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Lesson.5 物語の終わり
118.地下空洞
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「どうする? 瓦礫を掘るか?」
そうルドヴィクが言うが、それはあまり現実的ではなかった。
小さな屋敷という記録が残っていたとはいえ、王妃の終の棲家であった建物を形作っていた大理石や木材などは、どれも立派なもので、瓦礫になってしまった今でも人力で動かせそうにはない。
「ちょっと待って。」
リナは再び黒い穴を出現させると、その中から小さな巾着袋を取り出した。
「魔法で瓦礫を吹っ飛ばしてもいいんだけど、魔力は温存しておきたいから……。
ちょっとみんな離れていてくれる?」
そう言うと、光が吸い込まれている瓦礫の山の方へ行き、巾着袋からやはり小さな爆弾のようなものを取り出すと、ライターで火を着けて瓦礫の下の方に滑り込ませ、その場から素早く離れた。
しばらくするとパシュっと小さな音がして、瓦礫がシュンとどこかに吸い込まれた。
爆発をするのだと思い込んでいた面々は、あっけにとられたような様子でそちらを見つめる。
「魔道具だよ。半径二メートルくらいにある物質をすべて吸い取るんだ。
静かだし、隠密行動には最適でしょ?
炎が動力源だから、爆弾に見えたかもしれないけど……。」
ディナルドを先頭に、瓦礫の山が合った場所を見に行くと、魔道具を中心に半球の形に地面がえぐられている。
光は、そのえぐられた半球の下へと続いている。
ディナルドが剣の鞘で光が吸い込まれている地面を強く突くと、そのまま土が落ちていき、地下の空洞が姿を現した。
「もうちょっと穴を広げられる?」
リナはスコップをディナルドとルドヴィクに渡し、えぐられてしまった地面を掘り起こすように言った。
「これ、下にユニカ様がいるとして、大丈夫なのかな?」
パラパラと少なくない土が地下空洞に落ちていくのを見ながらフレエシアが疑問を口にすると、ディナルドの動きが一瞬止まる。
「うーん、わかんないけど、降りてみないことにはどうしようもないしね。」
人が二人ほど通れるくらいの穴が出来上がると、リナはやはり黒い穴から縄梯子を取り出し、しっかりと地面に固定させる。
「まずは私から行く。
降りられたら合図をするから、順番に一人ずつ降りてきて。」
ランタンを腰紐に引っかけて、リナが穴の中を降りていく。
しばらくすると、徐々に遠ざかっていくランタンの光の動きが止まり、今度は横に移動し始めた。
「底についたのかな?」
穴を覗き込んでいたフレエシアがそう言った瞬間、穴の中が明るく光った。
「うわ、すごい!」
フレエシアが上げた感嘆の声に、全員が頭をくっつけ合って穴の中を覗き込んだ。
地下空洞と思われていた空間は、立派な地下室だった。
おそらく、下についたリナが魔道具の照明器具のスイッチを入れたのだろう。
地下室の壁に等間隔に並んだ照明が煌々と灯りをともしていた。
「みんな、降りてきても大丈夫だよー。」
下からリナの声が聞こえ、女性陣から順番に縄梯子を降りて行った。
そうルドヴィクが言うが、それはあまり現実的ではなかった。
小さな屋敷という記録が残っていたとはいえ、王妃の終の棲家であった建物を形作っていた大理石や木材などは、どれも立派なもので、瓦礫になってしまった今でも人力で動かせそうにはない。
「ちょっと待って。」
リナは再び黒い穴を出現させると、その中から小さな巾着袋を取り出した。
「魔法で瓦礫を吹っ飛ばしてもいいんだけど、魔力は温存しておきたいから……。
ちょっとみんな離れていてくれる?」
そう言うと、光が吸い込まれている瓦礫の山の方へ行き、巾着袋からやはり小さな爆弾のようなものを取り出すと、ライターで火を着けて瓦礫の下の方に滑り込ませ、その場から素早く離れた。
しばらくするとパシュっと小さな音がして、瓦礫がシュンとどこかに吸い込まれた。
爆発をするのだと思い込んでいた面々は、あっけにとられたような様子でそちらを見つめる。
「魔道具だよ。半径二メートルくらいにある物質をすべて吸い取るんだ。
静かだし、隠密行動には最適でしょ?
炎が動力源だから、爆弾に見えたかもしれないけど……。」
ディナルドを先頭に、瓦礫の山が合った場所を見に行くと、魔道具を中心に半球の形に地面がえぐられている。
光は、そのえぐられた半球の下へと続いている。
ディナルドが剣の鞘で光が吸い込まれている地面を強く突くと、そのまま土が落ちていき、地下の空洞が姿を現した。
「もうちょっと穴を広げられる?」
リナはスコップをディナルドとルドヴィクに渡し、えぐられてしまった地面を掘り起こすように言った。
「これ、下にユニカ様がいるとして、大丈夫なのかな?」
パラパラと少なくない土が地下空洞に落ちていくのを見ながらフレエシアが疑問を口にすると、ディナルドの動きが一瞬止まる。
「うーん、わかんないけど、降りてみないことにはどうしようもないしね。」
人が二人ほど通れるくらいの穴が出来上がると、リナはやはり黒い穴から縄梯子を取り出し、しっかりと地面に固定させる。
「まずは私から行く。
降りられたら合図をするから、順番に一人ずつ降りてきて。」
ランタンを腰紐に引っかけて、リナが穴の中を降りていく。
しばらくすると、徐々に遠ざかっていくランタンの光の動きが止まり、今度は横に移動し始めた。
「底についたのかな?」
穴を覗き込んでいたフレエシアがそう言った瞬間、穴の中が明るく光った。
「うわ、すごい!」
フレエシアが上げた感嘆の声に、全員が頭をくっつけ合って穴の中を覗き込んだ。
地下空洞と思われていた空間は、立派な地下室だった。
おそらく、下についたリナが魔道具の照明器具のスイッチを入れたのだろう。
地下室の壁に等間隔に並んだ照明が煌々と灯りをともしていた。
「みんな、降りてきても大丈夫だよー。」
下からリナの声が聞こえ、女性陣から順番に縄梯子を降りて行った。
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