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その後②非力な助っ人
1話 変化
しおりを挟む「──僕は今凄く楽しいよ」
ハヤトは裸の私に毛布をかけながら笑った。私は疲れ切った体でベッドに横たわり、彼の腕に頭を乗せて、話をぼんやりと聞く。また私を支配した喜びでも語ると思いきや、ハヤトは静かに言った。
「前の学校は自分らしくいられなくて。魔法を使える人が他にいないから、周りを傷つけないようにいつも抑えてた。でもそうすると奴らは、調子に乗るんだよ…………」
天井を見上げてつぶやく彼の横顔を黙って眺める。いつも自信満々なハヤトの顔が一瞬暗くなった気がする。でもすぐに、彼は私を見て笑顔になった。
「でもね、初めて僕に屈する君を見て……嬉しかったんだ。見せしめにもなったし。君のおかげで、僕は我慢する必要が無くなった。みんなが僕の顔色を伺って、僕に気を遣って……本当に、オリビアには感謝しているよ」
腕を起こし、ぐいっと私を抱き寄せ、額にキスをする。
前の学校で何があったのかは分からないけど、一瞬でも同情しそうになった自分が馬鹿だった。きっと私をそばに置いておく事で、彼は自尊心を満たしているのだろう。だって、絶対に私が勝つ事は無いというのに、ハヤトは私を抱く前に必ず勝負を持ち掛けた。私を負かして、私を地面に倒れこませてから、大事そうに抱えてベッドに運ぶのだ。本当に、歪んでいる。
いいえ、私が彼を歪ませる最後のきっかけになってしまったのだ。
***
結局私はあの後、もう一度告白をさせられた。心から嫌だったけどそうするしかなくて、放課後にハヤトのクラスまで行って泣きそうになりながら付き合って欲しいと叫んだ。今度はハヤトもいいよと言った。仕方なさそうに、いかにも私の強い気持ちに根負けしたという風に。その場でビンタしてやりたい気持ちをこらえて、周囲の祝福を浴びた。
そして翌日からは、学校でもハヤトと一緒に過ごさなければならなくなった。もう堂々としていられるねと、行き帰りもランチタイムも、別行動が出来なくなった。きっと監視の意味もあるのだろう。誰にも相談出来ない毎日。今までは一般科目の時間はとても退屈だった。早く魔法学の授業を受けたいと思っていたのに、今はハヤトのいないこの時間がなによりもありがたかった。
この生活はいつまで続くんだろう。そう思っていたある日の数学の授業中、問題用紙を配るために席を外している間に、メモが机の上に置かれていた事に気が付く。
中身を見て私は驚いた。『君を助けたい』と、書いてあった。
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