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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
50.長い一日の終わりに3
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「学園での話を聞かせてくださる?
では、プリムラから。」
プリムラは、ヴィオラにたくさんの友人ができたこと、その中でもマリーと仲良くなれたことを話した。
「マリーはとってもかわいらしくて、今度遊びに来てほしいとお誘いしたのよ。
それにしても、アイリ嬢はひどいわ。
あんなに魅力的なマリーが自分を卑下してしまうほど、悪口を言い続けていたなんて!
それに、お父さまからいただいた髪飾りを横取りしようとしたのですって。」
「そうだったの。
きっとプリムラが寄り添ってあげていれば、マリー嬢の心も癒えていくはずよ。」
プリムラの話をにこやかに聞くヴィオラ。
「次はリーリウム、お願いできるかしら?」
リーリウムは、朝のレオポリス作戦は成功したこと、アイリからは時々睨まれたぐらいで実害はなかったこと、そして午後からは学園改革で忙しかったことを報告した。
「あら、今日はアイリ嬢が大人しかったのですね。
リーリウムは王妃様がご依頼されたお仕事のほうが大切なのですから、なるべくそちらに集中するように。
明日は殿下も学園へいらっしゃるのでしょう?
大変でしょうけど、がんばるのですよ。
さあ、最後はフレエシア。
アイリ嬢に関する情報は、その他にも得られたのかしら?」
フレエシアは意を決して、話し始める。
「放課後、マリー嬢がアイリ嬢に呼び出され、ひと悶着ありました。」
「え! それで、マリー嬢は大丈夫だったのですか?」
思わぬ出来事に、プリムラは恐れ慄いた。
マリーはアイリから数年にわたって心に傷を付けられ続けてきたのだ。
大丈夫なわけがないことはプリムラも感づいていたのだが、聞かずにはいられなかった。
「その時、マリー嬢はこれを奪われてしまったんだ。」
フレエシアは、包んだハンカチをそっと広げて、少し歪んでしまった髪飾りをプリムラに見せる。
「それは、マリー嬢の宝物の……!
なんてひどいことをするのかしら!」
プリムラは怒りをあらわにする。
「そして、この髪飾りをプリムラが無理やり奪ったと言い出したんだよ。
アイリ嬢は、ジョンに髪飾りをプリムラの持ち物に忍ばせてこいと命令したそうだよ。
マリー嬢は怯え切っているから、真相を話すわけがないと思っているらしい。」
「卑劣な!」
フレエシアの報告を聞き、ヴィオラが珍しく怒りの声を上げる。
「でも、そのようなことを仕組んだとしても、
プリムラを知る人たちは誰も信じるわけがないと思うのです。
アイリ嬢が攻略対象と呼んでいる男性たちを含めて、プリムラは交友関係が広いですから。
ただ……。」
言葉の途中だったが、フレエシアは乾ききった口を一口のお茶で潤す。
「ただ、なんですの?」
ヴィオラが少し苛立つ。
「ただ、アイリ嬢がこのことを報告したのが、アンドレアス様ということが気がかりです。」
「どうして?
アンドレアス様がアイリ嬢の言うことを信じるわけがないですわ。
アンドレアス様は、その出来事について何とおっしゃっていたの?」
ヴィオラは合点がいかないといった様子だった。
「アンドレアス様とは、今日お話しできなかったのです。
私たちとの放課後の約束を反故にして、アイリ嬢と街中へ消えて行ってしまったので……。
明日、事情を聞こうかとは思っているのですが、
なぜ彼女と二人きりで会ってしまったのか……。」
フレエシアは、ついにヴィオラに伝えてしまった。
動揺のあまりなんとなく歯切れの悪いしゃべり方になってしまったが、
聞かされた方のヴィオラはいつも通りの表情を崩さなかった。
「わたくし以外の令嬢と二人きりになるような行動をとるのであれば、何か考えがあるのかもしれません。
明日、わたくしからアンドレアス様に話を聞いてみます。
それまで、あなたたちは何も動かないように。
フレエシア、分かりましたね?」
「はい、お姉様。
ジョンにも、アイリ嬢には適当に誤魔化して時間をかせぐように指示をだしています。
それに、マリー嬢と兄のカイルには真実を話すように言いましたが、大丈夫でしょうか?」
「それがいいと思いますわ。
あまりにマリー嬢がかわいそうですもの。
プリムラ、マリー嬢とはアイリ嬢の目が届かないところで仲良くしたほうが良さそうだわ。
近いうちに、我が家へ招待してはいかがかしら?」
それまで暗い表情をしていたプリムラの顔が、ぱぁっと明るくなる。
「わかりました! ヴィオラ姉さま、ありがとう!」
アンドレアスという心配事が宙ぶらりんになったまま、その日の姉妹会議は終了となった。
では、プリムラから。」
プリムラは、ヴィオラにたくさんの友人ができたこと、その中でもマリーと仲良くなれたことを話した。
「マリーはとってもかわいらしくて、今度遊びに来てほしいとお誘いしたのよ。
それにしても、アイリ嬢はひどいわ。
あんなに魅力的なマリーが自分を卑下してしまうほど、悪口を言い続けていたなんて!
それに、お父さまからいただいた髪飾りを横取りしようとしたのですって。」
「そうだったの。
きっとプリムラが寄り添ってあげていれば、マリー嬢の心も癒えていくはずよ。」
プリムラの話をにこやかに聞くヴィオラ。
「次はリーリウム、お願いできるかしら?」
リーリウムは、朝のレオポリス作戦は成功したこと、アイリからは時々睨まれたぐらいで実害はなかったこと、そして午後からは学園改革で忙しかったことを報告した。
「あら、今日はアイリ嬢が大人しかったのですね。
リーリウムは王妃様がご依頼されたお仕事のほうが大切なのですから、なるべくそちらに集中するように。
明日は殿下も学園へいらっしゃるのでしょう?
大変でしょうけど、がんばるのですよ。
さあ、最後はフレエシア。
アイリ嬢に関する情報は、その他にも得られたのかしら?」
フレエシアは意を決して、話し始める。
「放課後、マリー嬢がアイリ嬢に呼び出され、ひと悶着ありました。」
「え! それで、マリー嬢は大丈夫だったのですか?」
思わぬ出来事に、プリムラは恐れ慄いた。
マリーはアイリから数年にわたって心に傷を付けられ続けてきたのだ。
大丈夫なわけがないことはプリムラも感づいていたのだが、聞かずにはいられなかった。
「その時、マリー嬢はこれを奪われてしまったんだ。」
フレエシアは、包んだハンカチをそっと広げて、少し歪んでしまった髪飾りをプリムラに見せる。
「それは、マリー嬢の宝物の……!
なんてひどいことをするのかしら!」
プリムラは怒りをあらわにする。
「そして、この髪飾りをプリムラが無理やり奪ったと言い出したんだよ。
アイリ嬢は、ジョンに髪飾りをプリムラの持ち物に忍ばせてこいと命令したそうだよ。
マリー嬢は怯え切っているから、真相を話すわけがないと思っているらしい。」
「卑劣な!」
フレエシアの報告を聞き、ヴィオラが珍しく怒りの声を上げる。
「でも、そのようなことを仕組んだとしても、
プリムラを知る人たちは誰も信じるわけがないと思うのです。
アイリ嬢が攻略対象と呼んでいる男性たちを含めて、プリムラは交友関係が広いですから。
ただ……。」
言葉の途中だったが、フレエシアは乾ききった口を一口のお茶で潤す。
「ただ、なんですの?」
ヴィオラが少し苛立つ。
「ただ、アイリ嬢がこのことを報告したのが、アンドレアス様ということが気がかりです。」
「どうして?
アンドレアス様がアイリ嬢の言うことを信じるわけがないですわ。
アンドレアス様は、その出来事について何とおっしゃっていたの?」
ヴィオラは合点がいかないといった様子だった。
「アンドレアス様とは、今日お話しできなかったのです。
私たちとの放課後の約束を反故にして、アイリ嬢と街中へ消えて行ってしまったので……。
明日、事情を聞こうかとは思っているのですが、
なぜ彼女と二人きりで会ってしまったのか……。」
フレエシアは、ついにヴィオラに伝えてしまった。
動揺のあまりなんとなく歯切れの悪いしゃべり方になってしまったが、
聞かされた方のヴィオラはいつも通りの表情を崩さなかった。
「わたくし以外の令嬢と二人きりになるような行動をとるのであれば、何か考えがあるのかもしれません。
明日、わたくしからアンドレアス様に話を聞いてみます。
それまで、あなたたちは何も動かないように。
フレエシア、分かりましたね?」
「はい、お姉様。
ジョンにも、アイリ嬢には適当に誤魔化して時間をかせぐように指示をだしています。
それに、マリー嬢と兄のカイルには真実を話すように言いましたが、大丈夫でしょうか?」
「それがいいと思いますわ。
あまりにマリー嬢がかわいそうですもの。
プリムラ、マリー嬢とはアイリ嬢の目が届かないところで仲良くしたほうが良さそうだわ。
近いうちに、我が家へ招待してはいかがかしら?」
それまで暗い表情をしていたプリムラの顔が、ぱぁっと明るくなる。
「わかりました! ヴィオラ姉さま、ありがとう!」
アンドレアスという心配事が宙ぶらりんになったまま、その日の姉妹会議は終了となった。
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