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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

80.その後のリーリウム

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騒動の後、リーリウムが王宮で生活をし始めてから一週間以上が経っていた。
今でも時々立ちくらんだり、息が切れたりする。
皮肉なことに、リーリウムの中に閉じ込められていた光の魔力が発現したことで、国を覆いつくしていると思われる闇の魔力の影響を感じやすくなってしまったのではないかと、学院長は診断していた。
ヘンリクスは今まで以上にリーリウムのそばに居たがったが、学園の改革を進めなくてはいけないため、日中は学園へ行っている。
王太子妃教育も休んでいるリーリウムは、ベッドに横になるか、読書をするかのどちらかをしながら、毎日ヘンリクスの帰りを待つだけの一日を過ごしていた。

「リーリウム、体調はどうだい?」

その日もヘンリクスは学園から戻ると、真っ先にリーリウムの部屋へやってきた。

「ヘンリクス様、おかえりなさいませ。」

ベッドの中にいたリーリウムは、体を起こす。

「無理しなくてもいいよ。」

ヘンリクスは、慌ててリーリウムの体を支えようと駆け寄る。

「いえ、そろそろ起きようかと思っていたところだったのです。
今日は、どのような話し合いをされたのですか?」

学園の改革は、ヘンリクスとマシューが中心となって動いていた。
マギア教授は闇の魔法使い関連で多忙を極めていたからだ。
前学園長時代からいるその他の教授たちも、若手のマシューが中心となった方が良いと快く賛同してくれた。
今さら矢面に立って、悪辣な現学園長と駆け引きをしたくないというのも理由の一つではあったが。

「今日は、リーリウムも気にしていた、若手研究員による講義の是非を話し合ったよ。
概ね賛成だった。
教えることで得られるものもあるってね。
それに、せっかく今、高位貴族の子女たちが在学しているのだから、領地運営の実践的なノウハウを教えられる授業をしてはどうか、という意見も出たよ。
跡取りとなる子息はもちろん、令嬢たちも対象だ。
ウェスペル公爵のように、夫が中央で政治に関わっている間、領地運営を代理人ではなく夫人が自らした方が、横領などの不正が少なくなるのではないか、と考えているようだ。」

ヘンリクスは、生き生きと学園改革について報告をしてくれる。
リーリウムは、役に立てていないことを申し訳ないと思う反面、ヘンリクスに頼もしさも感じていた。

「それが実現できれば、お母さまやヴィオラお姉様が喜びそうです。」

リーリウムも、笑顔になる。

二人は、意図的にアイリの話を避けていた。
実際、学園内でのアイリはヘンリクスにまとわりついていて、ヘンリクスもディナルドも辟易としている。
そして、相変わらずアンドレアスと学園内で親密にしている姿も見られている。
しかし、ただそれだけだ。
幸い、あれ以来マリーに執着をする様子も、プリムラに危害を与えようとする様子もない。
それならば、わざわざアイリを話題にして暗い気持ちになる必要はない。
リーリウムの体が弱っている分、前向きな話だけをしたいと考えていたのだ。

あの日、ヘンリクスや公爵、マギア教授たちの話を聞いた国王は、すぐにその闇の魔法使いの行方を追うように命じた。
ただし、魔法使いの存在が表沙汰になると国中が混乱してしまう恐れがあるので、国王直轄の隠密部隊と共に内々で捜索をしている。
そして、リーリウムが光の魔力を持っていることも、伏せられていた。
人々が知ってしまうと、闇の魔法使いがリーリウムを害しにやってくるおそれがあったからだ。
もし、本当にリーリウムの症状が学園長の診断通りならば、国を覆う闇の魔力を取り除かない限り治ることがない。
そのことが、ヘンリクスや公爵たちの心に重く伸し掛かっていた。
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