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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

60.波乱の幕開け

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フレエシアとリーリウムが帰宅すると、夕食の時間になっていた。
食後に家族全員が公爵の書斎に集められ、その中でヴィオラは、今朝のアンドレアスとの出来事を包み隠さず皆に話した。

「アンドレアス……。
気は弱いが、実直で素直ないい男だったのに。」

アンドレアスと行動を共にしていた公爵は、ショックを隠せない様子だった。
自分の跡を継ぐ婿として、息子のように育てていたのだから無理もない。

「お父様、わたくしが至らなかったばかりに申し訳ございません。」

「いや、いいんだよ。
ヴィオラは大丈夫なのかい?」

「全く何も感じないわけではないのですが、意外にも少しすっきりとしているのです。」

ヴィオラは珍しく穏やかな笑顔を浮かべる。

「いろいろと考えていることはあるのですが、
明日の朝にはお母様が帰宅されるので、その時にわたくしの考えを皆に聞いてほしいのです。」

ヴィオラはアンドレアスが帰った後、すぐに母へ手紙を届けさせた。
馬を全速で駆って半日はかかる領地に手紙を届けた使者は、
「すぐ向かう」という短い返事を手に、疲労困憊な様子で先ほど王都の屋敷に戻ってきたばかりだった。

「わかったよ。
では、明日また皆で集まろう。
フレエシアたちは、明日は学園を休むように。
僕も明日は登城する時間を遅らせるよ。」

「はい、お父様。」

フレエシアは妹たちの分も返事をする。
公爵は机に向かって手紙をしたためると執事のアドルフに預け、早急に城へ届けさせるように指示を出した。
もし、アンドレアスとヴィオラの婚約がなくなるようなことがあれば、王国にも影響を及ぼす。
アンドレアスは、次の宰相となるべく教育を受けていたのだ。
将来はヘンリクスの右腕となり、国の平和を守るはずの人物だったにも関わらず、自分の感情ですべてを投げ出してしまった。
アンドレアスがヴィオラとの婚約を解消した場合は、本人のみならずフェネル伯爵家の責任問題となることは必至だ。

(フェネル伯爵は良い方だ。
できることならば、婚約解消にはなってほしくはないが……。)

公爵はちらりとヴィオラの表情を見るが、明日の朝どのような結論を出すのかは分からなかった。
ただ、本人も言っていたように、どこかすっきりとした顔つきをしているように思えた。

「お父様、わたくしたちはもう休みますわね。」

父の思いを知ってか知らずか、ヴィオラはいつも通りの調子に戻っている。

「うん。おやすみ。」

「おやすみなさい、お父様。」

娘たちは口々に挨拶をして、書斎を出て行った。

「はぁ……。
どうせ、また父を仲間外れにして“女の子だけのお茶会”をするんだろうなぁ……。」

公爵の小さなつぶやきは、一人きりになった書斎の中で寂しげに響いた。
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