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その後①強制告白
こっぴどく
しおりを挟む気が重い。が、やるしかない。やらないと、ハヤトに酷い目に遭わされる。ランチタイムになり、私はハヤトを探した。みんなの前でと言われても授業中はさすがに出来ないので、するならこの時間しか無いと思った。でも、いつもいる食堂には見つからない。私がここを探すと分かってて移動したわね……!!苛立つ気持ちを抑えて、憎き坊主頭を探す。私は今からこんな人に告白しなければならないのか。
思い当たる場所を探す。あと食べる所がある場所と言えば……中庭だ。色んな生徒たちがベンチや芝生に座って和やかに昼食を楽しんでいる。ハヤトも思った通り、綺麗に刈られた芝生の上に片膝を立てて座っていた。それも、あの日私を魔法で攻撃した場所に、数人の女の子に囲まれて。この人何がしたいの?
私は仕方なくその人だかりの前に出た。そこで気付く。ハヤトの周りにいる女の子は全員、私と短い間友達だった子たちだ。私を見て「何?何か用?」とくすくす笑うのを、ハヤトが優しく止める。そして私を見上げると、蔑むように笑った。
「やあ、どうしたの?僕に用事かな?戦いならしないよ」
「えっ、まだそんな事言ってたの!?オリビアったら、往生際が悪ーい!」
私を元気づけて家に誘ってくれた友達に笑われる。嬉しかった思い出も壊すハヤトに、私は今から愛を伝える。
「た、戦いなんかじゃないわ……ハヤトに、言いたい事があって……」
「何?早く済ませてね」
ハヤトのそっけない態度に一瞬眉をひそめるが、早く終わらせたい私は一気に言った。
「あの……ハヤトが好きになりました。つ、付き合って!!!!」
およそ告白とは思えない程にハヤトを睨みつけながら大声で叫んだ。中庭で食事を楽しんでいた人たちの耳にも入ったのか、ざわつき始める。ハヤトの周りに座る友達だった子たちも驚き、私を冷ややかに見て、ぷっと笑い出した。みんな私が彼をライバル視していた事を知っているから、この告白に衝撃を受けるのは予想済みだったけど、やっぱり凄く恥ずかしくて屈辱的だ。ほら、これでいいでしょう?大勢の前であなたに告白したわよ。早くなんとか言いなさいよ!
だけど顔を真っ赤にして立ち尽くす私に、立ち上がったハヤトの冷たい声が降ってきた。
「あはは……やだよ、無理だってば。僕にあんなに迷惑かけておいて、よくそんな事言えたね」
「なんっ……え!?」
あまりの返事に目が回りそう。彼は私の告白を一蹴して、取り巻きを引き連れて歩き出した。
「ハヤト、何で振っちゃうの!?かわいそうだよー」
ハヤトにくっついて歩く1人が私を振り返りながら楽しそうに聞いている。
「ああいう自分勝手な子は苦手なんだ。わざわざみんなの前で断らないといけないこっちの身にもなって欲しいよ」
「じゃ私と付き合ってよ!」
「え、ごめん。最近忙しくてそんな気分じゃないんだ」
「なんでよーっ!」
あっさり振られて知らない人にもひそひそと笑われる私を置いて、笑いながら中庭を後にするハヤトに堪忍袋の緒が切れる。私にこんな恥ずかしい事させておいて、プライドを踏みにじるような態度。許さない……!
後先考えず杖を振ってしまう。彼の背中に向けて大きめの魔法弾を力任せに放った。だけどハヤトを吹き飛ばす事は叶わなかった。当たる直前で彼は振り向き、杖を振って魔法弾を消滅させてしまったのだ。
「あのさ、振られたからって逆上するのやめてくれないかな?彼女たちに当たったらどうするんだよ」
「どういう事よ!!あなたがやれって言ったんでしょ!?私に恥をかかせて何がしたいの!!」
「何を言ってるんだ?怖いよ。みんな行こう」
ハヤトは私を無視して、スタスタと中庭を後にする。追いかけて抗議しようとすると、周りの人に止められる。
「落ち着いて!そんな事やっても好きな人の心は離れていくだけだよ」
「違う!私は好きじゃない!あの人に言わされて」
「うんうん、分かったから」
何を言ってもなだめられるだけだった。周囲の人の目に映るのは、振られた腹いせにヒステリーを起こしている女なのだろう。ハヤト、悪魔の魔法使い!!私をコケにして、許さない!!
噂はあっという間に広まった。ハヤトに嫉妬するあまり、今度はそれを愛情に変えてつきまとうかつての天才魔女。振られた事に納得出来ず、ついには暴れ出した危険な女だと。
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