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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
69.ウェスペル家の休日2
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リーリウムが王宮の前に到着すると、ヘンリクス自らが出迎えてくれた。
「おはよう、リーリウム。
休日も君に会えて嬉しいよ。」
「おはようございます、ヘンリクス様。
わたくしも嬉しいです。」
ほほえみあう二人に、周りの従者たちの心も温まる。
ヘンリクスから差し出された手の上にそっと右手を添え、リーリウムは王宮の中へ入っていく。
バラが満開の庭園へ行くと、青空の下にセットされたスイーツや紅茶が並ぶテーブル、そして、王妃と談笑する王がいた。
王妃とは気さくに話せるようになったリーリウムも、王とはほとんど面識がない。
今日拝謁できるとは思っていなかったリーリウムは、慌てて立ち止まり、膝を曲げて頭を下げ、礼をする。
「今日は家族として会うのだから、そんなにかしこまらなくても良い。
リーリウム、こちらへ座りなさい。」
王はそう言うと、周りに控えていた侍従やメイドたちを静かに下がらせた。
リーリウムは、ヘンリクスにエスコートされて王妃と王の向いの席に座る。
「おはようございます。陛下、王妃様。」
「おはよう、リーリウム。
ヴィーが久しぶりに邸宅に帰って来ているのですって?
王宮にも遊びに来るように伝えておいてね?」
“ヴィー”はリーリウムの母、ヴィスタリア・ウェスペル公爵夫人の愛称だ。
「はい、王妃様。」
「それにしても、今回のことは残念だった。
ヴィオラ嬢はさぞ気落ちしていることだろう…。」
王は、公爵から受け取った手紙でヴィオラとアンドレアスの事情を知った。
王としても、アンドレアスは次期ウェスペル家の当主であり、ヘンリクスの右腕になる人間として目をかけていたのだから、今回のことは青天の霹靂だった。
「陛下、心配いただきありがとうございます。」
“姉はすっきりとしたと言って元気に過ごしている”とは、さすがに言えない。
「ヴィオラ嬢には気持ちが落ち着くまで、ゆっくりと過ごすように伝えてくれ。」
「はい、陛下。」
王は心からヴィオラを心配している様だった。
今まであまり話したことがなかったが、リーリウムは王の優しい心に触れたような気がして、うれしかった。
「それでリーリウム、本題なのだが、これに見覚えはないか?」
王がおもむろに取り出したのは、一冊の古ぼけた本だった。
リーリウムはその本を見て、目を見開いた。
「それは、“ユニカ様の日記帳”!」
あるはずのないものが王の手にあるのを見て、思わず口に出してしまった。
とっさにリーリウムは口に手を当てる。
王が持つ本は、公爵家の秘密の図書館で見つけた、あのユニカ様の日記にそっくりだったのだ。
「うむ、やはり片割れは公爵家にあったか。
これはユニカ様の日記帳ではない。
アレクサンデル王の日記だ。
どうやら二人は、おそろいの日記帳を使用していたらしいな。」
「やっぱり仲良しだったのね。」
王妃がうっとりとした口調で話す。
アレクサンデル王とユニカ様の仲睦まじさは、今でもさまざまなエピソードとともに語り継がれており、王国の女性すべての憧れだった。
「そうだな。二人の間には隠し事などなかったようだ。
この日記には、“ヒロイン”と“悪役令嬢”の存在と“ウェスペル家の呪い”と祝福についても書かれていた。
そちらの日記には、書かれていたか?」
隠しても仕方がないと、リーリウムは腹をくくる。
それに、ずっと気になっていたこともあったので、思い切って王に尋ねてみようと思った。
「おはよう、リーリウム。
休日も君に会えて嬉しいよ。」
「おはようございます、ヘンリクス様。
わたくしも嬉しいです。」
ほほえみあう二人に、周りの従者たちの心も温まる。
ヘンリクスから差し出された手の上にそっと右手を添え、リーリウムは王宮の中へ入っていく。
バラが満開の庭園へ行くと、青空の下にセットされたスイーツや紅茶が並ぶテーブル、そして、王妃と談笑する王がいた。
王妃とは気さくに話せるようになったリーリウムも、王とはほとんど面識がない。
今日拝謁できるとは思っていなかったリーリウムは、慌てて立ち止まり、膝を曲げて頭を下げ、礼をする。
「今日は家族として会うのだから、そんなにかしこまらなくても良い。
リーリウム、こちらへ座りなさい。」
王はそう言うと、周りに控えていた侍従やメイドたちを静かに下がらせた。
リーリウムは、ヘンリクスにエスコートされて王妃と王の向いの席に座る。
「おはようございます。陛下、王妃様。」
「おはよう、リーリウム。
ヴィーが久しぶりに邸宅に帰って来ているのですって?
王宮にも遊びに来るように伝えておいてね?」
“ヴィー”はリーリウムの母、ヴィスタリア・ウェスペル公爵夫人の愛称だ。
「はい、王妃様。」
「それにしても、今回のことは残念だった。
ヴィオラ嬢はさぞ気落ちしていることだろう…。」
王は、公爵から受け取った手紙でヴィオラとアンドレアスの事情を知った。
王としても、アンドレアスは次期ウェスペル家の当主であり、ヘンリクスの右腕になる人間として目をかけていたのだから、今回のことは青天の霹靂だった。
「陛下、心配いただきありがとうございます。」
“姉はすっきりとしたと言って元気に過ごしている”とは、さすがに言えない。
「ヴィオラ嬢には気持ちが落ち着くまで、ゆっくりと過ごすように伝えてくれ。」
「はい、陛下。」
王は心からヴィオラを心配している様だった。
今まであまり話したことがなかったが、リーリウムは王の優しい心に触れたような気がして、うれしかった。
「それでリーリウム、本題なのだが、これに見覚えはないか?」
王がおもむろに取り出したのは、一冊の古ぼけた本だった。
リーリウムはその本を見て、目を見開いた。
「それは、“ユニカ様の日記帳”!」
あるはずのないものが王の手にあるのを見て、思わず口に出してしまった。
とっさにリーリウムは口に手を当てる。
王が持つ本は、公爵家の秘密の図書館で見つけた、あのユニカ様の日記にそっくりだったのだ。
「うむ、やはり片割れは公爵家にあったか。
これはユニカ様の日記帳ではない。
アレクサンデル王の日記だ。
どうやら二人は、おそろいの日記帳を使用していたらしいな。」
「やっぱり仲良しだったのね。」
王妃がうっとりとした口調で話す。
アレクサンデル王とユニカ様の仲睦まじさは、今でもさまざまなエピソードとともに語り継がれており、王国の女性すべての憧れだった。
「そうだな。二人の間には隠し事などなかったようだ。
この日記には、“ヒロイン”と“悪役令嬢”の存在と“ウェスペル家の呪い”と祝福についても書かれていた。
そちらの日記には、書かれていたか?」
隠しても仕方がないと、リーリウムは腹をくくる。
それに、ずっと気になっていたこともあったので、思い切って王に尋ねてみようと思った。
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