18 / 141
Lesson.3 学園生活の始まりが、悪役令嬢の始まり
18.とっても素敵な驚き
しおりを挟む
エリザとジョンは、さまざまな授業を見学させてくれた。
ヘンリクスとリーリウムは学生たちの学ぶ意欲に圧倒されながら、教師と生徒に聞き取り調査をしていく。
生徒たちは、学校でさまざまなことを学べば学ぶほど、将来に役立つことをよくわかっていた。
さらに、知識を蓄えることに喜びや楽しさを見出している。
そして、授業を受け持つ教師たちは口々に、教師になった後も勉強を続けていると言うのだ。
そうしなければ、すぐに生徒たちに知識も実力もすぐに追い越されてしまうおそれがあるらしい。
生徒たちと教師たちの学ぶことへの熱量に、驚くばかりのヘンリクスたち。
二人は、このような理想の学校を作り上げた学院長の話を聞くのが楽しみになっていった。
魔法の時代からある学院の一階の片隅にある学院長室へ行くと、
歴史を感じる重厚な作りの部屋に、さまざまな魔道具が所せましと置かれていた。
物が多く、小さな応接セットが一つあるだけなので、護衛たちは部屋の外へ待機させ、学院長室にはヘンリクスとリーリウム、そして学院長の三人だけがいる。
「すごいですね……。」
リーリウムがぼそりとつぶやくと、ヘンリクスもうなずいた。
「すでに壊れてしまったものも多いのですが、ちゃんと今も現役のものもあるのですよ。」
にこやかに学院長が魔道具の説明をしてくれる。
実は、彼女の家系は代々この学院の学院長をしているそうで、その歴史は魔法学術院設立まで遡るそうだ。
魔道具も彼女の私物で、代々受け継がれてきたものだった。
「わたくしの姉が魔道具の研究をしているのですが、学院長様の話を姉にしてもよろしいでしょうか?」
フレエシアに話せば喜びそうだと思ったリーリウムは、思わずそんなことを口にしていた。
「もちろん、存じ上げております。
フレエシア様の研究は、わたくしも気になっておりました。
ぜひ、お話ください。
それから、これをフレエシア様にお贈りしたいのです。」
学院長は手のひらに入るサイズの魔法石が三つ入った木箱を、リーリウムに手渡した。
「これは……?」
その魔法石はサイズこそ大きくはないが、リーリウムの知っている魔法石より輝きが強いように感じた。
「魔法使いが魔力を吹き込んだ魔法石です。」
「え……!?」
魔法使いが絶えて100年ほど経っているので、人の魔力が入った魔法石はかなり貴重なものだ。
「どなたの魔力ですか?」
キラキラと輝く魔法石が入った木箱を大事に抱えながら、学院長へ問うリーリウム。
「祖父です。
この国最後の魔法使いでした。
晩年、強い魔法は使用できませんでしたが、手持ちの魔法石すべてに魔力を注ぐことに没頭していました。
国の魔法使いが絶えてしまっては、今後は魔道具を使うのも難しくなるだろうと……。
後世の人々の生活を心配していたのです。」
そう言うと、自分の机の引き出しから、もう一つ魔法石を持ってきた。
その魔法石も、さきほどの魔法石よりはやや弱くではあるが、輝きを放っていた。
「そして、これが私の魔力を注いだ魔法石です。」
ヘンリクスとリーリウムは顔を見合わせた。
「あなたは魔法使いなのか?」
ヘンリクスが恐る恐る尋ねると、学院長は首を横に振った。
「残念ながら、そうではありません。
わたくしは魔法は使えないのです。
祖父の話ですと、人間は誰しも魔力を体内に持っているそうです。
ただ、その量や質、さらに外へ出す能力があるかどうかで魔法使いになれるかどうかが決まるそうで……。
わたくしは魔法使いになるには魔力が少なすぎるのですが、外へ出す修行だけは祖父に教わりました。
それで、魔法石へ魔力を注ぐことだけはできたのです。
魔力が注がれた魔法石があれば、フレエシア様の研究に役立つのではないかと思い、
リーリウム様に託そうと思ったのですよ。」
学院長が魔力を注いだ魔法石を受け取ると、大切にハンカチに包むリーリウム。
「わたくしは魔法について詳しくはありませんが、おそらく姉の研究にあなたは必要な方だと存じます。
姉には、必ず学院長様のお話を伝えます。」
「よろしくお願いいたします。
ただ、わたくしが魔力を注ぐことができるというのは、殿下とリーリウム様、フレエシア様だけのお心にとどめておいてほしいのです。
魔法使いだと勘違いされると、いろいろと危険が伴いますので……。」
リーリウムとヘンリクスは、真剣な顔でうなずく。
その様子を見てにっこりと笑うと、学院長は驚きの発言をした。
「話は変わりますが、実はわたくしとリーリウム様とヘンリクス様は、遠い遠い親戚なのですよ。」
「え?」
「私たちの家系は“ユニカ魔法学術院”設立時から、学院長をしてきていると言ったでしょう?
リーリウム様なら、初代の学院長をご存じなのでは?」
「たしか、ユニカ様の弟君だったかと……。」
と言いながら、リーリウムは思い至った。
ユニカ様の弟は優秀な魔術師だった。
しかし自由が無くなるのを嫌い、宮廷魔術師の長の仕事を辞職し、自ら魔法使いギルドを設立。
さらに、ユニカに依頼され、ギルド長と“ユニカ魔法学術院”の学術院長も兼任したという変わった貴族だった。
「はい。その子孫です。
公爵家はユニカ様の兄の直系、私はユニカ様の弟の直系の子孫です。
そして王家はユニカ様の子孫にあたりますね。
だから、遠い遠い親戚なのです。」
「まあ! とっても素敵な驚きです!」
リーリウムは、温和な笑顔で二人を見つめる学院長に親近感を覚え、新しい親戚が見つかったことが、素直にうれしかった。
ヘンリクスも同様だったようで、二人で見つめ合いながらほほ笑みを交わした。
ヘンリクスとリーリウムは学生たちの学ぶ意欲に圧倒されながら、教師と生徒に聞き取り調査をしていく。
生徒たちは、学校でさまざまなことを学べば学ぶほど、将来に役立つことをよくわかっていた。
さらに、知識を蓄えることに喜びや楽しさを見出している。
そして、授業を受け持つ教師たちは口々に、教師になった後も勉強を続けていると言うのだ。
そうしなければ、すぐに生徒たちに知識も実力もすぐに追い越されてしまうおそれがあるらしい。
生徒たちと教師たちの学ぶことへの熱量に、驚くばかりのヘンリクスたち。
二人は、このような理想の学校を作り上げた学院長の話を聞くのが楽しみになっていった。
魔法の時代からある学院の一階の片隅にある学院長室へ行くと、
歴史を感じる重厚な作りの部屋に、さまざまな魔道具が所せましと置かれていた。
物が多く、小さな応接セットが一つあるだけなので、護衛たちは部屋の外へ待機させ、学院長室にはヘンリクスとリーリウム、そして学院長の三人だけがいる。
「すごいですね……。」
リーリウムがぼそりとつぶやくと、ヘンリクスもうなずいた。
「すでに壊れてしまったものも多いのですが、ちゃんと今も現役のものもあるのですよ。」
にこやかに学院長が魔道具の説明をしてくれる。
実は、彼女の家系は代々この学院の学院長をしているそうで、その歴史は魔法学術院設立まで遡るそうだ。
魔道具も彼女の私物で、代々受け継がれてきたものだった。
「わたくしの姉が魔道具の研究をしているのですが、学院長様の話を姉にしてもよろしいでしょうか?」
フレエシアに話せば喜びそうだと思ったリーリウムは、思わずそんなことを口にしていた。
「もちろん、存じ上げております。
フレエシア様の研究は、わたくしも気になっておりました。
ぜひ、お話ください。
それから、これをフレエシア様にお贈りしたいのです。」
学院長は手のひらに入るサイズの魔法石が三つ入った木箱を、リーリウムに手渡した。
「これは……?」
その魔法石はサイズこそ大きくはないが、リーリウムの知っている魔法石より輝きが強いように感じた。
「魔法使いが魔力を吹き込んだ魔法石です。」
「え……!?」
魔法使いが絶えて100年ほど経っているので、人の魔力が入った魔法石はかなり貴重なものだ。
「どなたの魔力ですか?」
キラキラと輝く魔法石が入った木箱を大事に抱えながら、学院長へ問うリーリウム。
「祖父です。
この国最後の魔法使いでした。
晩年、強い魔法は使用できませんでしたが、手持ちの魔法石すべてに魔力を注ぐことに没頭していました。
国の魔法使いが絶えてしまっては、今後は魔道具を使うのも難しくなるだろうと……。
後世の人々の生活を心配していたのです。」
そう言うと、自分の机の引き出しから、もう一つ魔法石を持ってきた。
その魔法石も、さきほどの魔法石よりはやや弱くではあるが、輝きを放っていた。
「そして、これが私の魔力を注いだ魔法石です。」
ヘンリクスとリーリウムは顔を見合わせた。
「あなたは魔法使いなのか?」
ヘンリクスが恐る恐る尋ねると、学院長は首を横に振った。
「残念ながら、そうではありません。
わたくしは魔法は使えないのです。
祖父の話ですと、人間は誰しも魔力を体内に持っているそうです。
ただ、その量や質、さらに外へ出す能力があるかどうかで魔法使いになれるかどうかが決まるそうで……。
わたくしは魔法使いになるには魔力が少なすぎるのですが、外へ出す修行だけは祖父に教わりました。
それで、魔法石へ魔力を注ぐことだけはできたのです。
魔力が注がれた魔法石があれば、フレエシア様の研究に役立つのではないかと思い、
リーリウム様に託そうと思ったのですよ。」
学院長が魔力を注いだ魔法石を受け取ると、大切にハンカチに包むリーリウム。
「わたくしは魔法について詳しくはありませんが、おそらく姉の研究にあなたは必要な方だと存じます。
姉には、必ず学院長様のお話を伝えます。」
「よろしくお願いいたします。
ただ、わたくしが魔力を注ぐことができるというのは、殿下とリーリウム様、フレエシア様だけのお心にとどめておいてほしいのです。
魔法使いだと勘違いされると、いろいろと危険が伴いますので……。」
リーリウムとヘンリクスは、真剣な顔でうなずく。
その様子を見てにっこりと笑うと、学院長は驚きの発言をした。
「話は変わりますが、実はわたくしとリーリウム様とヘンリクス様は、遠い遠い親戚なのですよ。」
「え?」
「私たちの家系は“ユニカ魔法学術院”設立時から、学院長をしてきていると言ったでしょう?
リーリウム様なら、初代の学院長をご存じなのでは?」
「たしか、ユニカ様の弟君だったかと……。」
と言いながら、リーリウムは思い至った。
ユニカ様の弟は優秀な魔術師だった。
しかし自由が無くなるのを嫌い、宮廷魔術師の長の仕事を辞職し、自ら魔法使いギルドを設立。
さらに、ユニカに依頼され、ギルド長と“ユニカ魔法学術院”の学術院長も兼任したという変わった貴族だった。
「はい。その子孫です。
公爵家はユニカ様の兄の直系、私はユニカ様の弟の直系の子孫です。
そして王家はユニカ様の子孫にあたりますね。
だから、遠い遠い親戚なのです。」
「まあ! とっても素敵な驚きです!」
リーリウムは、温和な笑顔で二人を見つめる学院長に親近感を覚え、新しい親戚が見つかったことが、素直にうれしかった。
ヘンリクスも同様だったようで、二人で見つめ合いながらほほ笑みを交わした。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる