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Lesson.0 不思議な図書館と謎の日記
2.不思議な図書館との出会い
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リーリウムが当主専用図書室を利用する際の公爵からの使用条件は3つだけだった。
①書斎内ものには一切触らないこと
②公爵が留守中は執事のアドルフに告げてから図書室へ入ること
③読んだ本は記録を残すこと
今日は公爵が宮殿へ参内する日だったため、朝食時にアドルフに図書室へ行くことを告げておいた。
この条件の中で公爵が最も重要視しているは「読んだ本は記録を残すこと」であることを気づいていたリーリウムは、自室から携帯用の筆記具と紙の束を持って図書館へ向かった。
公爵はもともと伯爵家の三男で、入り婿だった。
この国では女が家の当主になる習慣がないため、公爵家の長女であった母と結婚し、今の地位についたのである。
公爵は人々の心をつかむのが非常に上手な、いわゆる“人たらし”なのだ。
ただ、公爵家そのものにあまり頓着しておらず、平気で三女に公爵専用図書館の鍵を渡してしまうような人物でもあった。
図書室の本は“ほとんど読んでいない”のではなく、たぶん1冊も読んでいないことは容易に想像できる。
つまり、公爵は自分が興味のない国や公爵家の歴史を娘に調べさせて、簡単な資料を作らせようとしていたのだ。
(おそらく陛下か高位貴族との会話の中で困ったことがあったのでしょうね……)
しかし、そこまで思案しつつも、いつも優しい父親が自分のために最高のプレゼントを用意してくれたことが決して嘘ではないことも分かっていた。
(理由はどうあれ、本当に正真正銘の最高のプレゼントですもの!)
期待を胸に図書室の扉を開けたリーリウムは、長年使われていなかった図書室の明りを灯そうと、すぐそばの壁にあったボタンを押した。
古い魔法石で制御されていた図書室の内部が一斉に明るくなり、その内部を露わにしてくれた。
リーリウムの頭の中では、多くても書棚が10台ほど置ける広さの図書室だと想像していた。
公爵家がいくら広いといえど、公爵の書斎と隣室の位置を考えると、図書室はそこまで広くないと考えていたからだ。
しかし、目の前には公爵家がすっぽりそのまま入ってしまうのではないかと思うほどの“図書館”があった。
図書館は何十年もほったらかしになっていただろうに、ほこりも塵もひとつもなかった。
「これは…」
あまりの見事さに絶句した。
職人による緻密な装飾が施された柱、そして煌びやかなシャンデリア。
何よりも整然と並んだ本の数!
さらに、図書館の中央には、真鍮とガラスで出来た美しいデスクライトが置かれた、一人掛けの机があった。
吸い込まれるように机まで進むと、座り心地の良い椅子に座った。
机には備え付けの棚があり、そこには歴代の当主による日記などが置かれていた。
後世へ伝えるための公務日誌はすぐに閲覧できるように書斎に置かれているので、ここにあるのはごくプライベートな日記だ。
すべての当主が日記を残しているわけではないし、百科事典のような冊数を残している人もいた。
(気にはなるけど、まずは本を探しましょう。)
リーリウムは椅子から立ち上がると、図書館の奥から順番に書棚を物色することにした。
歴史や哲学、宗教など専門書が並ぶ。現在では入手不可能な貴重な資料も見つけた。
ずっと放置されていただけあって、古い本が目立つが、魔法の力なのか劣化はしていなかった。
数冊、気になる本を見繕って机に戻ると、そのまま時間が過ぎるのも忘れて読みふける。
リーリウムはそのまま本の世界に没入すると、お腹の虫がグルグルと鳴くまで現実世界に戻ってこなかった。
①書斎内ものには一切触らないこと
②公爵が留守中は執事のアドルフに告げてから図書室へ入ること
③読んだ本は記録を残すこと
今日は公爵が宮殿へ参内する日だったため、朝食時にアドルフに図書室へ行くことを告げておいた。
この条件の中で公爵が最も重要視しているは「読んだ本は記録を残すこと」であることを気づいていたリーリウムは、自室から携帯用の筆記具と紙の束を持って図書館へ向かった。
公爵はもともと伯爵家の三男で、入り婿だった。
この国では女が家の当主になる習慣がないため、公爵家の長女であった母と結婚し、今の地位についたのである。
公爵は人々の心をつかむのが非常に上手な、いわゆる“人たらし”なのだ。
ただ、公爵家そのものにあまり頓着しておらず、平気で三女に公爵専用図書館の鍵を渡してしまうような人物でもあった。
図書室の本は“ほとんど読んでいない”のではなく、たぶん1冊も読んでいないことは容易に想像できる。
つまり、公爵は自分が興味のない国や公爵家の歴史を娘に調べさせて、簡単な資料を作らせようとしていたのだ。
(おそらく陛下か高位貴族との会話の中で困ったことがあったのでしょうね……)
しかし、そこまで思案しつつも、いつも優しい父親が自分のために最高のプレゼントを用意してくれたことが決して嘘ではないことも分かっていた。
(理由はどうあれ、本当に正真正銘の最高のプレゼントですもの!)
期待を胸に図書室の扉を開けたリーリウムは、長年使われていなかった図書室の明りを灯そうと、すぐそばの壁にあったボタンを押した。
古い魔法石で制御されていた図書室の内部が一斉に明るくなり、その内部を露わにしてくれた。
リーリウムの頭の中では、多くても書棚が10台ほど置ける広さの図書室だと想像していた。
公爵家がいくら広いといえど、公爵の書斎と隣室の位置を考えると、図書室はそこまで広くないと考えていたからだ。
しかし、目の前には公爵家がすっぽりそのまま入ってしまうのではないかと思うほどの“図書館”があった。
図書館は何十年もほったらかしになっていただろうに、ほこりも塵もひとつもなかった。
「これは…」
あまりの見事さに絶句した。
職人による緻密な装飾が施された柱、そして煌びやかなシャンデリア。
何よりも整然と並んだ本の数!
さらに、図書館の中央には、真鍮とガラスで出来た美しいデスクライトが置かれた、一人掛けの机があった。
吸い込まれるように机まで進むと、座り心地の良い椅子に座った。
机には備え付けの棚があり、そこには歴代の当主による日記などが置かれていた。
後世へ伝えるための公務日誌はすぐに閲覧できるように書斎に置かれているので、ここにあるのはごくプライベートな日記だ。
すべての当主が日記を残しているわけではないし、百科事典のような冊数を残している人もいた。
(気にはなるけど、まずは本を探しましょう。)
リーリウムは椅子から立ち上がると、図書館の奥から順番に書棚を物色することにした。
歴史や哲学、宗教など専門書が並ぶ。現在では入手不可能な貴重な資料も見つけた。
ずっと放置されていただけあって、古い本が目立つが、魔法の力なのか劣化はしていなかった。
数冊、気になる本を見繕って机に戻ると、そのまま時間が過ぎるのも忘れて読みふける。
リーリウムはそのまま本の世界に没入すると、お腹の虫がグルグルと鳴くまで現実世界に戻ってこなかった。
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