悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

文字の大きさ
上 下
51 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

51.アイリの手紙

しおりを挟む
翌朝も、リーリウムたちは王宮の馬車でそろって登校する。
するとやはり、校門で待ち伏せをしていたアイリが、今日こそはとヘンリクスへアタックしてきた。
だが、ディナルドたちのガードが固く、突破できない。
アイリは、ルドヴィクの隣を歩くプリムラを見つけると、いきなり大きな声を上げた。

「プリムラ様! マリーは昨日の出来事に驚いて、ずっと泣いていましたわ。
親友が傷ついた姿を見ていて、私、本当に胸が痛かったのですよ?」

プリムラはアイリを一瞥すると、昨日の出来事のことなど何も知らないというふうに、ルドヴィクと共に何も言わずに通り過ぎる。
アイリは、すでにアンドレアスからプリムラへ注意がいっているものだと思い込んでいたので、プリムラの態度に肩透かしをくらったが、もしかするとプリムラはまだ何も知らないのかもしれないと思い直した。

「今日、生徒会長のアンドレアス様からお話しがあると思います!
ご自分の罪をきちんとお認めになってくださいね!」

アイリは通り過ぎて行ったプリムラに、やはり大きな声で伝える。

「大丈夫か?」

「大丈夫よ、ルド。事情はフレエシアお姉様から聞いているから。」

二人きりの時しか使わない愛称でルドヴィクを呼び、安心させるプリムラ。

「そうか。」

二人は微笑みあうと、校舎の中へ入っていった。


アイリは、再びヘンリクスの元へ近づこうとし、ディナルドから静止されていた。
ディナルドとアイリがもみ合っている最中でも、涼やかな表情をしているヘンリクス。
足を止め、やさしい笑顔をリーリウムに向けて手の甲にキスをすると、皆と別れて自分の教室へ向かって行った。

「あん! 待ってください、ヘンリクス様~。」

アイリは、ヘンリクスを追っていく。
リーリウムは、その後ろ姿を心配そうに見つめ続けていた。
アイリが一瞬ちらりとふり向いて、勝ち誇ったような笑顔を見せつける。

「ディナルドがいるから、大丈夫さ。」

ルヴァリの慰めに、リーリウムはこくりと頷いた。


「ディナルド様、妬いていらっしゃるの?」

ヘンリクスの教室の前で、アイリは急に足を止めて上目遣いでディナルドを見つめる。

「あとでお相手をして差し上げるわ。」

ディナルドの手をぎゅっと握ると、ウィンクをする。
ディナルドが不意をつかれてたじろぐと、アイリはその隙をついて、すでに教室に入っていたヘンリクスへ手紙を渡した。

「これ、大切なことが書いてあるので、お一人で読んでくださいね! それでは!」

アイリは、ぱたたたっと駆け出して自らの教室へ戻っていった。

「殿下、申し訳ありません。」

ディナルドはヘンリクスの元へ駆け寄り、謝罪する。

「いや、大丈夫だよ。
しかし、ディナルドも女性が絡むとまだまだだね。ぷふっ」

ヘンリクスは、先ほどの動揺したディナルドを思い出し、思わず吹き出してしまう。
いつも仏頂面のお堅いディナルドの意外な表情が、面白くてたまらない様子だった。

「殿下……。」

困ったような様子のディナルドが、さらにヘンリクスに追い打ちをかける。

「すまんすまん、でも、さっきの表情、フレエシア嬢にも見せたかったな。」

「そんなことしたら、一生いじられ続けてしまいます……。
それよりも、その手紙どうされるのですか?」

困ったディナルドが、話題を変える。

「うん、そうだな……。
封筒を開けた途端呪いが発動する、とかはないだろうか?」

「魔法とともに呪術も途絶えて久しいので、無いとは思いますが、一応鑑定に出しますか?」

「うむ、そうしよう。
午後からリーリウムと共に研究棟へ行く予定だから、その時に呪術に詳しい教授に鑑定してもらえばいいだろう。」

「それでは、それまで預かっておきます。
何かの仕掛けがあったら危ないので。」

ディナルドは、アイリの手紙をヘンリクスから預かると、懐にしまい込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...