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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
88.厨房で
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アイリが部屋に入ると、ベッドに大きな箱が置かれていた。
箱に見合う大きな淡いピンクのシフォン素材のリボンを解き、ふたを開くと、中にはレースが幾重にも重なった、豪華なドレスが入っていた。
アイリに宛てたカードも添えられている。
贈り主は、もちろんアンドレアスだ。
『ドレスが仕上がったので、届けます。
明日はこのドレスに会うジュエリーを探しに行こうね。』
アイリはアンドレアスからのカードを一読してから机の上に置くと、さっそくドレスを着てみる。
「完璧だわ!」
鏡の前でくるくると回ってみる。
アイリが動くたびにやわらかなオフホワイトのドレスの繊細なレースの裾がふわりと翻り、ゴールドのビーズや金糸で施された刺繍がキラキラと煌めく。
アンドレアスから舞踏会のパートナーを申し込まれた日に二人でブティックに行き、オーダーしたドレスだった。
短期間だったにも関わらず、見事に仕上がったドレスに、アイリはうっとりする。
貴族令嬢とはいえ、貧乏な上に、まだ社交界デビューもしていない。
今回が、初めてのオーダーメイドのドレスだった。
「さすが伯爵家ね。」
舞踏会は、一週間後の建国祭に開かれる。
この舞踏会は、社交界デビュー前の貴族家の子息や子女も集まるカジュアルなものだったが、それでもアイリにとっては初めての体験だった。
アンドレアスは去年までヴィオラと参加していたので、出席者たちは度肝を抜かれるだろうと想像すると、アイリは楽しくなってくる。
「高貴なヴィオラ様は参加なさるのかしらね~?
パートナーがいないなんて、恥ずかしいわよね。うふふ。
あの、うざったいリーリウムも体を壊してるっていうし、張り合いがないわね。」
ヴィオラは学園には在籍していないので、アイリとは面識がない。
しかし、アイリの中ではウェスペル家の娘たちは一様に“悪役令嬢”なのだ。
なぜ、確信をもてるのかはアイリにも分からない。
ただ、彼女たちがどんなに親切にしようと、“悪役令嬢”であることは間違いないとしか言えなかった。
「う~ん。
この舞踏会、何か利用できそうな気がするわ。」
アイリはドレスを脱ぐと、いつもの楽ちんなワンピースに着替える。
エプロンと三角巾を持つと、どら焼きを作りに厨房へと向かったのだった。
一方、ハモンド家の厨房では、マリーがチョコレート作りをしていた。
そばには兄のカイルとジョンもいる。
ここ数日、この三兄妹はチョコレートの試作に明け暮れていた。
リーリウムが倒れた原因が、自らの作った魔力増加効果のあるチョコレートにあったということを知り、マリーは責任を感じていた。
闇の魔力の存在やリーリウムの光の属性など詳細は伏せられてはいたが、魔力が増えすぎてしまったということを聞いて、「魔力酔い」だと三人は気づいたのだ。
そこで、何とかしてリーリウムの魔力を抑えることができないか、ハーブや薬草を使って試行錯誤していた。
魔力を抑えるだけ、というのがことのほか難しかった。
体内の魔力のほとんどがなくなってしまったり、体力にまで影響が出てしまったりと、どうしても強い副作用が出てくるのだ。
「お兄様、出来上がりました。」
マリーが作ったチョコレートをカイルが食べて、マギア教授から借りた魔道具に手を置く。
体内から放出されている魔力量を測れる魔道具だった。
「数値は減っているが、立ち眩みがひどい。」
カイルはふらふらとしながら、結果を報告する。
魔道具から手を離すと、そばにあった椅子に倒れ掛かるように座る。
「すまんが、効果がなくなるまでちょっと休憩させてくれ。」
そう言うと、カイルは目を瞑り回復に徹する。
「マリー、次はこの薬草を試してみよう。」
ジョンは、カイルを心配そうに見つめるマリーに声をかける。
マリーは我に返って、新たなチョコレート作りへと戻っていった。
箱に見合う大きな淡いピンクのシフォン素材のリボンを解き、ふたを開くと、中にはレースが幾重にも重なった、豪華なドレスが入っていた。
アイリに宛てたカードも添えられている。
贈り主は、もちろんアンドレアスだ。
『ドレスが仕上がったので、届けます。
明日はこのドレスに会うジュエリーを探しに行こうね。』
アイリはアンドレアスからのカードを一読してから机の上に置くと、さっそくドレスを着てみる。
「完璧だわ!」
鏡の前でくるくると回ってみる。
アイリが動くたびにやわらかなオフホワイトのドレスの繊細なレースの裾がふわりと翻り、ゴールドのビーズや金糸で施された刺繍がキラキラと煌めく。
アンドレアスから舞踏会のパートナーを申し込まれた日に二人でブティックに行き、オーダーしたドレスだった。
短期間だったにも関わらず、見事に仕上がったドレスに、アイリはうっとりする。
貴族令嬢とはいえ、貧乏な上に、まだ社交界デビューもしていない。
今回が、初めてのオーダーメイドのドレスだった。
「さすが伯爵家ね。」
舞踏会は、一週間後の建国祭に開かれる。
この舞踏会は、社交界デビュー前の貴族家の子息や子女も集まるカジュアルなものだったが、それでもアイリにとっては初めての体験だった。
アンドレアスは去年までヴィオラと参加していたので、出席者たちは度肝を抜かれるだろうと想像すると、アイリは楽しくなってくる。
「高貴なヴィオラ様は参加なさるのかしらね~?
パートナーがいないなんて、恥ずかしいわよね。うふふ。
あの、うざったいリーリウムも体を壊してるっていうし、張り合いがないわね。」
ヴィオラは学園には在籍していないので、アイリとは面識がない。
しかし、アイリの中ではウェスペル家の娘たちは一様に“悪役令嬢”なのだ。
なぜ、確信をもてるのかはアイリにも分からない。
ただ、彼女たちがどんなに親切にしようと、“悪役令嬢”であることは間違いないとしか言えなかった。
「う~ん。
この舞踏会、何か利用できそうな気がするわ。」
アイリはドレスを脱ぐと、いつもの楽ちんなワンピースに着替える。
エプロンと三角巾を持つと、どら焼きを作りに厨房へと向かったのだった。
一方、ハモンド家の厨房では、マリーがチョコレート作りをしていた。
そばには兄のカイルとジョンもいる。
ここ数日、この三兄妹はチョコレートの試作に明け暮れていた。
リーリウムが倒れた原因が、自らの作った魔力増加効果のあるチョコレートにあったということを知り、マリーは責任を感じていた。
闇の魔力の存在やリーリウムの光の属性など詳細は伏せられてはいたが、魔力が増えすぎてしまったということを聞いて、「魔力酔い」だと三人は気づいたのだ。
そこで、何とかしてリーリウムの魔力を抑えることができないか、ハーブや薬草を使って試行錯誤していた。
魔力を抑えるだけ、というのがことのほか難しかった。
体内の魔力のほとんどがなくなってしまったり、体力にまで影響が出てしまったりと、どうしても強い副作用が出てくるのだ。
「お兄様、出来上がりました。」
マリーが作ったチョコレートをカイルが食べて、マギア教授から借りた魔道具に手を置く。
体内から放出されている魔力量を測れる魔道具だった。
「数値は減っているが、立ち眩みがひどい。」
カイルはふらふらとしながら、結果を報告する。
魔道具から手を離すと、そばにあった椅子に倒れ掛かるように座る。
「すまんが、効果がなくなるまでちょっと休憩させてくれ。」
そう言うと、カイルは目を瞑り回復に徹する。
「マリー、次はこの薬草を試してみよう。」
ジョンは、カイルを心配そうに見つめるマリーに声をかける。
マリーは我に返って、新たなチョコレート作りへと戻っていった。
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