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Lesson.3 学園生活の始まりが、悪役令嬢の始まり
21.“悪役ヒロイン”?
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『私の時代に“ヒロイン”として登場したマリアは、本当にいい子でした。
しかし、その後に現れた“ヒロイン”たちは、ほとんどが悪意に満ち溢れていたのです。
そういった子たちは、ここをゲームや小説の世界だと思い込み、人々の想いを踏みにじり、傷つける行動をとります。
あまりに稚拙すぎて自滅してしまう“ヒロイン”もいましたが、ずる賢い“ヒロイン”は、自分が気に入った男性と結ばれるように、さまざまな手段で“悪役令嬢”を陥れていったのです。
実際に、これまで二人の“ヒロイン”が王家に嫁ぐ寸前までに成り上がりました。
一人目はマリア同様、聖女として召喚されてきた女の子でした。
彼女は当時の王弟と結婚しようと、彼の妻を陥れて修道院送りに。
さらに、王弟をそそのかし反乱を起こしましたが、鎮圧され、“ヒロイン”と王弟は処刑されました。
この出来事は、マリアが聖女召喚を続けるカエルム教に反旗を翻すきっかけとなったのです。
再び聖女によって国が混乱しないようにと……。
もう一人の“ヒロイン”は、私の孫にあたる王子に近づきました。
王子にはすでに婚約者がいて、あなたと同じ、ウィスペル家の公爵令嬢です。
彼女は、私も赤ん坊のころからかわいがっていた女の子で、それはもう真面目で淑女の鏡のような子です。
王子との仲も良く、ほほえましく見守っていました。
一方で“ヒロイン”は、聖女ではなく男爵家の私生児でしたが、魔法の才能に秀でており、愛らしい容姿を持っていました。
そして、王族になりたいという欲望のために“魅了”の魔道具を作り出し、王子をはじめ、学校中の男性を虜にしていったのです。
それはもう! 本当にあっという間に、学園であの子は“悪役令嬢”に仕立て上げられてしまいました。
自分ではどうすることも出来ず、王子にも見放され、私が手を貸そうとしたときにはすでに心が壊れてしまっていたのです。
そこからたくさんの人々の尽力があり、“魅了”の魔道具を壊し、王子たちは魔法から解放されました。
ですが、どんなに手を尽くしても、婚約者だった女の子の心が戻ることはありませんでした。
もうあの子のような令嬢をこれ以上生み出したくないと思い、私はこの日記を記しはじめたのです。
公爵家の令嬢にとって脅威である、“ヒロイン”の存在は学園にあります。
もし、あなたが学園に入学した時には、愛らしく、何か特別な能力を持っていて、高位貴族にも臆することなく話しかけてくる女の子がいたら、気を付けて。
その子は“ヒロイン”かもしれません。
マリアのようにいい子かもしれないと思っても、裏の顔はわかりません。
なるべく関わらず、王子とその子を二人きりにしないように!
引き続き、王子との心の距離を近づける努力も怠らないように。
絶対に付け入る隙を見せてはいけません。』
「こんな子がいたらこわいですわ。
絶対にヒロインの方が悪役ではないですか……。」
プリムラがブルブルとふるえて見せる。
「……わたくし、今日こんな子に出会いました。」
リーリウムは、やはりアイリは“ヒロイン”なのではないかと思い、姉妹たちにアイリの様子を話す。
姉妹たちはいっせいに息をのんだ。
リーリウムから聞くアイリは、確かに“ヒロイン”と特徴が一致する。
「彼女と出会った時、ヘンリクス殿下の様子はどうでしたか?」
ヴィオラが問うと、リーリウムは少し微笑んだ。
「殿下は気にしていなさそうでした。」
「そう、ならば一先ずは安心ね。
それに、その子とは違う学校に通うことになるのだから、関係ないのではない?」
ヴィオラの言葉に、一転してリーリウムの表情が曇る。
彼女が実は男爵家の令嬢だったこと、学院長からの提案があり、貴族学園へ編入してくるかもしれないことを話す。
「それは、ちょっと警戒しなくてはいけないね。」
「他国の王子方もおられるし、彼女が暴走しないとは言えませんしね。」
姉二人が警戒をするように話す。
「その提案を却下にするわけにはいけませんの?」
自分の恋人もターゲットにされるかもしれないと怯えるプリムラが、リーリウムに訴える。
「殿下も乗り気でしたし、私もその場では良い案だと思って同意してしまったの。
日記帳やヒロインの話を殿下にするわけにもいかないし、難しいと思うわ。」
申し訳なさそうに話すリーリウムに、それ以上プリムラは何も言えなかった。
「リーリウムもプリムラも婚約者との仲は良好だし、
とりあえず『心の距離作戦』を続けながら警戒を怠らないってことでどうかな?
私は学園内で二人を守れるし、内情も分かっている。
裏でもいろいろと探ってみるよ。」
すでに貴族学園へ通っているフレエシアであれば、さまざまな情報が入ってくるだろう。
リーリウムとプリムラはフレエシアが本当に心強く、ありがたかった。
「わたくしは学園で二人を見張るわけにはいかないから、
アンドレアス様にそれとなく二人を見守るようにお願いしておくわ。
あまり頼りにならないかもしれないけれど……。」
ヴィオラも二人の妹の身を案じ、婚約者と共に守ることを伝える。
リーリウムとプリムラはたくましい姉二人に守られている安心感に、やっと笑顔が戻った。
しかし、その後に現れた“ヒロイン”たちは、ほとんどが悪意に満ち溢れていたのです。
そういった子たちは、ここをゲームや小説の世界だと思い込み、人々の想いを踏みにじり、傷つける行動をとります。
あまりに稚拙すぎて自滅してしまう“ヒロイン”もいましたが、ずる賢い“ヒロイン”は、自分が気に入った男性と結ばれるように、さまざまな手段で“悪役令嬢”を陥れていったのです。
実際に、これまで二人の“ヒロイン”が王家に嫁ぐ寸前までに成り上がりました。
一人目はマリア同様、聖女として召喚されてきた女の子でした。
彼女は当時の王弟と結婚しようと、彼の妻を陥れて修道院送りに。
さらに、王弟をそそのかし反乱を起こしましたが、鎮圧され、“ヒロイン”と王弟は処刑されました。
この出来事は、マリアが聖女召喚を続けるカエルム教に反旗を翻すきっかけとなったのです。
再び聖女によって国が混乱しないようにと……。
もう一人の“ヒロイン”は、私の孫にあたる王子に近づきました。
王子にはすでに婚約者がいて、あなたと同じ、ウィスペル家の公爵令嬢です。
彼女は、私も赤ん坊のころからかわいがっていた女の子で、それはもう真面目で淑女の鏡のような子です。
王子との仲も良く、ほほえましく見守っていました。
一方で“ヒロイン”は、聖女ではなく男爵家の私生児でしたが、魔法の才能に秀でており、愛らしい容姿を持っていました。
そして、王族になりたいという欲望のために“魅了”の魔道具を作り出し、王子をはじめ、学校中の男性を虜にしていったのです。
それはもう! 本当にあっという間に、学園であの子は“悪役令嬢”に仕立て上げられてしまいました。
自分ではどうすることも出来ず、王子にも見放され、私が手を貸そうとしたときにはすでに心が壊れてしまっていたのです。
そこからたくさんの人々の尽力があり、“魅了”の魔道具を壊し、王子たちは魔法から解放されました。
ですが、どんなに手を尽くしても、婚約者だった女の子の心が戻ることはありませんでした。
もうあの子のような令嬢をこれ以上生み出したくないと思い、私はこの日記を記しはじめたのです。
公爵家の令嬢にとって脅威である、“ヒロイン”の存在は学園にあります。
もし、あなたが学園に入学した時には、愛らしく、何か特別な能力を持っていて、高位貴族にも臆することなく話しかけてくる女の子がいたら、気を付けて。
その子は“ヒロイン”かもしれません。
マリアのようにいい子かもしれないと思っても、裏の顔はわかりません。
なるべく関わらず、王子とその子を二人きりにしないように!
引き続き、王子との心の距離を近づける努力も怠らないように。
絶対に付け入る隙を見せてはいけません。』
「こんな子がいたらこわいですわ。
絶対にヒロインの方が悪役ではないですか……。」
プリムラがブルブルとふるえて見せる。
「……わたくし、今日こんな子に出会いました。」
リーリウムは、やはりアイリは“ヒロイン”なのではないかと思い、姉妹たちにアイリの様子を話す。
姉妹たちはいっせいに息をのんだ。
リーリウムから聞くアイリは、確かに“ヒロイン”と特徴が一致する。
「彼女と出会った時、ヘンリクス殿下の様子はどうでしたか?」
ヴィオラが問うと、リーリウムは少し微笑んだ。
「殿下は気にしていなさそうでした。」
「そう、ならば一先ずは安心ね。
それに、その子とは違う学校に通うことになるのだから、関係ないのではない?」
ヴィオラの言葉に、一転してリーリウムの表情が曇る。
彼女が実は男爵家の令嬢だったこと、学院長からの提案があり、貴族学園へ編入してくるかもしれないことを話す。
「それは、ちょっと警戒しなくてはいけないね。」
「他国の王子方もおられるし、彼女が暴走しないとは言えませんしね。」
姉二人が警戒をするように話す。
「その提案を却下にするわけにはいけませんの?」
自分の恋人もターゲットにされるかもしれないと怯えるプリムラが、リーリウムに訴える。
「殿下も乗り気でしたし、私もその場では良い案だと思って同意してしまったの。
日記帳やヒロインの話を殿下にするわけにもいかないし、難しいと思うわ。」
申し訳なさそうに話すリーリウムに、それ以上プリムラは何も言えなかった。
「リーリウムもプリムラも婚約者との仲は良好だし、
とりあえず『心の距離作戦』を続けながら警戒を怠らないってことでどうかな?
私は学園内で二人を守れるし、内情も分かっている。
裏でもいろいろと探ってみるよ。」
すでに貴族学園へ通っているフレエシアであれば、さまざまな情報が入ってくるだろう。
リーリウムとプリムラはフレエシアが本当に心強く、ありがたかった。
「わたくしは学園で二人を見張るわけにはいかないから、
アンドレアス様にそれとなく二人を見守るようにお願いしておくわ。
あまり頼りにならないかもしれないけれど……。」
ヴィオラも二人の妹の身を案じ、婚約者と共に守ることを伝える。
リーリウムとプリムラはたくましい姉二人に守られている安心感に、やっと笑顔が戻った。
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