62 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
62.四姉妹の秘密会議2
しおりを挟む
「アイリ嬢のチャームの能力は、ただのきっかけでしかなかったのですわ。リーリウム。」
リーリウムは、ヴィオラの言葉にただ頷くことしかできなかった。
姉が今まで人知れず苦しんでいたことに、やっと気づくことが出来たからだ。
公爵家の将来を一人で背負ってきたヴィオラ。
しかし、そのパートナーとなるアンドレアスにその責任を少しも任せることができなかった。
アンドレアスも人並み以上に努力をしていたが、ヴィオラはすべてを把握しておきたかったし、すべてを管理したかった。
家のことを“他人”には任せられないと、どこかで思っていたのだ。
だから、今回の件は自分の落ち度なのだと考えていた。
もっと、自分が心を開くことができたなら、アンドレアスを傷つけることもなかったし、チャームの影響も出なかったかもしれない。
「お姉様、自分が悪いと思ってらっしゃるなら、それは違います。」
おずおずとヴィオラの手を握り、リーリウムが話しかける。
まさに自分を責めていたヴィオラは、驚いたようにリーリウムの顔を見つめる。
リーリウムの目からも涙があふれ出していた。
「たしかに、アンドレアス様のお姉様への愛情は大きいと思います。
ですが、アンドレアス様の愛情はわがままです。
本当に愛しているのであれば、お姉様すべてを愛するべきです。
そっけなかったり、時々冷たかったり、仕事の話ばかりしていたりしても、そこも全部合わせて、お姉様を愛するべきだったのです。
もし、お姉様がアンドレアス様を愛していなかったとしても、それがお姉様なのですから仕方がないではありませんか。
“自分が愛情を与えているのだから、自分のことも愛して欲しい”というのは、一人よがりだと思うのです。」
リーリウムは、珍しく捲し立てるように話した。
一気に話さないと、もうヴィオラに愛の話をすることが出来ないような気がしていたから。
「私もリーリウムの言う通りだと思います。
今回のことは、お姉様だけが悪いわけでも、アンドレアス様だけが悪いわけでもない。
相性とかタイミングとか、そういったものが悪かっただけです。」
フレエシアも努めて明るく、たいした事ではないと言った雰囲気で姉に言葉をかける。
隣で、プリムラもうんうんと頷く。
「そうね、そうかもしれませんわね。
みんな、どうもありがとう。」
ヴィオラは、緻密なレースが美しい白いハンカチで目元の涙を拭ってほほ笑んだ。
その笑顔を見たフレエシアは安心したのか、声を押し殺して泣き始めてしまった。
その背中を、今度はヴィオラが撫でて落ち着かせる。
「さて、お茶が冷めてしまったわね。」
新しいお湯をもらおうと、ヴィオラは呼び鈴でメイドを呼んだ。
呼ばれたメイドが部屋に入って来ると、寝間着姿の四姉妹全員の瞳が涙で腫れていることに思わずギョッとする様子を見せる。
それが妙におかしくて、皆でクスクスと笑ってしまった。
ヴィオラは、お湯のほかに、四人分の目を冷やすための冷たいタオルもメイドに頼んだのだった。
リーリウムは、ヴィオラの言葉にただ頷くことしかできなかった。
姉が今まで人知れず苦しんでいたことに、やっと気づくことが出来たからだ。
公爵家の将来を一人で背負ってきたヴィオラ。
しかし、そのパートナーとなるアンドレアスにその責任を少しも任せることができなかった。
アンドレアスも人並み以上に努力をしていたが、ヴィオラはすべてを把握しておきたかったし、すべてを管理したかった。
家のことを“他人”には任せられないと、どこかで思っていたのだ。
だから、今回の件は自分の落ち度なのだと考えていた。
もっと、自分が心を開くことができたなら、アンドレアスを傷つけることもなかったし、チャームの影響も出なかったかもしれない。
「お姉様、自分が悪いと思ってらっしゃるなら、それは違います。」
おずおずとヴィオラの手を握り、リーリウムが話しかける。
まさに自分を責めていたヴィオラは、驚いたようにリーリウムの顔を見つめる。
リーリウムの目からも涙があふれ出していた。
「たしかに、アンドレアス様のお姉様への愛情は大きいと思います。
ですが、アンドレアス様の愛情はわがままです。
本当に愛しているのであれば、お姉様すべてを愛するべきです。
そっけなかったり、時々冷たかったり、仕事の話ばかりしていたりしても、そこも全部合わせて、お姉様を愛するべきだったのです。
もし、お姉様がアンドレアス様を愛していなかったとしても、それがお姉様なのですから仕方がないではありませんか。
“自分が愛情を与えているのだから、自分のことも愛して欲しい”というのは、一人よがりだと思うのです。」
リーリウムは、珍しく捲し立てるように話した。
一気に話さないと、もうヴィオラに愛の話をすることが出来ないような気がしていたから。
「私もリーリウムの言う通りだと思います。
今回のことは、お姉様だけが悪いわけでも、アンドレアス様だけが悪いわけでもない。
相性とかタイミングとか、そういったものが悪かっただけです。」
フレエシアも努めて明るく、たいした事ではないと言った雰囲気で姉に言葉をかける。
隣で、プリムラもうんうんと頷く。
「そうね、そうかもしれませんわね。
みんな、どうもありがとう。」
ヴィオラは、緻密なレースが美しい白いハンカチで目元の涙を拭ってほほ笑んだ。
その笑顔を見たフレエシアは安心したのか、声を押し殺して泣き始めてしまった。
その背中を、今度はヴィオラが撫でて落ち着かせる。
「さて、お茶が冷めてしまったわね。」
新しいお湯をもらおうと、ヴィオラは呼び鈴でメイドを呼んだ。
呼ばれたメイドが部屋に入って来ると、寝間着姿の四姉妹全員の瞳が涙で腫れていることに思わずギョッとする様子を見せる。
それが妙におかしくて、皆でクスクスと笑ってしまった。
ヴィオラは、お湯のほかに、四人分の目を冷やすための冷たいタオルもメイドに頼んだのだった。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる