悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

文字の大きさ
上 下
101 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

101.舞踏会の終幕1

しおりを挟む
ヴィオラとアンドレアスの話合いが穏やかに進められていたのとは対照的に、アイリとリナは舞踏会場の外れで言い争っていた。

「今さらなんなのよ!」

「君が失敗したのは、自分のせいでしょ?」

ヒソヒソとした声で、そんなやり取りを延々と続けている。
アイリをダンス地獄から助け出すことはできたが、想像よりも激しく二人が口論をするので、フレエシアは困り果てている。
すると、野次馬をかき分けてマリーが二人の兄を連れて二人に近づいてきた。

「アイリ、もう他人に迷惑をかけるのはやめなさい。」

「何であんたに命令されなきゃいけないのよ? モブのくせに!」

「もぶ……? もぶが何かはわからないけれど、幼馴染として最後の忠告にきたのよ。
もう、皆に迷惑をかけるのはやめて?」

聞きなれない単語にマリーは困惑するが、勇気を出してアイリに語りかける。

「うるさいわね。
あんたは、私の言う通りに動けばいいのよ!
それにその髪飾り、ぶっ壊したはずなのになんで直ってるのよ?」

「アイリ、落ち着いて。
もっと冷静に考えた方がいい。
君は賢いんだから、今の状況が良くないことくらいわかるだろう?」

アイリのヒステリーがひどくならないようにジョンがなだめようとするが、アイリはマリーの髪飾りを取ろうと、手を伸ばした。

「マリーに触るな。」

長兄のカイルが二人の間に入り、マリーを守る。

「そもそもなんで、ジョンもカイルも私を見捨てたのよ?
惚れないとおかしいじゃない?
あの乙女ゲーだったら、絶対に……!」

「そのゲーム、何てタイトルだった?」

リナが興奮するアイリに問いかける。

「え? えっと……あれよ、あのゲーム。あれ? タイトル……。」

その時、舞踏会場の音楽が止まった。

「ヘンリクス王太子殿下とリーリウム・ウェスペル公爵令嬢のご入場だ。」

そんな声が聞こえ、出席者全員がヘンリクスとリーリウムの方に向かって頭を垂れる。
フレエシアたちもハモンド兄妹もアイリから少し離れ、王太子と未来の王太子妃に頭を下げていた。
アイリとリナだけは、頭を下げずにヘンリクスとリーリウムを見つめていた。

「あ、ヘンリクス様だわ。行かなくちゃ。
また、悪役令嬢にまとわりつかれているわ。」

アイリが、うわ言のようにつぶやく。

「本当に、親友にマリーって令嬢はいたの?
チュートリアルのキャラはジョンだった?
それに、本命の王子様は本当にヘンリクスって名前で、悪役令嬢はリーリウムって公爵令嬢だったの?」

アイリが呆然とした表情でリナを見つめる。

「リナ、このゲーム、タイトル何だっけ?」

「知らない。」

リナの言葉に、絶句をするアイリ。
そうこうするうちに音楽の演奏が再開され、二人の元へリーリウムが歩いてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...