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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
78.リーリウムの見た世界2
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「世界が黒っぽい紫色……。」
学院長はボソリとつぶやき、考え込む。
「今はそのモヤは見えないの?」
フレエシアが尋ねると、リーリウムはこくりとうなずく。
「姉上、これはやはり師匠の研究どおりの現象なのでは……?」
「そうね。そうだと思う。
ただ、やはり確実な証拠が見つからない……。」
「研究とは、何のことだ?」
ヘンリクスが怪訝そうに尋ねる。
「殿下、私と前学園長である私の師匠は、表向きは古代魔法の歴史を専門としていましたが、密かに“なぜ魔法が使えなくなったのか”も同時に研究していました。」
マギア教授だけでなく、これまでも、この国で魔法が使えなくなった理由を突き止めようとする人間は、研究者のみならず、政治家や騎士、魔法使いの末裔などさまざまにいた。
しかし、真相に近づくにつれて、不慮の事故に巻き込まれたり、不治の病に侵されてしまったりと、不幸が後を絶たなかったのだ。
そのため、ここ十数年は表立ってその研究をしているものはいなかった。
「そうだったのか……。
それで、そのことと今回の件はどのように関係している?」
「これは仮説なのですが、師匠はこの国一帯が闇の魔力に覆われているのではないかと疑っていました。」
「なんだと?」
「リーリウムの見たモヤは闇の魔力だということ?」
フレエシアの言葉に、マギア教授は「あくまでも仮説だよ。」と釘をさす。
「リーリウム様の光の魔力と、闇の魔力は相反するものです。
リーリウム様がお倒れになったのは自らの魔力量の多さだけでなく、国を覆う闇の魔力に中てられたという可能性もあります。」
学院長の言葉に、ヘンリクスは腕を組み考え込む。
「今日、わたしとフレエシア嬢は、この国の中で魔法を使う者を見かけました。
闇の魔力に包まれたこの国で何の支障もなく魔法が使用できる者はただ一人。
この国をこの状態にした闇の魔法使いのみです。
アイリ嬢の手紙からも、闇の魔法の残滓が見つかりました。
彼女は、我々が想像するよりも危険人物なのかもしれません。」
「それでヘンリクス様へのお手紙には、チャーム以外にどのような力が宿っていたのですか?」
リーリウムは、あの手紙がヘンリクスを害すのではないかと、ずっと気がかりだった。
今思えば、その不安は闇の魔力を敏感に感じ取っていたからかもしれないと、リーリウムは考えていた。
「あの手紙自体には、アイリ嬢のチャームの力が働いていただけでした。
しかし、おそらくアイリ嬢が闇の魔法がかかった強力な魔道具を身につけていたのでしょう。
その魔道具の影響で、“能力強化”・“言霊”・“闇耐性”の三つの魔法が検出されました。
あくまでも残滓ですので、その力でヘンリクス様に危険が及ぶことはありませんよ。」
マギア教授の言葉に、リーリウムはほっと胸をなでおろした。
それと同時に、激しい疲れが体を襲う。
「リーリウムには、もう少し休息が必要だな。
公爵、リーリウムをしばらく王宮で預かる。
良いな?」
ヘンリクスの言葉に逆らえるはずもなく、ウェスペル公爵は「承知いたしました」と言って、頭を下げる。
「ヴィーも、今日はここに泊まりなさい。
顔色が悪いわ。
隣の部屋をすぐに準備させるから。」
「ありがとう。」
王妃がそういうと、公爵夫人は疲れた表情のまま微笑み、礼を告げる。
自分の体調もだが、今日だけはリーリウムのそばにいてあげたかったのだ。
「わたくしは陛下に報告をしてまいります。
フレエシアと先生方も、魔法に関する専門家としてご同行願います。
リーリウムもヴィスタリアも、よく休むのだよ。」
公爵はそう言うと、部屋を出て行こうとする。
「私も行こう。もっと詳しい説明を聞きたい。」
ヘンリクスは、リーリウムの手の甲に口づけをし、愛おしそうにそのあとを撫でる。
そして、部屋の入口で待つ公爵たちと共に部屋を出て行った。
部屋に残されたのは、リーリウムと公爵夫人、そして王妃の三人だ。
「さあ、リーリウム、もう休みなさい。」
公爵夫人は、リーリウムをベッドに横たわらせる。
「お母様、わたくし、あの紫色の世界に一人で放り込まれたような気がして、とても恐ろしかったわ。」
珍しく不安を口にするリーリウム。
「大丈夫よ。わたくしたちがそばにいるわ。」
公爵夫人はベッドに腰かけながら、リーリウムのやわらかなブロンドをやさしく撫で続ける。
王妃も、ベッドのそばの椅子に座り、リーリウムの手を包み込むように握っていた。
二人の母に見守られ、リーリウムはようやく安心して眠りについたのだった。
学院長はボソリとつぶやき、考え込む。
「今はそのモヤは見えないの?」
フレエシアが尋ねると、リーリウムはこくりとうなずく。
「姉上、これはやはり師匠の研究どおりの現象なのでは……?」
「そうね。そうだと思う。
ただ、やはり確実な証拠が見つからない……。」
「研究とは、何のことだ?」
ヘンリクスが怪訝そうに尋ねる。
「殿下、私と前学園長である私の師匠は、表向きは古代魔法の歴史を専門としていましたが、密かに“なぜ魔法が使えなくなったのか”も同時に研究していました。」
マギア教授だけでなく、これまでも、この国で魔法が使えなくなった理由を突き止めようとする人間は、研究者のみならず、政治家や騎士、魔法使いの末裔などさまざまにいた。
しかし、真相に近づくにつれて、不慮の事故に巻き込まれたり、不治の病に侵されてしまったりと、不幸が後を絶たなかったのだ。
そのため、ここ十数年は表立ってその研究をしているものはいなかった。
「そうだったのか……。
それで、そのことと今回の件はどのように関係している?」
「これは仮説なのですが、師匠はこの国一帯が闇の魔力に覆われているのではないかと疑っていました。」
「なんだと?」
「リーリウムの見たモヤは闇の魔力だということ?」
フレエシアの言葉に、マギア教授は「あくまでも仮説だよ。」と釘をさす。
「リーリウム様の光の魔力と、闇の魔力は相反するものです。
リーリウム様がお倒れになったのは自らの魔力量の多さだけでなく、国を覆う闇の魔力に中てられたという可能性もあります。」
学院長の言葉に、ヘンリクスは腕を組み考え込む。
「今日、わたしとフレエシア嬢は、この国の中で魔法を使う者を見かけました。
闇の魔力に包まれたこの国で何の支障もなく魔法が使用できる者はただ一人。
この国をこの状態にした闇の魔法使いのみです。
アイリ嬢の手紙からも、闇の魔法の残滓が見つかりました。
彼女は、我々が想像するよりも危険人物なのかもしれません。」
「それでヘンリクス様へのお手紙には、チャーム以外にどのような力が宿っていたのですか?」
リーリウムは、あの手紙がヘンリクスを害すのではないかと、ずっと気がかりだった。
今思えば、その不安は闇の魔力を敏感に感じ取っていたからかもしれないと、リーリウムは考えていた。
「あの手紙自体には、アイリ嬢のチャームの力が働いていただけでした。
しかし、おそらくアイリ嬢が闇の魔法がかかった強力な魔道具を身につけていたのでしょう。
その魔道具の影響で、“能力強化”・“言霊”・“闇耐性”の三つの魔法が検出されました。
あくまでも残滓ですので、その力でヘンリクス様に危険が及ぶことはありませんよ。」
マギア教授の言葉に、リーリウムはほっと胸をなでおろした。
それと同時に、激しい疲れが体を襲う。
「リーリウムには、もう少し休息が必要だな。
公爵、リーリウムをしばらく王宮で預かる。
良いな?」
ヘンリクスの言葉に逆らえるはずもなく、ウェスペル公爵は「承知いたしました」と言って、頭を下げる。
「ヴィーも、今日はここに泊まりなさい。
顔色が悪いわ。
隣の部屋をすぐに準備させるから。」
「ありがとう。」
王妃がそういうと、公爵夫人は疲れた表情のまま微笑み、礼を告げる。
自分の体調もだが、今日だけはリーリウムのそばにいてあげたかったのだ。
「わたくしは陛下に報告をしてまいります。
フレエシアと先生方も、魔法に関する専門家としてご同行願います。
リーリウムもヴィスタリアも、よく休むのだよ。」
公爵はそう言うと、部屋を出て行こうとする。
「私も行こう。もっと詳しい説明を聞きたい。」
ヘンリクスは、リーリウムの手の甲に口づけをし、愛おしそうにそのあとを撫でる。
そして、部屋の入口で待つ公爵たちと共に部屋を出て行った。
部屋に残されたのは、リーリウムと公爵夫人、そして王妃の三人だ。
「さあ、リーリウム、もう休みなさい。」
公爵夫人は、リーリウムをベッドに横たわらせる。
「お母様、わたくし、あの紫色の世界に一人で放り込まれたような気がして、とても恐ろしかったわ。」
珍しく不安を口にするリーリウム。
「大丈夫よ。わたくしたちがそばにいるわ。」
公爵夫人はベッドに腰かけながら、リーリウムのやわらかなブロンドをやさしく撫で続ける。
王妃も、ベッドのそばの椅子に座り、リーリウムの手を包み込むように握っていた。
二人の母に見守られ、リーリウムはようやく安心して眠りについたのだった。
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