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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
79.手紙の内容
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「その手紙はもう開封しても大丈夫なのか?」
「はい。しかし、念のために殿下本人は開けない方が良いでしょう。
殿下がよろしければ、私が開封しましょうか?」
廊下を進みながらヘンリクスが尋ねると、マギア教授がそう提案した。
「ほら、私にはネックレスの加護も有りますし。」
「そうか……。では、すぐに頼む。」
「え、今ですか?」
「今だ。どうせ大した内容ではないだろう。」
マギア教授は歩きながら、アイリの手紙を開封して中から便箋を取り出す。
そして、便箋を開けて、何らかの呪文が発動したりしないか確認する。
しかし、その手紙はただの手紙で、中にはアイリのくせの強い字で何かがしたためられていた。
「殿下、特に危険はなさそうですよ。」
マギア教授は、そう言いながらアイリの手紙をヘンリクスへ渡す。
ヘンリクスはその手紙を黙って受け取ると、そのまま黙読した。
「ふん、やはりバカバカしいな。」
ヘンリクスは、隣を歩く公爵へ手紙を渡した。
普段、王宮での職務中には表情があまり変わらない公爵も、眉をしかめながらすべてに目を通す。
手紙には、リーリウムとマシューが逢引をしているということが、まるでその場で見てきたかのように書かれていた。
そして、ヘンリクスがリーリウムに騙されていてかわいそうだということ、そしてその悲しみを癒せるのは自分だけだということがつらつらと10枚近い便箋に綴られている。
「殿下、このマシューというのは?」
「令嬢たちの間で“白銀の君”と呼ばれているマシュー・ローレンス男爵令息だ。
確かに見目は麗しいし軽薄なところもあるが、芯の通ったところもある。
今は学園改革に手を貸してくれているし、当然リーリウムもそのような目でマシューを見ていることもない。
すべて、その女の妄想だ。」
「ああ、あの白銀の君ですか。
妖精のように美麗な男子だと聞いたことがあります。
殿下はリーリウムを心から信頼してくれているのですね。」
「当然だ。」
リーリウムの父である公爵の言葉に、少し誇らしい気持ちになるヘンリクス。
そんなヘンリクスを見て微笑ましく思う公爵だったが、国王との談義の前に知りたいこともあり、話を変える。
「マギア教授、教授の師匠様はもう研究を続けていないのですか?」
「はい。お年を召しましたので、王都内にある屋敷で隠居生活を送っています。
ただ、元気は有り余っているようで、近所の子どもたちに勉強を教えるなどしているようです。」
「では、研究はあなたが引き継いで?」
「いえ……。」
公爵の問いかけに、マギア教授は肩を落とす。
「実は、師匠が何十年もかけて揃えた研究資料が、すべて燃えてしまったのです。」
「なんですって?」
「師匠が学園長の職を解かれたとき、研究室ごと明け渡すように言われて、その時に現学園長の弟子にすべて燃やされてしまいました。
おそらく、学園長の指示があったのだと思います。
『不要な書類だと思った』と言い訳をされて……。
こちらも密かに進めていた研究だったので、強く問いただすことができませんでした。
それでも師匠はしばらく研究を続けていたのですが、いくら推論を立てても証拠となる資料がなくなってしまったので、お年のこともあって徐々に心が折れてしまったのです。」
「それで引退をしてしまったのか。」
「はい。
しかし、研究内容はしっかりと頭に残っているはずですし、リーリウム様がみた紫のモヤについては、師匠に聞いてみたいと思っています。」
「何か分かれば、報告をしてください。
先生が師匠にお会いになるときは、フレエシアとディナルドも帯同を。
何が起こるかわからないからね。」
「分かりました、お父様。
ディナルドにも伝えておきます。」
そこまで話し終えると、ちょうど国王の待つ部屋の前に到着していた。
「はい。しかし、念のために殿下本人は開けない方が良いでしょう。
殿下がよろしければ、私が開封しましょうか?」
廊下を進みながらヘンリクスが尋ねると、マギア教授がそう提案した。
「ほら、私にはネックレスの加護も有りますし。」
「そうか……。では、すぐに頼む。」
「え、今ですか?」
「今だ。どうせ大した内容ではないだろう。」
マギア教授は歩きながら、アイリの手紙を開封して中から便箋を取り出す。
そして、便箋を開けて、何らかの呪文が発動したりしないか確認する。
しかし、その手紙はただの手紙で、中にはアイリのくせの強い字で何かがしたためられていた。
「殿下、特に危険はなさそうですよ。」
マギア教授は、そう言いながらアイリの手紙をヘンリクスへ渡す。
ヘンリクスはその手紙を黙って受け取ると、そのまま黙読した。
「ふん、やはりバカバカしいな。」
ヘンリクスは、隣を歩く公爵へ手紙を渡した。
普段、王宮での職務中には表情があまり変わらない公爵も、眉をしかめながらすべてに目を通す。
手紙には、リーリウムとマシューが逢引をしているということが、まるでその場で見てきたかのように書かれていた。
そして、ヘンリクスがリーリウムに騙されていてかわいそうだということ、そしてその悲しみを癒せるのは自分だけだということがつらつらと10枚近い便箋に綴られている。
「殿下、このマシューというのは?」
「令嬢たちの間で“白銀の君”と呼ばれているマシュー・ローレンス男爵令息だ。
確かに見目は麗しいし軽薄なところもあるが、芯の通ったところもある。
今は学園改革に手を貸してくれているし、当然リーリウムもそのような目でマシューを見ていることもない。
すべて、その女の妄想だ。」
「ああ、あの白銀の君ですか。
妖精のように美麗な男子だと聞いたことがあります。
殿下はリーリウムを心から信頼してくれているのですね。」
「当然だ。」
リーリウムの父である公爵の言葉に、少し誇らしい気持ちになるヘンリクス。
そんなヘンリクスを見て微笑ましく思う公爵だったが、国王との談義の前に知りたいこともあり、話を変える。
「マギア教授、教授の師匠様はもう研究を続けていないのですか?」
「はい。お年を召しましたので、王都内にある屋敷で隠居生活を送っています。
ただ、元気は有り余っているようで、近所の子どもたちに勉強を教えるなどしているようです。」
「では、研究はあなたが引き継いで?」
「いえ……。」
公爵の問いかけに、マギア教授は肩を落とす。
「実は、師匠が何十年もかけて揃えた研究資料が、すべて燃えてしまったのです。」
「なんですって?」
「師匠が学園長の職を解かれたとき、研究室ごと明け渡すように言われて、その時に現学園長の弟子にすべて燃やされてしまいました。
おそらく、学園長の指示があったのだと思います。
『不要な書類だと思った』と言い訳をされて……。
こちらも密かに進めていた研究だったので、強く問いただすことができませんでした。
それでも師匠はしばらく研究を続けていたのですが、いくら推論を立てても証拠となる資料がなくなってしまったので、お年のこともあって徐々に心が折れてしまったのです。」
「それで引退をしてしまったのか。」
「はい。
しかし、研究内容はしっかりと頭に残っているはずですし、リーリウム様がみた紫のモヤについては、師匠に聞いてみたいと思っています。」
「何か分かれば、報告をしてください。
先生が師匠にお会いになるときは、フレエシアとディナルドも帯同を。
何が起こるかわからないからね。」
「分かりました、お父様。
ディナルドにも伝えておきます。」
そこまで話し終えると、ちょうど国王の待つ部屋の前に到着していた。
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