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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
31.ヒロイン出鼻をくじかれる
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朝、ルドヴィクとルヴァリを乗せた王家の馬車が、リーリウムとプリムラを迎えにきた。
本来であれば、公爵家の馬車で別々に登校する予定だったのだが、アイリの特攻を迎え撃つために大人数での移動となった。
ディナルドが乗る馬に先導されて、王家の馬車が、両側を馬上のルドヴィクの護衛騎士アーサー・ウェスクと、ルヴァリの護衛騎士トム・カーギルに守られながら走る。
さらに馬車の後ろには、馬に乗ったフレエシアが付いていく。
普通の貴族令嬢は、馬車での移動がほとんどだが、フレエシアは身軽でいたいからと、公爵に反対されながら自ら馬に乗って登校することの方が多かったのだ。
学校に到着すると、校門の影で待ち伏せをしていたアイリがやはり突撃してきた。
しかし、ヘンリクスの姿がないことに気づくと、リーリウムを睨みつけた。
そして、案の定、ルドヴィクに近づいていく。
「ルドヴィク様! おはようございます。
いっしょに教室へ参りましょう!
おんなじクラスですし!」
アイリはそこまで一気にまくしたて、一学年下のプリムラをちらりと見ると、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
「Mぺ8@-ええーおじぇ9うん8え?」
「え???」
ルドヴィクは、レオポリス語でプリムラに話しかける。
何を言っているのか全く聞き取れなかったアイリは、目を丸くしている。
「m;ksp9うえんkそtgw9dj!」
プリムラは、やはりレオポリス語で返答する。
二人はあっけにとられているアイリを素通りして、仲睦まじい様子で校舎へと向かった。
「え、ちょっとルヴァリ様!
いっしょにお教室までいきましょう?」
ルドヴィクとでは、会話ができないと勘違いしたアイリは、ルヴァリを追いかける。
「リーリウム、m09えb98ふぁp¥ふぇsy9?」
「ルヴァリえdj、;ぇ09うm9ふぇ0、xけいおsp。」
アイリが追いつくと、ルヴァリは隣を歩くリーリウムとレオポリス語で会話をしている。
リーリウムも流暢なレオポリス語を話し、二人は談笑しながら歩いて行った。
「8えl9m;yqdt7w!」
ルヴァリの護衛騎士のトムが、去り際にレオポリス語でアイリに何事かを伝える。
きつめの口調だったので、注意をしたのだろうことは分かるが、やはり何を言っているのかは分からない。
アイリは想定外のことに感情が追い付いていないようで、口をパクパクとさせている。
呆然としながら、しばらくその場で立ち尽くした後、顔を上げて全速力で校舎へと歩いて行った。
誰が見ているのか分からないから、どんなに急いでいても「必死に走る」などというはしたないことはできないのだろう。
フレエシアはその様子を後ろから見ていて、吹き出しそうになっていた。
ディナルドも、笑いがこみ上げてくるのを我慢しつつも、「笑うなよ」とフレエシアに釘をさしている。
ともかく、レオポリス語作戦は大成功のようだ。
上々の滑り出しに、フレエシアは満足気な表情を浮かべていた。
「さて、この手はたぶん『いじわる』で責められそうだから、ずっとは使えない。
次の手も準備しとかなきゃね。」
「お前、あくどいな……。ほどほどにしておけよ。」
フレエシアの言葉に、ディナルドは少し引いている。
「ほどほどだと、私たちが潰されるかもしれない。」
いつになく真剣なフレエシアに、それ以上ディナルドは声をかけられなかった。
“ヒロイン”のアイリが本気になれば、公爵令嬢であるリーリウムやプリムラ、もしかすると自分も“断罪”されてしまうかもしれない。
フレエシアは、どんな手段を使っても、妹たちや自分、そして公爵家を守らなければならないのだった。
本来であれば、公爵家の馬車で別々に登校する予定だったのだが、アイリの特攻を迎え撃つために大人数での移動となった。
ディナルドが乗る馬に先導されて、王家の馬車が、両側を馬上のルドヴィクの護衛騎士アーサー・ウェスクと、ルヴァリの護衛騎士トム・カーギルに守られながら走る。
さらに馬車の後ろには、馬に乗ったフレエシアが付いていく。
普通の貴族令嬢は、馬車での移動がほとんどだが、フレエシアは身軽でいたいからと、公爵に反対されながら自ら馬に乗って登校することの方が多かったのだ。
学校に到着すると、校門の影で待ち伏せをしていたアイリがやはり突撃してきた。
しかし、ヘンリクスの姿がないことに気づくと、リーリウムを睨みつけた。
そして、案の定、ルドヴィクに近づいていく。
「ルドヴィク様! おはようございます。
いっしょに教室へ参りましょう!
おんなじクラスですし!」
アイリはそこまで一気にまくしたて、一学年下のプリムラをちらりと見ると、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
「Mぺ8@-ええーおじぇ9うん8え?」
「え???」
ルドヴィクは、レオポリス語でプリムラに話しかける。
何を言っているのか全く聞き取れなかったアイリは、目を丸くしている。
「m;ksp9うえんkそtgw9dj!」
プリムラは、やはりレオポリス語で返答する。
二人はあっけにとられているアイリを素通りして、仲睦まじい様子で校舎へと向かった。
「え、ちょっとルヴァリ様!
いっしょにお教室までいきましょう?」
ルドヴィクとでは、会話ができないと勘違いしたアイリは、ルヴァリを追いかける。
「リーリウム、m09えb98ふぁp¥ふぇsy9?」
「ルヴァリえdj、;ぇ09うm9ふぇ0、xけいおsp。」
アイリが追いつくと、ルヴァリは隣を歩くリーリウムとレオポリス語で会話をしている。
リーリウムも流暢なレオポリス語を話し、二人は談笑しながら歩いて行った。
「8えl9m;yqdt7w!」
ルヴァリの護衛騎士のトムが、去り際にレオポリス語でアイリに何事かを伝える。
きつめの口調だったので、注意をしたのだろうことは分かるが、やはり何を言っているのかは分からない。
アイリは想定外のことに感情が追い付いていないようで、口をパクパクとさせている。
呆然としながら、しばらくその場で立ち尽くした後、顔を上げて全速力で校舎へと歩いて行った。
誰が見ているのか分からないから、どんなに急いでいても「必死に走る」などというはしたないことはできないのだろう。
フレエシアはその様子を後ろから見ていて、吹き出しそうになっていた。
ディナルドも、笑いがこみ上げてくるのを我慢しつつも、「笑うなよ」とフレエシアに釘をさしている。
ともかく、レオポリス語作戦は大成功のようだ。
上々の滑り出しに、フレエシアは満足気な表情を浮かべていた。
「さて、この手はたぶん『いじわる』で責められそうだから、ずっとは使えない。
次の手も準備しとかなきゃね。」
「お前、あくどいな……。ほどほどにしておけよ。」
フレエシアの言葉に、ディナルドは少し引いている。
「ほどほどだと、私たちが潰されるかもしれない。」
いつになく真剣なフレエシアに、それ以上ディナルドは声をかけられなかった。
“ヒロイン”のアイリが本気になれば、公爵令嬢であるリーリウムやプリムラ、もしかすると自分も“断罪”されてしまうかもしれない。
フレエシアは、どんな手段を使っても、妹たちや自分、そして公爵家を守らなければならないのだった。
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