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Lesson.3 学園生活の始まりが、悪役令嬢の始まり
28.みんなで対策会議3
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「それで、学園で一番身分の高いヘンリクス様に近づこうとしたということ……?」
リーリウムはアイリにまんまと騙されたことが悔しくて仕方がなかった。
「何も知らないかわいそうな貴族令嬢」と勝手に同情して、親切心まで抱いていた自分がバカみたいだ。
「うん。そうだと思う。
だけど、これからはやられっぱなしにはならないよ。
どうして私がこんなにアイリとジョンについて詳しいと思う?」
「……あなた、ジョンを引き入れたわね。」
「ふふ、さすがお姉さま。
今日、結局アイリを殿下から引き離すことができたのは、ジョンだけだった。
私たちが何か言えば『いじわるだ』と言われるし、ディナルドが行動すると『リーリウムにやらされていてかわいそう』って言われるし、多分アンドレアス様でも同じだと思う。
だから、話し合いにジョンを呼び出したんだよ。
ジョンは憔悴しきっていて、かわいそうなくらいだった。
アイリに人生を狂わされた一番の被害者だしね。
ジョンは、アイリのこと、自分のことをいろいろと話してくれたよ。
話しているうちに冷静になれたみたいで、自分から協力を買って出てくれた。」
「そう、やはり元々は賢い方なのね。」
ヴィオラが満足げにしていると、ディナルドが口を開く。
「最初、俺はジョンを責めたんです。
『お前の女ならちゃんと管理しろ!』って。
しかし、ジョンはこう言った『彼女はそもそも僕の恋人ではありませんでした。』って。」
「ジョンは今日まで、アイリを恋人だと思っていた。
だって、向こうの学院ではいつも一緒だったし、アイリはジョンへの愛情表現を欠かさなかったみたいだしね。
だけど、ジョンは入学式前にはアイリに不信感を抱いていた。
なぜなら、今朝、アイリはこう言ったそうだよ。
『私が殿下と結婚するために、協力して。
“悪役令嬢”のリーリウムを排除してほしい。』って。」
フレエシアがそう言い終わった時、リーリウムはぞわぞわと鳥肌が立った。
(どうして、アイリが“悪役令嬢”という言葉を知っているの?)
ふとヴィオラを見ると、リーリウムと目が合ったとたん、小さくうなずく。
疑念が確信へと変わっていく。
「悪役……なんだって?
うちの娘が悪役なわけないじゃないか!」
公爵が怒りくるっている。
「そうだ、こんなに純真で心優しいリーリウムが悪役だなんて、あの女!」
普段は感情を表に出さないヘンリクスまで怒り出した。
リーリウムは、普段温厚な父とヘンリクスがここまで怒りを露わにしていることに驚いた。
「殿下もお父さまも、怒りを鎮めてください。
わたくしのことを分かってくださっている方がここに集まってくれています。
それだけで、わたくしは大丈夫なのです。」
ヘンリクスと公爵の手を両方の手で握ると、リーリウムは微笑んで見せた。
リーリウムのやわらかな笑顔に、二人は怒りの矛を収める。
気丈なリーリウムに、フレエシアは言葉を続ける。
「そこで、ひとまずジョンには、アイリに従っているふりをする演技をしてもらうことになった。
まあ、いわゆるスパイだね。
それで、アイリが具体的にどういう作戦を練ってくるのか探ってみようと思う。
賢いアイリが、今日みたいな当たって砕けろみたいな作戦で終わるわけないし。
まあ、今日はたぶんリーリウムの評価を下げることが目的で、それは達成されてしまった。
明日から私たちは、下がってしまったリーリウムの評価をもとに戻すための行動を起こさなくてはいけないってことだね。」
「下がった評価を上げるのは、並大抵のことではできませんわよ?」
ヴィオラが心配する。
「大丈夫ですよ、お姉さま。
ちゃんと考えてますって。」
自信満々なフレエシア。
「なんだか心配だわ。
アンドレアス様、フレエシアが無茶をしないように見張っていてくださいましね。」
「はい。お任せくださいヴィオラ。」
珍しく頼ってもらえたことに、喜びを隠し切れないアンドレアスは、
思わずヴィオラの手の甲に恭しく口づけをする。
「それで、わたくしはどうすれば良いのですか?」
フレエシアに尋ねるリーリウム。
「そうだね。その話は明日の朝食のときに。
今日はもう遅いし、ここまでにした方が良いかと思う。」
時計を見ると、もういつもの就寝時間はとっくに過ぎている。
フレエシアの言葉で、その日の作戦会議はお開きとなったのだった。
リーリウムはアイリにまんまと騙されたことが悔しくて仕方がなかった。
「何も知らないかわいそうな貴族令嬢」と勝手に同情して、親切心まで抱いていた自分がバカみたいだ。
「うん。そうだと思う。
だけど、これからはやられっぱなしにはならないよ。
どうして私がこんなにアイリとジョンについて詳しいと思う?」
「……あなた、ジョンを引き入れたわね。」
「ふふ、さすがお姉さま。
今日、結局アイリを殿下から引き離すことができたのは、ジョンだけだった。
私たちが何か言えば『いじわるだ』と言われるし、ディナルドが行動すると『リーリウムにやらされていてかわいそう』って言われるし、多分アンドレアス様でも同じだと思う。
だから、話し合いにジョンを呼び出したんだよ。
ジョンは憔悴しきっていて、かわいそうなくらいだった。
アイリに人生を狂わされた一番の被害者だしね。
ジョンは、アイリのこと、自分のことをいろいろと話してくれたよ。
話しているうちに冷静になれたみたいで、自分から協力を買って出てくれた。」
「そう、やはり元々は賢い方なのね。」
ヴィオラが満足げにしていると、ディナルドが口を開く。
「最初、俺はジョンを責めたんです。
『お前の女ならちゃんと管理しろ!』って。
しかし、ジョンはこう言った『彼女はそもそも僕の恋人ではありませんでした。』って。」
「ジョンは今日まで、アイリを恋人だと思っていた。
だって、向こうの学院ではいつも一緒だったし、アイリはジョンへの愛情表現を欠かさなかったみたいだしね。
だけど、ジョンは入学式前にはアイリに不信感を抱いていた。
なぜなら、今朝、アイリはこう言ったそうだよ。
『私が殿下と結婚するために、協力して。
“悪役令嬢”のリーリウムを排除してほしい。』って。」
フレエシアがそう言い終わった時、リーリウムはぞわぞわと鳥肌が立った。
(どうして、アイリが“悪役令嬢”という言葉を知っているの?)
ふとヴィオラを見ると、リーリウムと目が合ったとたん、小さくうなずく。
疑念が確信へと変わっていく。
「悪役……なんだって?
うちの娘が悪役なわけないじゃないか!」
公爵が怒りくるっている。
「そうだ、こんなに純真で心優しいリーリウムが悪役だなんて、あの女!」
普段は感情を表に出さないヘンリクスまで怒り出した。
リーリウムは、普段温厚な父とヘンリクスがここまで怒りを露わにしていることに驚いた。
「殿下もお父さまも、怒りを鎮めてください。
わたくしのことを分かってくださっている方がここに集まってくれています。
それだけで、わたくしは大丈夫なのです。」
ヘンリクスと公爵の手を両方の手で握ると、リーリウムは微笑んで見せた。
リーリウムのやわらかな笑顔に、二人は怒りの矛を収める。
気丈なリーリウムに、フレエシアは言葉を続ける。
「そこで、ひとまずジョンには、アイリに従っているふりをする演技をしてもらうことになった。
まあ、いわゆるスパイだね。
それで、アイリが具体的にどういう作戦を練ってくるのか探ってみようと思う。
賢いアイリが、今日みたいな当たって砕けろみたいな作戦で終わるわけないし。
まあ、今日はたぶんリーリウムの評価を下げることが目的で、それは達成されてしまった。
明日から私たちは、下がってしまったリーリウムの評価をもとに戻すための行動を起こさなくてはいけないってことだね。」
「下がった評価を上げるのは、並大抵のことではできませんわよ?」
ヴィオラが心配する。
「大丈夫ですよ、お姉さま。
ちゃんと考えてますって。」
自信満々なフレエシア。
「なんだか心配だわ。
アンドレアス様、フレエシアが無茶をしないように見張っていてくださいましね。」
「はい。お任せくださいヴィオラ。」
珍しく頼ってもらえたことに、喜びを隠し切れないアンドレアスは、
思わずヴィオラの手の甲に恭しく口づけをする。
「それで、わたくしはどうすれば良いのですか?」
フレエシアに尋ねるリーリウム。
「そうだね。その話は明日の朝食のときに。
今日はもう遅いし、ここまでにした方が良いかと思う。」
時計を見ると、もういつもの就寝時間はとっくに過ぎている。
フレエシアの言葉で、その日の作戦会議はお開きとなったのだった。
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