92 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
92.不穏なランチタイム
しおりを挟む
次の日の昼休み、リナは約束通りフレエシアの研究室を訪れた。
ルヴァリと護衛騎士のトムも合流し、四人はコモンスペースでそれぞれが持ち寄ったランチを広げた。
公爵家の料理長や王宮の料理長が腕によりをかけて作ったお弁当は、おいしいのはもちろん、彩りも豊かだ。
一方、リナが持ってきたのは果物やカップケーキ、チョコレートなどの甘いものばかりだった。
「リナさん、ちゃんと食べなきゃだめだよ?」
あまりの偏食にフレエシアが心配して、自分の弁当からおかずを分け与える。
リナは昔から甘いお菓子や果物だけで生活をしていたので、それが普通になってしまっている。
「ありがとうございます、フレエシア様。」
普通の料理が食べられないわけではないので、笑顔でそれを受け取るリナ。
「リナさんは寮で生活しているの?」
「いえ、こちらの国に別荘があるので、そこから通っています。」
「そうなんだ。こっちの学園には、何を学びに来たの?」
「実は、魔法なんです。」
「魔法? この国で?」
ルヴァリが声を上げる。
ルヴァリも兄のルドヴィクも、実は母国にいるときは炎の魔法の使い手である。
しかし、やはりこの国に入ると魔法が使えなくなってしまうのだ。
「殿下も元々は魔法を使っていらっしゃったのでご存じだと思いますが、わたくしも母国では魔法が使えます。
しかし、この国の国境に入ったとたん使えなくなってしまうのです。
その謎を解きに、この学園へ来ました。」
リナは、フレエシアと親密になるために嘘をついた。
エレンシア王国で魔法が使えなくなった理由を、リナは当然知っているのだから。
「そうなの? その研究はこの国ではタブーとされているから、あまり大っぴらにしない方がいいよ。
これまで、その研究をしていた人たちがひどい目にあっているから、呪われてるって言われているんだ。」
フレエシアが小声で忠告する。
もちろん、そのことも知っている。
その研究を“呪われている”と思わせる原因を作ったのも、またリナだったからだ。
リナはこの国で魔法が使えなくなってから、ずっとその研究を徹底的に妨害してきた。
「ええ、存じています。
わたくしの研究内容をお話ししたのは、フレエシア様たちが初めてですわ。
だって、フレエシア様もその研究をされているのでしょう?」
フレエシアたちは目を見開いた。
当然、それは機密事項だったからだ。
「いや、わたしは魔道具を専門に研究しているから……。
思い違いじゃないかな?」
フレエシアはとっさに誤魔化すが、突然のことに動揺を隠しきれていない。
「あら、そうでしたの?
わたくしてっきり、フレエシア様もお仲間だと思い込んでいましたわ。
では、ここで聞いたことは他言無用でお願いしますね。」
リナの笑顔に、フレエシアは安心したようにうなずく。
(まだ、腹を割って話す仲でもないしね……。
少しずつ揺さぶっていくしかないよね。)
これまで魔法が使えない原因を研究してきた人間は、好奇心や正義感を理由にしていたことがほとんどだった。
しかし、マギア教授とフレエシアは違う。
絶対に原因を突き止めて解決しなくてはならないという、必死さがあった。
リナは、その理由が知りたかった。
そこにリナが求める答えがあるような気がしていたからだ。
ランチを食べ終わると、フレエシアたちはリナを見送った。
「殿下、どう思いました?」
「とてつもなく怪しいが、まだ何とも言えないな。」
昨夜、フレエシアはプリムラに、ルヴァリはルドヴィクに、リナがチャームの力を持っているかもしれないと聞いていた。
フレエシアもリナを美しい子だとは思ったが、学園中が夢中になるほどかと言われると、疑問だった。
いっしょにいたルヴァリとトムも、魅了された様子はない。
しかし、四人がランチを食べていると、遠巻きにリナを見つめている人間が男女複数人いたのだ。
「私たちだけが魅了されていないっていうのは、本当みたいだった。
彼女がチャームの能力の持ち主だとすると、アイリよりよほど強力だね。
プリムラは大丈夫かな……?」
実は、明日はプリムラがリナとランチをすることになっている。
「妹が美容の秘訣を知りたがっている。」と言って、フレエシアが約束を取り付けたのだ。
「兄上が一緒だから、大丈夫だよ。」
ルヴァリの屈託のない笑顔に、フレエシアも微笑みで返した。
ルヴァリと護衛騎士のトムも合流し、四人はコモンスペースでそれぞれが持ち寄ったランチを広げた。
公爵家の料理長や王宮の料理長が腕によりをかけて作ったお弁当は、おいしいのはもちろん、彩りも豊かだ。
一方、リナが持ってきたのは果物やカップケーキ、チョコレートなどの甘いものばかりだった。
「リナさん、ちゃんと食べなきゃだめだよ?」
あまりの偏食にフレエシアが心配して、自分の弁当からおかずを分け与える。
リナは昔から甘いお菓子や果物だけで生活をしていたので、それが普通になってしまっている。
「ありがとうございます、フレエシア様。」
普通の料理が食べられないわけではないので、笑顔でそれを受け取るリナ。
「リナさんは寮で生活しているの?」
「いえ、こちらの国に別荘があるので、そこから通っています。」
「そうなんだ。こっちの学園には、何を学びに来たの?」
「実は、魔法なんです。」
「魔法? この国で?」
ルヴァリが声を上げる。
ルヴァリも兄のルドヴィクも、実は母国にいるときは炎の魔法の使い手である。
しかし、やはりこの国に入ると魔法が使えなくなってしまうのだ。
「殿下も元々は魔法を使っていらっしゃったのでご存じだと思いますが、わたくしも母国では魔法が使えます。
しかし、この国の国境に入ったとたん使えなくなってしまうのです。
その謎を解きに、この学園へ来ました。」
リナは、フレエシアと親密になるために嘘をついた。
エレンシア王国で魔法が使えなくなった理由を、リナは当然知っているのだから。
「そうなの? その研究はこの国ではタブーとされているから、あまり大っぴらにしない方がいいよ。
これまで、その研究をしていた人たちがひどい目にあっているから、呪われてるって言われているんだ。」
フレエシアが小声で忠告する。
もちろん、そのことも知っている。
その研究を“呪われている”と思わせる原因を作ったのも、またリナだったからだ。
リナはこの国で魔法が使えなくなってから、ずっとその研究を徹底的に妨害してきた。
「ええ、存じています。
わたくしの研究内容をお話ししたのは、フレエシア様たちが初めてですわ。
だって、フレエシア様もその研究をされているのでしょう?」
フレエシアたちは目を見開いた。
当然、それは機密事項だったからだ。
「いや、わたしは魔道具を専門に研究しているから……。
思い違いじゃないかな?」
フレエシアはとっさに誤魔化すが、突然のことに動揺を隠しきれていない。
「あら、そうでしたの?
わたくしてっきり、フレエシア様もお仲間だと思い込んでいましたわ。
では、ここで聞いたことは他言無用でお願いしますね。」
リナの笑顔に、フレエシアは安心したようにうなずく。
(まだ、腹を割って話す仲でもないしね……。
少しずつ揺さぶっていくしかないよね。)
これまで魔法が使えない原因を研究してきた人間は、好奇心や正義感を理由にしていたことがほとんどだった。
しかし、マギア教授とフレエシアは違う。
絶対に原因を突き止めて解決しなくてはならないという、必死さがあった。
リナは、その理由が知りたかった。
そこにリナが求める答えがあるような気がしていたからだ。
ランチを食べ終わると、フレエシアたちはリナを見送った。
「殿下、どう思いました?」
「とてつもなく怪しいが、まだ何とも言えないな。」
昨夜、フレエシアはプリムラに、ルヴァリはルドヴィクに、リナがチャームの力を持っているかもしれないと聞いていた。
フレエシアもリナを美しい子だとは思ったが、学園中が夢中になるほどかと言われると、疑問だった。
いっしょにいたルヴァリとトムも、魅了された様子はない。
しかし、四人がランチを食べていると、遠巻きにリナを見つめている人間が男女複数人いたのだ。
「私たちだけが魅了されていないっていうのは、本当みたいだった。
彼女がチャームの能力の持ち主だとすると、アイリよりよほど強力だね。
プリムラは大丈夫かな……?」
実は、明日はプリムラがリナとランチをすることになっている。
「妹が美容の秘訣を知りたがっている。」と言って、フレエシアが約束を取り付けたのだ。
「兄上が一緒だから、大丈夫だよ。」
ルヴァリの屈託のない笑顔に、フレエシアも微笑みで返した。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる