいでしょうか?」

「わがままを申し上げるなら、わたくしもそのようにしていただけると助かります。」

ユニカはアレクサンデルのいない王宮へ行く、まだその心の準備はできていないようだった。

「ユニカ様が我が家にいらっしゃるなんて、夢のようだね!」

寂し気な表情のユニカを盛り立てるように、フレエシアが興奮気味に妹たちに話しかける。
実際、フレエシアは魔法や魔道具、ユニカの知識に触れられることが楽しみでならなかったのもあった。

「ええ、本当ですわ。ユニカ様には、あの図書館のことも教えていただきたいですし。」

「お母様もきっとお喜びになりますわね!」

リーリウムやプリムラも、いつにもなくはしゃいでいた。
アイリの出現からずっと、張り詰めていた気持ちが開放されていくようだった。

「さあ、行こうか。」

足を負傷しているリナをルドヴィクが支え、小屋から地下室、そして地上へと上っていく。
外はすっかり夜も更けて、月明かりだけが煌々と彼らを照らしていた。

「王宮内は大騒ぎだろうな。」

ルドヴィクがつぶやく。
皇太子をはじめ、公爵家の令嬢と子息、さらには隣国の王族までもが数時間とはいえ行方不明になっているのだ。

「帰るのが、少し恐ろしいな。」

ヘンリクスは、両親の怒りの表情を思い出して身震いをする。
病み上がりのリーリウムまで危険な目に合わせたとあっては、母親の怒りはいかばかりかと思う。

「わたくしも一緒に叱られますわ。」

リーリウムがヘンリクスの手を握り、にこりとほほ笑む。
その愛らしい表情に、思わずヘンリクスの顔の力も緩んでしまうのだった。
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