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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
65.代償2
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リーリウムたちの祖母は身体の弱い人で、長女である母を生むと二度と妊娠することがなかった。
そのまま公爵家唯一の子どもとなった母は祖母によって厳しく育てられ、勉学はもちろん、体を鍛えるための鍛錬、貴族女性に義務付けられた社交、すべてを完璧にこなす淑女として育てられてきた。
今のような穏やかさや自分らしさを取り戻すことができたのは、厳格な祖母が亡くなり、娘の惨状を見てみぬふりをしていた先代公爵が亡くなり、当時婚約者であった父がずっと母の心に寄り添ってくれたからだ。
結婚をして公爵夫人となり、ヴィオラを産むと、プレッシャーの中で育ってきた自分のようにはなって欲しくないと、すぐにフレエシアを産んだ。
産後の肥立ちが悪く、心配した公爵に子どもは二人で良いと懇願されるなか、ボロボロになりながらもリーリウム、プリムラを産んだのだった。
一時は寝たきりになってしまうほど体を壊していたが、今は日常生活を送る程度には動けるようになった。
しかし、完全に体調は戻らず、疲れやすい体を領地で癒しながら仕事をしている。
ユニカ様の日記には、実際にアレクサンデル王と法律の改正から着手しはじめたことまで書かれていた。
この国の根幹を作り上げたと言っても過言ではない、賢王アレクサンデル王とユニカ王妃。
その二人が思い描いた社会は、まだ実現していない。
自分が継ぐことのできない家のために幼いころから一人で闘ってきた母は、
この現実を知ってどう感じるのだろうかと、娘たちは昨日から心配だった。
心強い姉妹がいる自分たちには、到底想像できないことだった。
しかし、椅子に座り込んだ母は家族ににっこりと笑顔を見せた。
「そう、そんな理由があったのね。
それで、そのチャームの無効化の祝福というのは、本当にあなたたちに備わっているの?」
「おそらく、備わっていると思います。
殿下方にチャームの影響が出ていないので。」
フレエシアの言葉に、公爵夫人の瞳に生気が戻ってくる。
「そう、それはすごいことだわ。
我が家の女の子たちに祝福が与えられているなんて!
しかも、その力で大切な人たちを守ることができているのでしょう?
それなら、男の子が生まれないのは、ちっとも“呪い”なんかじゃないわね。」
母の意外な言葉に、娘たちは安堵の表情を浮かべる。
「おそらく、お母様にもその力は宿っているのではないでしょうか。
子どもを産んだら消えるようなことも書かれていませんし……。」
「あら、そうなの? 全然体感がないものなのね?」
フレエシアの言葉に、公爵夫人は不思議そうに自分の手のひらを見つめている。
「その問題の令嬢は、ヒロインだからチャームの能力を生まれつきもっているのだよね?
魔法が関わっている可能性はゼロなのだろうか?」
公爵が問う。
もし、国に魔法が残っているのなら、把握しておかなければいけない。
「おそらく、アイリ嬢のチャームは魔法ではなく、体質みたいなものだと思います。
もしくは、私たちと同じ祝福のようなものか……。
ただ、マギア教授が別の力も働いているとおっしゃっていたのがひっかかります。
私も明日から、マギア教授の研究を手伝いに行ってみます。
何か、分かるかもしれませんし。」
フレエシアは、厳しい顔をして公爵に応える。
「なるほど。では、アイリ嬢はしばらく泳がせてみた方が良いな。
彼女は中途半端な行動をとって、自爆するタイプらしい。
それに、アンドレアスも。
ヴィオラ、アンドレアスのこともしばらくそのまま婚約状態を保持させてくれ。
もちろん、陛下には後に婚約解消をすることは伝えておく。
二人を放っておくことで、何かが出てくるような気がする。
フレエシアは、その間にマギア教授と研究をすすめておいて欲しい。
何か見つかれば、すぐに報告するように。
全てが終わったあとに、婚約解消するとしよう。」
「わかりました、お父様。」
ヴィオラとフレエシアは、父の案に同意する。
「リーリウムは、殿下との学園改革が最優先だ。
しかし、アイリ嬢の狙いはおそらく殿下だろう。
チャームの力がある以上は、万が一のこともないとも限らない。
殿下のおそばを決して離れることのないように。
プリムラも、なるべくルドヴィク殿下と共にいること。
それから、アイリ嬢に執着されているマリー嬢のことも守るように。」
「はい、お父様。」
リーリウムとプリムラも、父の言葉に返事をした。
四姉妹の秘密は、ウェスペル家の秘密となり、娘たちは誰よりも心強い味方を得たのだった。
そのまま公爵家唯一の子どもとなった母は祖母によって厳しく育てられ、勉学はもちろん、体を鍛えるための鍛錬、貴族女性に義務付けられた社交、すべてを完璧にこなす淑女として育てられてきた。
今のような穏やかさや自分らしさを取り戻すことができたのは、厳格な祖母が亡くなり、娘の惨状を見てみぬふりをしていた先代公爵が亡くなり、当時婚約者であった父がずっと母の心に寄り添ってくれたからだ。
結婚をして公爵夫人となり、ヴィオラを産むと、プレッシャーの中で育ってきた自分のようにはなって欲しくないと、すぐにフレエシアを産んだ。
産後の肥立ちが悪く、心配した公爵に子どもは二人で良いと懇願されるなか、ボロボロになりながらもリーリウム、プリムラを産んだのだった。
一時は寝たきりになってしまうほど体を壊していたが、今は日常生活を送る程度には動けるようになった。
しかし、完全に体調は戻らず、疲れやすい体を領地で癒しながら仕事をしている。
ユニカ様の日記には、実際にアレクサンデル王と法律の改正から着手しはじめたことまで書かれていた。
この国の根幹を作り上げたと言っても過言ではない、賢王アレクサンデル王とユニカ王妃。
その二人が思い描いた社会は、まだ実現していない。
自分が継ぐことのできない家のために幼いころから一人で闘ってきた母は、
この現実を知ってどう感じるのだろうかと、娘たちは昨日から心配だった。
心強い姉妹がいる自分たちには、到底想像できないことだった。
しかし、椅子に座り込んだ母は家族ににっこりと笑顔を見せた。
「そう、そんな理由があったのね。
それで、そのチャームの無効化の祝福というのは、本当にあなたたちに備わっているの?」
「おそらく、備わっていると思います。
殿下方にチャームの影響が出ていないので。」
フレエシアの言葉に、公爵夫人の瞳に生気が戻ってくる。
「そう、それはすごいことだわ。
我が家の女の子たちに祝福が与えられているなんて!
しかも、その力で大切な人たちを守ることができているのでしょう?
それなら、男の子が生まれないのは、ちっとも“呪い”なんかじゃないわね。」
母の意外な言葉に、娘たちは安堵の表情を浮かべる。
「おそらく、お母様にもその力は宿っているのではないでしょうか。
子どもを産んだら消えるようなことも書かれていませんし……。」
「あら、そうなの? 全然体感がないものなのね?」
フレエシアの言葉に、公爵夫人は不思議そうに自分の手のひらを見つめている。
「その問題の令嬢は、ヒロインだからチャームの能力を生まれつきもっているのだよね?
魔法が関わっている可能性はゼロなのだろうか?」
公爵が問う。
もし、国に魔法が残っているのなら、把握しておかなければいけない。
「おそらく、アイリ嬢のチャームは魔法ではなく、体質みたいなものだと思います。
もしくは、私たちと同じ祝福のようなものか……。
ただ、マギア教授が別の力も働いているとおっしゃっていたのがひっかかります。
私も明日から、マギア教授の研究を手伝いに行ってみます。
何か、分かるかもしれませんし。」
フレエシアは、厳しい顔をして公爵に応える。
「なるほど。では、アイリ嬢はしばらく泳がせてみた方が良いな。
彼女は中途半端な行動をとって、自爆するタイプらしい。
それに、アンドレアスも。
ヴィオラ、アンドレアスのこともしばらくそのまま婚約状態を保持させてくれ。
もちろん、陛下には後に婚約解消をすることは伝えておく。
二人を放っておくことで、何かが出てくるような気がする。
フレエシアは、その間にマギア教授と研究をすすめておいて欲しい。
何か見つかれば、すぐに報告するように。
全てが終わったあとに、婚約解消するとしよう。」
「わかりました、お父様。」
ヴィオラとフレエシアは、父の案に同意する。
「リーリウムは、殿下との学園改革が最優先だ。
しかし、アイリ嬢の狙いはおそらく殿下だろう。
チャームの力がある以上は、万が一のこともないとも限らない。
殿下のおそばを決して離れることのないように。
プリムラも、なるべくルドヴィク殿下と共にいること。
それから、アイリ嬢に執着されているマリー嬢のことも守るように。」
「はい、お父様。」
リーリウムとプリムラも、父の言葉に返事をした。
四姉妹の秘密は、ウェスペル家の秘密となり、娘たちは誰よりも心強い味方を得たのだった。
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