悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

文字の大きさ
上 下
30 / 141
Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革

30.四姉妹、それぞれの役割

しおりを挟む
「まかせて。その対策も考えてある。
ルドヴィク殿下には、アイリが話しかけてきたら母国語で返事をするようにお願いしてくれない?
もちろん、ルヴァリ殿下にもお伝えしてほしい。
殿下たちの護衛騎士には、そのことはすでに伝達済みだよ。」

「まあ、その手がありましたわね。」

フレエシアの言葉を聞いて、プリムラの顔にいつもの明るさが戻る。
二人の王子の母国レオポリス王国の言葉は、かなり難解だ。
文法がこちらの言葉とは全く違う上に、発音も独特だった。
レオポリス語の文献を解読は出来ても、声に出して読むことは難しい。
現地の人と会話をすることで、やっと習得できる。
たとえアイリが本でレオポリス語を習得していたとしても、“話す”と“聞き取る”を独学ですることは不可能なのだ。
もちろん、ルドヴィクもルヴァリも、こちらの言葉を流暢に話すことができる。
アイリの前でだけ、限定的にレオポリス語を使う作戦だ。

「では、ルドヴィク様たちにはそのように伝えます!
あとは、わたくしも少し考えが浮かんだので、実行してみてもよろしいですか?」

「あらプリムラ、どのような作戦ですの?」

ヴィオラは、末妹がどのようなかわいらしい作戦を思いついたのか、にこやかに聞き返した。

「わたくしもリーリウムお姉さまと同じで、いつも通りに! 
お友だちをいっぱい作りますわ!」

「まあ、それはいい作戦ね。
プリムラには学校中にお友だちを作ってもらわなくてはね。」

ヴィオラがそう言ったのは、おおげさではない。
プリムラの社交性の高さは姉妹一だった。
プリムラが友だちをたくさん作れば作るほど、リーリウムはもちろん、公爵家の娘たちが“悪役令嬢”になる可能性は低くなる。
ヴィオラが認めるほどの、見事な作戦だ。

「私も、プリムラにそうお願いしようと思っていたんだよ。
自分で考えつくなんて、さすがだね。」

フレエシアも感心しつつ、自分の役割も話し始める。

「私は表立っては動かない。
昨日、うっかりアイリに関わったせいで悪評が立ちそうだったしね。
アンドレアス様とディナルドといっしょに、裏でいろいろと立ち回ろうかと思ってる。
ジョンをスパイに仕立て上げたようにね。
基本的には研究室にいるから、なにかあれば訪ねてきて。」

リーリウムとプリムラは、フレエシアの言葉にうなずく。

「わたくしは、しばらく王都にいるので、ユニカ様の日記を解読しますわ。
あの日記、終わりが見えませんの。
もうかなりのページを読んでいると思うのだけど、実はまだすべてを読み解けていないのです。
ページをめくっているのに、残りのページ数が減っていない、そんな感覚で……。
何かわかったら、みんなに知らせますわね。」

ヴィオラも表立っては動けない。
転生者や悪役令嬢、それにヒロインについての情報を日記帳から集めて作戦を練ることで、妹たちをサポートしようと考えていた。

「本当に不思議な日記帳……。ですが、今はその日記帳に出会えて本当に良かったと思っています。」

日記がなければ、ヘンリクスと今の関係を築くことも、アイリとの出会いも違ったものとなっていただろう。
そう考えると、リーリウムはユニカ様が日記を残してくれて本当に良かったと、心から思っていたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...